英数字が一般的なケータイに日本語名の製品が登場した。auの春モデルとして発表された「ベルトのついたケータイ NS01」と「ケースのようなケータイ NS02」である。どちらも「NEW STANDARD」という新しいコンセプトに属する端末だ。
「NEW STANDARD」というコンセプトや、それぞれの端末が誕生した背景について、KDDIのコンシューマ商品企画本部 プロダクト企画部 プロダクトマネジメントグループ 課長 山形豊氏、同グループ課長補佐の阿部秀之氏、プロダクト企画部 コンセプト企画グループ 主任 青山佳代氏に伺った。
■ 「NEW STANDARD」というコンセプトについて
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青山佳代氏
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――新しいコンセプトの意図からお伺いしたいと思います。なぜ「NEW STANDARD」なのでしょうか。
青山氏
きっかけは、新しいデザインにこだわりつつ、長く使い続けるというコンセプトで、特定の年代層ではなく、もっと幅広い方に向けて、かんたんケータイでもなく、ベーシックモデルでもない新たなシリーズを作りたいと考えたからです。
その背景として、お客様から2つのニーズが上がってきていたことがあります。割賦販売導入後に、1台のケータイを長く持たれるお客様が非常に増えてきたということと、シンプルなケータイを望む声ですね。どうしても今は機能をプラスしていく傾向が強いんですが、意外に電話とメールがあれば十分というお客様が非常に多くいらっしゃったんです。この2つの点から、機能は絞っているんですが、非常に使いやすくて、長く使っていただけるようなケータイというのを作りたいと考えました。
今までの“使いやすい”とか“機能を絞り込んだ”というモデルについては、かんたんケータイであったり、特定のカテゴリーを想定し、ターゲットを40~50代の方に絞っていたというのが実情です。しかし実際は、20代の方はもちろん、幅広い層の方がそのようなケータイを求めていたというのが分かりましたので、デザインが20~30代の方にもカッコイイと思っていただきつつ、かつ40~50代、60代の方にも「これもいいね」と言ってもらえるようなデザインで、非常に使いやすくて、長く愛され続けられるものを作りたいと思ったのがこのコンセプトの始まりであり、このコンセプトの根幹になります。
――使い勝手重視という点では、シニア向けとか、アクティブシニア向けというプロダクトがこれまでにもありました。そういうものとは全く違う発想になるんでしょうか。
山形氏
年代問わず「ケータイは毎日の生活の中に欠かせないんだけれども、通話とメールがメインで、私はこんなに機能は使わないんです」というお客様の声もありますので、そういう声を反映させる意味で、ある程度機能を抑えて、持ちやすく長く使っていただけるものを、という点にフォーカスしたと思っていただければいいですね。
――御社の場合、使いやすさを追求する面では「au Friendly Design」という取り組みがあり、デザインに力を入れる取り組みとしては「au design project」があります。これら2つが一緒になったようなイメージがあるのですが、今回の新シリーズにどのように影響を及ぼしているのでしょうか。
青山氏
「au Friendly Design」も「au design project」も、auとしては非常に力を入れてきた分野です。「NEW STANDARD」がその集大成であるかといえばまた違うんですが、エッセンスとしては両方入っていると考えていただければいいと思います。ただ、従来の取り組みが融合したコンセプトというわけではありません。
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山形 豊氏
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――ということは、3本目の新たなラインが走り始めたという感じですか?
青山氏
そうですね。ちょっと試験的ではあるんですが、お客様のニーズに応えつつ、名前のブランド感などではなく、モノで勝負したいという思いがありますね。デザインのテイストやGUIは非常にシンプルでニュートラルな感じを大事にしながら、「NEW STANDARD」専用サイトも用意して素材を提供するなどして、端末の世界観を統一しています。
山形氏
今、お客様のニーズがすごく細分化されてきてますよね。本来はそれにあわせて我々もモデルの数ですとか、カラーを増やせればいいんですけど、リスクもあってなかなか難しい。そういった意味では結局ある一定の年代に訴えかけていく……、例えば先ほどの話じゃないですが、かんたんケータイみたいな商品だとか、去年であればURBANOみたいな商品だとかもありますが、さらに幅広いお客様にメッセージを投げかけていかないといけない、と考えました。これはコンセプトとはまた違う話になるかもしれませんけれども、両方やっていかないといけないんですよね。
■ 端末のこだわりについて
――端末のお話になりますが、デザインする上で一番こだわった点を教えてください。
青山氏
長く使い続けていただけるように、シンプルで飽きがこなく、また使いやすいデザインになるよう、手に持ちやすいフォルム、押しやすいキーにこだわりました。
阿部氏
例えば、既存機種でW61K(2008年2月7日発売)というコンパクトな「au Friendly Design」対応の端末がありました。あの端末のコンセプトが、やはり最新機能はいらないんだけれども、メールと通話と使いやすいのがいいというもので、実際にお客様に比較的好評だったという情報もあります。あのモデルが少しベンチマークになっていますね。
―― 一般的には、機能を削っていくとその分コンパクトに、小さく薄くというのを追求されたりするんですが、このモデルについてはそんなに小さいわけではないじゃないですよね。それはサイズ感に関する基準を御社として用意されてるのでしょうか。
青山氏
弊社として基準という形で明確な数値までは規定していませんが、薄型になっていけばいくほど使いづらいという声があったのは事実ですね。ですから、それに対して数値で規定していくのではなくて、手になじみやすい、フォルムとして持ちやすい厚みというのは非常に考えました。
また、薄さを追求すると、どうしてもシートキーを使ってペラペラの凹凸のないキーになってしまいます。もうちょっと厚みを増してでも、キーの凹凸の付けてあげたいというところでも配慮しています。
――今回「NS01」と「NS02」の2種類をラインナップしているわけですが、雰囲気がちがいます。どちらも全く同じターゲットですか?
阿部氏
角を落とした柔らかいフォルムから見ていただいてもわかるように、「NS01」は女性っぽい雰囲気があるので、完全に言い切るわけではないですが、強いて言えば「NS01」が女性向け、「NS02」が男性向けというイメージはあります。
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阿部秀之氏
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――ソフトウェアで差別化している部分はあるんでしょうか。
阿部氏
同じNSシリーズとして2つは兄弟的なモデルになりますが、実際に作られているのは異なるメーカーさんなので、それぞれのメーカーさんの可能な範囲で必要十分な機能、考え、特徴などは反映されていると思います。お客様側から見たときに、画面のデザインや雰囲気が全然違うとコンセプトが伝わりにくくなるので、外観と中のGUIについては同じ世界観で、でも少し男性向けとか女性向けという雰囲気が少し出るような感じで分けたりしています。
――見た目に「ベルトのついたケータイ NS01」のインパクトが大きいのですが、どうしてこのような形になったんでしょうか。
阿部氏
ちょっとした思いつきというと言い方が悪いですが、持ちやすさとは何かという話の中で思いついたアイデアを具現化していったら、こういう形になりました。作ってみたらこれがまた持ちやすいんですよ。
青山氏
「ベルトのついたケータイ NS01」は、特にそのネーミングからも、実際にベルトがついているという見た面のギミック感からも、「長く使う」ということとどうリンクするのか疑問かもしれませんが、お客様にベルトをカスタマイズしていただくことで、長く使っても飽きないという効果も期待できますし、ベルトに手を通すことで力を入れなくても持てるという使いやすさもあって、ベルトがついたことで、長く、使いやすいという部分にフォーカスが当たっているんですね。
――なるほど。しかし、このベルトは外れるんですよね。別に必ずベルトをつけて使ってください、というわけではないんですか?
青山氏
そうですね。ベルトは同梱しますが、最初から本体についているわけではないんです。ケータイ本体はベルトを取りはずしても違和感がないようにデザインしてあるので、ベルトでチャレンジしつつも、外して普通のスタイルでも持っていただけるようにしてあります。ストラップホールもあるので、ベルトを使わず普通にストラップをつけてもいいですね。
――実際に手を通して見ると意外にしっくりくるので驚きました。ベルトがあると握力が弱い人でもケータイをしっかりホールドできますね。メールを片手で作成するときもキーに指が伸ばしやすいです。
阿部氏
実際に試していただくと、みなさんやっぱりそうおっしゃいます。初めて見たときはギョッとするようなんですが(笑)、使ってみると意外と持っていたいという反応が多いんです。
青山氏
女性はランチに行ったり、ちょっと席を外して息抜きしたいとき、コーヒーを買いに行きたいときなどでも、ケータイは必ず持って行くと思うんです。そういうときにさりげなく持つことができるんですよ。コーヒーカップを持つときも、ケータイを手の甲に回せば邪魔にならないし、会議で移動するときなどもさりげなく持てます。男性はネックストラップで首から提げる方も結構いらっしゃいますが、女性の場合はベルトのほうが自然で便利だと思います。おサイフケータイで決済する際も、手に通した状態でピッとかざせるんですよ。
電車でメールを打つ方が非常に多いのですが、そのときストラップでひっかけて落ちないようにしてるんですと言う方がいらっしゃって、そういうときにもいいですね、と言われましたね。カメラで写真を撮るときも落下防止になりますし、いろんな意味で使い勝手がいいんです。あとは携帯するスタイルをお客様の方で自由に考えていただければうれしいです。
――ベルトは同梱以外に、コラボモデルも販売されるとか。
青山氏
はい。弊社のanother work*sで、現時点では3人のデザイナーさまとコラボを考えていて、第1弾としては、アレキサンダー・ジラルド氏とのコラボを予定しています。
――そういえば、ベルトがついた状態での充電となると、卓上ホルダの形状も気になります。
阿部氏
実は真ん中に穴が空いてまして、ベルトをつけたまま平置きできるようになっているんですよ。
――御社の場合、今回の春モデルから卓上ホルダは別売という形にされましたが、今後はこのモデルについては同梱するとか、シリーズごとにそういう味付けをされたりするんでしょうか。
阿部氏
はい。基本的に卓上ホルダを同梱するかどうかはモデルのコンセプトによって検討するんですが、今回このモデルではお求めやすさを重要視したため同梱していません。正直、なかなか判断が難しかったんですが、やはりお求めやすさは重要なファクターなので、必要に応じてお求めいただくということにしました。
――店頭展示のモックアップではベルト無しですよね。
阿部氏
モックにベルトをつけて店頭に置くというのはなかなか難しいので、どうしようというので考えて、ベルト付きは展示台におき、モックはベルトがついていない状態にして、常に触っていただいてて感触を確かめていただくというスタイルにしました。展示台をみればベルトがついたイメージは分かるかなと。
――ベルトを触れないのはちょっともったいない気もします。
阿部氏
ぜひベルトをお勧めしたいところなんですが、あまり強制とか固定観念は与えたくないという側面もあります。ベルト“が”ついているのか、ベルト“も”つけられるのかという一言なんですが、ベルトもつけられるのね、というところでご理解いただきたい、ということで、最後はつけない状態で展示しています。
■ アタッシュケースをモチーフにした「ケースのようなケータイ NS02」
――「NS02」ですが、こちらはアタッシュケースがモチーフなんですよね。なぜアタッシュケースなんでしょうか。
青山氏
長く使っていただくデザインは、長く愛されるもの、例えばアタッシュケースのデザインから引用したらいいんじゃないかという話になって「NS02」が生まれました。なので、ケースっぽく見えてたらいいですね。調査をしてみると、アタッシュケースをモチーフにしているんですと伝えると、男性も女性も非常に好感度があがるようです。
――同じケースでもジュラルミンのトランクっぽいケースもありますよね。
山形氏
KDDIとしての品質基準というのは当然あるわけですが、長く使うことを考えていますので、従来の端末よりは丈夫に、重厚感のある仕上がりにはなっています。塗装も工夫しているので、キズも目立ちにくい仕様になっています。ただ、踏んでも壊れないとか、そういうものではありません(笑)。
――使いやすさと、長く使うという点で、防水機能も欠かせなくなってくると思いますが、このシリーズでの展開はいかがでしょうか。一度防水ケータイを持った人は、防水機能がない端末に手が伸びにくくなるようにも思います。
山形氏
まだ決定しているものはないですけども、防水機能はここしばらくの間で非常にニーズが高まっていますので、今後は考えていかなきゃいけないですね。防水というと、どうしてもちょっと大きくなって、ゴツく、重たくなって……というイメージがありましたが、最近は各メーカーさんの努力でスタンダードなサイズになってきました。ですから、これからはこういったシリーズだけではなく、通常の製品ラインナップの中でもシーズンごとに必要になってくるでしょうね。これは業界全体の流れですね。
――最後に、その他の注目ポイントがありましたら教えてください。
青山氏
今回の端末は指紋や汚れが目立ちにくく、毎日のメンテナンスに手間がかかりにくいという特徴があります。
また、持ちやすいフィット感を出すために、端末の幅やカーブ、角が落ちているところなどを非常に意識しています。ヒンジ部分を目立たないように消し込んだり、キーの感触、色、配置、ボディのシボの入り具合にも非常に苦労しました。
非常にシンプルなだけにごまかしがきかないので、違和感なく自然にご利用いただくために、見過ごされがちな地味な部分こそ、情熱を注いだ部分でもあります。手に取ったときにそれを感じていただけたらとてもうれしいです。
――本日はありがとうございました。
■ URL
ベルトのついたケータイ NS01 製品情報
http://www.au.kddi.com/seihin/ichiran/kishu/ns01/
ケースのようなケータイ NS02 製品情報
http://www.au.kddi.com/seihin/ichiran/kishu/ns02/
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(すずまり)
2009/03/03 13:45
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