ソフトバンクの冬モデルとして、シャープから新モデルが続々と登場する。“AQUOSケータイ”をワンセグの代名詞に育てたシャープだが、この冬モデルでワンセグをどのように強化してきたのか。シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 部長の吉高泰浩氏と同企画部 主事の奥田計氏に聞いた。
■ 進化したAQUOSケータイ「920SH」
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シャープの吉高氏
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――まずシャープのソフトバンク向け冬モデルの全体的な概要をお聞かせください。
吉高氏
年末のシャープ製ソフトバンクモデルは全部で6機種(シャア専用ケータイの「913SH G」を除く)がリリースされます。メインはAQUOSケータイの920SHです。これは912SHの後継となるモデルで、液晶や国際ローミング対応などスペックアップに加えて、サイズダウンという進化も遂げました。真のフラッグシップモデルです。
800番台のシリーズとしては、まず820SHと821SHがあります。スタンダードモデルの812SHの後継という位置付けですが、新たにワンセグを搭載し、少しハイスペック寄りになっています。どちらの機種もボディにステンレスを使い、高級感のある外観仕上げになっています。
それ以外にも800番台では822SHがあります。こちらは920SHの『仕様バリエーション』となるモデルです。外観形状は920SHとほぼ同じで仕様が異なります。仕様バリエーションというのは、これまでケータイ製品には見られなかった概念ですが、家電製品には良くありますね。920SHとほぼ同じ外観で、スタンダードなAQUOSケータイをご提供したい、というのが822SHの位置付けです。
このほかには812SH、いわゆるPANTONEケータイに新色を4種、追加しました。全部で24色として訴求していきます。812SHのバリエーションモデルのGENTもマークIIとして少し中身を変えています。
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920SH
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――いつもながら盛りだくさんですね。まずはフラッグシップモデルの920SHについてお聞かせください。
吉高氏
前モデルの912SHに比べると、大きな進化としては薄くなったことがありますが、液晶の美しさも大きく進化しています。他社もワンセグケータイでは画像・映像に力を入れてきています。これからはますます映像勝負になってくるので、新しい液晶・新しい画像エンジン(SVエンジン+)を搭載しました。
奥田氏
新しい液晶、NewモバイルASV液晶を搭載しました。さらに赤と緑の成分が従来より高い高演色バックライトを使っていますので、912SHと比較すると色の再現性がNTSC比(u’v’系)で65%から120%へと高くなってワンセグも写真もより色鮮やかになりました。
NEWモバイルASV液晶とSVエンジン+により、動画コントラストは従来の300:1から2000:1にアップしました。また今回採用したリフレクトバリアパネルにより、屋外でも見やすくなっています。
液晶のアスペクト比を16:9のフルワイドにすることで、ワンセグ映像を上下に余白や左右を切ることなく、フルスクリーン表示できるようになりました。液晶の解像度もフルワイドVGA(480×854ドット)で、ワンセグの映像(320×180ドット)を滑らかに拡大して視聴できます(高画質モード時)。その他、メニューや番組情報も透過・半透過表示、数字キーを長押しすることで、画面の一部を拡大表示させるワンタッチズームの機能も搭載しています。
SVエンジン+を搭載する事でワンセグの画質調整も、液晶テレビに近い緻密な調整を可能としています。また、映画やダイナミックなどの複数のモードがあり、ジャンル連動モードではモードの切り替えを、放送に含まれる番組のジャンル情報に連動させる事ができます。
このほか、目覚ましのアラームにワンセグを使う「お目覚めTV」機能や920SHでは録画したワンセグ番組のCM検出や分割編集に対応したパソコンソフト「SD-MobileImpact」のver1.5も同梱しています。
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番組表をワンセグ画面の上に半透過表示できるようになった
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映像設定メニューも半透過表示でよりテレビらしいインターフェイスになっている
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画面の一部を拡大するワンタッチズーム機能
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――ワンセグだけでもいろいろな面で進化していますね。ポイントは液晶の進化などでしょうか。
奥田氏
そうですね。大画面フルワイド、高解像度、高画質など液晶の進化にあわせて、より快適なワンセグ視聴ができるよう気を配ったモデルと言えます。
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912SH(左奥)と920SH(右手前)。格段に薄くなっている
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――液晶は912SHの3.0インチワイドから3.2インチのフルワイドへ大きくなりました。縦に長くなっているようですが、幅はあまり変わっていないように見えます。
吉高氏
液晶そのものも幅は1mmほど広くなっています。
奥田氏
実は、液晶は大きくなっていますが、本体サイズの幅は912SHと変わっていません。むしろキー側の幅はスリムになっています。このほかには、部品の小型化や集約化で、薄さは912SHの約23mmから約18mmへ、重さも約144gから約123gへと、大幅に薄く軽くなっています。
小型化、薄型化するにあたって、高画素カメラやローミング機能の搭載は見送るという議論もしましたが、ユーザーが求めるのはハイスペックでバランスの取れた製品である、ということで、カメラには3.2メガのCMOSを搭載しました。カメラケータイ910SHでも対応した、最大30フレームの高速ファインダーを搭載しています(サイクロイドスタイル時は15フレーム)。ファインダーの解像度もVGA化しています。また、GSMを搭載し国際ローミングにも対応しています。
ただし、画面を縦に長いフルワイドの3.2インチにするにあたり、サブカメラを搭載することは残念ながらできませんでした。テレビ電話自体は、アウトカメラで行なえます。
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シャープの奥田氏
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――画面を横に倒すサイクロイドスタイルは踏襲していますね。
奥田氏
このサイクロイドも進化していまして、サイクロイド用のメニューも搭載しています。従来は画面を横に倒すとワンセグが起動するだけでしたが、録画した番組を見たい人や横画面で専用のブログなどウェブを見たい人もいるだろう、ということで、画面を横に倒したときに起動する機能を切り替えたり専用のメニューを起動できるようにしました。
スライドショー型待受画面、サイクロイド状態での名刺読み取り、パノラマ撮影に加えてスキャナ撮影に対応する等、細かいところも着実に進化しています。さらに新たにS!ミュージックコネクトに対応もしています。このほかにも待受画面に最大三つまで付箋メモを表示できたり、フルブラウザではショートカットで拡大縮小やタブ切り替えができるようになりました。
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サイクロイド回転したときの動作を設定するメニュー
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――これまで「AQUOSケータイは画面を傾けるとワンセグ」というイメージが強いかと思いますが、そうでないメニューを採用した意図を教えてください。
奥田氏
サイクロイドスタイルには「テレビを起動」、という意識を持っている人は確かに多いのですが、テレビだけではなくワイド対応のゲームをやりたいとか、横画面でメールが見やすいとか、そういったワンセグ以外の機能への声もあります。購入後、最初に画面を倒したときに、「回転起動設定」という初期設定メニューが出てきて、以後の挙動を設定できるようになっています。
吉高氏
いままでは「サイクロイド=ワンセグ」でしたが、それ以外の方向へも発展させていきたいと考えております。サイクロイドはワンセグのために生まれましたが、これからを考えると、フルブラウザやゲームなど、いろいろな使い方が考えられます。そうしたワンセグ以外の機能でも使いやすくするには、メニューも作らないと我々が思い描くストーリーが完成しません。まだまだワンセグがメインと考えていますが、サイクロイドはいろいろなことに使えますよ、ということで、このメニューを採用しました。
この先、フルブラウザを使うユーザーが、「フルブラウザを使うならサイクロイドが便利だよね」と言うようにもなって欲しいと考えています。
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背面パネルの表面仕上げはカラーにより2種類ある
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――新機能が盛りだくさんですね。とくに苦労された部分はどのあたりでしょうか。
吉高氏
薄型化の取り組みですね。今回は特に、単にサイズだけでなく薄型を追求しながらも、液晶の見やすさや外観の質感にもこだわっています。例えばリフレクトバリアの採用は液晶の見やすさの為だけでなく薄型化の面でも意味があります。
■ 薄型ワンセグの姉妹モデル「820SH」と「821SH」
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820SH(上段)と821SH(下段)
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――続いて820SHと821SHについてもお聞かせください。一見するとどちらも背面パネルがシンプルですね。パネルの表面処理などが異なるようですが。
吉高氏
当初は薄さを重視し、背面パネルがフラットでヘアラインをあしらった821SHタイプで考えていたのですが、それだと少しハードな感じがするので、女性にも指示されるように、サイズは少々大きくなりますが、パネルに微妙な丸み・ふくらみがもたせたタイプも合わせて商品化することとしました。デザインの調査をすると、821SHが男性寄りで、820SHが女性向けとターゲットもうまく分かれているようです。
821SHはヘアライン調のフラットなパネルで、薄さは12.9mmとなっています。これは当時業界最薄を目指し企画したものです。
この薄さにも議論はありまして、「目指すなら10mm」という意見もありました。しかし薄ければいいというわけでもありません。といいますのも現行の812SHは、使いやすさで高い評価を受けています。その後継モデルで薄さを追求するあまり、使いやすさが損なわれるわけにはいきません。そうした葛藤の中、適度なターゲットサイズを実現したのが、この2モデルになります。
サイズもさることながら、重さも812SHより軽くなっています。薄く、軽く、ワンセグも追加されて、さらに金属ボディで質感も高めています。このクラスとしては、この2モデルをイチオシ製品としてデビューさせます。
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820SH。側面からアンテナが伸びている
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――アンテナは根元が1段階伸びることで上方向にも曲がるんですね。
吉高氏
試行錯誤がありましたが、使い勝手を考え、360度回転できるようにこの方式にしました。全体のデザインを崩さず、伸ばしたときの見栄えも考えています。
――サブディスプレイは電池カバー側についているんですね。
吉高氏
背面パネルに金属を採用し、表面の美しさにこだわりました。サブディスプレイを搭載しない、という話もあったのですが、やはり市場からの強い要望もあり、結果としては裏側に搭載しています。
――コンパクトでワンセグ対応ですが、このほかにもBluetoothやおサイフケータイにはしっかり対応していますね。
吉高氏
GSMによる国際ローミングがありませんが、812SHと比べても、ワンセグ搭載など進化しています。
■ AQUOSケータイの仕様バリエーション「822SH」
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920SH(上段)と822SH(下段)。外見は非常によく似ている
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――822SHですが、こちらの外見は920SHとほぼ同じですね。どう違うのでしょうか。
吉高氏
液晶がフルワイドVGAではなく通常のワイドのQVGAで、大きさも3.0インチです。カメラやモバイルライトなどもスペックダウンし、BluetoothやFeliCa、GMSなど、いくつかの機能が非搭載になっており、その分、価格もお求めやすくなると思います。
カラーも920SHと同系統の5色を用意していますが、822SHは親しみやすく発色のよいカラーを金属に塗装しています。
――以上の4機種はすべてワンセグ対応ですが、ワンセグの機能に違いはあるのでしょうか。
奥田氏
920SHと822SHはNewモバイルASV液晶の採用や、SVエンジン+の採用などワンセグの画質という意味ではほぼ同等です。ソフトウェアはぼ同等ですが、ワンタッチズームや半透過表示、タイムシフト再生など一部機能は920SH専用の機能になります。
■ 「812SH」の新色と「GENT II」
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812SHの新色
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――PANTONEケータイの812SHには新色が追加されましたね。
吉高氏
新色は実は816SHで好評なカラーを採用しています。PANTONEケータイをこれでまた盛り上げていきたいと考えています。812SHは元々、色を追加しながら長く売ろうとして企画されたスタンダードモデルでもありますので。
――同じく812SHのバリエーションモデルであるGENTはマークIIになりました。
吉高氏
GENTのようなモデルを発売すると、「ここの機能をこうして欲しい」といったご要望をいただきますが、それを吸い上げてマメにマイナーチェンジさせていくというのは、なかなか難しい問題でもあります。
しかし、このマークIIではうまくそいったご要望を反映できたのではないかと思います。
この種の製品は、積み重ねで良くなっていくものでもあります。今後も継続し、ノウハウを積み重ねていきたいですね。
――今回のラインナップを見ると、他メーカーが採用しだした5メガカメラの端末がありませんね。
吉高氏
カメラの進化は悩ましいところですね。シャープとしては当然、頑張らなければならない分野です。920SHに関しては、5メガも検討しましたが、商品コンセプトとしてはワンセグとサイズを重視したので、今回は搭載していません。
ハイエンドケータイのカメラがどうなるのか、という見極めが大事ですね。ここはキャリアさんのラインナップの考え方でもあるので、ソフトバンクさんと相談しながら決めていこうと考えています。
――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
■ URL
920SHの製品情報(ソフトバンク)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/920sh/
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(白根 雅彦)
2007/11/16 11:50
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