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「W64SH」開発者インタビュー
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フルスライダーに生まれ変わったAQUOSケータイ
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「AQUOSケータイといえばサイクロイド」というイメージが定着しているが、W64SHはスライド機構を採用した新しいタイプの「AQUOSケータイ」だ。そこでシャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画部の谷 健氏に、新スタイル誕生に関する背景や、機能についてお話を伺った。
■ 開発経緯
――W64SHはすでに販売が開始されていますが、感触はいかがでしょうか。
谷氏
おかげさまでかなりご好評いただいているようです。もともと20代~30代の男性を意識して作ってはいるんですが、意外にもマーズレッドが20代女性に人気なようで、女性の中でも40%が20代の女性という状況です。
――なるほど。ではあらためて今回のW64SHの開発コンセプトを教えてください。
谷氏
去年から今年にかけて、動画市場と大画面高画質ディスプレイ市場への期待が非常に高くなってきています。また、去年の暮れから今年の頭にかけて、LISMOの動画コンテンツも大きく進化してきたという背景があります。
弊社のもともとの強みはディスプレイの液晶技術であり、NewモバイルASV液晶、大画面高精細AQUOS画質というのを売りにしていますので、市場の背景と弊社の強みの2つを融合させた、LISMOコンテンツやワンセグなどのマルチメディアコンテンツを大迫力で楽しめるモデルはどうかと考えました。
そこで、「スーパーAVビューワーケータイ」をコンセプトに、大画面の高画質のディスプレイ、5.2メガピクセルのAFカメラ、BluetoothやFMトランスミッター、ステレオスピーカーで楽しめる「ワイヤレスミュージック」、そしてフルスクリーンスライダー&フィーリングインターフェイスを開発コンセプトの軸に、横画面での利用を意識した新しいAQUOSケータイが生まれたのです。
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シャープ
谷 健氏
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――「AQUOSケータイ=サイクロイド型」というイメージがありますが、今回はスライド型なんですね。
谷氏
今まではAQUOSケータイといえばサイクロイド型だけだったので、そういうイメージが定着しましたが、もともと“サイクロイド型=AQUOSケータイ”というわけではないんです(笑)。画質や品質面に加え、ワンセグが見やすいスタイルであることが非常に重要なのですが、今まではサイクロイド型で見せるスタイルがベストだという選択でした。しかしその後技術も進歩し、大画面化も加速したため、今回はスライド型という結論になりました。
今回のスタイルを我々は「Full screen slider」(フルスクリーンスライダー)と呼称しております。最大の特徴は3.5インチフルワイドVGA液晶やステレオスピーカーを搭載しているため、高画質エンジンで大迫力のAV視聴が可能な点ですね。
さらに光TOUCH CRUISERと、加速度センサーを積んでおりますので、感覚的な操作ができます。
――スライダーを採用される決め手はなんだったのでしょうか?
谷氏
今回は横画面での利用をもっとも意識しているため、やはり一番大きな理由は、大画面を活かした操作性ですね。閉じた状態で使えるというのはスライダーぐらいですよね。そのような操作の簡単さとディスプレイの大きさを両立させるには、スライダーが一番魅力的だと考えました。しかもフルスライダーというのが一番大画面を訴求できますし。
■ 機能について
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W62SH(左)とW64SH(右)
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――新たに追加された機能が非常に多いようですが、特にポイントとなる点をご紹介ください。
谷氏
まず第一にはやはり弊社の最高技術を採用した、3.5インチという大画面でしょう。3.0インチのW62SHと比べた場合でも、面積で36%アップしています。「NewモバイルASV液晶」により、明るく、自然で鮮やかな発色が楽しめます。さらに「リフレクトバリアコート」により、太陽光の下でも余分な光の反射が低減されています。
快適なワンセグ視聴にも力を入れていまして、新たに高画質モードというものを搭載しています。以前から動画表示時には最大2000対1の高コントラストを実現しており、30fpsのVGAの動画も再生が可能ですが、今回はさらに、15fpsのワンセグを最大2倍の、毎秒30fpsに補間するなめらかモードも搭載しています。
映像内容に応じてバックライトの輝度を制御する機能は従来からありましたが、今回は新たに周囲の明るさも認識して映像コントラストを調整できるようになりました。また、シャッターキーの長押しで簡単に録画することができます。データフォルダに録画したコンテンツを9回までコピーすることができる(最後の1回は移動)「ダビング10」にも対応しています。
加えて、LISMOビデオやビデオクリップ、ムービーなどのコンテンツを16:9のフルワイドVGAに拡大する機能も搭載しました。「リフレクトバリアコート」と組み合わせて、屋外でもワンセグや動画コンテンツが楽しめるというのが1つのメリットになっているかなと考えています。
加速度センサーとも連携していますので、向きを変えることで画面の方向も変わります。270度回転もできますので、左利きの方でも光TOUCH CRUISERによるワンセグ操作がしやすくなっているんです。これはかなりご好評いただいている点です。
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カメラ機能も加速度センサーにより、向きを認識する
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――カメラ周りの機能も盛りだくさんですね。
谷氏
最大5.2メガピクセルで写真が撮れるというのが一番の大きなウリにはなっているんですが、さらに今回はauさん向けでは初めて「顔検出AF」に対応しました。これは最大5人まで顔を検出し、自動的にピントをあわせる機能です。顔をユーザーさんが自分で選択することもできますし、逆光補正をかけるような後処理技術も採用しています。
ファインダーを9分割にして、そのエリアからユーザーさんが自分でAFエリアを選べる「スポットAF」も今回初対応しています。また、広角29mm撮影も可能ですので、よりワイドに撮影できるようになりました。もちろん手ブレ補正や被写体ブレ補正もサポートしています。メニューとしては「テキストリーダー」も今回初めて採用しています。
ユニークなところとしては、加速度センサーを利用した撮影モード切り替えに注目していただきたいですね。これは縦位置か横位置かを自動的に判断してグラフィックUIが切り替わるものですが、実際撮った方向で保存することもできるんです。デジカメモードだけの機能ですが、かなり親切だと思います。
――ブログに投稿した写真が寝転んでいたなんてことが防げるわけですね(笑)。
谷氏
その通りです(笑)。
――他のキャリアさん向けには8メガCCDというのもありますが、今回W64SHは5メガのCMOSです。その理由は?
谷氏
W64SHについてはコンセプトとしてカメラ機能を一番のウリにした端末ではないという点が理由となります。とはいっても、カメラ画質やカメラの機能は妥協してはいません。かなり綺麗に撮れると思いますし、機能もいろいろ盛りだくさんだと思います。
もし今後の方向性として、auでもカメラにフォーカスした端末を出すとなれば、そのときの最先端のものを搭載していくことになると思います。
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編集可能な日英翻訳。音声読み上げもできる
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――なるほど。細かい部分でもかなり新機能が盛り込まれてきた印象です。そのほかにはいかがでしょうか。初対応機能がかなり多いと伺っています。
谷氏
au向けでは初めてアウトラインフォントを採用しました。プライバシー保護に役立つ「新ベールビュー」は、ダウンロードも可能でケータイアレンジに対応しています。加速度センサーを使ったゲーム、閉じると自動でロックがかかる「クローズロック」なども初対応ですね。au向けのシャープ端末としては初めて日英のバイリンガルに対応しています。
さらに、グローバルパスポート CDMAにも対応しましたので、それに伴い、簡単にキーワードから日常会話を検索して、その英訳を音声で自動で読み上げてくれる「日英翻訳」も搭載しました。人気シリーズである「旅の指さし会話帳 中国」もご利用いただけます。
また、辞書機能も強化されておりまして、10個以上のネット辞書から一括検索ができる「串刺し検索」機能も初めて追加しました。1個ずつ調べる必要がないので非常に便利です。
メール機能では、重要なメールにレッド、ブルー、グリーンの3色で色をつけられるようになっています。リスト表示でも色のついた文字になりますし、中の1件表示のタイトル分でも着色されますので、大事な人からのメールなどの識別に使えます。
メールのリスト画面の文字サイズは、今まで1つしか選べなかったんですが、今回は「中」と「やや大」の2つが選べるようになりました。「中」にすることでよりたくさん出せるようにしています。
■ 操作性について
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光TOUCH CRUISER部分。丸いボタンはクリアキー
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――新対応ポイントが非常に盛りだくさんで驚きました。ここまで画面が大きいと、デザイン的にも自然と画面にタッチしたくなるんですが(笑)、タッチパネルを採用されなかったのはなぜでしょうか。
谷氏
もちろんタッチパネルについては、コンセプト次第では採用することもありえる機能だとは思いますが、今回は対応していません。それは基本的に、よりビューワーを意識したコンセプトだからです。タッチパネルに代替するものとまではいかないですが、光TOUCH CRUISERを使っていることで、閉じてる状態でもいろんな操作ができるようには工夫しています。横向きでの利用を意識したクリアキーもあります。
――なるほど。今回は横画面のデータフォルダ表示に対応されていて、サムネイルが非常に綺麗でいいなぁと思うんですが、縦画面にはできないんですか? 縦画面で同じように使えるともっとわかりやすく伝わるのかなという感じがするんですが。
谷氏
そうですね。やはり最初に横画面にこだわって作ろういうコンセプトがありましたので今回は横に特化してます。そこは確かにシームレスにできたほうがいいところなのかなと思いますので、今後の検討課題とさせていただきます。
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横画面でのAVメニュー
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――充電端子ですが、今回はイヤホン端子との一体型です。こちらもauでは初採用ですよね。なぜ一体型にされたんでしょうか。
谷氏
小型化が一番大きな理由ですね。他のキャリアでも年々小さくしていくという流れがありましたので、おそらく流れ的には充電端子にまとめていく方向ではないかと考えています。
――スピーカーですが、今回は端末の両サイドにディンプル加工を施され、その裏に配置されています。露出していないことで着信音の鳴りだしが小さい点が気になります。
谷氏
実は音自体はちゃんと出せるんですが、スピーカーとレシーバーの場所が近いので、聴覚保護の点であえてそうしています。スピーカーが露出していないからではないんです。ただ、おっしゃる通りに分かりにくくなっているところだと思いますので、もっとわかりやすく訴求するべきだと認識しています。
――大画面でスライドなのでバッテリーの持ちが結構気になりますが、そのあたりはいかがでしょうか。
谷氏
クローズしたときに画面を消したり、ディスプレイマナーやクローズでロックするような機能入れたりと、いろいろと工夫はしてはいるのですが、簡単にバックライトがついてしまいますので、やはりスライダーの省電力化は一番難しいのは事実ですね(苦笑)。使いやすさと直結している面でもあるので、犠牲にもできない。今後一番力を入れたいところでもあります。
――簡単に設定できるロングライフモードみたいなものがあるといいかもしれませんね。
谷氏
そうですね。検討していきたいと思います。ロングライフにしたい方と、簡単に使いたい方と分かれると思いますので、どこかのキーにアサインするなど、簡単に設定できるようにしたいところです。そのあたりは最重要課題と認識しています。
――市場の流れとして、防水対応の端末がこれから増えていくと思われます。今後実装予定はありますか? やはりスライダーですと機構的に難しいでしょうか。
谷氏
確かに構造的にスライダーは一番難しいと言われてはいますが、できないことはないのです。スライダーに限らず、いろいろなスタイルの防水機構を検討していますが、現時点でいつという明言はできません。
――では最後に一言お願いします。
谷氏
2年間使う端末として、今回は液晶のクオリティから操作性に至るまで、使い勝手を非常に重視し、機能的に細かいところまでこだわって作りました。パフォーマンスもかなり向上しています。FMトランスミッターのようにお客様が今まで使っていただいて便利だと思っていたような機能を、簡単にドロップしてはいけないという点も念頭において、十分な機能を搭載しています。新しいスタイルのAQUOSケータイをぜひお試しください。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
■ URL
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/w64sh/
製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/ichiran/cdma1x_win/w64sh/
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(すずまり, 編集部)
2008/12/18 18:40
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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