パナソニック製の「P-04A」「P-05A」は、薄さ9.8mmに仕上げられた薄型の折りたたみFOMA端末だ。同社の薄型ケータイとして、今回は新たにGSM方式に対応している。開発時の経緯について、プロジェクトマネージャーの大北英登氏、商品企画担当の西村真氏、電気設計担当の林一彦氏、UI要件担当の仲辻栄義氏に聞いた。
■ 9.8mmに「GSM」搭載の難しさ
――薄さ9.8mmのP-04AとP-05Aですが、P703iμから続く薄型モデルを継承したモデルでしょうか?
大北氏
そうですね、薄型路線の最新型機ということになります。9.8mmという薄さにこだわりつつ、開発を進めてきましたが、今回はビジネス層向け機能として欠かせない「GSM方式」への対応が主な進化ポイントになります。
――これまでの薄型モデルの進化を見ると、当初はシンプルな折りたたみ型だったのが、ワンプッシュオープンを搭載し、次いでワンセグやおサイフケータイにも対応していました。今回はGSM対応ということですが、やはり技術的に難しかったのでしょうか。
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仲辻氏(左)と大北氏(右)
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大北氏
今回はGSM方式で3バンド(800/1800/1900MHz)に対応していますが、確かに薄型端末ではハードルが高く、今回ようやく実現したということになります。当社の薄型モデルとしては、1つの完成形と言えるレベルに仕上がったと思います。
――携帯電話のトレンドを見ると、薄型といっても多少厚みを増して高機能化するなど、さまざまな路線があるように思えます。
西村氏
薄型ケータイでは、機能を削ってでも薄さを追求する路線、薄さをキープしながら機能拡充を図る路線、厚くしつつも高機能化する路線があると言えるでしょうか。我々としては、9.8mmという薄さは一度使っていただくと手放せないというサイズと評価を得ています。
大北氏
この薄さの中で、ターゲット層であるビジネス層に響く機能を搭載していくか、という点はこだわりを持って開発してきました。そのため、他社とは異なる路線になっているのでしょう。しかし、ここまで薄いケータイは、市場を見渡すとパナソニックだけになってきたと思います。薄さを求めるユーザーには、メリットのある端末ではないでしょうか。
――なるほど。ちなみにケータイの幅は48~50mm程度が最適という話があります。一方、薄さは9.8mmがベストなのでしょうか?
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パナソニックの薄型シリーズ
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大北氏
9.8mmは現時点での技術的に限界の薄さです。しかし、使い勝手という面で限界かと言えば、「もっと薄いケータイが欲しい」という声が寄せられるのも事実です。今後どこまで薄くすべきか、今後も議論することになるでしょうね。
ただ、現時点では技術的な部分を含め、これがベストだと思っています。GPSがないなど、フルスペックではありませんが、従来の200万画素カメラと比べ、今回はオートフォーカス対応の320万画素カメラになっていますし、最新サービスのiコンシェルなどにも対応しています。また下りの通信速度は最大7.2Mbpsで、必要な機能のスペックアップを実現しています。
西村氏
ビジネス層向けの路線として、より実用的な機能の充実に注力していますね。
■ 薄型化を支える技術、共通プラットフォームの恩恵も
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西村氏(左)と林氏(右)
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――薄いケータイを実現した技術面での工夫ですが、基板を樹脂で固める「ボードモールド工法」が今回も採用されているのでしょうか?
林氏
はい、ボードモールド自体は一定のレベルにある技術で、従来と比べて大幅に異なる部分はありませんが、力のかかりやすい部分には金属の板を成型して枠を設けて仕切りを入れて補強しています。
――320万画素カメラやGSM方式への対応といったあたりで、内蔵部品が増えているのでしょうか。
林氏
「P-03A」でも用いた技術を「P-04A」と「P-05A」でも利用しており、一部部品をモジュール化しています。平屋だった家屋を2階建てにしたというもので、部品が占める面積を減らしています。また、ベースバンドチップとアプリケーションチップを1つにしたり、電源系なども特殊なモジュールを用いるなど、小型化・薄型化を進めています。ちなみにGSM方式のアンテナはFOMAと共用です。
大北氏
レンズも他機種と比べ1枚減らして、薄さに繋げるといった工夫もしていいます。
――P-04AとP-05Aはカメラの有無という違いがあります。過去の機種でも同様のラインナップがありましたが、そのときは「カメラの有無でボディにかかる力の場所が異なる」という説明でした。
林氏
今回は、カメラ部周辺のデザインがP-04AもP-05Aも同じ形にしていて、共通設計になっていますので、そういった違いはないのです。
――以前よりも共通化が進んでいるのですね。
大北氏
ドコモさんの冬春モデル発表にあわせ、当社の携帯電話は「P-01A」を境に端末プラットフォームが切り替わっています。その共通プラットフォームを元に各機種ごとのカスタマイズを施すのですが、携帯電話市場では販売数が落ち込むなか、従来と同じ開発体制ではリソース確保もままなりません。そこで共通化を進めながら、商品化する際には、全く異なるケータイとして見えるように仕上げるという工夫をしています。
■ 特徴と違い
――P-04AとP-05Aの両機種に共通する特徴は何でしょう?
西村氏
1つはテンキーで「レリーフキー」を採用したことです。当社製のau向け端末で採用した実績がありますが、従来のシートキーと比べ、文字部分だけが盛り上がった形状で、触れたときにわかりやすくなっていると思います。薄型にマッチするシンプルなデザイン性と、使い勝手の両立の観点で採用しました。
仲辻氏
共通プラットフォームをベースにしていますが、P-04A/P-05A独自の部分としては、パーソナルデータロック機能が挙げられます。もともと搭載されていた機能ではあるのですが、用途にあわせて、アラーム鳴動や着信動作など、個別にロックのON/OFFを設定できるようになりました。また、待受状態で「6」を長押しすればパーソナルデータロック機能が、「4」を押せばシークレットモードが呼び出せるのですが、実は語呂合わせになっています。つまり「6」は“ロク”なのでパーソナルデータロック、「4」は“シ”なのでシークレットモード、というわけです。
このほか、テンキー下にある「マルチキー」は、長押しした場合に呼び出せる機能をカスタマイズできるようにしています。
大北氏
従来モデルで採用されていた機能として、「しっかりトーク」「ゆったりトーク」「ランダム待受画面」「拡大もじ」は今回もサポートしています。
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P-05AにはLED上にアイコンがある
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同じレリーフキーだが、P-05A(左)のキー印字カラーは、より見やすいコントラストに
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西村氏
細かな点ですが、LEDはメール用や着信用など3つ用意しており、さらにサイドボタンを押したときは、時間に連動した光り方になっています。気づいていただければ、ちょっと人に自慢したくなるかもしれません。また、ビジネス層向けを意識してバイブレーションのパターンも5種類に増やしました。
――逆に違いはどこになりますか?
大北氏
大きな違いはカメラの有無ですが、P-05Aのほうがよりビジネス層向けとしており、P-05AのLEDの上にはメールや着信を示すアイコンを配しています。また、レリーフキーの印字カラーは、P-05Aのほうがより見やすいカラーにしています。このほか、P-05Aにはカメラがありませんので、カメラボタンではなく、ボイスレコーダーボタンになっています。
――なるほど。ありがとうございました。
■ URL
P-04A 製品情報
http://panasonic.jp/mobile/docomo/p04a/
P-05A 製品情報
http://panasonic.jp/mobile/docomo/p05a/
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(関口 聖)
2009/02/03 11:18
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