Woooケータイとして4機種目となる日立の「Woooケータイ H001」は、写真のような2D映像もワンタッチで立体的に見えるという3D液晶を搭載したユニークな端末だ。なぜ3D液晶を搭載しようと考えたのか。
その魅力と開発経緯について、カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 日立営業グループ マーケティングチーム チームリーダー 吉田征義氏、同マーケティングチーム 光永博史氏、カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム 香田隆誠氏、日立製作所 デザイン本部 情報ソリューションデザイン部 福田陽平氏、同ホームソリューションデザイン部 池ヶ谷和宏氏らに伺った。
■ 開発経緯
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吉田征義氏
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――かなり個性的な端末が登場した印象です。まずは開発経緯を教えてください。
吉田氏
今回の「Woooケータイ H001」は、Woooケータイとして4モデル目になりますが、長く使える充実した機能の搭載や先進的なデザインはもちろん、映像にこだわるWoooケータイとして、映像のリアリティをより追求した商品に仕上げています。
映像のリアリティとして今回、目の前にいるようなリアリティを目指し、3D立体表示を実現しました。映画などを3Dで観ることが身近になってきていますから、ケータイとしていち早く投入し、映像を3Dで観る、という新しい価値をお客様にご提供していきたいと考え、開発に着手しました。
――今回もデザイン的には横に開くタイプですね。御社は以前からこの形の端末を開発されてきてますが、3D表示ということでこのスタイルが最適だろうと?
香田氏
そうですね。映像を見るスタイルというところでは、弊社としてはこの「2Way Open Style」が最適なスタイルの1つであると思っています。Woooケータイとして4代目になりますが、一貫性を持って提供・提案したいという中で、横開きのワイドオープンスタイルを維持したいというところから始まっていますね。
――スタイルとして改良された点はありますか。
香田氏
ヒンジ部分は、「2Way Open Style」の前機種は出っ張っていましたが、よりフラットに綺麗に見えるよう工夫しました。
■ 「Cutting edge Design」で先進性を表現
――見た目にもサイバーな感じです。デザインとしては特にどんな点にこだわったのでしょうか。
池ヶ谷氏
Woooケータイは常に「先進×上質」ということをデザインコンセプトにしていますが、今回それをさらに進化させるために何が必要かなと考えました。その結果、「光」に着目することにしました。「Woooケータイ H001」には3D液晶という画期的なデバイスが搭載されていますが、その3Dも光の原理で立体的に見えています。光に着目することで、モノが持ってる立体感や質感を再現することが狙いです。
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池ヶ谷和宏氏
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デザインポイントはいくつかありますが、まず1つ目が、いたるところに見られる大胆な斜めカットが特徴の「Cutting edge Design」です。例えばケータイの顔となる背面パネルや、キーの部分などに斜めのカットを施して、一貫した造形を実現しました。これにより、反射する光が劇的に移り変わります。
2つ目がキーや背面パネルの光です。キーは縦に開くとLEDが白く光り、横に開くと、燃えるような赤い光が楽しめるようになっています。
また、背面パネルには15×5、計75個の赤いLEDを搭載しており、時計やメールの受信、電話の着信を確認することができるようになってます。ピッチを狭くすることで、先進性をさらにアピールしています。塗装の影響で光が拡散してぼやけてしまうという問題もありましたが、塗料や樹脂の色を設計者と共に調整し納得のいく光り方を実現できました。
3つ目は端末のカラーバリエーションです。光の移り変わりに着目したカラーバリエーションになっています。プロモーションカラーの赤は「Flame Red」と名づけました。イメージしたのは、暗闇で燃えさかる炎の光です。底暗いですが鮮やかな赤の塗装やメタリック処理にこだわりました。
紫色の端末は「Neon Purple」といいまして、弊社得意の「マジョーラカラー」がより進化した形になってます。紫なのに見る角度によって青っぽくも赤っぽくも見える不思議さが特徴です。
赤、紫と主張の強い色が2色続きますので、3色目は定番のシルバーにしました。青みのあるグレーと、マットなシルバーの組み合わせで「Solid Silver」と名づけました。金属の塊を斜めに切り落としていったようなイメージです。シルバーの塗装も、本物のアルミのような質感を目指しました。そして、シルバーのみヒンジの部分にヘアライン加工が施されています。
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マジョーラカラーが進化した「Neon Purple」
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見る角度で色合いが変化する
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――キーのデザインも特徴的ですね。
池ヶ谷氏
他の商品に埋もれてしまったら困りますので(苦笑)、端末の商品性を伝えるために、まず手に取ってもらえるようなデザインを心掛けました。
端末全体が「Cutting edge Design」として斜めのカットを意識していますので、キーにもそのデザインを取り入れてみました。斜めにカットした部分が一段下がっていますので、指の引っかかりになっていて押しやすくなっていると思います。塗装や印刷方法にもこだわりましたので、他のケータイにはない緻密感のある仕上がりになっています。
――キーの光を赤と白に分けるのは、それぞれ2つずつLEDをいれているんですか?
香田氏
はい。今回、着信でも点滅するようになってます。「2Way Open Style」が2機種目なので、開いたときのインパクトをより強くしたいということで、こちらでも光で主張していこうと考えました。
池ヶ谷氏
発光する面積も広いので、今までにない表情を出していると思います。
■ どんな2D映像も、ワンタッチで立体的に
――やはり最大の特徴は3D液晶ではないかと思います。今回なぜ3D液晶を積もうということになったのでしょうか。
香田氏
理由は2つあります。1つはケータイのディスプレイの進化ですね。QVGAからワイドVGAになって、今ではフルワイドVGAというようにどんどん高精細になってきています。今後も解像度をさらに高める方向に行くという方法もありますが、人間の目は300dpiを超えると、ドットの解像感がそれより細かくなっても分からなくなってくると言われています。だったら、この高精細を活かして他に何かできないかと考えたわけです。日立のWoooケータイとしては、映像にこだわるということでより表現をリアルに、豊かにしていくという方向に持ってきていましたので、そのリアリティを追求する1つの方向として3Dにできないかという話になりました。
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香田隆誠氏
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視差バリア
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もう1つは、2Dの映像を3Dに自動変換するという技術が、ケータイの上で実現できるようになったことです。3Dの映像を楽しめるけど、3D専用のコンテンツじゃないとダメということになると3Dの使い勝手が悪く広がりにくいと思っていました。ですので既存の2Dコンテンツを3Dで楽しめないかと考えていました。それがこのタイミングで実現可能になったのです。
――3D映像を楽しむというと、つい専用メガネを想像するんですが……(笑)。
香田氏
3Dのイメージはそうですよね(笑)。でも「Woooケータイ H001」で3Dを見るのにメガネは要りません。
――どのような仕組みで3Dに見えるのですか?
香田氏
「視差バリア方式」といいますが、高精細な液晶を活かして、横方向のドットの奇数列と偶数列で左目の映像、右目の映像を交互に表示しています。それを見たとき、頭の中で立体に感じるという仕組みになっています。そのため、実質横方向の解像度は半分くらいになっています。
光永氏
もう少し詳しくお話ししますと、2Dから3Dに見せるときには、2Dの映像をずらして、右目用と左目用の2つ映像に分け、横方向に交互に表示します。ただ、それだけでは3Dに見えません。それをディスプレイに搭載している「視差バリア」を通して光を遮断し、左目には左目用の映像を、右目には右目用の映像しか見えないようにしているのです。すると立体的に見えるというわけです。
「視差バリア」は電子的に光を遮断しますので、ケータイを開く向きが縦横で変わってもそれに応じて切り替えられます。専用の3Dキーを押すだけで2Dと3Dの切り替えも簡単にできます。
――2Dから3Dにできるということは、ケータイで撮った写真や動画も3Dで見られるわけですか。メールで送られてきた写真なんかも3Dで見られるということですね。
光永氏
その通りです。「あの写真、こんな風に見えるよ」って自慢できますよ(笑)。背景が暗くて、メインが明るい映像だとより立体的に見えやすいです。
――具体的にはどんな機能で3Dが利用できるんでしょうか。
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光永博史氏
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光永氏
ほとんど全ての機能がボタン1つで3Dにできます。ただし今回搭載した「テレビ電話」や、通話中、microSD初期化中といった一部の機能では3Dは利用できません。
とにかく、あまり制限をかけないようにしようと思いました。ですから、仕組みとしては待受画面もメインメニューもみ~んな3Dで見えます(笑)。そこまで3Dにする必要ないって言われるかもしれませんが、その辺りはご利用になる方にお任せしたいと思います。
香田氏
LISMO Videoやワンセグも3D表示できますし、3Dが活きるゲームのトライアル版もプリセットしています。楽しみ方はお客さん次第だと思ってます。
――なるほど。ユーザー側が自由な発想で楽しめそうですね。このような「視差バリア」を利用した3D表示っていうのは、ケータイの距離感が一番見えやすいんでしょうか。
香田氏
そうですね。「視差バリア」をディスプレイに貼った場合、正面からでないと立体に見えにくいですね。横から覗き込むとずれてしまいます。お茶の間のテレビだと横から見る人もいますからね。やっぱりモバイルのケータイだからこそ「視差バリア方式」が生きていているかなとも思っています。
――人によってかなり見え方に差がでそうですが。
香田氏
ディスプレイまでの距離や左目と右目の距離によっても違いがでてしまうのは避けられないですね。今回、3Dの強弱や立体の飛び出し方を変更できる3D設定メニューというのを用意しましたので、そこで自分に合った3Dの設定ができます。
あとは、長時間連続して見ていると目の疲れなども感じる場合がありますので、カタログなどで3D表示における注意点を記載していますが、特におよそ6歳以下のお子様のご利用は控えていただきたいと思います。
■ こだわりの3Dグラフィックをプリセット
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福田陽平氏
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――そのほかに立体表示を意識した点はありますか。
福田氏
GUIのコンセプトを「3D VISION GUI」とし、3Dの立体感を活かす直感的で使い勝手の良いグラフィックを各カラーバリエーションに合わせたものを含め合計5種類用意させていただきました。いずれも全カラーに搭載されていますので自由に選べますが、初期設定では端末のカラーにあわせたグラフィックが設定されています。操作性においても長く使ってもらうことを前提に、とにかくサクサク動かせることを第一にデザインしています。
「Flame Red」で初期設定されているグラフィックは、先進感のあるレッドのデザインに合わせて、透明感や奥行き、シャープな感じを表現したイメージで、待受画面では30分に1度「Wooo」のロゴが表示される遊び心も取り入れています。
「Solid Silver」では画面の中に箱庭を作り奥行きのある不思議な空間をデザインしました。メニューではフォーカスアイコンが浮遊するシュールな世界を演出しています。
「Neon Purple」はカラフルなキューブを使った楽しい画面で、メニューではキューブが手前にポコポコ飛び出ます。待受画面も小さな人がいろんな動きをして不思議なサイズ感の空間を演出しています。
さらに、横画面用メニューではフォーカス時のアイコンが前に飛び出てくる3Dならではの演出をしております。その他、立体感をより意識したデザインの「白くまくん」ケータイアレンジもあり、コミカルなデザインと3D表現を融合させたメニューや待ち受けを是非楽しんでもらえればと思います。
――それらは3D専用ですか?
福田氏
横画面専用のメニューと待受画面は、元から左目用、右目用に作り込んでデザインした3D専用のタイプも用意しており、より3D表現を楽しんでもらえると思います。
――そのほかに新しくなった点はありますか?
香田氏
Wooo技術を活かした高画質エンジンが進化して、「ダブルトーンオプティマイザ」という補正技術が追加されました。暗いと認識される部分だけを明るく補正して、他の部分はそのまま維持しますので、LISMO Video、ワンセグの映像が鮮明に見られるようになっています。カメラ機能としては9人まで認識できる「顔検出オートフォーカス」も搭載しました。意外と気づかれないんですが(苦笑)、弊社として初めて「テレビ電話」に対応しています。
引き続きモバイル辞典を搭載していますし、PCドキュメントビューアーは今回も編集、メール添付に対応しています。
――それでは最後に読者に一言お願いします。
光永氏
先ほど横画面専用のメニューと待受画面は、3D専用のタイプも用意していますとご紹介しましたが、3D専用コンテンツとしてEZムービーに対応しています。3D専用EZムービーをプリセットしていますし、弊社の「日立ケイタイFanサイト」から配信もしていきますので、より3D表示を楽しんでいただけると思います。
香田氏
3Dが実際にどう見えるかというのは、カタログや文章だけではとても伝えきれない部分ですので、ぜひ店頭で実機を触っていただきたいです。いろんなものが立体的に見えるという中で、ユーザーの方にいろいろと試していただいて、自分にあった楽しみ方を見つけて欲しいですね。
今回の3D液晶という試みに市場がどう反応するのか、まだ我々も想像できていませんが、これが広がっていけば、どんどん次のパターンを考えていけるかなと思っています。これがきっかけになって、ユーザーの方から新たなコンテンツが生まれたりしたら非常にうれしいです。
――本日はありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://k-tai.hitachi.jp/h001/
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