ケータイ Watch
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[2009/02/06]



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「F-01A」「F-03A」開発者インタビュー
「ヒトに合わせる」を考えチャレンジを続けるFシリーズ

F-01A(上段)
F-03A(下段)
 ドコモのPRIMEシリーズとして昨年11月に発売された「F-01A」は、フルスペックで防水、タッチパネル対応と先端機能をすべて網羅している。一方、1月24日に発売されたばかりの「F-03A」は、同じPRIMEシリーズに分類されたタッチ対応端末ではあるものの、フルフェイス型のスライド式で、旧Dシリーズの「スピードセレクター」を継承するなど、まったく趣が異なるデザインとなっている。

 それぞれの端末がどのようなコンセプトで開発されたのか、富士通のモバイルフォン事業本部 マーケティング統括部 第一プロダクトマーケティング部 高橋 知彦氏、モバイルフォン事業本部 マーケティング統括部 第一プロダクトマーケティング部 中越 啓夫氏、筒井 万紀子氏にお話を伺った。


F-01Aの開発の根底にある思想は「ヒトに合わせる」

F-01A

高橋 知彦氏
――まず「F-01A」についてお伺いします。昨年11月に発売されてからすでに2カ月が経過しました。感触はいかがでしょうか?

高橋氏
 手応えはかなりありました。でも出てしまったら、あとはユーザーさんの評価なので、現実としてその先どのような順位変動をするかというところで一喜一憂するようなことではないと思ってます。お客さんのベネフィットは日々変わっていくので、そこからお客さんの不満や、他社さんが売れてるとしたらどういったところが評価されてるのかを捉えて、次に活かさなくてはいけません。

――では改めて「F-01A」の開発コンセプトを教えてください。

筒井氏
 「ハイスペック防水ケータイ」ということで、従来旧70Xiシリーズで培ってきた防水の技術を、今回はPRIMEシリーズとして搭載した端末が「F-01A」になります。

高橋氏
 従来の弊社の端末は「ヨコモーション」をやってきましたので、今回の「F-01A」は一大決心があった端末です。大きな流れとしてどちらも根底に「ヒトに合わせる」という思想があります。ヨコモーションは操作方法を変えずに画面にフィットするコンテンツなりアプリケーションを使うというところで「ヒトに合わせる」を実現しました。「F-01A」では、ケータイを使える場所を広げるという意味で「ヒトに合わせる」を実現できるのではないかと考えたんです。

 防水という技術を使って、お風呂や雨が降ってきてる場面など、ケータイがちょっと使えないという状態をできるだけなくしたい。ユーザーさんの使い勝手をいかにして実現するか、その実現方法自体は異なるんですけど、「ヒトに合わせる」という根底にある思想の観点からすると、従来のヨコモーションも「F-01A」も同じだと思っています。

 ただ、割賦販売が導入されたことで、お客さんの買い換え頻度も長期化する傾向にあるため、やはり2年間使って安心できるものが選ばれるだろうと考えました。だからできるだけその時点でハイスペックなものを提供したかったわけです。ということで、ハイスペックかつ防水という組み合わせになりました。弊社としては、ハード的にもソフト的にもチャレンジだったんですが、それをなんとか実現していきたいということで「F-01A」を開発しました。


タッチパネルへのこだわり

中越 啓夫氏
――スタイルが「ヨコモーション」から大きく変わっていますが、防水自体はF703i(2007年2月2日発売)以降でも対応されてますので、今回技術的なトピックスとして大きく追加されたのは「タッチパネル」ではないでしょうか。当初からタッチで行こうということだったんでしょうか。

高橋氏
 そうですね。単純な防水機能だけでは差別化が難しいです。そこで、これまでどこもやっていないことをしてお客さんに新しいベネフィットを提案したことや、ヨコモーションを一旦お休みする形で防水にしたというところもありますので、大きなチャレンジとしてタッチパネルを搭載しました。以前はタッチパネルに対する敷居の高さがあったと思うんです。「タッチパネル=難しい」とか、ハイエンドの人たちだけのものというイメージですね。それがニンテンドーDSが登場したおかげでなくなってきたから、という理由もあります。
 
――そういえば御社では過去にF900iT(2004年6月19日発売)というスタイラスを使ったタッチパネルの端末を出してますよね。やはり当時の経験やノウハウは活かされていますか。

中越氏
 ありますね。F900iTも折りたたみの回転二軸でしたが、どこに触れればいいのかちょっと分からないとか、なかなか全部触れるUIにまでたどり着けなかったという反省があります。そういったところが今回は操作性のわかりやすさ、ビューワーメニューからいろいろたどれる楽しさという形で反映されたと思います。また、F900iTは回転二軸で折りたたんだ状態から通話ができなかったんですね。これは本当に大きな反省点でして(苦笑)、今回は折りたたんだ状態でもタッチで受話応答ができるようになっています。

――タッチでどこまで操作できるようにするかというのは、各メーカーさんの悩みどころだと思います。御社の場合、メールなどの文字入力まではカバーしてませんね。

高橋氏
 それは相当もめましたね。もちろん全部できたほうがいいとは思うんですが、実際お客さんにとって使えるか、本当に使うかという疑問がありました。基本的にテンキーのほうがお客さんは使いやすいんじゃないかと考えました。
 
 ただフルブラウザに関しては、検索キーワード入れるときにいちいち画面を縦に戻して入力するのは面倒臭い。検索キーワード自体はそんな長いものはないし、文章というよりキーワードなんで、少なくともそこは対応しましょう、ということで最終的には落ち着きました。もちろんすべてのアプリケーションがタッチ対応するとなると話は別でしょうけど、少なくとも回転二軸という構造上、通常のキーを露出して文字入力するとかそういう構造にするのにはアクションの回数が多いと思うので、フルブラウザに関しては文字入力できるようになっています。


――使い勝手の点でいうと、お風呂で使う場合、画面や手が濡れてるとなかなか反応してくれないので操作しにくいんですが。

高橋氏
 そうですね。静電式なのでお風呂に入っているときに濡れた指でタッチすると、ぶれてしまうこともありますよね。静電式にするのか、感圧式にするのかっというところも非常に悩みどころだったんです。

 感圧式の場合、表示画像の綺麗さ・美しさという点で、静電式に比べるとどうしても若干落ちるんですね。ディスプレイというのは、タッチ利用時に限らずキー操作時でも、当然、見るものですから、サービスや画像等をできるだけ綺麗なディスプレイで見ること、という点を今回は優先させたということです。

 今後はアプリケーションとのバランスとハードウェアの進化の中で、タッチパネルをどうするかという方向が決まっていくと思います。お客さんには「ケータイのタッチパネルって指で操作するんだよね」という認識が現時点ではベースとして少しあるのかな、と思いますので、そこも大切にしていきたいと思ってます。


セキュリティにもこだわり

指紋センサー

筒井 万紀子氏
――指といえば、「指紋センサー」も従来通り搭載されていますが、そこは御社としてこだわりの部分ですか?

高橋氏
 それはもうマストでしたね(笑)。指紋センサーが無いって、商品企画者としても、物作りの現場の人間としても、それはないだろうということで絶対譲れない部分でした。

 F505i(2003年7月11日発売)で初めて指紋センサーを搭載した頃は、なかなかご理解いただけないところがたくさんあったんですよ。ただここ数年は個人レベルでもケータイの情報に対する意識が少しずつ変わって来てると感じています。法人だけではなくて、個人レベルでもかなり意識の高まりというのが実感できるくらいまで来ていますから、弊社の特徴の1つとして、継続して指紋センサーをやっていくというのは大切なことだと思っています。

――実際に使ってみて「オートキーロック」がかなり便利だと感じました。これはチームの中でのアイデアですか。それともニーズが多かったんでしょうか。

高橋氏
 アイデアですね。オートキーロックってそもそも最初に実装したのって、旧70Xiのほうなんですよ。そこで「F-01A」では加速度センサーを使って、より高度な設定ができるようにしました。やはりセキュリティの富士通としては、いろんな利用シーンを想定して、提案させていただいているという形ですね。

――加速度センサーの類を“動かない例”で使うのってあんまりないのでおもしろいアイデアだと思います。指紋センサーとの組み合わせも便利ですね。

筒井氏
 ありがとうございます。従来弊社では「開閉ロック」をやっていましたが、自分が持っているのに、その都度開閉ロックかけたりはずしたりってわずらわしいんじゃないかっていうのが、オートキーロック+置忘れセンサーのスタートですね。

――ワンセグのアンテナの感度について不満の声も聞かれるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。特にお風呂場では厳しい気がしますが。

高橋氏
 規格という観点からいうと問題ないはずなんですが、ユーザーさんが求めるレベルと、実際の規格というところの乖離はあるのかな、と感じています。

――場所的に、お風呂場は特に電波が厳しいですからね。でも防水機能がついていると、どうしてもニーズは高くなってくると思います。

高橋氏
 そうですね。そこは今後の機種開発に生かしたいところです。商品性、デザイン性などを維持しながらも、ご要望は真摯に受け止めてしっかり改善していきたいと思います。

――かなり余談になりますが、富士通で“タッチ”とくれば、「タッチおじさん」を思い出します。キャラクターとして復活しないかと期待しています(笑)。

高橋氏
 それは……かなり渋いところを突いてきますね(笑)。


「F-03A」は富士通ならではの進化感にこだわる

F-03A

――次に「F-03A」についてお伺いします。同じPRIMEシリーズですが「F-01A」とは全く毛色が違います。どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか。

中越氏
 昨年の3月に三菱電機さんが撤退されると発表されたのが1つのきっかけですね。弊社と三菱電機さんはずっとケータイのソフト面、プラットフォーム面を中心に協業させていただいてた関係なんですが、ソフト面での共通化により、使い勝手が変わらないという特徴があるので、三菱電機さんが撤退されるのであれば、旧Dユーザーさんが安心して乗り換えられる端末を出す必要があるだろう考えました。

――そういう理由でのスライド型なのですね。

中越氏
 ただし、従来のスライド機種からの進化、ということも当然、考慮すべきポイントと考えました。従来のスライド機種からの進化、とはなにか。弊社のひとつの答えが、このラウンドフォルムのF-03Aということになります。

――三菱電機さんのスライド端末といえば「スピードセレクター」ですが、ハード的には搭載されていませんね。従来ハードウェアだったクルクルの部分をソフトウェアとしてやるのはなかなか難しいのかなと思いますが。

中越氏
 これもチャレンジでした。今回、ラウンドフォルムというデザイン上の進化感を出したかったということ、タッチ操作が市民権を得つつあるという流れ、できるだけの大画面の採用、と、複数の要素をバランスした結果、スピードセレクターをソフトウェアでエミュレートする方式にしました。

――「F-03A」は、パネルが平面ではなくラウンドになっているところも他にはない部分ですね。

高橋氏
 そうなんです。ラウンドでタッチパネルというのは「F-03A」最大の特徴ですので、ぜひ注目していただきたい部分です。ラウンドさせて、なおかつタッチパネルというのは、世界初です。

――それはラウンドさせてタッチ対応させるのが難しいということですか?

高橋氏
 デザイナーからモックを見せてもらったときには、所有感が高いデザインで、本当にできるの?と、その実現性に相当な疑念を抱いたほどで(笑)。実現できたのも、技術部門やデザイナーの死に物狂いの努力の結果です。気合いでやりぬいたという感じです。


――スライドさせてみると、キーが一般的なスライド端末よりも大きい印象です。

高橋氏
 お気づきの通り、他社さんよりスライド量が多いんです。このスライド量に関しても、社内で侃々諤々の議論を重ねた部分です。やはり基本はテンキー操作だろう? という部分をちゃんと押さえておきたかったので、できるだけキーピッチなどを担保するべく、スライド量をギリギリまで増やしてるんです。

 その分、サイドにサーチキーとかマルチキー、テレビ・ウィジェットキーなどを移動させてるんです。ここの部分も「本当はテンキー面にあるべきじゃないのか!」などと相当もめました(笑)。

――「F-01A」は防水ですが、「F-03A」は防水対応ではありません。並べて見るとデザイン的には「F-03A」のほうが防水対応にみえなくもないですが(笑)。

高橋氏
 そうなんですよね。ただ防水端末って基本的に丸みを帯びた形状は難しいんです。だから防水端末って、どれも基本的にスクエアな形状になってると思います。うちの端末もそうですが、防水性を担保するというのと、こういうラウンド形状や丸みを帯びたデザインというのはなかなか両立しづらいんですよ。


――今後のチャレンジに期待します。では最後に一言ずつお願いします。

中越氏
 「F-01A」は、3.2インチの液晶を実現しながら幅50mmに納めるなど、単にハイスペック防水としてだけでなく、薄くて小型化できたという点も魅力だと思います。この「F-01A」が直線的なデザインで男性的なイメージであるに対して、「F-03A」は非常に柔らかいラウンド形状になっていますので、女性にも受け入れていただきやすいのではないかと思います。優しいフォルムに「F-01A」と同等の5.2メガカメラなどハイスペックな仕様を実現していますので、女性にも使っていただけるハイスペック端末と捉えていただければと考えております。

高橋氏
 ユーザビリティの観点でいえば、たとえば、サブディスプレイの見やすさ向上のため、1.4インチのサブディスプレイにしているとか、持つ向きによってサブディスプレイの表示向きが切り替わるだとか、ハード、ソフトともに、細かい点もこだわっていますので、特に、はじめてFシリーズをご利用いただくというユーザーさんには、いろいろと試して、気付いていただけたら、と思います。

筒井氏
 実は今回、「F-01A」はイルミネーションにも加速度センサーを連動させています。防水とあわせて、開けるとイルミネーションが下に落ちていく、色がだんだん変わっていくなどの遊び心も盛り込んでいます。そういったところもユーザーさんに楽しんでいただけるとうれしいです。

――本日はありがとうございました。



URL
  F-01A 製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/prime/f01a/
  F-01A 製品情報(富士通)
  http://www.fmworld.net/product/phone/f-01a/
  F-03A 製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/prime/f03a/
  F-03A 製品情報(富士通)
  http://www.fmworld.net/product/phone/f-03a/

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(すずまり)
2009/02/06 11:27

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