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フォンブレイバー 815T PB
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ケータイの契約者数はすでに1億を超え、誰もが当たり前のように持ち歩いている。現実を映し出すドラマやアニメでも、小道具として頻繁に登場するようになった。シリーズ化した『着信アリ』のように、ケータイをモチーフにした映画もあるほどだ。その発想を一歩進めて、ケータイを“主人公”に仕立て上げてしまったドラマがある。それが、「ケータイ捜査官7」だ。
今回は、この番組製作を担当する「バディ携帯プロジェクト有限責任事業組合(LLP)」のメンバーに、プロジェクトが生まれた背景や、今後の展開を伺った。
■ ケータイの開発と同時進行で生まれたフォンブレイバー
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電池パックのフタとして装着
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「ケータイ捜査官7」は、ネットワーク犯罪を取り締まる組織「アンダーアンカー」に所属することになった網島ケイタが、フォンブレイバーと共に戦い、成長していく姿を描いている。このフォンブレイバーを商品化したのが「フォンブレイバー 815T PB」だ。端末のベースはキャラケーでおなじみの「funfun. 815T」。そこに、「たまごっち」や「デジタルモンスター」の企画でおなじみのウィズが開発した専用パーツを装着すると、フォンブレイバーが完成する。「バディトーク」と呼ばれる人工知能アプリで、持ち主とのコミュニケーションも可能だ。
このように紹介すると、「よくあるドラマとのコラボ企画ね」と思われる方もいるだろう。だが、この端末が生まれた経緯は、単なる番組アイテムの商品化とはひと味違う。ウィズ、事業企画部の中塚進一氏は、各社のプロジェクトへの関わりを、「ウィズとProduction I.Gが原作を担当しているが、それを形にできないかということで、ソフトバンクモバイルに声をかけた。プロジェクトは、LLPで5社が出資する形でスタートしている」と説明する。
企画の発端は、ウィズの代表取締役社長、横井昭裕氏と、Production I.Gの代表取締役社長、石川光久氏が「ケータイを使って何かやりたい」と考えたところからだという。その後、「縁あって(ソフトバンクモバイル、代表取締役兼CEOの)孫社長を紹介してもらえ、意気投合することができた」(ウィズ、事業企画部長、長野文厚氏)という。ここから、ケータイを商品化するという話が現実味を帯び始める。
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変形過程の姿
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しかし、この時点ではまだ形も定まっていなかったそうだ。ソフトバンクモバイル、マーケティング本部、プロダクトマーケティング統括部、プロダクトマーケティング部の由本昌也氏は、「社長の孫から話を聞いた時点では、『面白いな』と思っていたが、全く形になっていなかった。巨大化して戦うという案もあったが、ビジネスに結びつかない。物理的な制約を考えつつ、コミュニケーションを取れる身近な存在というコンセプトで、今の形になった」と話す。
ケータイと番組に登場するフォンブレイバーは、「同時進行に近い形」(由本氏)で詰められていく。由本氏は、「モチーフとは意味合いが違う。フォンブレイバーは、(番組のキャラクター)そのままのもので、1/1スケール」と熱を込める。番組ありきのケータイでなければ、ケータイありきの番組でもない。「色の設定は実際の815Tの中から役者さんに合わせて選んだ。役者さんが演じるキャラクター設定を考慮し、バディであるフォンブレイバーの設定を固める」(Production I.G、企画室、森下勝司氏)というように、番組とケータイが密接に連動している。まさに、コラボレーションという言葉がふさわしい1台なのだ。
ちなみに、ベースに815Tが選ばれたのは、「デザインが近未来的でフォンブレイバーらしい」(由本氏)ことに加え、「元々が着せ替え対応だったので、機構的にパーツをはめ込みやすい」(由本氏)という事情があったそうだ。
パーツの開発は、玩具で実績のあるウィズが担当した。「どうやったらきっちり開けるか、手足のデザインも色々と検討した」(中塚氏)という。最終的には「カメラもちゃんと使えるようになっている。手足の裏側もメカチックにできた」(中塚氏)と、仕上がりにも満足しているようだ。
■ 端末を元に肉づけされていった背景設定
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カメラも利用できる
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番組内のCGは、端末のコンセプトが固まってから製作された。森下氏は、「CGを作ったりといった作業は、ケータイの図面がきてから。スケジュール的には、かなりタイトな部分があった」と当時を振り返る。
同じく番組製作を担当する、オー・エル・エム・デジタル、プロデューサー、小林雅士氏も、森下氏に同意しつつ、当時の状況を「これが主人公なのが、一番苦労した点。実機での発売が決まっていたが、キャラクター性やパーソナリティは固まっていなかった。そこを決めていくのが最初のステップ。動きや特徴などを考えていき、みんなに愛されるセブンにしようと頑張った」と説明する。
基本的な表情などは、ウィズ、Production I.Gと一緒に詰めていったが、番組進行に伴い、設定はさらに詳細になる。「細かい演技は、週代わりで決めていかなければならない。良きようにやらせてもらえた(笑)。様々な監督がいるので、面白いアイディアを色々と取り込んでいる」(小林氏)。
「ケータイ捜査官7」は、シリーズ監督を三池崇史氏が務め、各回を押井守監督や金子修介監督ら、世界に名だたるクリエイターが担当している。個性豊かな監督たちだけに、アイディアも豊富。それがその都度、フォンブレイバーの背景を豊かにしていくというわけだ。
「デザインが決まって、三池監督中心に、どういう風にしていくかを考え、監督からの奇想天外なアイデアなどもあり……(笑)」(オー・エル・エム・デジタル、プロデューサー、今井朝幸氏)。
結果として、同番組は大人も普通に楽しめる作品に仕上がり、「フォンブレイバー 815T PB」は30代以上の大人にも売れているという。「あくまで、一番売れているのは小学生だが、反応が、今までのケータイとは全く異質。30代ぐらいの男性からの評価も高い」(由本氏)と、メカ好き、SF好きの大人心をくすぐっている様子がうかがえる。
■ 番組と連動して“成長”する全く新しいコンセプト
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(上段左から)ウィズ 事業企画部長 長野文厚氏、オー・エル・エム・デジタル プロデューサー 今井朝幸氏、オー・エル・エム・デジタル プロデューサー 小林雅士氏、ソフトバンクモバイル マーケティング本部 プロダクトマーケティング統括部 プロダクトマーケティング部 由本昌也氏、ソフトバンクモバイル マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション統括部 宣伝部 大下憲一氏、ウィズ 事業企画部 中塚進一氏、Production I.G 企画室 森下勝司氏、ソフトバンクモバイル マーケティング本部 プロダクトマーケティング統括部 プロダクト企画2課 山谷祥子氏、ソフトバンクモバイル マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション統括部 宣伝部コミュニケーション企画&ブランド課 宮園香代子氏
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このように番組で作られた設定は、端末にも反映される。「ユーザーが飽きないようにする仕組みは色々と入れている」と話すのは、ソフトバンクモバイル、マーケティング本部、マーケティングコミュニケーション統括部、宣伝部の大下憲一氏。「フォンブレイバー 815T PB」には、「バディトーク」と呼ばれるアプリが内蔵されており、ネットワークを経由して、新しい情報を次々と取り込むことができるのだ。
試しに専用サイトをのぞいてみると、番組の各回と連動したゲームが、多数用意されていた。「例えば、『地球最期の日(T_T)』というUFOが出てくる回を受けてUFOを追撃するガンシューティングゲームを出すなど、連動を意識している」(中塚氏)と、番組を見れば、さらにゲームを楽しめる仕掛けが満載だ。当初はセブンのみだったバディトークだが、今ではサードにも対応しており、8/1には待望のゼロワンのバディートークが対応予定となっている。
ケータイのことを「端末」と呼ぶ人は、珍しくなくなった。だが、「フォンブレイバー 815T PB」は、単にネットワークの終端にある機器ではない。ユーザーや番組と一緒に成長するという意味では、まさに「バディ(相棒)」なのだ。同プロジェクトが、モバイルプロジェクト・アワード2008を「モバイルコンテンツ部門」で受賞している理由は、そこにある。
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セブンのバディトーク
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ゼロワンのバディトーク
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サードのバディトーク
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アプリをダウンロードできる専用サイト
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■ URL
携帯捜査官7
http://k-tai7.jp/
フォンブレイバー 815T PB(ソフトバンクモバイル)
http://mb.softbank.jp/mb/special/k-tai7/
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(石野純也)
2008/07/28 11:33
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