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BREW関係者インタビュー
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KDDI竹之内氏、「1000シリーズもBREW対応に」
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クアルコムが提唱する携帯電話用のアプリケーション・プラットフォーム「BREW(Binary Runtime Environment for Wireless)」。国内では、au(KDDI)がこれに対応する端末を提供している。今後の携帯電話の進化を予測する上で非常に重要になってくるのが、こうしたアプリケーション開発環境だ。
本誌では、そんなBREWについて、KDDIのソリューション事業本部コンテンツ開発部課長の竹之内剛氏にお話を伺った。
■ ワンチップならコストが安くなる
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KDDI
竹之内剛氏
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――まずはBREW導入の経緯についてお聞かせください。
竹之内氏
当時、もうJavaの開発を進めていたのですが、Javaには何分パフォーマンス的な問題がありました。また、他のキャリアと違ったサービスで差別化できないかな、ということもありました。その中で、クアルコムがそういったOSライクな端末のアプリケーションプラットフォームを作っていくというような話があったので、一緒に開発を進めていったというのが経緯です。
──現時点でBREWのアプリの数はどれくらいですか?
竹之内氏
現時点で40アプリです。
──結構ゲームが多かったりしますが。
竹之内氏
コミュニケーション系もいくつかありますが、確かにゲームが多いですね。
──いずれにしろ一般ユーザー向けのアプリということになりますが、法人ユーザー向けのアプリの提供も検討されているのでしょうか?
竹之内氏
そうですね。法人向けのアプリに関しては、IBMさんと共同開発した「BBP(BREW Business Profile)」というミドルウェアソリューションがあります。そのほかにもいくつかやっているところです。保険業界とかいろんな業界でSFAツールとして展開できるようなものなので、広く展開していこう思っています。
──その辺りも年内には動きが?
竹之内氏
あると思います。もう近々あるんじゃないですかね、いくつか。
──Javaとの一番の違いはどこにあると思いますか?
竹之内氏
BREWの場合、C/C++で書けるということと、プログラムの容量に制限なく作れるというメリットがあります。極端な話、BREW用に1MBの領域を用意しているとしますよね。そうしたら、それをフルに使ってもいいわけですから。
それから、Javaの場合はゲートウェイモデルですが、BREWの場合はTCP/IPのプロトコルを自由に使えるようにしてます。各々の会社独自にセキュアなプロトコルを組んでもらっても構いません。直接サーバー・クライアントモデルが作れます。
──なるほど。では、一般のコンシューマーに対し、何か今のJavaにないようなものを提供できるとすると、どういったことになるのでしょう?
竹之内氏
やっぱり速さでしょうね。Javaの場合はVMを立ち上げてから、アプリケーションを立ち上げるので、起動ボタン押してから時間がかかります。
──端末メーカーにとってのメリットは?
竹之内氏
ネイティブに近いところでBREWを開発していますので、当然ワンチップ、ワンCPUの上で最適化されるというのが利点だと思います。結局、Javaを速くするためには、専用のアプリチップを追加していくというような策しかないと思うんです。ドコモの505iも然りなんですが、そうなってくるとコストに跳ね返ってくるので、ユーザーに対してコスト高になっていくということがやっぱりあるんです。しかし、BREWならワンチップで提供できますから、かなりリーズナブルになっています。
auで言うと、例えば5000シリーズと1000シリーズという形に分かれていますよね。BREWのような新機能を提供するというと、利用できるのは高機能機のみというようなイメージがあると思います。しかし、我々は実用機と言われるようなカテゴリーの1000シリーズにもBREWを提供していきます。
■ 秋冬以降のモデルには期待大
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現在発売されている唯一のBREW対応端末「A5304T」
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──秋にはEV-DOの話もありますが。
竹之内氏
そうですね。クアルコムさんの方からもロードマップが出たと思うんですが、今年の秋~冬くらいにはずいぶん違った展開があるんじゃないかと思います。
──では、秋冬モデルに期待ですね。
竹之内氏
その段階ですぐにBREWに対応するかどうかということは、各メーカーさんの事情があると思いますので、どのメーカーがいつということは正式にはまだ言えないのですが、当然検討はされています。特に海外に輸出することを考えている端末メーカーさんは、当然CDMA採用国に輸出するわけですから、BREWといったことはかなり意識されていると言っていいでしょう。
――標準で入っているメールソフトとかブラウザ、アドレス帳といったものも、「もうBREWでやっちゃうよ」というような段階というのはいつ頃ですか?
竹之内氏
そういったネイティブ連携といったところは、まあ、今でもやればできるのですが、やはりいろんなセキュリティの問題もあるので、かなり慎重にやっています。今年から来年にかけてのBREWの次の段階ということになると思います。その時には多分玄人の方が見ると、「あ、この世界、ちょっと変わったな」と見えると思います。
──セキュリティの話題も出ましたが、その点はどうなのでしょう?
竹之内氏
今回のBREWについてはauのオフィシャルサーバーからしかダウンロードできませんし、そこは解放するつもりもありません。単純にアプリケーションの上で何かコンテンツをやりとりするような、例えば、メールのアプリの上にスキンをかぶせたりとかするようなものに関しては、広く皆さんに使っていただこうと思っています。
──ドコモがiアプリDXということで、公式コンテンツという枠の中で従来よりセキュリティレベルを下げるような動きを見せています。BREWのアプローチと比較すると面白いですね。
竹之内氏
そうですね。会社のポリシー的なところといいますか、考え方ということになりますね。しかし、最終的に描いているサービスやソリューションというのは同じようなものなんじゃないでしょうか。
──さきほどセキュリティの話がありましたが、携帯電話の場合、最近はバグの問題もありますよね。今後、ネットワーク経由で携帯をアップデートするというのは?
竹之内氏
あり得ると思います。
──例えば、メールソフトに迷惑メール対策の機能が追加されるとか、そういうこともあり得ると。
竹之内氏
そうですね。充分あり得ますね。
■ 携帯に勝手アプリは必要か?
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近日発売予定のBREW対応端末「A5306ST」
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──BREWではC/C++で開発するということになりますが、コンテンツプロバイダーの反応はどうですか?
竹之内氏
今Javaが携帯のアプリケーションの言語としてはポピュラーになっていますが、元々パソコンやPDAにソフトを提供されていたプロバイダーさんからすると、実はここ数年、C/C++で書かれたものをJava化していったという経緯があります。ですから、逆に今、C/C++で開発できるということは、非常に受け入れやすいというか、ありがたいというようなことを聞いています。
──パソコンやPDAのアプリケーションを作っている人たちが今回参入してくる可能性も高いのでしょうか?
竹之内氏
そう思います。彼らにとっては、これまで一番望んでいた回収代行スキームに乗れるというメリットがありますから。
──BREW対応端末ではJavaが使えませんが、JavaのVMをBREWで提供するとか、そういう展開はあり得るんでしょうか?
竹之内氏
まあ、あり得なくもないですが、たぶんやらないと思います。BREWの上でJavaというのは、ここのところずっと議論されてきたのですが、コンテンツプロバイダーさんからすると、BREW上でのJavaというよりは、最初からBREWで作った方が効率的なので、たぶんそうすると思います。
Javaの場合、仕様をオープンにしていて、俗に言う“勝手アプリ”というのがかなりの数あります。これまで私たちは、そういった勝手アプリを活性化させていかないといけないのかな、と感じていたのですが、ユーザーを対象にいろんな調査したところ、知らないサイトからアプリをダウンロードするという行為をかなり怖がってる傾向があるようなのです。
ウイルスなどというと、今まではパソコンの世界だけですが、今後は携帯の世界にもそういったものがかなり入ってくるんじゃないかと懸念されているので、本当にそこで今のJavaの勝手路線をやっていっていいのかな、と考えています。ですから、JavaからBREWにシフトしていくという方向性は正しいんだろうな、と私自身は思っています。
──しかし、現時点ではJava対応の機種というのは、まだたくさんあります。ユーザーとしても、コンテンツプロバイダーとしても難しいタイミングですね。
竹之内氏
そうですね。だいたい今年から来年にかけてBREWが1000シリーズでもサポートされていくことになると、ボリューム的にもBREWの方が多くなっていくと思います。高機能機でチップを追加していったり、マルチメディアをもうちょっと深く追求していくような端末に関してはJava、ということはあり得ますが。
■ BREWの可能性
──BREWアプリ上のコンテンツの料金回収代行みたいな話はどうでしょう?
竹之内氏
今は単純にBREWアプリ本体に課金できるようになっているのですが、さらにその発展系が近々出ることになりますね。ただ、慎重に議論しないといけないなと思うのは、今まではJava対BREWみたいな話が結構出てきていますが、ここでEZweb対BREWみたいになってしまうとまずい、ということです。
──そうなると、例えばドコモがiモードコンテンツが見られるようなBREWアプリを審査に出してきたらどうなるんでしょうか?(笑)
竹之内氏
ACCESSさんがCompact NetFrontをBREW用に作っていますからね。あれを使えば、そのままiモードサイトに接続、なんてこともできちゃいますから、怖いですよね(笑)。
──そういうことも可能なモデルな訳ですね。
竹之内氏
ビジネスモデルとしてどうするかということは、今、検討していますが、技術的には全然問題なくできてしまいます。
──ハードウェアを直接コントロールするという意味では、周辺機器の登場にも期待できると思うのですが、具体的な話はありますか?
竹之内氏
ありますね。携帯電話にどんどんデバイスが追加されていくので、そういうデバイスコントロールということもあります。インターフェイスでも、単なるシリアルだけではなく、赤外線が入ってきたり、Bluetoothが入ってきたりしてますよね。BREWのアプリケーションから家電をコントロールしたりとか、そういったことは考えられます。
──では、最後に読者のみなさんに一言いただけますか?
竹之内氏
個人ユーザー向けの話としては、ゲームが一番とっつきやすいのではないでしょうか。ゼビウスとかインベーダーみたいに、みんなが過去に一度はやったことがあるという。私の子供ももう大きくなっていますが、昔のそういうゲームをやっているのを見ると、「あぁ懐かしいな」と思うんです。BREWであれば、比較的簡単に移植できますので。そういうゲームの展開は面白いと思いますね。
Webではなかなかできなかったようなこと、例えば、オークションみたいなものも面白いと思います。何か欲しいものがある場合、自動的にエージェントが確認しに行って、ある一定の額を超えた時に通知してもらったり、出品されたらその情報をもらったり。
今でもやろうと思えば、メールとかショートメッセージを組み合わせるような形でできますが、いくつかのインフラを組み合わせてやっていくというのは、非常に難しいのです。BREWでは、そういう一見複雑に見えるようなサービスも提供できます。今後、「えっ、こんなの?」というようなことができるようになると思いますので、ご期待ください。
──ありがとうございました。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
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(湯野 康隆, 協力:デジタルハリウッド)
2003/06/26 13:33
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