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「N-08A」「N-09A」開発者インタビュー
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携帯デザインをエモーショナルに、μシリーズの進化の形
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NTTドコモからNEC製FOMA端末「N-08A」「N-09A」が発売された。両モデルは、機能は同じで、デザインを全く異なるテイストにまとめたモデルで、NEC製μシリーズの後継モデルにあたる。今回、「N-08A」と「N-09A」について、NECの企画・デザイン・開発担当者らに話を聞いた。
■ N-08A
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写真左から、北川氏、服部氏、鈴木氏、徳吉氏、河崎氏
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――それではまず、「N-08A」について教えてください。
NEC モバイルターミナル事業部 商品企画グループ
服部美里氏(以下、服部氏)
「N-08A」は、薄さの中に妥協していない機能を搭載したモデルです。コンセプトは「My Elegant Slim」で、デザインやイルミネーション、コンテンツを含めて全体の世界観を大切にしました。
デザインは、表面のクリアパネルの表現や奥行き感に注力し、イルミネーションやキー操作のしやすさなど、細かいところまで気を遣いました。イルミネーションは「N-02A」でも搭載されていますが、今回の「N-08A」では「フェミニン」や「ゆったり感」「やすらぎ」「なごみ」といった世界観でイルミネーションのパターンを考えていきました。また、背面パネルにもイルミネーションを搭載し、パネルからイルミネーションが浮き出るようなデザインとしました。
――デザイン面について聞かせてください。
NEC デザイン&プロモーション
北川大輔氏(以下、北川氏)
今回「N-08A」をデザインするにあたって、歴代のμシリーズの曲線や面のはりといった好評だった部分を崩さずに、ファッションをデザインのエッセンスとして盛り込みたいと思いました。
ファッションのパターンというと、ストライプやドットなどいろいろありますが、それらでは携帯電話に落とし込んだときに、ファッションという部分が伝わりにくいと感じました。そこで、よりファッション性を感じてもらい、かつクセのないものとして千鳥格子を採用しました。千鳥格子は歴史の長いデザインの手法で、ターゲットユーザーにもマッチするよう上品に仕上げました。
ファッションで千鳥格子を採用すると、もう少し高いコントラストで使われます。たとえば、スーツなどのパターンの場合、離れてみるとチェックや単色に見えるが近くだとはっきりと色が異なる千鳥格子の柄になっています。ただ、携帯電話は洋服などと比べて目と物の距離が全然違います。そこで、色でなくテクスチャーで千鳥格子のパターンを採用しました。テーブルなどに置いてみると単色に見え、手にとったときに千鳥格子のパターンであることがわかります。そういった部分が持つ喜びにも繋がり、そこから親しい友達との会話も生まれるかなと想像しました。
カラーの選択もスタンダードなものを用意しました。これはファッションになじむ色で、上質さが伝わるようなものとしたかったからです。携帯電話を持っているときに、使う仕草も美しく見えるようなものを検討しました。
――背面パネルの千鳥格子の柄が1カ所だけ光りますが、すごく印象的ですね。
北川氏
そうですね。これまでのイルミネーションは、光る部分を見せる手法を使っていましたが、今回は上品さを演出するためにシルエットが浮かびあがるようにしました。このワンポイントがちょっとした驚きに繋がるかなと考えました。
NEC モバイルターミナル開発本部
鈴木健作氏(以下、鈴木氏)
技術的には、アクリルのパネルの裏に千鳥格子の柄を彫り込んで、テクスチャーを表現しています。千鳥格子の一部だけ光るようにしたというより、ほかの部分に光が拡がらないように設計されています。千鳥格子の柄とうまく合わせるのに苦労しました。
「N-08A」の場合、背面液晶側のデザインの中で、イルミネーションを光らせたり、千鳥格子の柄を表現したりするので、各々のバランスをとるのに時間が必要でした。どれかが突出してしまうとどうしてもバランスが悪く見えてしまうので。
服部氏
ちなみに背面イルミネーションは2カ所用意されており、両方光らせたり、片方だけ光らせたりとパターンが選択できます。不在着信の光が気になるとのご意見もありますので、不在着信時にはワンポイントのイルミでさりげなくお知らせします。光らせ方も強く光るというより、柔らかく光るようにしました。開発とデザインとみんなで考えた自慢したいところです。
――機能面はいかがでしょうか?
服部氏
機能面は「N-08A」と「N-09A」でほぼ同じです。カメラは、「N-02A」の5.2メガカメラから8.1メガにスペックアップさせ、単にきれいな画質というだけでなく、多彩なモードや顔がきれいに写る機能、手ぶれや被写体ブレの補正、ブログアップ機能なども引き続き搭載しています。
新たな試みとして、「スピードムービー」という機能を用意しました。男性だけでなく、最近、女性の間でもゴルフが流行っていますが、フォームの確認などにご利用いただけます。パノラマ撮影も従来の137度から240度に拡張されました。
ワンセグ機能は、秒間15フレームに中間補完技術を取り入れ30フレームにすることで、なめらかな映像となっています。また、今回加速度センサーが搭載されていることで、携帯電話を縦画面だけでなく、横に傾けるだけで横全画面で利用できるのも特徴です。操作いらずでスムーズにお使いいただけます。Bluetooth機能も新たにDUN/SPP/OPPのプロファイルをサポートしました。
メール機能も充実しました。今回音声文字入力に対応し、メールの本文入力や検索時のキーワード入力も可能となっています。デコメ絵文字もさらにプリセットコンテンツが拡充されています。
文字の予測変換機能では、「MogicEngine」がIVからVにバージョンアップしました。時間連動予測が可能で、朝なら「おはよう」、夜なら「こんばんは」といったように変換候補が変化します。さらに、自分のプロフィールと連携した機能も用意されています。たとえば、携帯電話に自分のプロフィールを登録していると、「アドレス」と入力した際に自分のメールアドレスが変換候補に出てきたり、「でんわ」と入力すれば自分の電話番号が表示されます。メールアドレスを教えてと言われた際や、また最近はWebサイトなどでもメールアドレスを入力しなければならないことが多いため、そういった場面でも手間なく簡単に入力できます。
このほか、新機能の「iアプリタッチ」に対応しており、ウォーキングカウンターという歩数計機能も搭載しています。従来から搭載している「クイック検索」や「拡大もじ」「ハイパークリアボイス」といった機能も用意されています。
――なるほど、待受画面に表示されている「iコンシェル」に見慣れないキャラが表示されていますね。
服部氏
はい、「ちどりちゃん」という新たなマチキャラです。これは、「N-08A」の背面パネルの千鳥格子の柄と合わせたもので、端末全体で世界観やストーリー性を表現できるようになっています。これまでのバザールでござーるやチェブラーシカなども利用できます。
コンテンツ面でも今回非常に力を入れました。たとえば「Flow」という着せかえコンテンツでは、季節によって表示される花が変わったり、待受画面上に散る花の動きと連動してボタン部のイルミネーションも上から下へ流れるといった演出が楽しめます。
■ N-09A
――それでは続いて「N-09A」について教えてください。
NEC モバイルターミナル事業本部
モバイルターミナル事業部 商品企画グループ
徳吉浩子氏(以下、徳吉氏)
機能はほぼ「N-08A」と同じですが、いずれもハイスペックな商品となっています。NECでは過去に、amadanaとのコラボモデルとして「N705i」という商品を投入しました。今回の「N-09A」はデザインコラボではありませんが、μシリーズでNECが培ってきたノウハウを活かし、薄いからこそできることを表現しました。「N-08A」ではクリアパネルを載せた表現を採用し、「N-09A」では新しいテクスチャーを使った試みが実現されています。
今回の「N-09A」は、とくにこだわりのある方に持っていただきたいという思いで作りました。年齢を限定するというのではなく、インテリアや普段のライフスタイルの中でこだわりをもって物選びをしている方達へ、携帯もインテリア感覚で選べる商品として企画しました。
機能面でBluetoothのプロファイルを追加したのは、ビジネスシーンから要望が高かったためです。ハイパークリアボイスも大きな声で話さずにスマートに使って欲しいという思いがありました。「N-09A」をお選びいただける方にとっては、ドキュメントビューアーやGSM方式への対応なども重要なポイントです。
コンテンツの部分では、「Horizon & Vertical」という着せかえコンテンツを内蔵しています。端末を開いた際に縦横のラインが表示されるのですが、時刻によってこの縦横のラインが交わるポイントが変わります。非常に細かい部分ですが、使う方の喜びに繋がる部分としてご用意しています。
――デザイン面について聞かせてください。各色によって印象がずいぶん違いますね。
NEC デザイン&プロモーション エキスパートデザイナー
河崎圭吾氏(以下、河崎氏)
携帯電話の王道を行くデザインはツヤツヤ・キラキラしたもので、店頭での効果もあって、「N-08A」にその表現を取り入れました。しかし、端末の価格が高くなったことで買い換えの時期が長くなり、じっくりとものを見てもらえるという大きなユーザーの変化が生まれました。そこで「N-09A」は、これまでと違う視点でデザインできないかと考えました。
携帯電話は皆とにかく触っていて、誰かが触るとほかの人も触り出します。単純にメールしたり電話したりするだけでなく、常に人の手にあるものなので、手が喜ぶ感覚もデザインの要素に取り入れることにしました。
デザインのテーマは「haptic=触覚」です。感覚が喜ぶものとして、金属や木の質感、革の質感を表現しました。通常の携帯電話ではデザインが決まればあとはカラーを決めていくのですが、今回は質感の違いを楽しんでもらうため、カラーによって採用している素材が異なります。この点は非常に苦労しました。
徳吉氏
実はそういった要望は商品企画側からオーダーしました。我々が目指したのは、SMARTシリーズが持つ世界観を好きな方に選ぶ楽しみがあるカラー展開はできないかということでした。素材感によるテーマの違いを出して欲しいとオーダーし、マテリアルの決定とそれをどの色で提供するのかかなり議論が必要でした。
河崎氏
店頭で販売されている他の商品と比べて、携帯電話の要素はデザイン的にはかなり複雑です。今回はそこにあえて素材感を含めたことでさらに複雑になりました。素材感を楽しんでもらいたいというのと、長く使ってもらえるようにシンプルにしなければならいという、相反する要素を取り入れています。
あとは、キー部分のデザインにもこだわりました。かっこよくて、かつ見やすいものを検討し、文字を大きくかつ少し縦幅を調整してバランスを保ちました。
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試行錯誤を繰り返した「レッドレザー」
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――素材感の異なるパネルはこだわりを強く感じる部分ですが、開発サイドとしてはいかがでしたか?
鈴木氏
全ての素材が違うため、かなり泣かされましたね(笑)。私はデザイナーの無理難題に応えていく立場ですが、金属や木の質感などはこれまでの経験から比較的想像はできました。問題は「レッドレザー」の革の質感でした。単に質感を再現するだけであれば大きな苦労ではありませんが、携帯電話の日常の使用に耐えられなければならない強度があり、しかも同じものを一定の品質で量産できなければなりません。
本物の革などを採用してしまうと、携帯電話の日常使用には耐えられず、実績のある工法でやってみましたがどうしてもうまくいきませんでした。試行錯誤をかさねて、ようやく今回採用した工法にたどり着いたんです。きれいすぎるまとめ方をあえてせずに少しかすれている感じを出し、自然素材に近い風合いを残そうとするとバランスがなかなか難しいところでした。量産品でありながら、持ったときの喜びを感じられるような価値を持たせるというのはチャレンジでした。それぞれの技術は決して新しいものばかりではありませんが、既存の技術をうまく組み合わせていきながら、なんとかデザイナーと商品企画の期待を実現できたかと思います。
河崎氏
「レッドレザー」は、いくつかの手法での実現も検討していました。最適な工法を探り、本当にぎりぎりまで検討していました。
鈴木氏
開発秘話となりますが、社内で仕様を決定する最終的な会議の日に、今回採用した手法が見つかったんです。会議の中でそれを報告すると、かなり会議の雰囲気がピリピリしましたね(笑)。ただ、結果的に関係部署の皆がそれに応えてくれて、製品は遅れずに投入できました。これは大きな財産になったと思っています。実は開発中、ワニに襲われる夢を見ましたよ。
河崎氏
それちょっと作ってないか?(笑)
■ 携帯デザインをエモーショナルに
――これまでの携帯電話は、どうしても機能重視な方向性が全面に見えていました。今回お話をうかがっていても、「N-08A」と「N-09A」は端末の企画・開発の段階で、かなりユーザーが手にした際の感情や感覚に沿った物作りをされていますね。
服部氏
スペックを重視していることには変わりませんが、さらにプラスαで世界観を打ち出していくことでより総合力を見せていきたいですね。
徳吉氏
NECとして、デザインをエモーショナルにということをテーマに置いています。手のひらから生まれる、ユーザーのライフスタイルに合ったものを提案していきたいと思っています。
また、使い勝手にも力を入れており、キー部分にはシートキーの上に樹脂のキーを独立させて載せることで押しやすさの改善を図っています。NECではこれまで、μシリーズがご好評いただいていました。ドコモさんのシリーズが変わったことで、「N-08A」はSTYLEシリーズ、「N-09A」はSMARTシリーズとなっています。どちらの端末もμシリーズから進化したものです。μシリーズは女性だけでなく、男性にもスリムさが受けているようです。
服部氏
「N-08A」は女性をメインターゲットにしており、メインの女性は30代後半~40代となっています。ただ、年齢というよりもむしろ、女性であったり、職業人であったり、家庭人であったりとさまざまな場面で輝いていたい方をターゲットとして企画しました。カラーバリエーションによっては、男性にもお使いいただけるものとなっています。
徳吉氏
まずメインターゲットをしっかり決めて企画します。そして、違う切り口のパターンもたくさん考えることでサブターゲットの設定に繋がり、幅広い年代、男女問わず手にとっていただけるものを企画するために重要になると思います。我々はメインターゲットとサブターゲットの関係性にも注目しており、これからもユーザーの期待にしっかり応えられるような企画やデザインを考えていきたいです。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
■ URL
製品情報(N-08A)
http://www.n-keitai.com/n-08a/
製品情報(N-09A)
http://www.n-keitai.com/n-09a/
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(津田 啓夢)
2009/06/17 15:48
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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