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BREW関係者インタビュー
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クアルコム野崎氏、「シングルチップでも快適な環境を」
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クアルコムが提唱する携帯電話用のアプリケーション・プラットフォーム「BREW(Binary Runtime Environment for Wireless)」。国内では、au(KDDI)がこれに対応する端末を提供している。今後の携帯電話の進化を予測する上で非常に重要になってくるのが、こうしたアプリケーション開発環境だ。
本誌では、BREWを生み出したクアルコムの日本法人、クアルコムジャパンのビジネス開発担当部長の野崎孝幸氏にお話を伺った。
■ BREWの現状
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クアルコムジャパン
野崎孝幸氏
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――まず、BREWの現在の状況を教えて下さい。
野崎氏
クアルコムは2001年1月にBREWを発表しましたが、その後、世界各地のCDMAキャリアでの導入が進んでいまして、現在、6カ国・8キャリアでBREWの商用サービスが提供されています。日本のKDDIをはじめ、世界初のBREWサービスを始めた韓国のKTF、アメリカではVerizon Wireless、ALLTEL、U.S. Cellular、中国のChina Unicom、オーストラリアのTelstra、ブラジルのVivoでBREWのサービスが既に提供されています。
――世界のCDMAキャリアの中ではBREWが広がっているということですね。
野崎氏
今年の3月時点で全世界にはCDMAの加入者は1億5,000万人以上いますが、CDMAの加入者数でトップ10のキャリアのうち、6社で既にBREWのサービスが提供されていますので、BREWは急速に広がっているプラットフォームであることは間違いありません。
――世界で最初のBREWは韓国だったということですが、なぜ韓国だったのでしょうか?
野崎氏
新しいことにいち早くチャレンジするという韓国のIT業界の考え方があるように思います。1xEV-DOも去年のワールドカップの前からサービスが提供されています。BREWも世界で最初というお考えがあったのかも知れません。KTFのBREWは2001年11月にサービスが始まりました。韓国では既にBREWの加入者数は400万人以上、販売されたBREW端末も40機種以上、アプリケーションは500種類以上が提供されている状況で、1xEV-DOとBREWの組み合わせも含めて、データARPUの拡大につながっています。
――アメリカの状況はどうですか?
野崎氏
Verizonは約3,300万の加入者を持つアメリカ最大のキャリアですが、こちらでもBREWは大きく伸びています。Verizonは昨年の6月に全国サービスを開始しましたが、アプリケーションのダウンロード数は既に1,200万件にもなっています。また、今年末までに800万台のBREW端末を販売すると公言されています。日本あるいはアジアと比較しますと、いわゆる「ケータイ後進国」と言われているアメリカですが、その中でVerizonのBREWの成功は際立っていると言えると思います。
■ 課題は法人向けのBREWアプリ
――BREWの場合、日曜プログラマーにはなかなか手が出しづらいと思うんですが。勝手アプリの有り方も含めて、どうでしょうか?
野崎氏
いわゆる勝手アプリをどうするか、という話については、BREWの考え方を根本的に変えるということはないと思います。
いくつかの側面がありまして、1つには勝手アプリということ自体がどこまで競争上クリティカルなのか、ということです。と言うのは、勝手コンテンツと勝手アプリを同じレベルでは議論できないのではないか、というのが、まず1つあると思っています。つまり、勝手コンテンツへのアクセスが非常に多いということがありますが、それはコンテンツを書ける方がかなりいるという土壌があると思います。一方で、勝手アプリを作る、あるいはアプリケーションをきちんと書ける方が、どれだけいるのかということを考えますと、勝手サイトと勝手アプリというのは大分レベルが違う話だと思います。
勝手アプリがないことによって、競争上の大きな差があるのかというと、必ずしもそうではないと考えています。結局、きちんととしたアプリケーションを勝手であろうと何であろうと書ける方というのは、趣味でやる人が全くゼロだとは言いませんが、事実上はほとんどプロの方々でしょう。
勝手アプリという枠組みが無いことによる課題として可能性があるのは法人向けの話だと思います。つまり、Javaであれば、いわゆる法人向けの勝手アプリをプロの方々が作って、それを会社が勝手に自分で提供するという環境がJavaではできます。BREWはそれができない、ということがありますが、結局、それはきちんとしたプロの方々にどのように対応していくかという話になりますので、そこはキャリアが、特にKDDIはソリューション事業にも注目されていますので、そういう方々へきちんと対応することで、勝手アプリがないところから来る懸念は消え去ると思います。
――端末メーカーとしては日本だけで端末を出すよりも、ワールドワイドでロット数を増やして作っていった方が効率がいいという話がありますが、アプリを作る側からしても同じことが言えるかなと思ったんですが、現状では各国の中で審査されているわけですよね。
野崎氏
現状、アプリケーションの検証に関してはそうですね。KDDIさんは海外のキャリアと検討を進めようとされていますが、検証の部分をどうやって共通化していくかというのは、これからのテーマになると思います。
BREWの標準的な部分は変わりませんが、いろいろな国の競争環境によって、独自の仕様を追加したりということがありますので、各国固有の仕様を誰がどのように評価するのかというところです。
しかし、BREWが世界各国で急速に広がっていることは、日本のコンテンツプロバイダーのみなさんにとっても大きなビジネスチャンスにつながると期待しています。
■ アップデートは年1回のペース
――MSM7000シリーズが発表になっていますが、クアルコムの半導体の戦略とBREWはどのように位置付けられているのでしょう?
野崎氏
クアルコムの基本的な考え方は、最終的なコスト競争力を考え、シングルチップでのトータルソリューションを提供していくというものです。シングルチップであっても快適な環境を提供できるアプリケーション実行環境を組み合わせることが、それに対する最大の解決法だと信じています。
クアルコムは、シングルチップでのBREWで、他社のJavaと同じかそれ以上のパフォーマンスが得られるとずっと言ってきましたが、皆さんになかなか信じて頂けませんでした。ですが実際にBREWが始まった今、クアルコムが考えてきたことをご理解頂けると思います。
――現時点ではBREW対応の端末というのはハイエンド向けに出ていますが、基本的にはすべての端末がBREW対応になれば、本当にうれしいのはローエンドの人たちですよね。
野崎氏
おっしゃる通りです。BREWというのは薄い、軽い環境です。BREWであれば、まさにシングルチップで、ローエンドからハイエンドまでカバーできるということです。ですので、端末のスペックとしては日本よりも条件が厳しい中国でもアメリカでも、それが可能なのです。
――今後、どれくらいのペースでBREWのアップデートをかけていくのでしょう?
野崎氏
大きなバージョンで言いますと、基本的には年1回になると考えています。韓国のKTFさんで始まった時にはBREW1.0、VerizonさんはBREW1.1、China Unicomさん、KDDIさんはBREW2.0でサービスを開始されました。BREW3.0というのは、これからの議論ですが、出てくるのは来年の中頃から後半ぐらいと想定しています。
――やはりそのくらいのペースでやっていかないとユーザーの要望に追いついていかないということでしょうか。
野崎氏
そうですね。各国とも競争は激しいですので、継続的な機能アップは必要だと思います。
──ありがとうございました。
■ URL
クアルコム(英文)
http://www.qualcomm.com/
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(湯野 康隆, 協力:デジタルハリウッド)
2003/07/14 18:16
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