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気になる携帯関連技術
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技術とコンテンツの融合を目指すプライムワークス
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4000億円を超えたケータイコンテンツ市場のなかで急伸している「着せ替え」だが、元々はシャープの端末の独自機能だった。その仕様策定やコンテンツ収集を行っていたのが、プライムワークスという会社だ。現在、同社はセルシスと組みケータイコミックのプラットフォームも手がけているほか、auの「Karada Manager」や、NTTドコモ、auのFlashメールのエンジン(子会社のカタリスト・モバイルで開発)の提供も行っている。
同社が次々と新しいプラットフォームを生み出せる理由はどこにあるのか。着せ替えコンテンツの誕生秘話や現状を中心に、プライムワークスの代表取締役社長、池田昌史氏のお話を伺った。
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プライムワークス 代表取締役社長 池田昌史氏
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――まず、御社のプロフィールを教えてください。どのような事業が中心なのでしょうか。
主な業務は、プラットフォームに関わるソリューションです。メーカー、キャリア、コンテンツプロバイダーに対して、技術やコンテンツを総合的に提供しています。たとえば、ケータイコミックでは、セルシスさんが開発されたフォーマットがあって、我々がサーバーまわりなどを担当しています。これは、ある意味で、セルシスさんや、キャリア、コンテンツプロバイダーなどに対するソリューションと言えます。ほかにも、auさんが先日発表された「デコレーションアニメ」のソフトウェアエンジンを開発していたり、「au Smart Sports」の「Karada Manager」を共同で提供したりしています。
――ケータイ関連の業務が多いですね。
ただ、法人相手の事業は意外と(PCの)インターネットが多いですね。これも1つの特徴ですが、私たちはケータイとPC、両方を目指しています。
――ケータイ関連の事業を始められたきっかけなどを教えてください。
実は、私は二十数年間NECに在籍していました。そこでパソコンの周辺機器などの商品企画をやっていた経験が活きています。当時、マルチメディアパソコンの商品を企画していましたが、“ソフトがないと全く売れない”ということで、コンテンツをバンドルするということを始めました。最初はハードを売るためにやっていたのですが、だんだんとソフトの可能性に気づき、そちらに力を注いでいたんですね。
一方で、1999年にiモードが始まり、ケータイのプラットフォームに接してみて、「これは行くな」と思いました。そこから徐々にケータイへシフトしていき、2004年に今の会社を設立しました。最初の1年間は端末メーカーの仕事が多かったですね。下請の下請みたいな形ですけどね(笑)。
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V501SHに搭載されていたカスタムスクリーン
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――“着せ替え”が今のコンテンツ市場でトレンドになっていますが、御社はシャープさんと組み、いち早くこの分野に参入していました。その経緯を改めて教えてください。
シャープさんには、ボーダフォンさん向けの事業部があって、非常にアグレッシブで面白いことをやる方が多かったんです。その方々が、サービスを絡めた形で何かできないかと考えていて、私たちがお会いすることになりました。そうやってできたのが、2005年6月に発売された「V501SH」の「カスタムスクリーン」です。
ただ、当時は3Gではなく通信速度も遅かったので、「どうやってダウンロードするの」ということになりますよね。そこで、シャープさんと一緒に、パソコンからダウンロードしてメモリカードに入れ、ボーダフォンの課金を利用して鍵を解除するという仕組みを考えました。一方、ケータイでは、あまり大きなファイルをダウンロードできなかったので、そちらにはライトパックという形で、着せ替えを提供していました。Javaのアプリで通信を行って、コンテンツリストを表示、ダウンロードするという仕組です。短期間で端末に実装しなければならなかったこともあり、最後の1週間は(シャープの事業所がある)広島に泊り込んでいましたね(笑)。
次に、カスタムスクリーンを全機種に広げていこうとなったのですが、これが非常に当たりました。コンテンツは500円前後でしたが、端末購入者の2~3割がダウンロードしていたんです。その後、3Gになって、より大きなファイルをケータイで直接落とせるようになったので、全面的にそちらに移行していきました。でも、当時はヒットしていることを、みんな知らない(笑)。
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カスタムスクリーンのラインナップ
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――その状況が認知され、MNPの頃を境に、着せ替えはキャリアのサービスの1つになっていきました。何か状況の変化はありましたか。
コンテンツプロバイダーとして、着せ替えの提供を始めました。今では全キャリアに対応しています。ユーザーの認知が進み、対応機種も広がったことで、急速にマーケットが伸びています。私個人の感覚ですが、今年、100億円を超える市場になるでしょう。ちなみに、ソフトバンクさんのシャープ製端末では今でも独自フォーマットの着せ替えを続けていて、私たちは両方にコンテンツを提供しています。
――現状のシェアなどを教えてください。また、目標はありますか。
キャリアの公式サイトの順位は、基準が会社ごとにバラバラなので一概には言えませんが、売上ベースでは、恐らく業界NO.1だと思います。コンテンツプロバイダーが140社以上あるので、2桁のシェアを取ることができれば立派なのかなと思います。
――最近、買い替えサイクルが伸びていると言われていますが、その影響はありますか。
以前は、新製品を買って色々いじってみたいから、着せ替えのコンテンツも買うという需要が多かったですね。ただ、ここ半年は、飽きたので毎月メニューを着せ替えるユーザーが増えてます。着せ替えというコンテンツが定着したとも考えられますが、新製品の割合は徐々に下がっています。
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プライムワークスがコンテンツプロバイダーとして運営している「カスタモ」
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――着せ替えで、特にヒットしたコンテンツはありますか。ヒットするコンテンツに傾向があれば、合わせて教えてください。
「SNOOPY」などのキャラクター系ですね。PLAZAさんのキャラクターの「Suzy's Zoo」だったり、「Rody」だったりも人気です。着せ替えを最初からやっていたため、我々のユーザーは一番マーケットの平均値に近いのですが、やはり女性が多く、その層が好むキャラクターがヒットする傾向があります。
また、男性向けだと「宇宙戦艦ヤマト」なども好調です。こういったコンテンツは中身も非常に重要で、“担当者が個人的にも好き”というのが大きいですね。わざわざプラモデルを写真に撮って、CGに起こして動かしてるんですよ。採算が合っているか分かりませんけど(笑)。私たちの着せ替えは“すべてにこだわって作っている”というのが特徴で、スクリプトもキャラごとに変えています。ユーザーからも、このような品質面を、評価されているのだと思います。たくさん売れば、たくさん版権元さんにお返しできるので、版権元さんともいい関係が築けています。
――最近は勝手サイトで無料の着せ替えコンテンツが配信されていますが、そのようなものとの差別化にもなりそうですね。
そのとおりです。着せ替えはどうにでも作れてしまうので、やはりクォリティやアイディアが重要になります。例えば、サンダーバードだと、基地があって、ここを押せば1号、ここを押せば2号が出てくるというように、キャラクターの背景を踏まえて、きちんとしたコンテンツを作っていくことが鍵になります。
――版権元のあるキャラクター以外には、どのようなコンテンツを展開されているのでしょうか。
オリジナルのキャラクターも作っています。例えば、「ぱんだにあ」というキャラだったり、オーディオをデザインしたものだったり、HEARTSというシリーズだったりが人気ですね。私たちのサイトはF1層がターゲットなので、オリジナルも上質系のものを揃えています。
――オリジナルのコンテンツを、キャラクターグッズなどに展開するということもありえるのでしょうか。
できればそういうことをしたいと思って始めたのですが、なかなかそこまで手が回りません(笑)。
――着せ替えという発想はケータイ以外でも活きそうな気がします。水平展開は考えていますか。
そういう話もちょこちょことあります。モバイル端末は種類も増えているので、可能性があると思います。
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auと共同で開始した「Karada Manager」
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――最近ではauと共同で「Karada Manager」を始めています。着せ替えとは全く別の事業のように感じますが、なぜこの分野に進出したのでしょうか。
ちょっと間違えると“何でも屋”になってしまいますが、そうならないように気をつけています。格好よく言うと、我々は何かと何かを融合して新しい価値を作っていくことを目標にしているんですね。着せ替えのような“技術”と“コンテンツ”の融合も、その1つです。その中に、“実用”と“エンターテインメント”の融合があり、ここに軸足を置いていこうと決めました。法人のソリューションで、メディカルやビューティー、健康食品などの「ITヘルスケア」をやっているのですが、この分野は薬事法などもあって、専門知識が必要になります。ソリューション事業で、そういったノウハウが溜まっていました。
一方で、KDDIさんがキャリアとして「au Smart Sports」を立ち上げました。そこで、auさんとお話をしたところ、「健康のためには食事の記録管理もちゃんとしなければいけない」と考えられていたので、私たちのノウハウを活かしたモバイルヘルスケアを提案させていただきました。PCとケータイでシームレスに使えるというのも、ポイントです。ケータイのみの会社だとPCに弱い。逆に、PCのみの会社だとケータイに弱いので、我々が両方できることも強みになっています。
――最後に、「Karada Manager」の今後の展開を教えてください。
入力の簡素化は一番大事ですね。プラス、サービス連携ももっとやっていきたいと思います。新たに、この分野を専門にしている人間も採用しています。アイディアも色々とあるので、ぜひ今後にも期待してください。
――ありがとうございました。
■ URL
プライムワークス
http://www.primeworks.jp/
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(石野純也)
2009/02/13 15:27
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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