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ブランド部門副社長に聞くHuaweiの戦略

HuaweiのVice PresidentのJohnson Hu氏
 中国のメーカー、Huawei Technologies(華為技術、ファーウェイ)が日本のメディアを対象にプレスツアーを10月16~18日にかけて開催した。

 プレスツアーの中で、HuaweiのCorporate Branding & Communications Dept.のVice PresidentのJohnson Hu(胡 勇)氏がグループインタビューに応じてくれた。本稿ではインタビューをレポートする。Huaweiの概要については別記事にてお伝えしている。


キャリアとの結びつきを重視して展開する移動通信事業

――Huaweiは設立が1988年と若い会社ですが、それがここまで成長できたのはなぜでしょうか。

Hu氏
 Huaweiは創業当時、ホテルや中小企業に交換機を提供していました。最初に交換機の研究開発を行ない、ほかの通信分野にも事業を拡張しました。通信分野の急成長を背景に、Huaweiも成長しました。これが一つのポイントです。


Huaweiの製品ポートレート
 いまのHuaweiは3GとGSMなど移動通信、固定通信、光通信技術、コアネットまで研究開発をしています。今年の売り上げは160億ドルと予測しています。

――さまざまな事業がありますが、売り上げの割合で大きいのはどの分野なのでしょうか。

Hu氏
 いまは無線ネットワークの設備部門が一番大きく、売り上げの40%を占めます。次にアクセスネットワーク、光ネットワーク、ソフトウェア、携帯電話端末と続きます。

――携帯電話端末はどのくらいの売り上げがあるのでしょうか。

Hu氏
 だいたい20億ドルです。Huaweiはこの分野(移動機端末)に3年前に参入しました。主にキャリアのニーズに合わせてデザインして、直接コンシューマーに販売するのではなく、キャリアに端末を提供しています(日本で一般的なキャリアブランドでSIMロック端末を販売するビジネスモデル)。

――端末の出荷台数はどのくらいなのでしょうか。

Hu氏
 普通は売上額でいうので、台数はちょっとわかりませんね。Huaweiは音声通話もできる通常のケータイとデータ通信専用端末の両方を提供しています。売り上げ額の割合で言うと、ケータイが70%、データ端末が30%くらいです。

 Huaweiのケータイはほとんどが70~150ドルくらいのローエンド向けモデルで、逆にデータ端末はハイエンド向けモデルとなっています。


――ハイエンド向けのケータイは作らないのでしょうか。

Hu氏
 計画はありますが、やはり難しいチャレンジになってしまいます。Huaweiのローエンド向け端末はキャリア経由で販売しているので、Huaweiのブランド知名度がコンシューマーのあいだで低いことには問題になりません。品質と価格だけで売ることができます。

 しかしハイエンドユーザーの場合、ユーザーは価格にはこだわりませんが、ブランドにこだわります。たとえば中国の場合、コンシューマーに直接端末を売ろうとすると、自社で販売チャネルを作らなければいけないので、非常に時間と費用がかかってしまいます。

――現状のようにキャリアブランドではなく、Huaweiブランドで端末を売る予定はないのでしょうか。

Hu氏
 近い将来にそういった予定はありません。やはりコンシューマーの中でHuaweiブランドの知名度を上昇させることは、非常に手間がかかるからです。中国国内には以前、いくつか端末メーカーがあり、それなりに売り上げがよかった時期もありましたが、やはり彼らのブランドをコンシューマーに認めてもらうのは難しかったようです。

 Huaweiが端末をキャリアにOEM提供するのは、ブランド展開にかかるコストを節約するためです。それによって結果的に、キャリアやユーザーにかかるコスト負担を減らせます。

 3Gケータイでは、キャリアはコンテンツ配信などさまざまなサービスを提供します。こうしたキャリアのニーズに対応したHuaweiの端末デザインは、各キャリアにも認めてもらっています。

 端末事業参入からわずか3年という短い期間で売上額が20億ドルにもなったのは、こうしたHuaweiの戦略が成功した結果だと思います。

――多数のW-CDMAの端末やネットワークをHuaweiは持っていますが、TD-SCDMA(中国が中心となって規格化した3Gケータイの方式)はどうなっているのでしょうか?

Hu氏
 もちろんHuaweiは、W-CDMAだけではなく、TD-SCDMAの研究開発にも力を入れています。技術の面で言えば、TD-SCDMAもW-CDMAもコアネットワークの技術は共通です。ですので、無線アクセス部分は独自のものですが、それ以外のプラットフォームは同じものが使えます。

 TD-SCDMAは来年の北京オリンピックに向け、8つの都市で試験ネットワークを構築していますが、第1期のネットワークにHuaweiはあまり参加していません。TD-SCDMAは始まったばかりなので、将来、どうなるかはわかりません。TD-SCDMAとW-CDMAのどちらを選ぶかは、キャリアではなくエンドユーザーです。エンドユーザーは端末と電波の良さを見ます。技術については関心を持ちません。どちらが成功するかは、エンドユーザー次第です。


FMC時代に有利な幅広い製品展開

――Huaweiのライバル企業とはどこだとお考えでしょうか。

Hu氏
 強いライバルだと思うのは、エリクソン、ノキア・シーメンス、アルカテル、シスコなどでしょうか。現在のHuaweiは発展途上国のシェアが3位となっていますが、欧米でもサービスやソリューションを提供しています。今年は欧州での売り上げも20億ドルを超えると予想しています。

――そういったライバルに対するHuaweiの優位点とはどういったところにあるのでしょうか。

Hu氏
 最近、欧米の顧客1,000人に対し、「なぜHuaweiを選んだのか」というアンケートを採りました。まず「迅速な対応」があり、次に「研究開発の革新力」、「安いコスト」、「勤勉な社員」という答えが得られました。Huaweiは迅速な開発力があり、顧客のニーズにあわせたカスタマイズソリューションを出すという点でも、欧米企業と同じレベルの能力を持っています。

 また、Huaweiは顧客のOPEX(OPerationg EXpenses=運営コスト)にも関心を持っています。Huaweiのネットワーク設備は、省電力・コンパクトに設計されているので、それによって顧客のコストを減らすことができます。


――Huaweiは携帯電話の端末とネットワークの両方、さらに有線ネットワーク設備まで広い分野をカバーしている数少ない企業です。しかしノキアやエリクソンが端末と基地局設備部門を分離させたように、広い分野をカバーし続けるのは難しい点もあるのではないでしょうか?

Hu氏
 ITバブルがはじけて以来、固定通信と移動通信を分離し、移動通信だけに注力するようになった会社は多いです。しかし、さらに事情が変わっていていて、無線に集中した会社も、再びコアネットワークと融合した製品展開に戻ってきています。たとえばアルカテルはルーセントと合併して両分野に対応できるようにしました。ノキア・シーメンスの合併もそういった意味合いがあります。つまり、欧米の企業もプロダクトライン減少の傾向から、固定・移動の両方へ対応するように方向性が変わってきました。

 一方のHuaweiは、ITバブルの前後変わらず、固定と移動の両方を提供し続けてきました。たとえばノキア・シーメンスが合併しても、その固定通信と移動通信の製品は、それぞれ別のプラットフォームを使っていて、一緒に開発もアップグレードもできないため、短期的にコストダウンはできないでしょう。Huaweiは固定と移動の設備で同じプラットフォームを使っているので、この点では優位性を持っています。


――Huaweiが今後、力を入れていくのはどの分野なのでしょうか。

Hu氏
 HuaweiはIPベースのFMC分野でリーダーを目指します。将来的に、コアネットワークからアクセスネットワークまで、すべてIPになると考えています。

 HuaweiはIPネットワーク分野で、シスコに次ぐ2番目の位置にあります。コアネットワークで3番目の企業になると考えています。移動通信でも、ノキア・シーメンス、エリクソンに次ぐ企業になるでしょう。そうなると、移動通信と固定通信の融合が進む今後の方向性に有利だと考えています。Huaweiの移動通信と固定通信の設備は、同じプラットフォームを使っています。通信の融合という分野で、Huaweiは先頭を切っていると言えるでしょう。

――固定・移動ともにすべてIPベースとなる通信網、いわゆるNGNへはどのような取り組みをされているのでしょうか。

Hu氏
 Huaweiは固定・移動・IP通信で展開しているので、NGNでは世界でも先頭を切って研究開発を行ない、技術面でも強い力を持っています。

 弊社の技術投入能力は、欧米のメーカーに比べて6倍はあると考えています。中国には毎年、300万人が大学を卒業しますが、毎年その中からもっとも優秀な人材を採用できます。2006年の新入社員は2万人いました。しかも人件費は欧米に比べて3分の1ですが、アジアの社員は勤勉なので労働時間は1.5倍くらいで、中国は欧米に比べて休暇も少なくなっています。

 Huaweiが研究開発に15億ドルを投入するのは、欧米企業が60億ドルを投入するのに等しい効果があると考えています。Huaweiは今年、研究開発に15億ドルを投入しました。このほとんどは人件費で、研究開発のスタッフは4万人にも及び、そのほとんどがソフトウェア開発に従事しています。これがHuaweiの優位なポイントだと思っています。

――最後にHuaweiの目指すところ、目標などがありましたお聞かせください。

Hu氏
 Huaweiは通信業界におけるトヨタになりたい、と考えています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。



URL
  Huawei(英文)
  http://www.huawei.com/


(白根 雅彦)
2007/10/24 10:55

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