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キーパーソンインタビュー
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UQ WiMAXに聞く、WiMAXがもたらすインパクト
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いよいよ2月26日からUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」の提供が開始された。扱われるのはデータ通信のみで、MVNOも積極的に展開するなど、既存のケータイサービスとは異なる部分も多い。当初はノートパソコンでの利用が想定され、端末を自由にユーザーが調達できるなどWiMAXの特徴的な機能のいくつかはまだ盛り込まれていない。2月26日にスタートするのは「お試し期間」と位置付けられ、有料サービスは7月1日に始まる。
今回はUQのWiMAXのサービスはどういうものなのか、今後はどう展開していくのか、サービス開始直前にUQコミュニケーションズの取締役 執行役員副社長の片岡 浩一氏と同社コーポレート部門 部門長の小池 竜太氏に聞いた。
■ サービス決定の経緯
――今回、UQ WiMAXのサービス内容が具体的に発表されました。最初のサービス像としては、ノートパソコン向けのワイヤレスデータ通信になりましたが、この方向でスタートすることは当初から想定されていたところなのでしょうか。
片岡氏
事業プランの段階からそういったコンセプトを持ってやってきています。従来のケータイと異なり、WiMAXのネットワークには自由な端末・デバイスをつなげることができ、どなたでもさまざまなビジネスモデルでビジネスを展開できます。私たちとしては、将来的に産業界全体で連携して展開できると考えています。
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UQコミュニケーションズ副社長の片岡氏
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まずはデータ通信にフォーカスしてサービスを展開します。今、モバイルでパソコンを使っている方が最初のターゲットです。
――データ通信にフォーカスされるのは、市場で音声通話のケータイが飽和し、一方でモバイルブロードバンドの需要が高まっている点は影響していますか?
片岡氏
市場にあわせたというよりも、もともとWiMAXという技術がデータ通信を得意とし、さまざまな分野に応用できるように柔軟にデザインされていることがあります。とくにインテルさんと一緒にやっていくことは、まずパソコン向けに展開するにあたって、大きな違いとなります。
――データ通信の市場は、音声通話を含めた市場に比べると、まだまだ小さいという印象も受けます。
片岡氏
たしかにケータイは全体で1億加入というレベルで、それに対してモバイルデータ通信は小さな市場というのは事実です。しかし、私たちはまずパソコン向けの市場でサービスを進めながら、徐々にエリアを拡大していきます。エリア拡大できれば、パソコン向けのモバイルデータ通信にもメリットになりますが、それ以外の新しいデバイスで使うという市場にも繋げていける。これがそもそもの事業プランでもあります。つまりフェーズが2段階あるわけですね。パソコン以外での展開に繋げていくためにも、まずはパソコンで展開し、エリアという基盤を作っていこう、という考えです。
小池氏
まずはパソコンで展開していきますが、やがて人ではなく機器間通信が増えていくと想定しています。ただそれにはエリアカバー率を高めないといけません。たとえば東名阪でしか使えないとなれば、カーナビのニーズには応えられません。UQコミュニケーションズが努力してエリアカバー率を高めていけば、パソコン以外のWiMAXデバイスが増える、と考えています。
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ノートパソコン市場を皮切りに、非PC市場への拡大も目指す
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――日本では、ケータイでのモバイルインターネットが広く普及しました。WiMAXによって通信回線が高速化すると、どう変わるのでしょうか?
片岡氏
事業プランなどでも紹介していますが、まずパソコンではWiMAXのチップが無線LANのように標準搭載されるようになると見ています。お客様が「さぁ端末を買ってWiMAXを使うぞ」と力んでアレコレ用意することなく、いつの間にかパソコンに内蔵されていて、自然と使えるようになります。そうなると、MVNOなどのビジネスにも参入しやすい構造になります。
UQコミュニケーションズからはまだ具体的なことは言えませんが、これで世界が変わってくる、変えられると思っています。
――WiMAX対応デバイスの普及が鍵になると思いますが、そこは、インテルさんがWiMAXを推進し、さらにUQコミュニケーションズに資本参加もしていることが大きいでしょうか。
片岡氏
それだけではないと思っていますが、やはりインテルさんの存在は重要です。もちろんサードパーティベンダーも作れるので、ビジネスパートナーが増えれば良いと考えています。しかし最初に誰かが普及の壁を突破しなければいけない。となれば、インテルさんが重要な役割を果たすと思います。
――世界的に普及しなければ、対応デバイスも増えないのでは、とも思います。海外では米国などで開始していますが、まだまだこれからの段階です。そのあたりはどうご覧になっていますか?
片岡氏
米国は国土が広いですが、現在のWiMAXはスタート直後と言うことでエリアが限定されています。これでは、どんどんお客さんが使われる、という土壌は整っていないと思います。
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UQ WiMAXでは2012年度末時点で、人口カバー率90%以上を目指す
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しかし一方で、UQコミュニケーションズではネーションワイド(国内全国展開)を目指しています。WiMAXでネーションワイドを達成するのは、UQコミュニケーションズが最初になるかも知れません。そうなると、逆に日本でのWiMAXの成功というのが、世界のWiMAXの展開においても、大きなファクターになるとも思っています。
たとえば国際展開というと、ローミングなども今後は出てくると思いますが、現段階では、各国がWiMAXを展開することで、デバイスなども共通で展開すると、安く調達できるようになるメリットもあります。
実は韓国ではすでにWiMAX製品がたくさん作られていて、それらを試験的に国内でも使ってみると、少しの設定でだけでUQコミュニケーションズのネットワークにつながったりします。ケータイではこうはいかない。WiMAXとはこういうもので、ケータイとは異なり、技術的にはほとんど手間をかけずに世界で同じデバイスを利用できます。もちろん認証や法的な対応などをクリアする必要はありますが、技術面・仕様面では柔軟なのです。
■ UQ
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UQ WiMAXの料金プラン
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――UQ WiMAXのサービスについてお聞きしたいと思います。まず月額4480円という料金体系は、どのような経緯で決められたのでしょうか。MVNO向けの卸料金と比べると、1000円ほど価格差がありますね。
小池氏
UQ WiMAXの価格は、マーケットプライスを意識しつつ、今後5年程度の事業計画を踏まえて決定しています。MVNO向けの卸し料金については、いろいろ悩んだのですが、MVNOを検討されている方々からお話を聞きながら決定しました。
――料金プランが1種類のみ、というのも特徴的です。
片岡氏
当初は定額一本でやっていきます。定額だけにするかは、議論のあったところですが、昨今のケータイなどは、サービスメニューが非常に複雑でわかりにくくなっています。UQ WiMAXはそのようなことがないよう、シンプルに一本でスタートしたいと考えました。
まずは定額を初めて、それ以外は今後、と考えています。しかし、現時点では今後どう展開するかは発表できる段階ではありません。
――最近のケータイでは、実質的な期間拘束を含む契約が主流になってきましたが、UQ WiMAXでは取り入れていません。何故でしょうか。
片岡氏
一人でも多くの方にWiMAXを体験していただき、良いものだと感じてもらいたいのです。最初から2年拘束となると、その2年はエリアだって全国津々浦々というレベルには達せず、使っていただく機会が減ってしまいます。そこで期間拘束をすることなく、多くの方に使ってもらう機会を提供したいと考えました。
■ エリア展開・サポート体制について
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最初は東京23区、横浜市、川崎市の一部から
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――エリア展開についてお聞かせください。
片岡氏
当面は屋外を中心になります。屋内もやれるところは手をつけていきますが、すべての屋内でWiMAXを使えるようになるのは、もう少し時間が必要です。
――6月まで無料、さらに無線LANのオプションも無料ですが、2月~6月は試験サービスのため、無線LANで補完するという考えなのでしょうか。
片岡氏
いえ、UQ WiMAXは当初から商用サービスという形です。2月~6月は無料で提供しますが、これは多くの方に利用してもらい、より多くの意見を頂戴するためです。2月時点で、試験サービスではなく、商用サービスという位置付けでスタートしますが、当初無料なのは、やはり通信サービスとしては後発での参入ですから、「UQ WiMAXを使いたい」と思ってもらえなければ意味がありません。無線LANとWiMAXは、いわば“いとこ”のような関係です。パソコンに無線LANとWiMAX対応の通信モジュールが内蔵されていくのであれば、無線LAN/WiMAXをシームレスに使える環境を提供するほうが良いと考えたのです。
――サポート体制についてはどうなるのでしょう? たとえばショップ展開を検討しているのでしょうか?
片岡氏
基本は電話窓口でのサポートになります。ただ最初はパソコンユーザーがお客さまになるので、「My UQ」というWebサイトでのサポートを充実させます。“UQショップ”のような店舗を数多く展開するという施策は考えていませんが、端末の故障時などについては販売チャネルと連携して対応できれば、と思います。そのあたりは夏の有料サービス開始にあわせて準備をしている最中です。
――さまざまなWiMAX対応デバイスやMVNOが登場すると、誰がサポートするかわかりにくくなりそうですが、ここはどうなるのでしょうか。
片岡氏
実際にはケースバイケースで、デバイスやMVNOが登場した後の話になりますが、MVNOであれば、やはりサポート窓口はMVNOになります。そうでないと、お客様も混乱してしまいます。
■ MVNOについて
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MVNOは競争相手ではない、と語るコーポレート部門 部門長の小池氏
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――UQコミュニケーションズとしては、スタートではUQ WiMAXというサービスを提供されますが、今後MVNOが増えてきたとき、裏方になっていくのでしょうか?
片岡氏
WiMAXが普及し、パソコン以外の市場が立ち上がってくれば裏方になる可能性は高いと思います。UQ WiMAXが牽引した結果、MVNOが増えてWiMAXが盛り上げれば、それは良い展開だと思います。
小池氏
MVNOはコンペティターではなく、ビジネスパートナーと考えています。他ジャンルの製品でも、メーカー直販製品もあれば、それ以外の流通ルートの製品もあります。UQ WiMAXとMVNOとの関係は、そういった関係と同じような原理と言えるでしょう。
――これまでの国内の移動体通信業界を見ていると、MVNO(仮想移動体通信事業者)とMNO(移動体通信事業者)の棲み分けは難しいと感じています。UQ WiMAXはMNOとして展開することになりますが、一方でMVNOとはどのように棲み分けていくのでしょう?
小池氏
3Gケータイのビジネスモデルですと、MVNOが自由に端末や搭載アプリケーションを作るのが難しく、MVNOが独自の付加価値をつけるのが難しい面があります。しかしUQコミュニケーションズは、データの流れる“土管”を提供するだけです。メールも音声通話も提供せず、端末も自由に調達できます。MVNOはそのあたりの味付けをしていただければ良いのでは、と考えています。
――MVNOによるサービス提供は、UQ WiMAXよりも安価で提供することを目指す可能性もあるのではないでしょうか。
小池氏
価格は、経済合理性の競争で設定される、と考えているので、相対的な比較をいま考える必要はないと思います。しかし、まだ市場が立ち上がってもいないので、「あちらでは20円安い」と言い合っても仕方がありません。
もちろん元売りとなるUQコミュニケーションズがより安く提供できる可能性があるのも事実だと思います。しかし、MVNOは何らかの付加価値を乗せることができます。たとえば固定ブロードバンド回線とのセット販売や独自端末など、MVNOが工夫できる余地があり、そういった面での競争があるのでしょう。
我々がMVNOを含め、WiMAXの価格全てをハンドリングすることはできません。また、WiMAXが価格でしか競争できないのであれば、「そのようなWiMAXはどうだろう?」ということにもなります。
――MVNOの価格も4500円前後が基準の価格になるのでしょうか?
小池氏
他社の値付けに関しては、何とも言えません。当社もまだサービスが始まってもおらず、コストも利益もわかりません。4480円という価格も、まだ机上計算のみの段階です。その上で、まずはこれで試してみよう、という面もあります。
■ 今後の展開、「エリア拡充」を最重視
――固定ブロードバンド回線の代わりに使うユーザーも出現しそうです。
片岡氏
固定回線代わりの用途も歓迎したいですね。基本的には、「自由に使ってください」というスタンスです。
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UQ WiMAXでは、4つのデータ通信端末を提供する
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屋内基地局のアンテナ。UQコミュニケーションズ社内にも設置されている
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――販売奨励金や割賦販売はどうでしょうか。最近ではネットブックと回線をセットで店頭価格を安価に見せて販売するケースも見られますが。
片岡氏
販売奨励金は、事業者にとっては重たいところがありますし、積極的に展開するつもりはありません。ただ、有料サービスまで半年ありますので、そこは世の中の状況を見極め、柔軟に販売施策をとって行きたいですね。
――将来的には無線LANのように、増設用カードを買ってきたら使える、ということになるのでしょうか。
片岡氏
そのような時代が来ると考えています。パソコンには標準で内蔵されていくと述べましたが、あとはメモリカードなど、さまざまな機器・デバイスに内蔵させることも考えられています。
――契約しないままWiMAX機器を買ってきて、通信経由で契約を行なう機能は提供されるのでしょうか。
片岡氏
有料サービスが始まる夏以降になる予定です。UQブランドではない端末、私たちはリテール端末と呼んでいますが、そのリテール端末を出そうとしている人はいらっしゃいます。量販店に行って無線LANカードの感覚でWiMAXカードを買って、どこでもアクティベーションできるようになる予定です。
――WiMAX対応機器をUQコミュニケーションズ自身が開発することはあるのでしょうか。
片岡氏
ビジネス面で連携はしますが、私たちが開発することはありませんね。
――法人向けの通信サービスなどには展開されるのでしょうか?
片岡氏
現在の事業以外をやらないと決めているわけではありません。たとえば法人向けですと、ただ通信回線を提供するだけでなく、イントラや社内へのセキュアな接続をセットで提供するなど、そういったニーズがあります。そこはUQコミュニケーションズだけでやることではなく、パートナー企業さんとやったり、あるいはMVNOでやったほうがうまくいくと考えています。
――数年後には3GもLTEが導入され、回線の高速化が進みます。LTEについてはどうお考えでしょうか。
片岡氏
まだ相手が見えていない段階ですので細かくは言えませんが、WiMAXとのLTEは、技術的には変調方式なども大して違いはないのですが、当面は使える周波数帯域の違いは大きいです。その上で、WiMAXは先行し、オープンデバイスを展開できることが大きいかと思います。LTEが出てくる前に、頑張って展開していきたいと考えています。
小池氏
重要なのは、お客様が「速度」「エリア」「価格」に納得していただけるかどうか。UQコミュニケーションズが提供できるもののうち、最も重要なのは、やはりエリアです。お客様だけではなく、デバイスベンダーやMVNOなどにも評価してもらえるようなエリアを作っていくことに、まず力を入れていきます。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
■ URL
UQコミュニケーションズ
http://www.uqwimax.jp/
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(白根 雅彦)
2009/02/26 10:58
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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