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「MEDIA SKIN」インタビュー
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デザインだけで終わらない、五感を刺激する“アートケータイ”
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MEDIA SKIN
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au春商戦の目玉ともいえる、au design projectの第6弾「MEDIA SKIN」が店頭に登場した。シンプルなボディのこの端末は、携帯電話の世界に新たに「触感」という価値を生み出し、コンパクトで薄い端末ながら、ワンセグやおサイフケータイなどもサポートしている。また、メインディスプレイとしてはau初となる有機ELを搭載するなど、技術的にも意欲的な端末となっており、デザインだけではない魅力が詰まっていると言えそうだ。
今回、そんな「MEDIA SKIN」について、KDDI コンシューマ商品企画本部のプロダクト企画部 デザイン企画グループ 砂原哲氏と、プロダクトマネジメントグループの秋元一臣氏に話を聞いた。
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KDDIの砂原氏(左)と秋元氏(右)
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――それではまず、MEDIA SKINの概要を伺います。
砂原氏
MEDIA SKINは、au design projectの第6弾モデルとなります。コンセプトモデルは、2005年11月に聖徳記念絵画館で発表され、それから約1年半をかけてようやく商品化にこぎつけました。デザイナーに吉岡徳仁氏を起用し、“触感”にこだわったデザインとなっています。なお、ボディカラーによって2種類の触感が用意されています。ブラックについてはシボを付けた樹脂にソフトフィール塗料で「しっとり」とした触感、オレンジとホワイトはシボを付けた樹脂にファンデーションに使われているシリコン粒子を配合した塗料で「さらっ」とした触感に仕上げています。
機能的には、ワンセグやおサイフケータイに対応し、26万色の世界初の有機ELディスプレイも搭載しており、機能としても注目されるモデルということになります。
――デザインする上で何かイメージされたものはありますか?
砂原氏
吉岡さんによる元々のコンセプトが“第二の皮膚”ということで、基本的に人の一部になるようなものを目指しました。MEDIA SKINという名前から、皮膚のような質感を目指したと思われがちですが、そうではなく肌となじみのいいもの、たとえば革の財布や、一眼レフカメラのグリップなど、肌触りがよく柔らかいものを検討しました。携帯電話のトレンドは、グロスでツルツルしたものとなりますが、MEDIA SKINではそういうものではなく、マットでなんともいえない触感を実現しました。
――携帯電話の触り心地に着目されたのはなぜでしょう?
砂原氏
携帯電話以外の身の回りにある物は、柔らかいものが多いのに、携帯電話の中にはそういった要素があまり見られなかったからです。毎日触る携帯電話なので、触感にこだわるべきなのではないかと考え、トレンドとは全く逆の質感にチャレンジすることになりました。
――今回どうして2種類の触感を用意されたのですか?
砂原氏
手にした人に一番感動してもらえるような色と触感の組み合わせを考えました。黒の触感は例えば上質なこだわりのツールを手にするような感じ、オレンジや白の触感は例えばファッション、コスメ的な洗練された感じです。
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ブラックは「しっとり」を表現
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ホワイトとオレンジは「さらっ」とした触感
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写真は2005年11月に登場したコンセプトモデル
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ワンセグやおサイフケータイに対応
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――MEDIA SKINは、コンセプトモデルの発表からほぼ変わらないデザインで製品化されました。車で言えば、コンセプトカーがそのまま登場したような印象です。コンセプトモデルの公開時から実現性を考えた展開だったのでしょうか?
砂原氏
au design projectでは、基本的に可能な限りコンセプトデザインに近づけようと取り組んでいます。もちろん、その近づき度合いは端末によって異なります。第3弾の「talby」も、コンセプトモデルとほとんど変わらないデザインで商品化されましたね。
MEDIA SKINは、コンセプトモデルの時に例えばワンセグを搭載することを想定していたわけではありません。量産化にあたりコンセプトデザインのプロポーションを保ちながら、いかに有機ELディスプレイ、ワンセグやFeliCaなどを入れるのか試行錯誤を重ねました。たくさん機能を詰め込もうとすれば、当然理想的な形を維持することは難しくなります。長いMEDIA SKIN、幅が広いMEDIA SKIN、ぶ厚いMEDIA SKINなど、検討過程ではいろいろ出てくるわけです。しかし、プロジェクトに参加しているメンバーの誰もが理想的な形は何なのかわかっているわけです。コンセプトモデルが目の前にあるわけですから。吉岡さん、製造メーカーである京セラの優秀なエンジニアそして私たちで一つのパズルを解くように検討を重ね、最終的にはコンセプトモデルの時の印象とほとんど変わらないデザインで量産することができました。
――MEDIA SKINのターゲットはどういった人ですか?
砂原氏
そこはau design projectのターゲットとあまり変わりません。基本的にはデザインやアート、ファッション、音楽、といった、文化的なものに関心の高い人をイメージしています。年齢的なターゲティングはしてませんが、10代よりも20代30代40代と、大人寄りのデザインだと思っています。「知的な大人の女性が持って恥ずかしくないもの」、吉岡さんはそうイメージしていました。
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砂原氏
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フリップ式を採用
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――フリップタイプの端末が国内で久々に登場したことになります。なぜフリップを採用したのでしょうか?
砂原氏
まず、フリップカバーがあることでとてもすっきりしたデザインを実現できますよね。これは副次的なことですが、親指がちょうどフリップのところにきて、触感を思う存分楽しむことができます(笑)。吉岡さんがフリップに込めた思いとして一番強いのは通話している時の姿が美しく見えるという点です。口元までフリップがあることで、話しているときにこそこそした感じにならずに美しく見える。機能としては、フリップを開けると通話、閉じると終話といった切り替えも可能です。フリップを開ける、閉じるという行為も今となっては新鮮で、ケータイを使う際の作法としても美しい感じがします。
――MEDIA SKINでは、ディスプレイ部に埋め込まれるようにレシーバーがあるなど、特徴的ですね。
砂原氏
そうですね。そこは吉岡さんが大変こだわったところで、その部分の印象次第で、MEDIA SKINとなるか、普通のケータイとなるのか変わってくるポイントだと思います。どのようにレシーバーを搭載するのか、レシーバーとしての性能をどのように保つのか、当然エンジニアが苦労した点でもあります。
秋元氏
さらに、ディスプレイ周囲の幅についてもミリ以下のコンマ単位でこだわった点です。当然ですがディスプレイエリアとキーエリアのバランスもMEDIA SKINらしさを形づくっている重要な要素です。
――今回、ディスプレイに有機ELを採用されていますね。
秋元氏
商品化の検討にあたり、どんな機能を盛り込むか、さまざまなシミュレーションを重ねました。デザインの観点では触感がポイントでしたが、機能面でもMEDIA SKINの“メディアの皮膚”に相応しい商品にしたいと思いました。
「デザイン系のモデルは機能がいまいちだから……」という声をよく聞きますが、MEDIA SKINでは、コンパクトサイズの中にワンセグのほかビデオクリップ、おサイフケータイといった高機能に対応することを目指しました。さらに、MEDIA SKINの商品価値を上げ、充実したメディアサービスをより一層豊かなものとしてお客様に提供するため、今までにない美しい映像=有機ELディスプレイを採用することにしました。本物のデザインと本物の映像によって、MEDIA SKINはまさに「メディアの皮膚」として完成したと思います。
――今回側面部にボタンを用意していませんが、これはなぜでしょう?
砂原氏
実はあえて側面部からボタンをなくしました。外にボタンがあるとどうしても工業製品っぽく、機器っぽくなってしまいます。本当は可能な限り何もないようにしたかったのですが、イヤホン端子など、そうもいかない部分も当然ありました。いろいろな意見があると思いますが、今回の端末はフリップの中にボタンを集約させました。
秋元氏
背面部も極力複雑な要素が出てこないような設計をし、最終的にはコンセプトモデルとほぼ同じデザインに仕上げることができました。
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ディスプレイに溶けこむようにレシーバーを搭載している
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有機ELディスプレイを採用
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秋元氏
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こだわりの充電台
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――かなり力の入った充電台を用意されましたね。
砂原氏
実は本体に負けず劣らず相当エンジニア泣かせな気合の入ったものとなりました(笑)。吉岡さんとエンジニアとの間で、かなり細かいやりとりを頻繁に行なって実現しました。
――正直なところ、端末発表の際に、こんなにコンパクトな端末にワンセグやおサイフケータイなどが対応できるのか疑問でした。何か解決手段があったのでしょうか?
秋元氏
技術的にはメーカーのエンジニアにがんばっていただいたことが大きいですね。ディスプレイ部に強化ガラスを使って強度と防キズ性を両立するなど、このサイズに収まるまでには本当に何度も何度も検討いただき、さまざまなチャレンジをしていただきました。エンジニア含め全ての関係者が吉岡さんのデザインに惚れ込み、そのまま商品化したいという思いで努力した結果ではないかと思います。
――デザインでは、外観のかっこよさや美しさのほかに、使いやすさという方向もありますが、今回はいかがでしょうか?
砂原氏
使いやすさという意味では、少々ネガティブなことを言われることが多いのですが(笑)、例えば、「neon」や「INFOBAR」と比べれば、確かにキーが小さいので打ちにくいという面もあります。MEDIA SKINはコンパクトなため、キーエリアとして割り当てられる面積が限られています。しかし、面積が小さい中でデザインを壊さずに最大限に打ちやすくする努力を重ねました。
――3月23日に発売され、そろそろユーザーからの反応がある頃だと思いますがどうでしょう?
砂原氏
これまでずっとau design projectのモデルを使い続けていただいている方からMEDIA SKINがきっかけでauに来ていただいた方まで、皆さまから様々なご意見をいただいておりますが、トータルとしては非常に満足いただけているようでしてとても嬉しく思っています。
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側面部
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充電台背面部
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――au design projectでは今後もコンセプトに近づけていく方向で展開するのですか?
砂原氏
そうですね。コンセプトモデルをベースに開発する場合は、今後も可能な限りコンセプトモデルのデザインをそのまま実現することを目標に開発していきます。
――他キャリアの展開も含めて、現在のケータイはデザインが重要なポイントになってきています。一般的な端末にデザイン性がさらに求められた場合に、au design projectとの差別化をどうはかっていくのでしょうか?
砂原氏
au design projectは、単にきれいにまとまったカタチを追求してきたプロジェクトではありません。デザインとテクノロジーの最適なバランスを考えながら、一般的な端末では実現しにくいような新しいアイデアを高いクオリティで実現してきたプロジェクトです。今回のMEDIA SKINでの「触感」やneonのLEDインターフェイスを思い起こしていただければわかるかと思います。吉岡さんはMEDIA SKINをいわゆるデザインケータイではなく、「アート」、「アートケータイ」と、コンテンポラリーアートのように五感を刺激し人々に感動を与えるものと捉えています。au design projectにとって一番大切なのは、新しいコンセプトやアイデアであって、それらを実現し、人々に感動を与えることです。もちろんau design projectがこれまで発表してきたモデルはどれも美しいと思っています。しかしそれらは単にキレイなデザインを目指して作られたわけではありません。ケータイにおけるデザインの重要性は今後、ますます高まっていくことと思いますが、こうした考え方においてau design projectは一般的なモデルとは違っていますし、今後も違う存在であり続けるのだと思います。
■ URL
製品情報
http://www.au.kddi.com/au_design_project/seihin/mediaskin/
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(津田 啓夢)
2007/04/19 19:02
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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