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【キーパーソン・インタビュー】
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KDDI高橋誠氏に聞く、夏モデルから始まるauの反転攻勢
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KDDIが発表したauの夏モデルは、スポーツ端末あり、電子ブック端末あり、ソーラーケータイありと、1機種1機種の売りが以前より明確になり、かつての“auらしさ”が復活しつつある印象を受ける。こうした端末は、auが得意とするプラットフォームと密接に結びついているのも特徴だ。では、この夏モデルやサービスで、KDDIはどのように戦っていくのか。同社の最新戦略を、取締役常務執行役員の高橋誠氏に聞いた。
■ 春モデルの総括と夏モデルの手ごたえ
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KDDIの高橋氏
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夏モデルのキーワードは「去年と違う夏。」
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――夏モデルのお話の前に、まず、春モデルの総括をしていただけますか。
やっとKCP+も落ち着いてきました。特にソニー・エリクソンさんにはがんばっていただいて、「PREMIER3」や「Cyber-shotケータイ S001」にしても、定価で売れていきました。ユーザーさんが価値を分かったうえでお持ちいただいている、という状況です。iidaの戦略についてもご評価いただけることが多く、G9はきちんと売れているので、そこに関しては手ごたえを感じています。
――では、発表されたばかりですが、夏モデルの感触をお聞かせください。
少なくとも、今まで後手後手になっていた新機能の搭載に関しても、今回は世界や他キャリアに先駆けて出せており、市場にも注目してもらえるのではないかと思います。「Sportio water beat」は、タッチパネル、防水、スポーツ機能でなおかつゴルフナビまで入っています。「SOLAR PHONE SH002」にしても、ソフトバンクさんも発表されましたが、発売は我々の方が早く、6月上旬です。「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」や「biblio」も、ガジェット好きな方に気に入ってもらえるかなと思います。
――microSDHCにも対応しましたね。
その件に関しては遅れてしまい、申し訳ございません。これも夏モデルでやっと追いつくことができました。
――タッチパネル対応機種が一気に増えましたが、これはなぜでしょう。
先ほど申し上げたように、KCP+も大元の開発はほぼ終わっていますが、その上で開発する案件はいくつかあります。今回のmicroSDHC対応やタッチパネルもその1つです。KCP+として拡張したので、一気に横展開することができました。
――「biblio」は、Wi-Fi WINに対応しています。御社の無線LAN端末に関するお考えを教えてください。
データオフロードとして、できるだけトラフィックを逃したいと考えています。
――ドコモさんの「ホームU」のような固定回線に接続したIP電話サービスは、今後やっていくのでしょうか。
法人向けにはいいかもしれませんが、あまりコンシューマー向けではないような気がしますね。
――2012~2013年にはLTEが控えていますが、「Wi-Fi WIN」はそれまでのつなぎという位置づけですか?
ちょっとまだ分からないですね。いずれにせよ、今のインフラでも、かなりデータ容量が上がってきています。我々はまだ動画のストリーミングも提供できていないので、そういう意味ではWi-Fiを駆使しながら、データオフロードの世界を実現していきたいと考えています。
ドコモさんは2010年の後半にLTEを導入されるようですが、多分最初はデータカードでしょう。我々もマルチキャリアRev.Aで下りは9.3Mbpsまで高速化します。一方でWiMAXもありますからデータカードタイプのものにも、十分対応できます。マルチキャリアRev.Aは通常の端末にも入れますし、HSDPAに対して遅いというご不満は、それで解消できると思います。
――最近の売れ筋を見ていると、安価なモデルが人気になる傾向もありますが、この流れをどう見ていますか。
高い・中盤・安いと3つぐらい価格帯があって、半年ぐらいすると一番高いグループの端末も値下がりするわけですよね。理想を言えば、ここがあまりに早く値下がりするのはよくないと思います。我々もKCP+などで苦しんでいた時は、ここの値下がりが早く、何とかしないといけなかったんです。良い商品を出して、高い部類の端末の値下がりが遅くなれば廉価な端末も活きてきます。「機能はいらないけどデザインだよね」というユーザーさんも増えていますから、こういうお客様のために、iidaがあると思っています。多機能ではないですが、これはステキというものをやりたかったので、iidaの廉価モデルとしてmisoraをやっているわけです。こういうものは絶対にあると思います。
――そう考えると今回の夏モデルを出すことで、いい循環になりそうですね。
今回のラインナップに、ハズレはないと思っています。
■ プラットフォーム作りに注力するKDDI
――夏モデルは新サービスやコンテンツも充実しています。auとして、この分野に対してどういった取り組みをしているのか、改めて教えてください。
KDDIが主体的にコンテンツを作るということは、あまりやってはいけないのだと考えています。au Smart Sportsにしても、LISMOにしても、あるターゲットのライフスタイルに向けた、人の集まってもらえるプラットフォームとして作っています。LISMOは色々なレコード会社がこの上で音楽を配信してもらえるようにしていますし、EZナビウォークもその周りにある情報コンテンツに集まってもらえればと思っています。オークションにしても、BtoCに広がっていきました。
au Smart Sportsでは、その上にeコマースや、それに付随するコンテンツなどが出てくることを期待しています。例えば今回はFitnessをリリースしましたが、これもフィットネスセンターなどとコラボレーションしています。ケータイで予約して、ボタンを押すとPCの画面でフィットネスを見られるわけですが、結構楽しいんですよ。今後もそういったことをやっていければいいですね。KDDIは音楽と映像とスポーツと、今回新たに加わったブックの4つをエンターテインメントの軸にしていて、このジャンルを強化していくのがここ数年の目標です。
――御社が提携した事業者の中では、最近だとGREEが大きく伸びています。
あの形で成功したサービスには、EZナビウォークやau oneモバオクもあります。PCの世界でがんばっていらっしゃる会社がいて、そこに携帯電話という薬をかけると、課金に結びついてビジネスが大きくなっていきます。パートナーさんが潤って、アドバイタズ(CM)ができ、水平展開してドコモさんやソフトバンクさんでサービスを開始して、さらにパートナーさんが大きくなると、我々も幸せになるわけです。
――提携先を選ぶ基準などがあれば、教えてください。成功率が比較的高いような気がしますが……。
いやいや、そんなことはないですよ(笑)。ただ、それが独善的なサービスに終わらず、プラットフォームになって、その上に色々なプレイヤーが乗ることができることが重要なのだと思います。これはある意味で、クラウド的なサービスですよね。今はケータイの上のクラウドですが、ほかの家電の上にも広がっていくのが本当はよくて、そのための新しいOSがAndroidなのかもしれません。
――Fitnessもテレビと連動すると面白いですよね。例えば、au BOXと連動するということもお考えでしょうか?
もちろん検討しています。ただ、それをやるにはau BOXが少々非力なので、次を考えなければいけません。au BOXは20万台を超えましたが、まだ、インターネットの接続率があまり高くないので、そこを上げていくのが今の課題です。その部分を、FTTHなどを売っている部隊と一緒に検討しています。
――ここ数年でインフラが進化する予定ですが、LISMO Videoなどのコンテンツも、ケータイで直接ダウンロードという形になるのでしょうか。
今はRev.Aのインフラの問題で制限をかけていますが、今後はその可能性も当然あります。個人的にはVODの形には、まだ期待を持っています。JCNという子会社があって、ひかりoneなどとコンテンツは共有できていますから、上手く絡めてなんとかやっていきたいなと思います。それらの延長として、ケータイ単体でダウンロードするという時代が来るといいですね。
■ Android端末の導入は?
――ただ、今のケータイだとディスプレイの限界があるような気がします。
逆に言うと、そういうところにスマートフォンや、プロジェクターの伸びる余地があるのかもしれません。
――以前御社を取材した際に、Androidを検討・開発されているとうかがいましたが、進捗状況はいかがでしょうか。
前向きに取り組んでいます。ただ、正直なところ、KDDIはCDMA2000なので、(ドコモのHT-03Aのような)オープン端末はどうしてもポーションの大きなところ(W-CDMA陣営)に行っていまいがちで、CDMA2000陣営には不利な状況です。ここはしっかり対応できるよう、積極的に進めています。
――御社ならではの取り組みは考えていますか。
今はまだ秘密です(笑)。ただ、KDDIらしくしたいなとは考えています。
■ 新料金の意図やiidaの将来
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「指定通話定額」や「ダブル定額スーパーライト」といった新料金も明らかにされた
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――今回は、「指定通話定額」や「ダブル定額スーパーライト」も発表されました。この意図を教えてください。
パケット定額のように、我々がパイオニアの部分には、やはり特徴を出していきたいですからね。音声定額は、ユーザーをソフトバンクさんに取られているところがあるので、ガチンコの勝負です。
――通話定額を導入することで、トラフィックに影響は与えないのでしょうか。
大丈夫です。設備投資も抑えていないので、なんとか吸収できる範囲です。
――ところで、iidaに関しては、今後も先日の発表会のように、継続してラインナップを展開してくのでしょうか。
まだ完全に決めたわけではありませんが、通常のラインナップに埋もれない形で出していく予定です。それも「1機種増えました」ではなく、「こういう世界観のものが出ました」というようにアクセサリーまで含めてトータルのラインナップを展開していきます。
――まだメニューにau oneなどが出ていますが、コンテンツレイヤーもiidaにしていく可能性はありますか。
それはおっしゃるとおりなので、検討しています。ネット端末は結構難しくて、例えばiPhoneにしても、端末のレイヤーまではしっかりデザインできていても、一歩インターネットに出るとガラッと変わってしまいますからね。そこは辛いところです。
――逆に、数々のプラットフォームを自社で持っていることが強みになりそうですね。
auにはナカチェンのような取り組みもありますからね。ファイターズケータイも、結構好評なんです。何万台と売れるものではありませんが、地元密着型でポータルも変えてというのには、何かと引き合いがあります。
――ちなみに、多陣営のSymbianやLiMoのような動きは、どうご覧になられていますか。
興味を持って見ています。AndroidやWindows Mobileと一緒に語られてしまっている部分はありますが、私個人のイメージとしては、KCP+に近いものだと思っています。これをLTE時代に向けてどうするのが一番いいのか、下のレイヤーとしてのLiMoやSymbianは常に検討しています。その上にアプリレイヤーがあってKCP+はBREWと同居していますが、それと同じでLiMoやSymbianの上で一般ユーザーがアプリケーションを作るかというと、そうはならないと思います。オープンソースがケータイの世界で重要になるのは間違いないですが。
――では、最後に読者にメッセージをお願いします。
色々な面で後追いと見られつつあったauが、あらゆる面でリーダーになるための商品をお出しできたと思うので、ぜひご覧になってください。端末やサービスで業界初の試みをやり続けるauでありたいですし、もちろん料金についてもそうです。今後のauにも、ぜひご期待ください。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
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(石野純也)
2009/05/27 12:21
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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