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「モバイルウィジェット」企画者インタビュー
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オープンと待受常駐を武器にウィジェット市場を切り開く
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待受画面に情報を集約するウィジェット(ガジェット)は、ケータイ業界のトレンドの1つ。KDDIが始めた「au one ガジェット」を皮切りに、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、ウィルコムも、それぞれウィジェットを投入した。中でも、ソフトバンクの「モバイルウィジェット」は、コンテンツが豊富。開始当初からミクシィやDeNAといった、大手インターネット企業のウィジェットを取り揃えていた。Yahoo!JAPANと共同で運営する「ウィジェットストア」に登録されるウィジェットも、順調に増えている。当初は931SHのみだった対応端末も、公約通り増加中だ。そこで、企画の経緯や今後の展開などを、ソフトバンクモバイルの難波伸司氏と柴田暁穂氏に聞いた。
――まず、モバイルウィジェットが企画された経緯などを振り返っていただけないでしょうか。
難波氏
ケータイのコンテンツは、Javaで書かれることが多いですよね。それは多分今後も続いていくと思いますが、やはりJavaでコンテンツを作るにはある程度知識が必要で、開発できる人の数も限られてしまいます。弊社は(社長の)孫が申し上げているように、モバイルインターネットを具現化して、ユーザーに提供していくことに注力していますが、それには、やはり簡単にコンテンツを作れて、誰もが配信できるオープンな環境を整える必要があります。一番適したプラットフォームは何があるのかを考えると、やはりJavaではないなと。そうやって探していく中で、ウィジェットに行き当たりました。
――「簡単に作れる」という点を、もう少し詳しく教えてください。
柴田氏
コンテンツのフォーマット自体が、ウェブのページを作るようなHTMLやCSSでできていて、標準的なスキルがあればどなたでも作成できるといった敷居の低さがあります。我々も、端末側のシステムを触れるような拡張APIを用意しましたが、これも敷居を下げるようなものにしたつもりです。
――ACCESSのプラットフォームを使っていますが、ベースのものとの違いはどこにあるのでしょうか?
柴田氏
我々が拡張したAPIはもちろん違う部分ですが、逆にフォーマットなどは、極力ACCESSさんのプレーンなものと差異が出ないようにしています。お互いのコンテンツが増えるのはいいことなので、我々のサービスでリードする部分はありますが、大きくフォーマットがずれないようにしました。
――両方に共通のウィジェットは出ているのでしょうか。
柴田氏
ACCESSさんもポータルを持っていますが、そちらでも我々の端末で動くウィジェットが提供されています。拡張APIをあえて使わなければ、両方(海外端末とソフトバンク端末)で動くと思います。
難波氏
そういった環境があるというのも、今回、ACCESSさんをパートナーに選んだ理由の1つです。我々も、なるべく閉鎖的にならないようにしたいという思いがありました。それがソフトバンク端末だけでしか動かないと、「何がオープンだ」となってしまいますからね。そうは言っても制限はありますが、極力オープンにというのが我々の願いです。
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ソフトバンクモバイル プロダクト・サービス本部 開発統括部 通信プラットフォーム開発部 難波伸司氏
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――日本の事業者では、ウィルコムさんのウィジェットも、同じプラットフォームを使っています。ここに互換性はあるのでしょうか。
柴田氏
そうですね。かなり共通の部分は多いです。元々ウェブ標準の技術なので、ほかにもAppleさんのウィジェットや、Operaさんのウィジェットとも親和性が高く、移行は比較的簡単です。
――逆に、ドコモさんやKDDIさんのウィジェット(ガジェット)とは、だいぶ違いますね。他社との違いや、優位点を教えてください。
難波氏
数の制限はあるにせよ、待受画面に自由に貼り付けられるのは、弊社のウィジェットだけです。PCの世界に親しんだ方にも、「これがウィジェットだよね」と言っていただけると思います。繰り返しになりますが、他社と比較すると、オープンという部分にはかなり注力してきました。公式のコンテンツプロバイダーではない方にも、仕様を開示しています。
――ただ、ドコモさんの「iウィジェット」も仕様は開示されています。
難波氏
「iウィジェット」はJavaなので、そこが違いになります。
柴田氏
作り的にはそうですが、ユーザー視点だと、常駐していることも、大きな違いだと思います。
――画面を切り替えられるのも、他社のウィジェットとは異なります。このようにした経緯を教えてください。
難波氏
1画面で完結するものにしたくはありませんでした。せっかくこれだけの機能があるので、何個も使っていただきたいのですが、(画面の面積という)物理的な制限がありますし、実用性の問題も出てきます。切り替えられる画面数は3~5で悩みましたが、複数画面は絶対にほしかったですね。
柴田氏
社内でも調査し、931SHでは仮想画面を4つ用意しましたが、それでも「足りない」「多くて分からない」という両方の声が上がり。今後、モデルで分けたり、追加できるようにしたりと、何らかの改善をしていこうと思います。
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ソフトバンクモバイル プロダクト・サービス本部 開発統括部 移動機技術部 柴田暁穂氏
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――一方で待受画面に常駐してしまうのは、初心者にとって少々怖い面もあります。アプリの通信を制限するような仕組みや、iPhone 3Gのようにパケット定額制を必須にするような施策は検討されているのでしょうか。
難波氏
料金に関しては、サービス企画の段階から、色々と議論してきました。おっしゃるように、パケット定額プランを必須にした方がいいのではということも、散々考えてきました。ただ、iPhone 3Gと決定的に違うのは、通常の日本で売られている端末にもどんどん広げていきたいという点です。そうなると、ケータイのスキルに長けていない方に行き渡る可能性もあります。この時点でその端末全てをパケット定額制必須にしてしまうのは、(モバイルウィジェットを使わない人にとって、料金の)敷居が少し高いのかなと思います。ですから、我々も独自のガイドラインを設けて、通信が必要な場合は一回必ず同意を取ってくださいとお願いしています。あとは、色々なところで「インターネットサービスは通信が必要」といった注意喚起も行っていこうと思います。
――一般の方が作るウィジェットに制限はありますか。
柴田氏
一定のAPIは、我々の証明書で管理されているので、許可されていなければ使えません。
難波氏
オープンにするのと、何もかも開放するのはイコールではありません。最低限のところとして、署名で一定の機能は使えないようにしています。この署名は、公式コンテンツプロバイダーの契約が必要です。通信の部分も、若干の審査があります。
――例えば、どのようなAPIが制限されるのでしょうか。
柴田氏
位置情報などです。これは、個人の居場所が特定されてしまうので、一定の制限をかけています。
――逆に、そういうAPIを使わなければ、自由に作れるということですね。
柴田氏
はい。それは自由です。電池や電波の情報は取られても、それほど大きな問題にはならないので、誰もが使えます。
――課金を利用できないのも、違いと考えてよろしいですか。
柴田氏
あくまでもストアは、ウィジェットを集約した場です。そこに課金の機能は持たせていません。
難波氏
システム上の都合もあり、今のところ、課金は公式コンテンツプロバイダーに限定していますが、今後は課金の部分もオープン化を検討していきたいと考えています。
――現状のウィジェット数を教えてください。また、その数は、想定通りだったのでしょうか?
難波氏
3月27日の時点で、204個です。スタート前は、正直、何個あればいっぱいに見えるのかが、よく分かりませんでした。先行していた他社さんが30~50個ぐらいでしたからそれは超えないといけませんが、931SHだけでスタートしているので、いきなり1000~2000個のウィジェットが集まるとも思えませんでした。ただ、まだまだこれからです。コンテストもやっているので、もっと増えてほしいですし、必ずしも現状で満足しているわけではありません。
――ウィジェットストアの傾向は、オープン当初から変わってきましたか?
難波氏
ここ1~2週間の傾向ですが、ようやく個人の方の投稿が増えてきました。言葉は悪いかもしれませんが、そういう方々が最初に作るのが、「ネタ系」です。パッと見て動作が面白い、絵が面白いといったものが増えていますね。
柴田氏
例えば、「バリ100」というウィジェットでは、電波のバーが100本出るだけです(笑)。また、つい最近、931SHの歩数計を一段進めたものも登場しました。ネットワークで歩数計の結果をシェアできるウィジェットです。まだ一般の方が作ったウィジェットでは、あまり通信が使われていませんが、そういうところはどんどん進めていきたいと思います。
「タクシーメーター」というウィジェットもあり、これは歩いた距離をタクシー料金に換算して表示するという仕掛けになっています。メーカーさんと一緒に作るアプリだと、どうしてもストレートなものが多いのですが、見栄えが変わるだけでターゲットも変わってくるのだと思います。元々、ウィジェットがテキストベースでなので、ソースの持ち運びも簡単です。ソースを公開すれば簡単なライブラリとしても使えるので、これから相乗効果が出ていってくれるといいなと期待しています。
難波氏
ストア以外でも配信できるシステムになっているので、極端な例だとmicroSDカードで渡すこともできます。実際、ストアを介さず、ブログだったり個人サイトだったりで流通しているウィジェットも、ちらほらと見かけます。
――掲示板でも見かけますね。
難波氏
我々としてはありがたい現象だと思っています。
――ちなみに、現状でもニュース配信のウィジェットがあり、「S!速報ニュース」と競合している気がします。この点に関するお考えをお聞かせください。
難波氏
確かにニュース系がかぶることは想定していました。ただ、結局オープンなコンテンツは、ニュースソースもかぶらざるを得ません。ベーシックな情報はS!速報ニュースで十分ですしソフトバンクが提供している安心感もあります。でも、それだけでは飽き足らないユーザも当然いらっしゃると思いますので、そういったユーザには、様々なウィジェットから情報をゲットしてほしいと考えています。
柴田氏
今までの機種で(「S!速報ニュース」を)使っていたお客様もいらっしゃいますから、選べた方がいいのは確かです。逆に同じようなサービスがあって分かりにくいという声があれば、今後、見せ方を工夫していく必要があると思います。
――最後に、「モバイルウィジェットコンテスト」の状況を教えてください。
難波氏
ストアにアップされた段階で応募ということになりますので、204個(3月27日時点)という数が盛り上がりに直結します。ですが、我々としてはもっと裾野を広げたいと考えています。そのためには、例えば、色々な企業の方が、マーケティングツールとして使えることも重要です。
こうした企業向けのセミナーを地道にやっていて、名古屋、大阪、東京で開催してきました。企業のウェブを作っている方を対象に、公式のコンテンツプロバイダーかどうかは関係なく、オープンでやってみました。そこで行ったアンケートから、そもそもウィジェットを知らない方や、ビジネスに活用する方法があることを知らない方がいる、ということが分かりました。中には「4月30日までコンテストをやっている」と話すと、「早速作り始めてみます」と反応する方もいます(笑)。個人の楽しみはもっと増やしていきたいですが、それだけに凝り固まってしまうと広がりがないので、コンシューマーだけでなく、ビジネスとして使えるプラットフォームにまで育てていきたいなと思います。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
サービス内容
http://mb.softbank.jp/mb/service/3G/widget/
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(石野純也)
2009/04/01 12:56
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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