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「930P」開発者インタビュー
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ゲームやネットとの親和性を追求したWオープンケータイ
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パナソニック製「930P」は、縦横にオープンする機構を採用し、さらにキーの印字方向が切り替わる“2WAYキー”も搭載するソフトバンク向け3G端末だ。開発コンセプトや特徴について、プロジェクトマネージャーの神保周二氏、商品企画担当の井端勇介氏、コンテンツ担当の井口大樹氏、ソフトウェア担当の戸田光治氏に聞いた。
■ 横の使い方を提案
――2WAYキーを採用した930Pですが、OpenGL ESの搭載や、横方向に開いたときにゲームをプレイしやすいよう、特定のキーに色がつけられているなど、「ゲームに注力した機種」という印象があるのですが、開発コンセプトは?
井端氏
ソフトバンク向けのWオープンスタイル採用機種としては、今回が3代目になりますが、その中で「どういった進化を見せていくか」ということを考えました。VIERAケータイと名乗っていますので、画質を向上させるのは当然のことですし、横にオープンしたときに使いやすいよう2WAYキーを採用しました。確かにゲームもそういった進化の1つです。
ただ、ゲームに特化したモデルかと言えば、そうではありません。たとえば、これまでは横画面で待受画面も出せず、メールなども利用できませんでしたが、今回はそのあたりを改善しています。ゲームについては、ソフトバンクモバイルの新サービスとして「リアル3Dゲーム」が発表される、ということとタイミングが合致したということになりますね。
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商品企画担当の井端氏
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プロジェクトマネージャーの神保氏
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――ゲームはあくまでも「横で使うケータイ」の提案の1つであると。
神保氏
そうです。これまではWオープンと言いながら、横画面で利用できたのはテレビなどに限られていました。そのあたりを改善しようということで、2WAYキーを採用して使い勝手も向上させています。
――Wオープンスタイルを採用したパナソニック製の携帯電話も代を重ねてきました。他キャリア向けになりますが、P-03Aは横では“見る”ことに注力したモデルで、930PやP-01Aは横画面での利用を提案したモデルという形ですね。このあたりの違いは、どういった考えに基づくのでしょうか。
井端氏
同じWオープンスタイルでも、それぞれの機種はターゲット層が異なります。P-03Aはメインターゲットを女性向けにしているモデルで、見ることが主になる機種です。しかし930Pはゲームなど横で何か操作するということがポイントです。横の状態で使えるケータイとして、両手で持って携帯ゲーム機のように操作するケータイは、当社の特徴、売りと言えるものです。
――両手で持って使う、という利用シーンは自室などに限られそうです。
井端氏
もちろん、全ての操作が横で完結するとは思っていません。Wオープンスタイルということで、縦でも使えますから、片手でケータイを操作するという文化は大事にしていく。たとえば電車内などで立って使う場合は、片手操作になるでしょう。
一方、ゲームに慣れ親しんだ世代にとっては、ゲームは両手でやるものです。その体験をケータイで実現するには、この形状しかありません。またワンセグを見る場合も新幹線などでは横画面にして置いて楽しめる、というのもWオープンスタイルの利点です。
■ ゲーム機を見習う
――冒頭、「930Pはゲームに注力という印象を受けた」と申し上げた理由の1つは、2WAYキーの一部で色が付いていることです。このアイデアはどのように誕生したのでしょうか。
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横にオープンすると、数字キーの一部の色が変わる
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井端氏
サービスとして「リアル3Dゲーム」が登場するということで、さきほど述べたように、「ゲームを930Pの柱の1つにしよう」と決めていました。ゲームという観点からすると、やはり見習うべきはゲーム業界です。家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機、ゲームコントローラーは、「A」「B」や「▲」「■」といったキーを採用していますが、携帯電話でゲームをプレイするときは数字キーを押すことになる。ところが数字キーの「1」~「9」は、フォントとしては似たような形です。しかも、2WAYキーを採用すれば、縦と横で数字の場所が変わります。パッと見て直感的に操作するためには、ということで、ゲームでよく使うキーの色を変えることにしたのです。こうすることで、キーを見つめなくても操作しやすくなりました。2WAYキーなので、普段使うときには、色の違いを意識せずに使えます。
――930Pでは、3Dグラフィック技術のOpenGL ESをサポートしています。アクションゲームの「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」などがプリセットされていますね。
井口氏
ソフトバンクモバイルさんが「リアル3Dゲーム」という形で新サービスが打ち出されることになり、パナソニックとして、「それで何ができるか」ということを伝えるため、3つの「リアル3Dゲーム」専用コンテンツをプリインストールしました。
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起動時には「New端末は縦じゃない!」とアムロが叫ぶ
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プレイ中の画面
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コンテンツ担当の井口氏
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ハードの性能向上だけ、あるいはアプリだけでは、できることに限界があります。930Pの性能を最大限に活かすコンテンツとしてプリインストールした「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」に冠しては、ハード・アプリの双方が最大のパフォーマンスを発揮できるよう、バンダイネットワークスさんと当社のグラフィックス担当者が密にやり取りして、チューニングしました。
戸田氏
またAV出力機能自体は従来から用意してきた機能ですが、930PからはS!アプリも出力できるようになっています。
――なるほど。
井口氏
アップグレード版である「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 完全版」は、今回のために、新たに音声を収録しなおし、ゲーム中の全ての場面で音声が同時に再生されます。このあたりは従来の機種ではできなかった部分ですね。そこを魅力に感じ、実際に購入されている方もいるようです。
■ ソフトバンク向けWオープンとして
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プロジェクトマネージャーの神保氏(左)と、ソフト担当の戸田氏(右)
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――930Pの開発プラットフォームはどのようなものなのでしょうか。
神保氏
パナソニックが携帯電話用システムLSI「UniPhier」(ユニフィエ)を用いています。キャリアによってサービス・仕様は異なりますので、土台の上でカスタマイズしていく形になります。
――他キャリア向けでもWオープンスタイルを採用したことになりますが……。
井端氏
930Pは、ソフトバンクモバイル向けのVIERAケータイ3号機として進化させたモデルです。キャリアの垣根を超えて同じギミックを採用しましたが、その部分は「パナソニックの特徴」という印象を持っていただければ、と思います。最近では、当社以外でも横画面での利用を提案する携帯電話は登場していますが、このギミックは当社だけです。
戸田氏
Wオープンのベース機能は、開発プラットフォームから持ってきていますが、一番よく使うのはメールやブラウザですよね。ゲームだけではなく、横画面での利用はインターネット系のサービスとの相性が良い。メールやブラウザをサクサク操作できるよう強化しています。その上でキャリアごとのサービスに対応するわけで、今回はYahoo!動画のストリーミング再生が利用できるようになりました。
井端氏
キャリアによってサービスなどの方向性は異なると受け止めています。たとえばソフトバンクモバイルさんは、“インターネットカンパニー”ということで、ネットサービスへの想いが強いのではないでしょうか。パナソニックが開発するケータイとして、インターネットと“かけ算”すれば、大きな魅力になると思います。
――そういえば横画面でYahoo!ケータイが利用できることになっていますが、ワンセグ視聴中にメディアジャンプボタンを押すと、フルブラウザではなくYahoo!ケータイ用のブラウザに切り替わるようになっています。このあたりもネットとの親和性を追求したことになるのでしょうか。
井端氏
「Yahoo!ケータイを横画面で」というのはとても使い勝手が良いと感じていて、開発サイドに(対応を)お願いしてみたところ、その魅力はすぐに理解してもらえました。フルブラウザよりYahoo!ケータイのほうが軽快に動作しますし、料金体系を含め、使い勝手がよいのです。
またメディアジャンプボタンについては、テレビとネットの連携を意識しました。たとえばテレビCMでも「続きはネットで」「キーワードを検索」といった内容のものがずいぶん増えてきました。自宅に居れば、テレビを視ながらケータイで検索できますが、外出時ではテレビも検索も携帯電話1台でこなす、というのは難しいことでした。今回はテレビ画質の進化だけではなく、ネットで、このあたりの操作性を改善したことになります。
――なるほど。本日はありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/930p/
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・ 縦横でキー印字が切り替わるWオープン「930P」
(関口 聖)
2009/03/11 11:02
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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