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「P-07A」開発者インタビュー
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“トリニティ”になったWオープンの進化を聞く
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PRIMEシリーズの1つである「P-07A」は、NTTドコモのパナソニック端末として4世代目の「Wオープンスタイル」のケータイだ。ところが今回は、“W(ダブル)”ではなく「トリニティ(三位一体)スタイル」というキャッチコピーが付けられた。
縦・横に続く、“3つめのスタイル”とは一体何か、商品コンセプトなどを含め、プロジェクトマネージャーの石川博也氏、電気設計担当の藤森一彦氏、ソフトウェア担当の高橋秀幸氏、カメラ関連機能を担当した村上敏裕氏、ワンセグ関連機能を担当した井村康治氏に聞いた。
■ 新しい要素は「撮る」
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石川氏
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サブディスプレイを大型にして、カメラの使い勝手向上をはかった
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――最初に特徴やコンセプトから教えてください。
石川氏
「P-07A」は、P905i、P906i、P-01A/P-03Aに続く第4世代のWオープンスタイルです。今回、Wオープンスタイルをさらに進化させて「トリニティスタイル」になりました。3つ目の“スタイル”は、カメラ機能の向上、いわば“デジカメスタイル”のことです。パンフレットなどでは、「撮る」「観る」「伝える」というキャッチフレーズで紹介しています。
――これまでは、通常の携帯電話としての使い方に加えて、横で使うという形でしたが、デジタルカメラとしての機能を強化したと。
石川氏
横にして“観る”という面では、VIERAケータイということもあって支持していただけましたが、カメラについては改善を求める声もありましたし、私も「もっとデジカメらしい使い方を提案できないか」と考えていました。そこで今回は約2インチのカラーサブディスプレイを搭載し、カメラのファインダーとして使えるようにしています。これで「Wオープン+撮る」という進化を遂げたわけです。
――カメラ機能にフォーカスしながらも、「LUMIXケータイ」とは名乗っていませんね。
石川氏
P-07Aのカメラ機能強化は、お客様の使いやすさにフォーカスして、簡単キレイを実現するために、LUMIXで好評な「おまかせiA」という機能を搭載しています。アイコンも同じデザインのものを取り入れ、分かりやすく、カメラの機能設定なしで自動シーン判別による自動チューニングでキレイに写真を撮れるようになります。「P-07A」は「撮る、観る、伝える」を基本コンセプトにVIERAケータイを進化させましたので、LUMIXブランドを採用していません。
■ 撮影シーンを自動判別する機能
――その「おまかせiA」とはどういった機能ですか?
石川氏
パナソニック製のデジタルカメラ「LUMIX」に用意されている機能と同じもので、顔認識、風景認識、動き認識、夜景/夜景+人物認識、接写認識と5つの場面を自動認識して、その場に最適なモードで撮影するというものです。
これまでもシーン別に適したモードを選択できる機能はありましたが、私自身、撮影時にはすぐに設定できません。LUMIXに「おまかせiA」が用意されているということで、これは携帯電話にも搭載すべきと考えました。
――携帯電話のカメラ機能は高画素化などで進化してきましたが、今回おまかせiAを搭載する、という進化の方向になったのはなぜでしょう?
石川氏
確かにスペック的には大きく進化してきましたが、どの年齢層にとっても簡単かつキレイに撮影するためには、操作性を含めて、「携帯電話のカメラ機能には課題がある」と考えてきました。そういった部分での進化が必要でした。デジタルカメラは、遠足や旅行、イベントなど記念として残す場合に使うことが多いと思いますが、携帯電話のカメラは、思い立ったその場で撮影する、つまり「即撮り」という使い方です。
――気兼ねなくきれいに撮ることが重要ということですね。
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カメラ機能を立ち上げると、画面左上に「おまかせiA」のアイコン
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P-01Aで撮影し、プリントした写真(左)と、P-07Aのスーパーナイトモードで撮影、プリントした写真(右)
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――おまかせiAの仕組みを教えてください。
村上氏
「この場面は夜景」「これはポートレート」と自動判定する条件は、LUMIXと同じ条件ですが、「P-07A」ではソフトウェアで処理しています。そのため、本家LUMIXと比べると検出時間などは若干違いがありますが、アイコンなどの表示は同じデザインにしています。
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村上氏
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判定条件は、顔の有無や被写体までの距離、周囲の明るさといった項目の組み合わせになっています。たとえば周囲が暗く、被写体までの距離が遠ければ「夜景」と判定するのです。
――携帯のカメラでは、夜景は特に、デジタルカメラより手ブレすることが多いように感じます。
村上氏
「P-01A」では、ISO1600相当で撮影できるようになっていましたが、今回は「おまかせiA」で動きを検出し、ISO感度を倍にする「インテリジェンスISO」という機能を用意しました。また、手ぶれ補正ONでは撮影速度が遅くなるからOFFにする、という声があり、今回は手ブレ補正をソフトウェア処理ではなくハード処理にして高速化しました。
ユニークな機能として、ナイトモードで1秒の露光が可能になり、これまでの携帯電話では撮れなかったような写真が撮影できるようなっています。
――なるほど。
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藤森氏
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村上氏
携帯電話のカメラでは、レスポンス向上が課題です。今回はタスク管理などソフトウェア面を徹底的に見直して、起動時間、オートフォーカスについて、これまで2秒かかっていたところ、1秒に短縮しましたし、0.33秒かかっていたシャッタータイムラグは、1/3の0.1秒になりました。
――最大解像度で撮影するとき、いつも保存時間の長さが気になります。
村上氏
5メガカメラの「P-01A」では保存時間に6秒ほどかかっていましたが、8.1メガカメラの「P-07A」では1秒ほど短縮し、5秒程度で保存できるようになりました。これは、手ブレ補正のハード処理化によってもたらされた機能向上の1つです。
――カメラ機能に関連し、今回は高輝度LEDフラッシュが搭載されています。
藤森氏
カメラの動作中には電流が増えますが、待受時には動作しません。光る瞬間はだいたい数百mA秒で最大数ミリ秒、という電力消費となり、P-07Aの待受時間全体としては誤差と言える程度の影響になります。
■ ワンセグを60fpsで再生
――ここまで「撮る」という特徴について教えていただきましたが、「観る」はどういった機能のことなのでしょうか。
石川氏
「観る」とはワンセグ関連機能のことで、これまでも当社製の携帯電話に搭載されてきた「モバイルWスピード」では、従来の30fps(秒間30コマ)から、60fps(秒間60コマ)に向上しています。またコントラスト比も10000:1に向上しています。
――そもそもワンセグは、15fpsで放送されていますよね。それが4倍になるのですか。どういった映像で効果を実感できるでしょうか。
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井村氏
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20日のパナソニック春モデル発表会でも60fpsをアピール
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井村氏
1つは動きが大きいシーンですね。たとえばテロップの文字が右から左へ流れている場合、残像感が低減されて観やすくなります。ワンセグの15fpsを30fpsにするには、フレームとフレームの間に、「この中間はこういう絵になるはず」と推理してフレームを挿入していますが、60fpsにした今回も考え方自体は従来と同じです。ただ、本当に存在するフレームとフレームの間に挿入する映像が3枚に増えているのです。
家庭用のテレビでは240fpsといったものが登場してきましたが、モバイル機器で60fpsというものはありません。ワンセグ利用時のみ体験できる機能ですが、30fpsと比べて、映像の滑らかさは大きく向上しています。ただし、その滑らかさは、先述したように文字テロップなどの場面で特に実感していただけるでしょう。また、コントラスト比については、信号処理の改善により、10000:1に向上しました、従来よりも黒はより黒く、明るいものはより明るく、メリハリのついた映像になります。
――ディスプレイそのものも進化しているのでしょうか。
石川氏
P-07Aに搭載されるディスプレイ装置は、「高色再現性液晶」と呼ばれるものです。色の再現性を高めています。
――高色再現性液晶は、au向けの「P001」でも採用されていましたね。
井村氏
はい、同じデバイスです。高色再現性液晶でモバイルWスピードの60fps、コントラスト比10000:1の相乗効果で、キレイな映像を楽しんでいただけます。
■ 設計の苦労、ソフトウェアの工夫
――810万画素カメラや高色再現性液晶などが搭載されたことで、設計面ではどのような苦労があったのでしょうか。
藤森氏
今回は、背面のサブディスプレイが2インチと大型のものでしたが、従来機種をベースとする制約があったため、部品のレイアウトは苦労しました。開発初期段階でノイズシミュレーション等を活用し、部品配置を行っていきましたが、サブディスプレイの搭載により、(携帯電話の)アンテナに影響があることがわかったため、対策部品を追加しました。その結果、開発後半段階の施策では部品の実装エリアがなくなってしまったのです。この、新たに発生した課題に対し、初期段階で実施した対策部品をもう一度検証しなおして削除し、面積を確保しました。
――ソフトウェア面では、今回どのような進化が図られているのでしょう。
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高橋氏
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高橋氏
1つは横画面のユーザーインターフェイスを改善しました。2WAYキーを搭載した「P-01A」でも横画面で操作できるようになっていましたが、今回は横画面を目いっぱい使って、iモードやメールなどが利用できるようになっています。「P-01A」でいただいた要望、指摘に応えたことになります。
またメニュー画面の操作が前機種より数ミリ秒速くなり、メール一覧画面などでも快適さが増しています。
――横画面でのブラウジングは便利そうです。
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横画面でメールを書くこともできる
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高橋氏
フルブラウザだけではなく、iモードブラウザでも横画面で利用できるようになったわけですが、そうなってくるとサイト側のデザインも横画面に合わせたものにすべき、という点は今後の課題ではないでしょうか。Flashで構築されたサイトは、どうしても縦画面にあわせたデザインのものが多く、今後はブラウザ側とサイト側のどちらも進化することになるのでしょう。
――その他の点はいかがでしょうか。
高橋氏
背面のサブディスプレイが2インチということで、メールやiモーションを観られるようにしています。またサブディスプレイだけの待受画像も設定できるのはもちろん、携帯電話やDIGA(パナソニック製のレコーダー)でワンセグ録画した番組もサブディスプレイで再生できます。場面にあわせたスタイルで楽しめるんですよ。
――なるほど。今回はありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://panasonic.jp/mobile/docomo/p07a/
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(関口 聖)
2009/05/22 12:56
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