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「P706iμ」開発者インタビュー
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9.8mmにワンセグを搭載する難しさ
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薄さ9.8mm、世界で最も薄い3G端末「P706iμ」は、パナソニックの薄型端末シリーズの最新モデルとして、新たにワンセグ機能に対応した。どのような工夫が凝らされているのか、プロジェクトマネージャーの大北 英登氏、機構設計の佐々木 智氏、電気設計の萱森 学氏に聞いた。
■ P705iμからの進化
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薄さ9.8mm
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大北氏
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――P705iμの登場から半年、ワンセグ搭載が進化した点となるのでしょうか?
大北氏
はい、ワンセグ搭載が一番大きなポイントですね。P706iμは9.8mmという薄さで、ビジネス層向けの機種という位置付けですが、そういった方々からもワンセグを求める声が最も大きいことから搭載することになりました。
――P705iμの時点では、ワンセグ搭載は難しかったのでしょうか?
大北氏
P705iμの開発では、9.8mmというサイズに到達することを目指しており、ワンセグ搭載は技術的に見通しが立っていませんでした。ただ、そういったニーズがあるということで、なんとか搭載する方策はないかと追求し、チューナー部品の進化や、アンテナの工夫で今回実現にこぎつけたということです。
萱森氏
P706iμは、携帯電話(FOMA)とFeliCa(おサイフケータイ)、ワンセグと3つのアンテナが内蔵されています。しかもワンセグのアンテナはホイップ式ではなく、内蔵型です。ワンセグと、FOMAやFeliCaのアンテナを両立させるのは、技術的にハードルが高かった部分ですね。
■ 設計で苦労したポイント
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ボディ全体をワンセグのアンテナにしている
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――アンテナの工夫について、もう少し詳しく教えて下さい。
萱森氏
携帯電話の場合、複数のアンテナをごく近い距離で配置するのですが、ノイズを抑えながらどう成り立たせるか、という点で苦労したことになります。ワンセグのアンテナは、内蔵型というよりも、他のパナソニック製端末でも採用されている手法で、ボディ全体をワンセグアンテナとして機能させる仕組みです。いわば、ワンセグアンテナの中に携帯電話とFeliCaのアンテナ、液晶やバッテリー、基板といった部品が入っている状態なのです。
そういう意味で、各アンテナの特性や内部に搭載するデバイスの配置など、さまざまな要素を加味しながらきちんと受信できる、あるいはきちんと通信できるアンテナ特性を成立させなければいけません。
――ボディ全体をアンテナにする方法は、最近のパナソニック製の携帯電話で多く採用されている方法ですよね。
萱森氏
確かにその通りですが、機種が異なると内部の部品配置が異なります。内部構造が異なると、アンテナは全てチューニングしなおすことになるのです。もっとも、基本的なノウハウ、つまりどうすれば解決できるか、ある程度手法が見えているため、それを参考にしながらチューニングしていくことになります。
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萱森氏
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佐々木氏
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カラーによって塗装工程が異なる
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大北氏
当社では、ワンセグの受信感度を追求しており、妥協せずに開発してきました。アンテナ部を筐体の外に出すホイップ式であれば、制約は減るのでしょうが、ワンセグを使うシーンを想定して目標を定めていますから、内蔵式にこだわっているのです。このあたりの技術は、かなりノウハウが必要だと思いますね。
――構造面で、変化した部分や苦労した点は?
佐々木氏
P705iμから比べると、ステンレス部分が大きく変化しています。ステンレスそのものはP705iμでも採用していましたが、今回は、プレスして形状を作った後に研磨して塗装し、さらにレーザー印刷しています。もともとこの加工を行うと歩留まりはあまりよくないのですが、工程などに工夫を加えることで歩留まりを向上させ、なおかつデザイン性を追求するというところが一番苦労したポイントです。ちなみに、ゴールドだけ塗装工程が異なっていて、仕上がりの質感を変えているのです。
――どのような工程を経ているのでしょうか?
佐々木氏
樹脂に塗装する場合、塗料の温度を上げて塗るということになりますが、今回ゴールドでは、高温で塗料を固めるという方法を採用しました。これはカメラなどでも利用される工法です。ブラックとレッドについては塗料を吹き付け、その上にUV硬化を行うというやり方を採っています。ゴールドは金属感を損なわずに、色をばらつきなく再現させるため、薄膜コートで実現しています。その分、ゴールドの二次加工工程は高い難易度と言えますね。
■ サブ液晶を見送った背景
――サブ液晶は搭載していませんね。
大北氏
ワンセグ搭載の結果、影響が出たのはサブディスプレイでした。今回、非搭載ということになりましたが、その理由の1つは、9.8mmという薄さの中でワンセグ搭載を実現したことです。それだけワンセグへのニーズが大きいと判断したのです。
デザイン面では、P705iμから変化をつける事を目指していましたから、サブ液晶非搭載は結果的に異なるテイストのデザインを採用することに繋がりました。今回は9.8mmにこだわりながら開発を進めてきましたが、たとえばサブ液晶がないことや、ワンセグを搭載したことなどで、強度の確保の仕方もP705iμとは異なっており、新たに開発しなおしました。つまり構造が異なると、力のかかる場所が変わってくるのです。
――9.8mmが最も優先された特長ということになるのでしょうか。
大北氏
携帯電話として、十分薄いサイズですからね。その中にワンセグ機能が入っているというインパクトをどうしても実現したかったのです。9.8mmという薄さは、今のところ、スライド型などでは実現しておらず、折りたたみ型かストレート型しか実現できません。
この厚み・サイズでもドキュメントビューアなどビジネス層に向けた機能をしっかりサポートしており、FOMAハイスピード(HSDPA)などのサービスにも対応しています。90Xiシリーズとは異なった路線のモデル、つまり廉価版という位置付けではなく、薄さを追求したモデルとして、この魅力を伝えていきたいですね。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://panasonic.jp/mobile/docomo/p706imyu/
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(関口 聖)
2008/08/05 11:11
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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