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1,000万ユーザーを超えた「モバゲータウン」の“今”
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2006年2月にオープンし、わずか2年2カ月ほどで1,000万人のユーザーを抱える巨大サイトに成長したモバゲータウン。当初はゲーム&SNSという色合いが濃かったサイトも、ユーザー数の増加に伴い、徐々に「ポータルサイト」へと姿を変えている。一方で、サイトの「健全化」も目下の課題だ。そこで、DeNAのポータルコーマース事業部モバイルポータル部部長の畑村匡章氏に、“モバゲータウンの今”を伺った。
■ ポータルサイト化を加速させるモバゲータウン
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DeNA ポータルコーマース事業部モバイルポータル部部長の畑村匡章氏
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モバゲータウン
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モバゲータウンは、その名の通り、元々は「ゲーム&SNS」が中心のケータイサイト。無料のゲームでユーザーを集め、SNSでコミュニケーションを促してページビューを確保するという戦略で、ユーザーの高い支持を集めた。だが、ユーザー数の増加に伴い、徐々にサイトの内容も変化。今では、ニュースや乗り換え案内、天気予報などが充実し、ポータルサイトと呼んでも差し支えないレベルになっている。
中でも「3名で1年間と、開発にはわりと時間がかかったほう」(畑村氏)という検索は、同サイトをポータルに飛躍させる重要な機能だ。検索窓を設置したことによって「トップページを見てくれる人が増えた」(同氏)というように、ゲームやコミュニティに頼らない、新たなモバゲータウンの魅力が生まれつつある。同氏が「ユーザーが検索したキーワードを元に、人気のワードがあらかじめ検索窓に入力された状態になるようにしている」というように、検索利用を促すことが人気の秘密なのかもしれない。
母集団の大きさを活かし、検索の利用数も好調だ。具体的なクエリー数などは公表されていないが、ドコモのiMenuでは、Yahoo!モバイル、Googleモバイルに続く第3位のポジションを占めるほどに成長した。
同サイトではニュースへのアクセス数も絶大で、「かなりの勢いで伸びている。ケータイの世界ではかなりのシェアを占めているはず」(畑村氏)という。
■ ゲームポータルで新たなビジネスモデルを導入
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モバゲータウンのゲームポータル化を発表したDeNA。中央が代表取締役社長の南場智子氏
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従来から力を入れていたゲームコンテンツも、さらに強化する。DeNAは4月16日に、モバゲータウン内に新たなゲームポータルを開設すると発表。ゲームは基本的に無料だが、アイテムなどを購入する際には課金が発生する仕組みだ。
畑村氏が「今回はゲーム用通貨の売り上げをシェアしていくというビジネスモデルを採用している」というように、アイテム課金には「モバコイン」と呼ばれる仮想通貨が使用され、この売上を、コンテンツを提供するゲーム会社とシェアしていく。ゲームを提供する会社も、スクウェア・エニックスやハドソンなど、大手が名を連ねている。
今までは、ゲームコンテンツといえば、iMenuやau one(EZweb)、Yahoo!ケータイといった、キャリアのトップページに置かれ、月額もしくはアプリごとの課金が中心だった。見方を変えれば、今回の試みは公式サイト以外で課金をベースにしたゲームコンテンツのポータルサイトができたということだ。
「モバコインがどこまで受け入れられるかというところにかかっているが、まずはゲームに注力していく予定」(同氏)というが、この試みが成功すれば、ポータルサイトの“第4勢力”としての地位が確固たるものになるはずだ。
「PCを開いたら最初にアクセスするのがYahoo!のように、モバゲータウンをケータイで最初にアクセスするページにしていきたい」と語る畑村氏。会員以外のユーザーが使えるコンテンツを充実させることも、今後検討していくという。また、PC版のオープンも、可能性を捨てていないそうだ。
ゲーム&SNSとして成功した同サイトが、ポータルサイトとして飛躍できるか。2008年度は、ビジネスモデルの拡大が、モバゲータウンを注目する上での鍵となるだろう。
■ 規制の強化でサイトの健全化を進める
一方で、“サイトの健全化”という課題も残されている。急速な勢いで成長を続けるモバゲータウンだが、ユーザーの規模はもはや東京都の人口に迫る勢い。規模のメリットを活かし、ケータイ小説や音楽といった、様々なユーザー主導型コンテンツが生まれる反面、トラブルも顕在化した。同サイトが「サイト内の注意喚起の強化」「ミニメールの規制」や「監視体制の強化」といった対策を打ち出したのもそのためだ。
畑村氏によれば、「規模が大きくなるに従って、ユーザー間のトラブルと思われるものも増えてきた。昨年の夏ぐらいからコミュニティを健全に運営していくよう、より抜本的な対策を検討し、結果として12月の実施にいたっている」という。
特に、ミニメールの制限は、他のSNSサイトにはない、厳しい仕様となっている。現状では、18歳未満のユーザーは、前後2歳のユーザーとしかメールを交換できない。また、12歳未満のユーザーは、ミニメールの使用自体が禁止されている。友達検索も制限された。
本来、“コミュニケーション”が売りだったモバゲータウンで、なぜここまで厳しい制限が課されることになったのか。畑村氏は、次のように説明する。
「世の中で報道されている通り、問題になるケースは、未成年の女子と、成人の男子という組み合わせが多い。今回の取り組みでは、その年代間のコミュニケーションを制限することでトラブルにつながる可能性を低くしている。統計的に見ても、対策実施後に、トラブル数は減少したと感じている」(畑村氏)
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ミニメール送信時の注意書き
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もちろん、ユーザーが年齢を偽って登録するという可能性も捨てきれない。ミニメールの制限だけでは不十分なこともあり、「内容を監視して、場合によっては退会処理をするように対応している」(同氏)と、万全を期す。同サイトでは、ミニメールを送信する際に「ミニメールの内容を確認する場合があります」「ルールに反すると当社が判断した場合には(中略)ペナルティ処分又は退会処分とさせていただきます」といった注意書きが表示される。こうした同意を取り、ミニメールの中身まで分析していくことで、年齢を偽装したユーザーに対処しているのだ。
監視体制も強化した。モバゲータウンでは、従来から24時間365日の監視体制を敷いていたが、今年の4月には、新潟にカスタマーサポートセンターを開設。今後は、順次150名まで人員を拡大していき、東京のカスタマーサポートセンターとあわせ、450人の体制を構築する。
「例えば『死ね』という言葉でも、友達同士でふざけている場合もあったりと、文脈によって意味が変わってくる。そういったものを判断するためには、人の目で見ていくことが欠かせない。カスタマーサポートを強化することで、問題になりそうな書き込みなどを、全て目視で確認することができるようになる」(畑村氏)
静止画や動画なども、すべて目視で確認していき、基準に触れるものは削除している。カスタマーサポートセンターの体制を強化した後は、規約違反の検出率も上がり、時間も以前より短縮されたという。
■ モバゲータウンは青少年育成にも役立つ
規制を強化し子供たちを守る一方で、モバゲータウンを、青少年育成の場にしていこうという動きも見られる。4月21日に開設された「モバゲー110番」がそれだ。「24時間いじめ相談ダイヤル」の委託業者であるダイヤル・サービスと提携し、モバゲータウンに悩み相談が寄せられた際に、専門家へ誘導する仕組みを整えた。
畑村氏は、「カスタマーサポートに悩み相談があったと聞いている。こうした相談が来た際に、きっちり対応できる仕組みを作っていくことも重要」と語る。
また、「ユーザー同士で話し合って悩みを解決するケースも多い」(同氏)というように、同サイト内のQ&Aコーナー「質問広場」やミニメールで、自発的に悩みを解消するユーザーもいるそうだ。
同社では、先ごろ発足した、「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」とも歩調をあわせ、未成年へのフィルタリング原則化の動きにも対応していく。
フィルタリング騒動で子供たちのケータイ利用に関する議論が巻き起こる中、率先して対策を打ち出すモバゲータウン。業界のトップランナーだけに同サイトの取り組みは、他のサイトの指針にもなり得るはずだ。こうした動きが活発化し、ケータイコンテンツの世界が、より健全なものになっていくことを期待していきたい。
■ URL
DeNA
http://www.dena.jp/
モバゲータウン
http://mbga.jp/
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(石野純也)
2008/05/14 16:56
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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