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【キーパーソン・インタビュー】
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4キャリア供給体制が整ったシャープの松本副社長に聞く
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au向けにW41SHを供給することで、国内4キャリアへの端末供給体制が整ったシャープ。MNP導入も目前に迫るこのタイミングで、シャープの副社長、松本雅史氏に同社の戦略を聞いた。

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シャープ 代表取締役 副社長
商品事業担当 兼 情報通信事業統轄
松本雅史氏
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――W41SHの登場により、いよいよau向けにも端末を供給することになります。まずauに端末を供給することになった経緯を教えてください。
松本氏
これまでボーダフォンさんとNTTドコモさん向けに端末を供給してきた実績もあってか、auのユーザーさんからも「SHのケータイを使いたい」というお声をいただくようになりました。それに加えて、販売店さんの現場スタッフからの声も大きく、それが我々の耳にも届くようになってきました。KDDIさんのところにも同じようにその声が届いていたようで、お互いの意向が合い、auでもSHケータイを出して行こうという結論に達した、というのがそもそもの経緯です。
――国内の携帯電話事業者全社に端末を供給することになりますね。
松本氏
au向け端末を開発するにしても、既に端末を供給している2社向けの開発リソースに影響を与えることはできません。ここが難しいところで、これまでパソコンやPDAの開発を担当していた者などを全社から集めて来ました。事業部内に新規事業推進センターを作ったのが2005年4月です。何しろ初めてのプラットフォームですから、作っているうちに開発のリソースが当初の予想以上に必要になってきました。そこはKDDIさんからのご支援もあって、どうにか端末を完成することができました。
――ウィルコムを含めれば、国内4社ですよね。そんなことをやっているのは御社だけですが、なぜそれが可能なのでしょう?
松本氏
一つには、分社化をしていない、という点が挙げられます。これにより、事業本部間の横の融合がうまく行きます。技術や人材のリソースが本部の垣根を越えて有効活用できますし、デバイスと商品の縦の融合も可能となります。また、創業来、新しいことにチャレンジしようという精神・DNAを持っているのも強みと言えるかもしれません。また、現在の携帯電話では、ソフトウェアが果たす役割が大きくなっていますが、この分野は闇雲に人員を増やせば良いというものでもありません。少数精鋭で効率よく開発を進めるということも重要ですね。
――国内シェアでは一転、追われる立場となりましたが、追う立場とは違うものでしょうか?
松本氏
1位と言っても僅差の1位です。大きな差があるわけではないので、守りに入らず、攻める気持ちを持ち続け、常にサプライズがある商品を作りたいと考えています。それがSHブランドのケータイのこだわりですね。ちなみに、「SH」というブランドは、もちろんシャープ(SHARP)を意味していますが、最近では「シャープ広島(Sharp Hiroshima)」、「シャープ東広島(Sharp Higashihiroshima)」、さらには「シャープ八本松(Sharp Hachihonmatsu)」(※事業所の住所が広島県東広島市八本松)の略だと言ったりもします(笑)。携帯電話という商品は、会社全体のブランド力を上げることにも役立っていると感じています。
――もうじきMNP(番号ポータビリティ)制度も始まります。
松本氏
MNPを利用するユーザー数については、いろいろなシミュレーションがありますよね。多いというもの、少ないというもの、30%とか、10%とか、いろいろと言われていますが、実際には始まってみないと分かりません。我々メーカーにとっては、これからもユーザーに使い勝手の良い魅力ある商品を提供していくことが使命だと思っています。
――ワンセグについてはどうですか?
松本氏
AQUOSケータイのようなものは、ご販売店等から他のキャリア向けにも是非出して欲しいと言われており、やはりこのような期待には応えて行きたいと思っています。ワンセグは今後、当社にとっても大きな武器になっていきます。私自身、部屋に大画面のテレビがあるのに、AQUOSケータイでニュースをチェックしたりしてるんですよ(笑)。トイレの中でも使うという人もいるそうで、そうやって四六時中使うとなると、電池の持ちに不満を感じることになるようです。そこは努力して行かなければなりません。
――世間ではiPodのような音楽プレーヤーに注目が集まっていますが、御社はJ-SH51以来、音楽ケータイを作り続けていますよね。
松本氏
私はよく自社の商品作りを「半歩先戦略」と言ったりするのですが、今にして思えば、あれはちょっと早すぎた「一歩先」だったかもしれません(笑)。キャリアのサービスやインフラと歩調を合わせながら、「半歩先」くらいの先進性をご提供していくことが重要です。技術面でも、今は再生時間も20時間とか30時間とかいうレベルになりましたし、通信速度も速くなり、着うたフルのように、パソコンを使わずに音楽を楽しめるようにもなりました。これからも引き続き、皆さんに満足していただける商品を作っていきたいですね。
――グローバル戦略はどうでしょう? 日本国内も、最近は欧米より、韓国を中心とするアジアのメーカーの参入が目立ってきました。
松本氏
日本のユーザーは目が肥えていますから、仕様面での“割り切り”の多い海外メーカーの端末が、日本国内でどのように評価されるのか、しっかりウォッチしていきたいと思います。特にユーザーインターフェイスに関しては、日本ならではのきめ細やかな使い勝手が求められます。しかし、近い将来、海外メーカーの端末が驚異になることは間違いなく、安心はしていられません。また、我々が海外展開していく上で目標とすべき点が多いのも事実です。ただ、当社は世界で年間1,300万台を出荷していますが、これを5,000万台や1億台にしようとは考えていません。世界市場においてもオンリーワンできちんと差別化された付加価値のある商品を提供する、というスタンスを変えるつもりはありません。当社には、例えばVGA液晶などの優れたオンリーワンデバイスもありますから、そちらとの相乗効果を生み出すような形にしていきたいと思っています。
――日本は今、ちょうど3.5Gに差し掛かったところです。4GやFMCというキーワードも注目されていますが、御社はそれらに対して、どう取り組んで行くのでしょう?
松本氏
FMCというのは、いろいろなものをシームレスに繋ごうという発想だと考えています。W-ZERO3では、PHSと無線LANの融合に取り組みました。先日発表したFAX複合機(見楽る)の新モデルでは、音声通信とIP通信の融合に取り組んでいます。当社では家庭内での安心をご提案する「リビングドアスコープ」(ドアに簡単に取り付けられる来訪者確認用のワイヤレスカメラシステム)のような機器から、健康調理を実現した「ヘルシオ」のような家電まで、幅広く作っています。今後も安全・安心・健康をキーワードに、ユーザーが便利だと感じるような商品を作って行く方針です。
また、当社の携帯電話や見楽るにはIrSimpleという高速赤外線通信技術を搭載しているので、携帯電話で撮影した写真もあっという間に転送してプリントできます。この技術を例えばテレビに応用すれば、携帯で撮影した写真を大画面で楽しむことができるでしょう。このように今後も機器間のシームレスな連携についてさらに追求して行きたいと思います。これからも当社ならではの工夫を続けていきたいですね。
――本日はお忙しい中、ありがとうございました。
■ URL
シャープ
http://www.sharp.co.jp/
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(湯野 康隆)
2006/10/06 11:15
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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