2月26日に発売されたソフトバンクの「830N」は、NECとしてはN-04Aについで2台目、ソフトバンク向けのNEC製端末としては初のスライド型となる。発売時期が近いこともあり、両者は比較されやすい。どんな点が異なるのか、こだわったポイントは何かなどを含め、その開発コンセプトをNECのモバイルターミナルソリューション事業部 主任 二滝孝氏に伺った。
■ 直感的に「これいい」と言ってもらえる商品を
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NEC モバイルターミナルソリューション事業部 主任 二滝 孝氏
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――開発コンセプトでや、端末に対するこだわりの部分を簡単にご説明いただけますでしょうか。
目指したのは「あ、これいいじゃん」という一言です。直感的に「コレ欲しいね」と言ってもらえるような商品が作りたいと考えました。例えば、ファッションや音楽の場合、街中でショーウィンドウを見ていたときに「これいいな」と思えるものを見つけたり、あるいはどこからか音楽が聞こえてきたとき「これいいね。もう一回聴きたいね」とか、「これ欲しいね」と感じることがよくあると思うんです。ケータイもやっぱりそういった形で手に取ってもらって、「これいいね」と言ってもらえるような、そんな商品を作ろうということになりました。
ソフトバンクさんとは企画の段階でいろいろお話をさせていただいていて、1つのコンセプトワードがあるんです。実は壁紙の一部にちょこっとその面影を残していまして、「intrinsic G」というのが商品コンセプトになります。どの端末でも見られるんですが、その辺のちょっとしたこだわりというか、遊び心というか、今回の商品コンセプトをそういった形で表現しています。
――ファッションや音楽というと感覚的にかなり若い層だと思いますが、具体的にどんな層を意識したのでしょうか。
今回のモデルは、商品コンセプトからして、だいたい20代前半の男性の方々を中心に、訴求していきたいなと思っています。もちろん幅広く20~30代といった方々にも使ってもらいたいですし、こういうスライドモデルというのは、10代の高校生や大学生の方も多く使っているので、そういう若い人たちを意識したカラーリングにしています。
――スライドでコンパクトなものと言うと、女性ユーザーをターゲットにされてるメーカーさんが多いですが、男性なんですね。
そうですね。街中で観察してみると、スライド端末は女性の方が結構多いかなとういう印象もありますので、女性はカラーリングでカバーできるのではないかと考えました。ただ全体的にスライドというモデルに関しては、若い男性に多いという調査結果もあるんですよね。
カラーリングは、今回5色で提案しているんですが、だいたいにみなさんに均等に手に取っていただけるように選定しました。実際に好きなカラーの調査をしたときにも、20%ぐらいずつで好みが分かれるという結果になりました。本当に均等に分かれたので驚きました。
――色展開として、5色というのは多いほうではないでしょうか。
実はもうちょっと少なく、3色か4色にしようとしていたんです。当初の計画では「フロストグリーン」が入ってなかったんです。好きな色の調査結果でこういうグリーン系の色がこれほど数字が取れるっていうのは今までになかったので、これはぜひ入れてみたいというソフトバンクさんのご要望もあって、最終的に5色に決まりました。
オレンジをメインカラーにしているんですが、店頭で埋もれないカラーであること、春モデルですが、今後夏に向けてもどんどん売られていく機種になると思うので、そういったことも考慮して、夏でも手にとっていただけるような明るいオレンジ色にしています。エナメルピンクは女性的と思われるかもしれませんが、最近の若い男性はファッションにピンクを取り入れることも多いので、そちらも意識しています。
――スライドの感触、例えば開けた瞬間のスライド感とか、スピードの強弱、さらにはキーのサイズなどもかなり大事だと思いますが、こだわった部分はありますか。
基本的には片手で開けられるという点を意識しました。片手で開けるにしても、余り変な指の動かし方じゃなく、スムーズに開けられるというのが一番最初の考え方にはありました。ですので、最初にちょっと力を入れただけで、あとは普通にスムーズに開きます。
さらに、閉じるときも片手で閉じたいですよね。ただ、液晶があまり遠くにあるとかなり指を伸ばさないといけないので、普通の若い人たちが指をほどよく伸ばす程度で開け閉めができるような長さにしています。
キーの大きさも大事なので、基本的には大きくしたいですよね。こういうスライドタイプなので、できるだけキーを大きくしたいというのはあるんですが、だからといってあまり長くしてしまうと全体のバランスが悪くなってしまうと言うのもあるので、基本的にその辺のバランスとキーの大きさ、指で片手で動かせるという条件を含めて、サイズや移動量を考えています。
――スライド型端末はバッテリーが持ちにくいというイメージがあるようですが、何か対策はされていますか。
待受画面の状態やご利用方法によって大きく変わって来る部分ではあるんですが、省電力設定にできる「エコモード」を搭載していますので、気になる場合は待受画面で「5」を長押ししていただくと手軽に設定できます。もう一度長押しすると解除されます。エコモードでは待受画体も静止画であったり、暗めの画面になります。できるだけ暗めの色を表示することによって消費電力を抑える工夫をしています。
■ N-04Aとは違うコンセプトでデザイン
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「N-04A」(左)と「830N」(右)
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――スライド式としてはドコモのamadanaモデル「N-04A」が先行していますが、同じという印象を抱かれるケースも多いのではないですか?
確かにドコモさんの「N-04A」と全く一緒と書かれてることが多いんですが、同じではありません(苦笑)。同じ色で並べていただくと、違いがよく分かると思います。コンセプトやターゲットも違ってますし、我々もデザインはあえて一線を置くような形で検討してます。
今回弊社としては「アークスライド」を訴求しているんですけれども、アークのラインをどうやったら活かせるかということで、ほぼ全体的にフラットなイメージの中で、底面などにラウンドを設けるようにしています。そうすることよって、アークスライドのラインをより際だたせ、強調しようという目的があります。その分1mm厚くなっていますが。
それから、もともと前の機種の820Nにも入っていたのであえて変えているというわけではないですが、こちらには3DUIといって、例えばメニューなど画面が遷移するときにちょっと回転したりとか、フェードアウトしたりというUIの効果があります。
また、並べて触ってみないと分からないかもしれませんが、キーの形状も違います。凹ませて、指の腹で触ったときに押しやすくするように意識しています。
――同じスライド型ということで、N-04Aへの反応を踏まえて改善した部分もあるのでしょうか。
それは確かにあります。開発自体が数カ月ずれているところもあって、いただいた指摘事項を反映できる時間があったため、こちらの端末に反映してる部分はあります。キーの形状などは反映点ですね。
■ 機能面でも若い男性層を意識
――機能的な部分でのこだわりがありましたら教えてください。
開発コンセプトをご説明した際に、ファッションや音楽を例に出しましたが、20代前半の男性層を意識する上でもそれがキーになるのかなと考えまして、ファッションや音楽まわりの機能を意識しています。
例えば、SRS TruMediaのサウンドですとか、Bluetoothですとか、そういった音楽に直結するような機能を取り入れてますので、正直、音的にはかなりいいと感じてます。もしかすると今のiPodに変わるくらいの使い勝手のいい物になっているんじゃないかなと考えています。
――今の若い人たちは、確かに音楽への最初の入り口がケータイの場合もあるかもしれません。iPodなどのミュージックプレーヤーに触れる前に、まずケータイで音楽に触れる可能性がありますね。
今まではどうしてもヘッドホンをケーブルでつなぐのが面倒ということもあったんですが、今回初めてBluetoothに対応したので、よりスマートに聴けるというところも良さの一つになっていると思います。
■ コンテンツやモバイルウィジェットでも音楽的要素を追加
――今回モバイルウィジェットに対応している点もポイントの一つになると思いますが、どんな特徴があるのでしょうか。
プリインストールしているウィジェットの数と、この端末でしか利用できないウィジェットがある点ですね。シートが4つ用意されていまして、それぞれ最大5個ずつウィジェットをセットできるんですが、その中で弊社オリジナルが「付箋」と「時計」の2つ、加えて「music.jp」「TSUTAYA ONLINE」「SonyMusic」「デコとも★DX」がプリインストールされています。特に「music.jp」はストアにも提供されていないので、現在はこの端末でしか利用できません。
――ウィジェットもファッションや音楽というコンセプトですか?
そうですね。ですので若い人たちがよく使うコンテンツを厳選してプリインストールしました。
――他の端末もそうですが、御社の端末はプリインストールされたコンテンツが多いという印象があります。
はい(笑)。我々としては、やっぱり買った時にすぐ使ってもらいたいという気持ちがあるので、できるだけユーザーさんが使うようなコンテンツを最初から入れておきたいと考えているんです。こういうウィジェットって使ってみると楽しいので、若い人たちには今後どんどん使ってもらえたらと思います。
――モバイルウィジェットに対応する上で苦労された点はありますか。
今回、弊社としては初めてこのモデルで対応したわけですが、「あ、こっちも載ったのね」と軽くサラッと流されそうなんですけれど(苦笑)、開発陣から言わせるとかなり大変だったところです。単純にポンと乗っけて終わりというわけにはいかないんですよね。例えば、画面上でキャラクターが動くようなコンテンツだと、そのキャラクターがスムーズに動いてくれないなどの細かなところから始まって、ネットワークにつなぐときのアクセスの時間だとか、文字のサイズや見え方、どこまでの情報を載せるかなどさまざまな部分を微調整しなければ、ストレスなく利用できるレベルにできませんから。
――このほかにファッションや音楽を意識された部分はありますか。
20代の男性がよく身につけるようなファッションブランド名だったり、国内外あわせてよく聴く音楽やミュージシャンの名前などが変換できるよう辞書を追加しています。数的には数百レベルでしか増やせなかったんですが、去年のヒットアルバムのベスト50くらいに出てくるようなミュージシャン名を入れました。
■ マイ絵文字が1000個に、メールの使用感も向上
――メールが打ちやすくなるわけですね。メールといえば、マイ絵文字が1000個というのも特徴の1つだと思いますが、プリセット系の文字については、新規に積んでいるんですか?
今回キャラクター系は新規に積んでます。調査の中でもメールというのは1つ大きなポイントとされていますし、我々もメール機能の進化は常に考えている部分です。今回は絵文字の数も前回のモデルに比べて約4倍ぐらいの数に増やして、変換機能についても弊社独自の日本語入力エンジン「MogicEngine」をより進化させて予測変換機能を強化しています。
あとはメールの使い勝手という意味で本当に細かな内容なんですけども、今までは絵文字や文字の切替をソフトキーで行っていたのですが、ここをタブで簡単に切り替えられるようにしました。これが結構評判いいんですね。
――確かにタブ切替というのは選択がスムーズでいいですね。
マイ絵文字も1000個と言ってますが、その1000個をどうやって出すの、どうやって選ぶのと思いますよね。それも簡単にカテゴリで切り替えられるようになっています。文字の編集画面にしていただいたら、Y!ボタンを長押ししていただくと、この1000個の絵文字がカテゴリーごとに分かれて出てくるという仕組みです。
このほかに、「ともでん」や「ともまとめーるBOX」など、親しい人たちのメールや電話番号を直接呼び出せるっていった機能や、よくメールのやりとりをする人たちをまとめて管理できる機能も用意しています。
――最後に読者に一言お願い致します。
今回ソフトバンク向けの端末としては初めてスライド型のモデルを出したわけですが、すでに多数のスライドモデルがありますので、NECとしてどういう形で登場させようかという点でいろいろ考えました。NECといえば“薄い”という特徴があるので、それを活かして、薄型でアークラインで、Nらしさを出せたと思います。音楽にこだわった機能やコンテンツも充実しているので、ぜひお試しください。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(ソフトバンクモバイル)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/830n/
製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/830n/
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