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気になる携帯関連技術
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「SH905i」に搭載された「ドルビーモバイル」とは?
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ドルビージャパン 鬼沢氏
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今冬発売されたシャープ製FOMA「SH905i」には、「Dolby Mobile(ドルビーモバイル)」という音響処理技術が搭載されている。これは、米国に本社を置く音響技術開発企業、Dolby Laboratories(ドルビーラボラトリーズ)が開発したものだ。
ドルビーは、音をより正確に再現するための技術を開発しライセンスしている企業だ。直接コンシューマー向け製品を作っているわけではないが、たとえば映画やDVDのサラウンドフォーマットに同社の技術が採用されているため、パッケージやエンドロールで同社のロゴを見たことがある人も多いだろう。カセットテープ時代を知る人ならば、ノイズリダクションシステムの名称として覚えているかもしれない。最近では、家庭用ゲーム機にも採用されている。
そのドルビーがケータイ向けに開発したドルビーモバイルとは、一体どういったものなのか? また、ドルビーはどういった意図でケータイ技術に参入してきたのか? 今回、ドルビージャパンのマーケティング部 移動体市場担当マーケティング・マネージャーの鬼沢 和広氏に話を聞いた。
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ドルビーモバイルを採用した「SH905i」
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音楽再生画面
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――ドルビーモバイルとはどういった技術なのでしょうか。
元々は「Audistry(オーディストリー)」というドルビーオーストラリアで開発していた技術があります。これはシャープのテレビ台やワンビットアンプにも使われています。ドルビーモバイルはそのオーディストリーをケータイ向けにカスタマイズしたものです。ドルビーモバイルの搭載製品は「SH905i」が世界初になります。
ドルビーモバイルはいろいろな技術のパッケージング総称でもあります。中身には「サウンド スペース エクスパンダー」や「ナチュラル ベース」といった様々な機能が含まれています。それぞれの機能には細かいパラメーター設定があるのですが、ケータイでは簡単に聴いてもらいたいと言うことで、ユーザーにパラメーター設定の手間をかけないように作り込んでいます。効果については、やはり実際に聴いてもらうのが一番わかりやすいと思います。
――実際に聴いてみると、音に広がりが出る感じもありますが、そもそも音の聞こえ方が違う感じがしますね。
普通、ヘッドホンだと、音が頭の中で聞こえるように感じます。これを私たちは頭内定位と言いますが、頭内定位だとどうしても聴き疲れしやすくなってしまいます。ドルビーモバイルにはヘッドホンで聴いたとき、音が頭の外から聞こえる、つまり頭外定位にする技術が含まれています。スピーカーで聴いているように、自然に聞こえるのではないでしょうか。
――ドルビーモバイルはヘッドホン向けの機能ということですか?
ヘッドホンとケータイの内蔵スピーカーを比べれば、ヘッドホンの方が効果がわかりやすいでしょう。しかし、ドルビーモバイルは内蔵スピーカーも考慮してチューニングしています。スピーカーの出力が落ち込む低音域などを、音がひずまないように注意しながら、かつ緩やかに持ち上げるようにしています。
世の中には、音質処理をやたら強調するような技術もありますが、ドルビーとしてはそうではなく、長く使ってもらいたい、という考えがありました。我々には「マスターのクオリティーをユーザーに届ける」という基本コンセプトがあります。今回のドルビーモバイルも、このドルビーの文化に基づいて開発しているので、音の素材に対して丁寧になっています。
ちなみに、技術的にはもっと効果を強調した音の出し方も可能ですが、あまり強調しすぎると、最初は面白がってもらえても長くは使ってもらえません。そこでドルビーモバイルはその効果をあえて自然な範囲内に収めています。
搭載する機器メーカーにすると、もっと効果を派手にしたいという思惑もあると思いますが、ドルビーとしてはオーディオにこだわり、あまり派手にはしたくないと考えました。ケータイでもポータブルオーディオプレーヤーと変わらないクオリティを、というコンセプトで作り込んでいます。
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サブメニューにサウンド設定がある
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楽曲のジャンルによって設定が変更可能
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――今回、「SH905i」にドルビーモバイルが搭載された経緯とは?
タイミング的なものがありましたが、シャープさんが「世界でいちばん小さいホームシアター」というコンセプトを持っていて、画の方はAQUOSでバッチリでしたが、音の方をどうしよう、と考えていたようです。お互いのタイミングが合いましたね。
世界でも進んでいる日本のケータイで、中でもシェアが高くAV機能に強いシャープのケータイは、ドルビーが初めてケータイに参入するにあたってこの上ないパートナーだと考えています。
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ワンセグでは、データ放送で送信される番組ジャンルを元に、自動的に音の設定が変更される。ジャンルを手動で設定も可能
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――ドルビー自身がコンシューマー向け製品を作ることはあるのでしょうか。
コンシューマー向け製品を作ることはないと思います。ドルビーは40年間、「どのメーカーも協力会社で、競合会社ではない」というスタイルでやってきました。クロコに徹してきたわけです。
――今回は905iシリーズへの搭載となりましたが、今後の展開としても、やはりハイエンド機種や音楽特化ケータイをターゲットとするのでしょうか。
そうですね。ある程度、的は絞っていくと思います。ケータイの中でも、とんがっている機種にしかできないことがあります。そういった機種をターゲットにすれば、付加価値として、他機種との差別化になるはずです。これからもメーカー様と“Win-Win”の関係を持っていければと思います。そういった意味で「SH905i」はストライクでしたね。
――シャープ以外のケータイにも採用される予定はあるのでしょうか。
具体的にはお話しできませんが、もちろん選択肢の中にはあります。ケータイに限定せずに色々な製品で使っていただけるといいなと思います。
――音楽再生やワンセグ音声の補正以外の機能にも展開される可能性はあるのでしょうか。
それも楽しみにしていてください、ということで(笑)。是非期待していてください。我々はノイズリダクションから始まり、40年以上“音”に携わって来た会社です。この後もみなさんがびっくりするような技術を今開発している最中です。もうしばらくお待ちください。
――今後の展開が楽しみです。本日はありがとうございました。
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ドルビージャパン内のスタジオ
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ドルビー対応機器のサウンドチェックが行なえる部屋。高級アンプなどとともに、PS3のも設置されていた
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■ URL
ドルビージャパン
http://www.dolby.co.jp/
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(津田 啓夢, 白根 雅彦)
2007/12/21 16:30
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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