パナソニック モバイルコミュニケーションズ製「P-03A」は、縦横に開閉するWオープンスタイルを採用しながら、薄さ14.7mmに仕上げたSTYLEシリーズのFOMA端末だ。「P-03A」のコンセプトや特徴について、プロジェクトマネージャーの大北氏、商品企画担当の佐藤氏、機構設計担当の鈴木氏、ソフトウェア担当の長谷川氏、電気設計担当の太田氏に聞いた。
■ 女性にも使ってもらえるWオープンを
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左からPink、Black、White
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――P905iで初めて実現したWオープンスタイルですが、P906i、P-01Aに続いて、P-03Aでも採用されています。
大北氏
これまでのWオープンスタイル採用モデルでは、圧倒的に男性ユーザーが多いのですが、Wオープンでも女性ユーザーに持ってもらえる製品を作り出す、というところが「P-03A」開発の発端です。
佐藤氏
いわば「P-01Aの妹分」「かわいいWオープン」を作ろうと考えてきましたね。
大北氏
同時期に発表された「P-01A」と比べ、2.2mm薄くなっています。薄くする際には、堅牢性も必要になりますので、そこもカバーしながら薄くしていきました。
――手にとってみると、確かにP-03Aはコンパクトに感じます。しかし、外観だけ見るとP-01Aとの違いがよくわかりません。
大北氏
Wオープンそのもののギミックは男性に受けやすい要素がありますので、それでいて違和感なく女性にも受けいれられるには何が良いかという点を考えると、1つはサイズになりますよね。もう1つはデザインです。かといって「P-03A」は、女性ユーザーだけに限定したデザインではなく、“プチかわいい”とでも言うべきコンセプトでデザインを仕上げています。もっとも、カラーバリエーションのうち、女性に受けやすいPinkは、ハーフミラー上部にキルティング風の加工を施しています。
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左から佐藤氏、大北氏、鈴木氏
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佐藤氏
スペック重視のモデルであれば、どうしても大きめのボディサイズになりますが、やっぱり携帯電話って普段持ち歩くものですから、持ちやすさ、軽さを気にする方は必ずいます。女性ユーザーの利用を意識したサイズ、重さは重要な課題でした。
大北氏
開発中には、P-01Aと差別化するために、フロントパネル(サブディスプレイがある面)に施す、さまざまなデザインを検討しました。しかし、最近のトレンドとしては、シンプルできれい、あるいはかわいいという流れがあると思い、あまり凝ったデザインはやめようということになったのです。
――Wオープンスタイルは、ワンセグ向けという印象が強いのですが、P-03AでもWオープンスタイルが採用されたということは、それほどワンセグへのニーズは高いということでしょうか?
大北氏
調査してみると、「携帯電話に求める機能」の上位にワンセグはランクインしません。しかし、ワンセグを視聴する人は結構存在します。ということは、もはやワンセグは特徴ではなく、カメラのような必須機能として捉える方が増えてきたと我々は見ています。そのためにもWオープンでいくべきだろうということです。
佐藤氏
ですから、デザイン面ではWオープンっぽさをできるだけ打ち消した形状を採用する方針でした。サイズ感も一般的な折りたたみ型と変わらないレベルにしています。
――しかし、Wオープンを採用したモデルが過去1年間で立て続けに発売されました。「P-03A」でも採用することで、新鮮みに欠けて飽きられる、という不安はなかったのでしょうか?
大北氏
もちろん、その怖さはありました。ですから、今回はハイエンド層とは異なるユーザー層に向けたWオープンを作りたかったのです。これまでと同じものをまたリリースする、ということでは確かに飽きられるでしょうが、Wオープンでありながら女性を意識したデザインや機能に仕上げています。
■ 薄さを実現した仕組み
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左がP-01A、右がP-03A
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左から長谷川氏、太田氏
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――Wオープンを採用しながら14.7mmという薄さは、どう実現したのでしょう?
鈴木氏
「P-03A」では、キー側ボディの内部にメインの基板があります。こういった構造の場合、従来モデルでは、メイン基板の上に、テンキー用の基板がありました。つまり二層構造ですね。しかし、薄くするために、二層ではなく一層にしました。
具体的には、基板1枚の一方は、部品が占める面積を減らしながらメイン基板の機能を実装し、もう一方にキー用の回路を配置したのです。
――部品が占める面積を減らす、ということは、機能を削減するということですか?
大北氏
それも1つありますが、もう1つ、一部の部品をモジュール化しています。
太田氏
これまでの部品配置の様子を家屋で例えると、従来は平屋の一軒屋が並んでいたのですが、今回は2階建ての家にした、というイメージですね。平面で構成されていたのが部品を積み重ねたという感じです。同じようなことは、過去にも行ったことはあるのですが、当社の工場で新たな技術を加えて作り上げました。
――部品を積み重ねる、ということは厚みに影響しそうです。
太田氏
今回は厚みに影響しない場所を見つけて、そこに2階建ての建物を作ったのです。この仕組みが採用されたのはP-03Aが初めてで、P-01AやP-02Aでは採用されていません。今後登場するであろう携帯電話では採用されていくことになるでしょうね。
大北氏
この技術はある日突然できたのではなく、長い年月をかけて開発してきた工法です。実現の目処が立って、今回利用することにしましたが、それでも薄さ実現のためには、多くの課題がありました。
鈴木氏
モジュール面での工夫のほか、カメラやスピーカーの配置といったレイアウトなどで工夫しながら、薄さ14.7mm、幅49mmにしました。このサイズに収めるには苦労しましたね。
――薄くすると本体の剛性に影響すると思いますが、どうやって剛性を保っているのでしょう?
鈴木氏
携帯電話のしっかりした本体構造を実現するには、さまざまな手法がありますが、今回は内部の基板を覆うように、樹脂をメッキした部品を入れています。いわば、携帯電話本体の中に大きな1本の芯を作ったのです。他の機種では、金属板を用いたりするものもありますが、今回はそういった手法ではありません。
――Wオープンスタイルは、薄くする上でどういった難しさがあるのでしょう?
鈴木氏
ヒンジそのものは、位置こそ違えども、P-01Aと同じものです。一方、横に開くときにWオープンスタイルではディスプレイ側ボディとキー側ボディをフックで繋ぐのですが、このフックは磁石で持ち上げるという構造です。
今回、薄型化のために磁石を横長にして薄くしながら、なおかつ磁力を保っています。また、フックが飛び出しやすいよう、摩擦抵抗も下げています。
――P-01Aでは2WAYキーが大きな特徴となっていますが、P-03Aでは採用されていませんね。
佐藤氏
そこはコンセプトの違いですね。2WAYキーを採用すると厚みに影響が出ます。厚みか2WAYキーのどちらをとるか。また、P-03Aのコンセプトは女性ユーザーを意識したものですが、2WAYキーを便利と感じる層は横画面で携帯電話をばりばり使う層です。P-03Aで狙う層とはちょっと違う部分でしょう。
――このほかで薄型化を実現した要素はありますか?
鈴木氏
1つはバッテリーカバー(リアカバー)です。P-01Aは樹脂製ですが、P-03Aでは金属プレートで、0.3mm薄くなっています。またカメラモジュールも薄くしています。1つ1つは小さな取り組みですが、それらを積み重ねることで、全体的に薄くしています。
■ 320万画素カメラを搭載、“時計代わり”になる待受機能
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カメラ撮影画面
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――320万画素CMOSカメラは特徴的な機能の1つですね。
太田氏
カメラモジュールを薄型化するために、レンズ部分も新たに開発し、より美しく撮影できるようにしています。
長谷川氏
顔認識オートフォーカスや6軸手ブレ補正という機能もありますし、逆光で撮影しても顔が見えるようにする補正もあります。撮影モードを「標準」にすると、撮影時に「人物」か「風景」か、自動判別してきれいな色味で仕上がるような工夫をしています。
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待受画面の時計用フォントは、従来より大型化したものが選べる
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ただ、撮影するだけではなく、撮った写真の使い道も今回は工夫しています。1つは、マルチキー(テンキー下に配置されたキー)を長押しすると、データBOX内の写真フォルダへすぐアクセスする「ピクチャフォルダジャンプ」という機能です。友人にも「これ見てよ」とすぐ写真を呼び出せる機能です。
もう1つが「ランダム待受」と名付けた機能です。これは、1時間おき、あるいは1日おきに待受画像を自動的に切り替えるという機能です。仕事などをしていて、1時間後にケータイを見ると、子供やペットの写真が別の画像に切り替わっていて楽しめる、といった感じですね。
佐藤氏
最近はカメラ販売コーナーにデジタルフォトフレームがよく販売されていますが、「ランダム待受」もフォトフレームのような機能です。Wオープンは、机など平らな場所に置きながら画面を見る場合に、とってもしっくりくる形状です。「P-03A」では、何かしながらケータイをたまに見る、という使い方を提案しています。開発時には「ケータイは開けっ放しでいいよね、待受画面はときどき目にできて、時計になっていると良いよね」といった話をしていて、その結果、「P-03A」の待受画面に表示する時計の文字サイズには、従来よりも遙かに大きなサイズのものを用意しています。
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待受画像を定期的に切り替える「ランダム待受」
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縦開き、横開きでアニメーションも変わる
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――イルミネーションも面白いですね。
佐藤氏
LEDは結構注目されるポイントですから、今回も何かしら特徴を持たせるべきと考えていました。デジタルな動きではなくて、ちょっと何か感じられるようなもの、それでいて厚みに影響しないものを、と考えました。そこで今回は7色に光るLEDを中央において、その下に3つのLEDを配置しています。その光り方は、「ハッピーイルミネーション」と名付けました。
LEDだけで表現するのではなく、すぐそばにある有機ELサブディスプレイと組み合わせた演出をするようになっていて、デザインする際には水をイメージして、水滴がしたたり落ちるような動きを再現したものなどがあります。ちなみに水のイメージは、待受画面用のプリセット画像などにも反映されています。
――プリセットコンテンツでスヌーピーが採用されていますが……。
佐藤氏
端末を閉じた時に有機ELサブディスプレイに、スヌーピーが出てきたり、足あとだけ見えたりすることがあります。ハッピーイルミネーションやサブディスプレイの動きは、地味ながら普段使っていくと、ふとしたときに気づくような機能です。日常生活を楽しくするというのは、P-03Aのポイントですね。
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P-03A開発陣
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――機能面で改善された部分はありますか?
長谷川氏
テンキーの「6」を長押しすると、メールや待受画像など個人的なデータを見られないようにする「パーソナルデータロック」という機能が利用できます。過去の機種でも採用されていたのですが、ロックすると待受画像などが全て出荷時の状態で表示されます。しかし、「ロックしながら待受画像や着信音は自分好みにしたい」という要望があり、今回はロック状態でもカスタマイズできるようにしています。
大北氏
今夏に発売した「P706ie」のノウハウも活かしていて、文字サイズや通話機能(しっかりトーク/ゆっくりトーク)に反映されています。過去の機種で良かった点は、後継機種でも踏襲しています。また、「P-03A」には、携帯電話のほかワンセグやおサイフケータイなどをサポートし、多くの無線技術が内蔵されています。それでも電波の感度といった基本的な性能はしっかりと作り上げています。薄くなったからといって妥協はしていません。ワンセグではダイバーシティアンテナはありませんが、十分な感度を確保しており、基本的な品質の高さは、他社には負けない自信があります。
――今日はありがとうございました。
■ URL
製品情報(パナソニック)
http://panasonic.jp/mobile/docomo/p03a/
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(関口 聖)
2008/12/24 12:34
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