今年の1月に提供が開始された「au Smart Sports」は、スポーツとケータイを有機的に結びつけた、1つの“プラットフォーム”だ。同プラットフォーム上で展開されるアプリの「Run&Walk」も、6月にバージョンアップされ、“フェーズ2”がスタート。「BEAT RUN」や「カロリーカウンター」が加わったり、「パーソナルトレーナーモード」が強化されたりと、着実な進化を遂げている。ユーザー数の伸びは堅調で、さらなる市場の広がりも期待できそうだ。モバイルプロジェクト・アワード2008の受賞を機に、同サービスの狙いや今後の展開を、改めてKDDIに伺った。
■ 機能やコンテンツの“組み合わせ”によるプラットフォーム
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KDDI コンシューマ事業統轄本部 コンテンツ・メディア本部 コンテンツサービス企画部長 竹之内剛氏
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ネット、アプリ、GPS、音楽再生と、ケータイに搭載されている機能は、実に多彩だ。これらを水平的に組み合わせ、新たなサービスにまで昇華させたのがau Smart Sportsだ。KDDI、コンシューマ事業統轄本部、コンテンツ・メディア本部、コンテンツサービス企画部長の竹之内剛氏も、au Smart Sportsを「1つずつが珍しいわけではなく、組み合わせでできたサービス」と語る。夏モデルに、SportioやW64SA、G'zOne W62CAといったモーションセンサー搭載モデルを用意し、カロリーカウンターという新機能を追加したが、au Smart Sports自体は旧機種でも利用可能。サービスの核となる部分は、多くのauユーザーが今すぐ始められる。
KDDIでは、au Smart Sportsをプラットフォームと位置づけている。サービス開始前には「1コンテンツを出すというのではなく、プラットフォームとしてやれるかどうかを検討した」と言う竹之内氏は、次のように続ける。「キャリアは今までコンテンツを集約することを得意としてきた。健康管理ツールだけなら他にもいっぱいあるが、私たちがアグリゲート(まとめる)ことで、色々な使い方を提案できる」。
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KDDI コンテンツ・メディア本部 コンテンツサービス企画部 ライフスタイル企画グループリーダー 荒井克己氏
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位置づけ的には、au Smart SportsがEZwebやEZアプリに近い受け皿で、その上に載るコンテンツがRun&Walkアプリというわけだ。こう説明すれば、イメージをつかみやすいだろう。「au Smart Sportsでビジネスを考えている人を排除することはない」(竹之内氏)というように、強みを持ったコンテンツ・プロバイダーと協力して、サービスを展開していく予定だ。すでに、各コンテンツ・プロバイダーが、カロリーカウンターと連動して様々なキャラクターや背景が変化するFlashコンテンツを提供中だが、これもその一環。音楽に合わせてステップを踏むBEAT RUNにも関しても、「好みの楽曲をダウンロードできるようなサービスを検討している」(KDDI、コンテンツ・メディア本部、コンテンツサービス企画部、ライフスタイル企画グループリーダー、荒井克己氏)そうだ。
竹之内氏は、「着メロがすたれてきているが、これだったら別の遊び方を提案できる。『すたれてきたらおしまい』というのはもったいない。形を変えて使えるという意味では、エコでもある」と語る。
■ 手軽さや楽しさが受けユーザーは20万人を突破
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「Run&Walkアプリ」のメニュー画面
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竹之内氏が「スポーツに関わったことがある人、これから関わりたいという人を、我々のau Smart Sportsでサポートしていきたい」と語るように、同サービスのターゲットは、あくまでもスポーツ初級者~中級者だ。
「いざ始めようと思っても、何km走ればいいのか、どういうペースで走ればいいのかといったことが、なかなか分からない。シューズもきちんと選ばないと、足を壊してしまう。きっかけがなかった人たちも、ケータイでこの世界に戻ってきてほしい」(竹之内氏)という。
サービスは“楽しさ”を意識した。先に挙げたFlashの待受画面はその1つ。「走りやすい音や、音の増え方をヤマハ様と協力して調整していった」(KDDI、コンテンツ・メディア本部、コンテンツサービス企画部、ライフスタイル企画グループ、山田幸功氏)という「BEAT RUN」も、いかにスポーツを楽しめるかという部分に注力している。Run&Walkに「現在ワークアウト中の人数」を表示するのも、「何人走っているかを気にする人は多い。一緒に走っているという感覚で、モチベーションが上がるようだ」(竹之内氏)というユーザー心理を反映させたものだ。
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KDDI コンテンツ・メディア本部 コンテンツサービス企画部 ライフスタイル企画グループ 山田幸功氏
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もちろん、楽しさを追求したサービスだからこそ、開発には様々な苦労があった。Run&Walkアプリでの、測位精度もその1つ。竹之内氏によれば、「CDMA2000 1xを始めた2001年からGPSをやってきたが、ナビとは求められる精度が異なる。ナビは1回こっきりが多いが、ランニングだと同じコースを毎日通るため、ズレてしまうわけにはいかない。このチューニングが大変だった」のだとか。
リアルと連動するコンテンツのため、「アプリが上がってくるたびに、歩いて東京タワーまで行ってテストした」(山田氏)と、試験にも“体を張る”ことが要求される。加速度センサーへの対応も「初めてだったので、仕込みに苦労した」(荒井氏)という。
こうした苦労を乗り越え、結果として、ユーザー数は1月のサービスインから半年ほどで20万人を突破。竹之内氏も「毎週すごいスピードで伸びている」と胸を張る。女性を意識したCM展開を行っているが、「30~40歳の男性も多かった。メタボ対策として使っているようだ」(竹之内氏)と、利用者層も自然と広くなっていった。20万人には無料のライト会員も含まれるが、「プラスαのものを求めるユーザーが多い」(竹之内氏)ため、月額315円のプレミアム会員も、予想以上に伸びているそうだ。この勢いを、竹之内氏は「音楽に続き、スポーツという軸ができつつある」と評する。ライフスタイルケータイを標榜する、auの面目躍如といったところだろう。
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新たに追加となった「BEAT RUN」
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コンテンツプロバイダーの提供するカロリーカウンター対応待受画面
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パーソナルトレーナーの数が増えた
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PCサイトの機能も拡張された
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■ 今後の広がりが期待できそうなau Smart Sports
「Run&Walkはどんなスポーツにも応用できる」(竹之内氏)というように、全てのスポーツの基本となる「歩く・走る」から始めたau Smart Sportsだが、今後は、どのようにバリエーションを広げていくのか。
竹之内氏は、冗談めかしながら、「役員から必ず言われるのはゴルフ。ヘッドスピードを測れるようになど、色々と要望を受ける(笑)。これに関しても、ニーズはあるので何とかしないといけない」と話す。
水泳、サッカー、野球、テニスと、メジャーなスポーツに対応していくだけでも、新サービスを展開できる。一方で、プラットフォームとしての強化も、今後の課題だ。「プラットフォームなので、サービスを作って終わりではダメ」(荒井氏)というように、au Smart Sportsを利用するコンテンツ・プロバイダーが増えてこそ、プラットフォーム的な成功を達成したといえるだろう。竹之内氏も、「au Smart Sportsの上で、ウェルネスケータイ的なものをやるのも構わない。PS3やWiiのようなゲーム機と連動させることもできるはず」と、コンテンツ・プロバイダーの取り組みに期待を寄せる。
スポーツに留まらず、「健康管理」まで視野を広げれば、より幅広い層を獲得していくことが可能になる。「汗をかくことだけが健康ではない。『こういう食事があります』と提案するようなコンテンツがあってもいい」(竹之内氏)と応用例のアイディアも尽きない。開始から約半年で、まだ“できたてほやほやのプラットフォーム”といった段階だが、その分、開拓の余地も多く残されている。多数のコンテンツ・プロバイダーを巻き込み、ユーザーの想像を超えた、画期的なサービスが生み出されることを期待したい。
■ URL
au Smart Sportsの概要
http://www.au.kddi.com/sports/
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(石野純也)
2008/08/06 11:59
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