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「P001」開発者インタビュー
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パナソニック初のKCP+ケータイ、開発背景や新液晶の特徴を聞く
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パナソニック製「P001」は、4種類の部材を組み合わせた背面パネルを採用した薄型の折りたたみ端末だ。薄さを追求するなかで、新たにKCP+を採用したことで、Bluetoothなどの機能も取り入れられている。
開発を担当したプロジェクトマネージャーの堀江 真道氏、電気設計の増田 達也氏、デバイス開発担当の桑野 伊織氏、コンテンツ担当の入江由紀氏に、コンセプトや新デバイスの特徴などを聞いた。
■ コンセプト
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W51P以来のパナソニック製au端末
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堀江氏
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――背面パネルが印象的な仕上がりですが、P001のコンセプトから教えてください。
堀江氏
今回、パナソニックとして初めてKCP+を採用した携帯電話となるのですが、当社の特徴の1つである「薄型」を重視しながら、機能面を更に進化させたモデルが「P001」ということになります。薄型というところから、ターゲット層は、20代~30代のビジネス層を意識しています。
デザイン面では、先代モデルの「W61P」「W62P」からの進化をいかに見せるか、あるいは当社製の他キャリア向け端末との違いをどう見せるか、といった部分でかなり時間をかけて悩みました。
――W51P以降、“パナソニックのau端末”は背面パネルでのこだわりが継続されているようです。
堀江氏
「P001」は、4つの異なる部材を使った「クワッドフェイスデザイン」を採用していますが、進化を見せる手法として、パネルを4つに区切って、1つ1つのパネルの高さを変えて、階段状にぐるりと重ねています。こういったデザインを採用した狙いは、なんと言っても「高級感の実現」です。蒸着加工やダイヤカットなどを使って、平面的ではなく、立体感を演出して、質感の向上を図っています。
■ バランス重視の薄さ
――薄さが13.3mm(カメラ周辺の最厚部で17.1mm)に仕上げられていることも特徴の1つです。
増田氏
当社製の携帯電話の中には、薄さ9.8mmのものもありますが、技術的にはP001もそういった機種と同じ手法を用いています。
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増田氏
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――薄型ケータイと言っても、機能をある程度制限して薄さを追求するモデルか、ある程度の薄さで高機能化を図るモデルなど、さまざまな路線がありますね。
増田氏
確かにやり方はいろいろありますが、機能と薄さはトレードオフの関係にあります。P001はさほど機能を削減せず、バランスを取った携帯電話です。今回、当社のau端末として初めてBluetoothなどの新機能も搭載していますが、Bluetoothのアンテナなどを搭載しながら、薄さを追求することになります。そういったバランスを取る、ということですね。
――なるほど。
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過去の機種(左)と比べ、一見するとP001(右)の内部構造は似ているように見えるが、新規設計になるという
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増田氏
そして今回は、これまでのパナソニック製au端末とは、チップ構成が全く異なります。たとえば赤外線通信ポートなどは同じですが、ベースバンドチップなどは全て新規に設計したものです
――パナソニックの端末開発として、キャリアの垣根を超えて共通化している部分はどのあたりになるのでしょうか?
増田氏
小さい部品を含め、赤外線やワンセグ、サブディスプレイなどデバイス系は共通化できる部分ですね。液晶やカメラも共通化できますが、今回は新しい液晶を採用し、カメラも異なるデバイスです。
また、さきほど「新たに設計したもの」と述べましたが、新規設計ながらいきなり薄型モデルというのは、当社にとってチャレンジではありました。設計が変わると、干渉などの癖も変わっていきます。チップ構成が変わったことで、国際ローミングサービスやauの各種サービスに対応しており、制御なども変更され、検討しなければならない項目は、山のようにありましたね。
――新規設計ながらも薄型、ということが実現できたのは、やはりパナソニックとしての開発共通化や薄型化のノウハウが培われていたから、でしょうか。
増田氏
そうです。これまでの実績も参考にしながら、検討を重ねました。もちろん以前から、評価用としてKCP+の試作機は手掛けていました。KCP+によって、さまざまな機能・サービスが利用できますが、なんとかニーズに応えたいと、当社でもかなり頑張ってきたつもりです。
■ 「高色再現性液晶」の仕組み
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桑野氏
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――液晶ディスプレイは新たなデバイスということですが、発表時には「高色再現性液晶」と紹介されていました。これはどういった液晶なのでしょうか?
桑野氏
従来の液晶ディスプレイと比べると赤と緑の発色がより鮮やかになっています。たとえばイチゴやハイビスカスなどの赤が非常に鮮やかに見えます。
――従来型との違いは?
桑野氏
従来の液晶ディスプレイでは、赤と緑が若干弱く、今回の高色再現性液晶ディスプレイでは、赤と緑の“成分”を向上させています。具体的には、バックライトとカラーフィルターと呼ばれる2点について工夫しています。
バックライトとカラーフィルターは、液晶ディスプレイを構成要素の1つです。液晶パネルの裏にはバックライトがあり、バックライトが光らなければ、液晶パネルに表示されている内容は見えません。そして液晶パネルの画素を拡大していくと、RGB(赤・緑・青)というサブピクセルがあります。RGBの色は、カラーフィルターにより決められています。
――バックライトとカラーフィルターですか。ではバックライトの工夫から教えていただけますか。
桑野氏
バックライトは白色LEDを搭載していますが、これまでの白色LEDは「青色LED」+「黄色の蛍光体」という組み合わせでした。蛍光体に青色の光の波長が当たると、黄色に発光します。
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W62P(左)と比べ、P001(右)は赤と緑の発色が鮮やかになっている
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今回採用したバックライトでは、白色LEDの「黄色の蛍光体」ではなく、赤色と緑色の蛍光体に置き換えています。これにより、バックライトの赤と緑の成分が増えているのです。人の目からすると、「青色LED+黄色の蛍光体」と「青色LED+赤・緑の蛍光体」は同じ白色に見えるのですが、白色を構成する成分は異なっています。これは新たな試みで、過去のデータベースもなく、設計には苦労しました。目標の性能を達成するため、蛍光体の発光スペクトルや発光強度などを検証し、カラーフィルターの設計に反映させては、またバックライト設計に反映させるということの繰り返しでした。バックライトだけでも100種類以上、試作しました。
――もう1つ、カラーフィルターの工夫とは?
桑野氏
単純に言えば、カラーフィルターを濃くしています。カラーフィルターの透過特性は、液晶メーカーの設計段階から要望を出し、シミュレーションを重ねて、性能を突き詰めました。またカラーフィルターを濃くすると、明るさやコントラストが落ちるのですが、そこも配慮しながら、バックライトとマッチングをとった設計としています。
――有機ELとの違いも教えてください。
桑野氏
有機ELも色の再現性が広いデバイスです。これまで、液晶の色再現範囲は、有機ELに及ばないとされていましたが、今回の高色再現性液晶は有機ELと同等以上になっています。
――なるほど。
増田氏
P001の開発スケジュールにおいて、高色再現性液晶の完成が遅れていたので、ハラハラしておりました。代替品の液晶だけではなく、セット全体を評価できませんし、高色再現性液晶の初号機でしたので、搭載にあたり課題が山のようにありました。試作を何度も重ね、多くの課題をクリアして量産にたどり着きました。
入江氏
コンテンツに関しても、従来機種向けの調整では、高色再現性液晶で表示したとき、予想よりも色が映えるため、色を少し抑えるなどの調整も行いました。
■ 新ディスプレイにあわせたコンテンツ
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入江氏
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――確かに、現在の携帯電話はディスプレイがあるからこそ、さまざまなコンテンツを楽しめる環境にあります。P001のプリセットコンテンツは、高色再現性液晶をアピールするものとして用意されたのでしょうか?
入江氏
コンテンツ面でも鮮やかさや上質さをテーマにしていました。やはりきれいな液晶ディスプレイですから、その性能を活かすコンテンツを用意しようと。過去にはイラストベースのコンテンツが多かったのですが、今回は写真をベースにした待受画像やメニュー素材を用意しています。
――歌川広重の「名所江戸百景」や、クロード・モネの「睡蓮」といった名画が待受画像としてプリセットされていますね。
入江氏
過去の作品ですが、所蔵美術館が権利を保有していますので、海外の美術館などにコンタクトを取って、提供することになりました。プリセットの名画は3点のみですが、当社のEZwebサイト「Pの缶詰」では名画特集コーナーを設けています。
――パナソニック初のKCP+、という点はコンテンツ面で何らかの影響があったのでしょうか?
入江氏
1つはVIVID UI(アクロディア社提供のユーザーインターフェイスミドルウェア)が採用されたことですね。さきほどメニュー素材で写真を使った、と申し上げましたが、そういったメニューでも操作時にストレスを感じないよう、ソフトウェア部門とやり取りしながら調整を重ねました。
――本日はありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://panasonic.jp/mobile/au/p001/
■ 関連記事
・ スタイリッシュな背面パネルのパナソニック製「P001」
(関口 聖)
2009/03/05 11:12
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