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キーパーソンインタビュー
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Huawei担当者が語るデータ通信端末戦略
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中国の通信機器メーカー、Huawei Technologies(華為技術、ファーウェイ)は、イー・モバイルにデータ通信端末を供給し日本市場でのシェアを急速に拡大している。国内ではなじみの薄かった同社だが、世界各国の通信市場で通信機器を総合的に供給する通信機器メーカーであり、大規模な研究開発部門を持ち、最新規格に対応した端末が次々と製品化されている。
Huawei Technologies Japan 端末プロダクト部 担当部長のShen Ye(チン・ヨウ)氏に、日本における端末戦略を聞いた。
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Huawei Technologies Japan 端末プロダクト部 担当部長のShen Ye(チン・ヨウ)氏。手にしているのは写真左が「H23HW」、写真右が「D22HW」
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■ 最速、数、バリエーション
――まず、国内のデータ通信端末の展開方針を伺いたいと思います。
3つの方向性で考えており、1つ目は「最速」という言葉にこだわりを持って製品化していくことです。D02HWのヒットに加えて、上り5.8Mbps対応のD23HWも好調で、通信速度の速さが日本のユーザーに響いているのではないかと思います。
とはいっても、通信速度だけでは、やがて他社からも同様の製品が発売されます。一時の通信速度の優位性だけでは市場シェアの確保は難しいでしょう。このことから、2つ目は、機種数を増やすことです。直近では、2009年2月、4月と製品発表のタイミングが短くなっていますが、製品を打ち出すスピードを早めています。半年に1回発表する時代は終わり、さまざまな展開を行っていきます。
3つ目は、機種数ばかりが増えてもしかたがないということで、使い勝手などバリーションを増やし、新しいコンセプトを特徴として打ち出していくことです。D23HWでは小型のボディに本体収納型の回転式USB端子を搭載していますし、D22HWでは女性を意識したカラーバリエーション展開も行っています。
――最新規格の端末をいち早く発売したり、製品展開を早くしたりするために何か秘けつはあるのでしょうか。
現在のような展開スピードは、簡単には実現できないレベルだと思います。基礎として、我々には研究開発部門があり、全社員の約半数が研究開発部門の人間です。毎年売上げの10%以上を研究開発に投資し、その予算の10%以上は最先端の基盤技術への投資です。結果として、2008年は国際特許出願数が3万5000件を超え、世界第1位となりました。
まずは発売できる段階にまで持ってきて、そこから先はトップの決断次第ですね。新しい製品をすぐに展開するのは企業体力や信念が必要で、製品レベルでは、通信速度にこだわりすぎると品質を落とさざるをえないというトレードオフの関係もあります。イー・モバイルはデータ通信が主体でスピードが重要になってきますが、キャリアの考え方にあわせて我々の協力の仕方が変わってくる部分はあります。
■ 「日本でもヒットした」
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年間を通して売れ行きが好調だったイー・モバイルの「D02HW」
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「D22HW」は色鮮やかなカラーの表現に苦労したという
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――イー・モバイルの勢いにもあるように、D02HWなど御社のデータ通信端末は大ヒットするモデルも登場しました。これらは、あらかじめ予想されていた範囲でしょうか?
D02HWのベースになったモデルは、先に欧州市場でヒットしていました。我々として、ある程度期待感を持って臨んだのは確かです。また、移動体通信で世界トップレベルの日本で展開することは、他の国での展開にもプラスになりますし、そういった期待も込めていました。結果として、D02HWは年間を通して売れ行きが好調で、予想していたとはいえ「やはり、日本でもヒットした」というのが実感です。日本市場は特殊だと言われることもありますが、世界と共通する部分もあるということです。
――店頭では「100円PC」としてセット販売が行われ、これがイー・モバイル急伸の原動力となっていますが、端末供給にも大きな影響があったのでしょうか?
第三者の販売数量データなどを基にしたものですが、従来の2~3倍の数字になっていると思います。
――D22HWは、従来のデータ通信端末に無いカラーバリエーションです。
イー・モバイルのパソコンとバンドルした形でデータ通信端末が売れていることもあり、パソコンの色に合わせるといったような需要も出てくるのではないかと考えました。
――現在はイー・モバイルのみに供給されていますが、他のキャリアに端末を供給することはあるのでしょうか?
イー・モバイルは、我々が日本市場に参入する際の最初のキャリアで、基地局を含めて機器を供給しています。また、新規参入のイー・モバイルは我々と同じチャレンジャーの立場でもあり、今後もイー・モバイルをしっかりとサポートしていきたと考えています。
一方、グローバル市場では、ひとつの国において複数のキャリアに製品を供給することを普通に行っていますし、国内では地方のWiMAXの実験局や、ソフトバンクモバイルのLTE実験局に機器を提供している例もあります。我々のキャリアに対する姿勢はオープンですし、機会があれば展開したいと思っています。
――今後、日本市場ではWiMAXやXGP、LTEなど新たな通信方式が次々と登場する予定です。これらに対する方針はどうなっているのでしょうか。
新しい通信方式は、通信速度がまず向上するので、まずはデータ通信端末から展開されるでしょう。現在、データ通信端末の市場シェアを大きく確保しているので、積極的にチャンスをうかがっていきたいですね。
■ 日本市場も世界の一部
――データ通信端末の市場ですが、世界的に傾向は共通しているのでしょうか?
例えば、ヨーロッパではより安価な3.6Mbps対応の製品が売れていました。こういった細かな地域差はあります。また、回転式のUSB端子で注目されたヨーロッパ向けの「E180」は、日本市場向けにUSB端子部分を変更してD21HWとして投入しました。D21HWは、同時期にアップルの「MacBook Air」が発表されたこともあり、MacBook AirのUSBポートでも問題無く利用できるデザインも意識しました。日本と北米ではアップルのシェアが比較的高いので、結果的にD21HWをベースにしたモデルを北米市場にも投入しました。
日本は独自市場と言われますが、「世界のどこかである」ととらえることもできます。そうすれば、前述のようなメリットを出すことも可能です。いろいろな国の好みに合わせて製品を提供していますし、これからもさまざまな製品が出てきますよ。
――世界のデータ通信市場全体として、今後どのような発展を予測し、自社の展開を検討していますか?
現在はまだHSDPAが主流ですが、今後はHSUPAにバージョンアップし、その後はLTEも見えてくるでしょう。端末に課題はありますが、まずはデータ通信端末に対して需要があると思います。
また、データ通信端末の分野に限定されない可能性もあると思います。通信を行う機器を供給するという立場では、まだまだやれることがたくさんあります。モジュールでの提供かもしれませんし、形にこだわらず、ニッチな市場でもチャレンジしながら、高速通信が必要な機器を提供していきます。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
Huawei Technologies Japan
http://www.huawei.com/jp/
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(太田 亮三)
2009/04/23 11:07
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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