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「D800iDS」開発者インタビュー
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使いやすさと新しさを併せ持つ2画面ケータイ
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NTTドコモから発売された「D800iDS」は、折りたたみ型ボディに2つの画面を搭載した三菱電機製のFOMA端末。下画面はタッチパネルを採用し、モードを切り替えれば表示されるボタンの数や内容を変更できるなど、従来の携帯電話にはない特徴を備えている。
NTTドコモ、三菱電機の開発担当者に話を聞いた。
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左からNTTドコモの吉田氏、浅野氏、三菱電機の吉井氏、木口氏
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――試作機がすでに公開されていましたが、発売までの経緯を教えてください。
吉田 岳人氏(NTTドコモ プロダクト&サービス本部 プロダクト部 第三商品企画担当)
2005年の10月にCEATECで試作機を一般に公開しましたが、試作機の開発は2004年の12月から始めました。市場調査や使い勝手の調査などはさらに前の、2004年の9月頃から開始していました。
今回の「D800iDS」は、途中経過の報告という形で2005年のCEATECで展示し、一般のユーザーからの反響が大きかったことが発売のゴーサインの後押しになりました。
――試作機の発表時はユニバーサルデザインを打ち出していましたが、ユーザーからの反響をどのように分析していますか?
吉田氏
「D800iDS」を商品化するにあたってのコンセプトは、新しい部分と使いやすい部分を両立させた、二つの価値を併せ持った携帯電話、というものです。試作機の発表時は「ユニバーサルデザイン携帯電話」として発表しましたので、使いやすさ、という面では我々が意図していた通りの反響で、ある一定の評価を頂きました。
我々があまり予想していなかった声としては、広域地図と詳細地図を同時に表示してカーナビみたいに使えるとか、エンターテイメント・マルチメディア系でのポテンシャルを一般のユーザーが考えて、Webサイトに書き込んだりしてくれていました。
使いやすさと新しさという二点を評価してもらえた、というのが大きなポイントになっていると思いますし、それをうまく商品に詰め込めたと思います。
吉井 雅和氏(三菱電機 NTT事業部 NTT第三部 第一課)
CEATECで初めて一般に公開した時にはたくさんの人が群がっていて、私は説明員としてブースに居たのですが、たくさん質問をいただきましたし、とても嬉しかったですね。
――製品化が決定した後で苦労された部分はありますか?
浅野 径子氏(NTTドコモ プロダクト&サービス本部 プロダクト部 第三商品企画担当)
試作の段階ではコンセプトやターゲットを絞り、機能も絞ったものでした。商品化にあたって、従来の一般的な携帯電話を使っているユーザーにも使ってもらえるモノにするには、試作段階の機能だけでは難しいので、従来の携帯電話の使い方を可能にした上でインターフェイスの新しさ、楽しさの部分を打ち出していければと思いました。モードを変更して下画面に表示されるボタンの数を切り替えたりできますし、2画面を使用したゲームもプリインストールしました。手書き入力やイラストを描く機能なども、タッチパネルを搭載した携帯電話ならではの機能ですね。
従来なら方向キーでカーソルを移動させて項目を選ぶインターフェイスですが、直接ボタンを押せるようにしたメニューなどはこれまでになく、追加で検討して採用したインターフェイスですね。
吉井氏
2005年のCEATECで展示した試作機はユニバーサルデザインを前面に押し出したものでしたから、下画面に表示される3つのボタンのみで操作していく、というモードに注力した作り込みになっていました。商品化が決定した後は、それまでに蓄積してきたノウハウに加えてさらに追加で検討を行ないました。
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3種類のキーモード、6種類の画面デザインを用意
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――ソフトウェア面では、「D800iDS」専用に開発された部分も多いのですか?
浅野氏
3キーモードや6キーモードに関しては、上画面に表示される文言も含めてかなり変更してもらっていますし、従来の携帯電話と比べるとほぼ作り替わっているというイメージでいいのではないでしょうか。従来ならキーでカーソルを移動しますが、3キーモード、6キーモードではそもそもカーソルの移動がないつくりになっていますし、文言や上画面もそれぞれのモードに適したものに変えています。
――3キーモード、6キーモードはそれぞれターゲット層が異なったりするのでしょうか?
浅野氏
3キーモードは一番最初の試作機から継承しているモードで、基本的な操作に的を絞ったモードです。電話、メール、カメラの3つのボタンが大きく表示され、それぞれを選んだ先でも3つのボタンで操作できるようになっています。また、一番下は必ず「戻る」ボタンなので、簡単に前の画面に戻れます。
このモードは、通話先が決まっていたり、着信がほとんどだったり、簡単なメールをやりとりするだけといった、決まった機能を簡単に使いたいユーザー向けです。通話機能だけの携帯電話もありますが、メールやカメラも少しは使ってみたい、というユーザーには、このモードが使ってもらいやすいと思います。
6キーモードは、携帯電話の便利な機能であるiモードやゲームも楽しみたい、というユーザー向けです。3キーモードはiアプリが利用できない仕様ですので、iアプリを使ってみたいユーザーや従来の方向キーによるカーソル移動の操作が苦手、というユーザーに向けたものです。
10キーモードについては、従来の携帯電話と同じように使ってもらえると思いますし、ボタン表示も通常のキー配列を再現しています。上画面も従来の携帯電話と変わらない文言になっています。
――2画面ケータイということでラインナップの中でも目立つコンセプトですが、今後もこのコンセプトがシリーズとして続いていくのでしょうか?
中村 吉伸氏(NTTドコモ プロダクト&サービス本部 プロダクト部 第三商品企画担当部長)
次のモデルについては、市場に出してみて反応を見ながら、検討していきます。2画面は可能性があって、もう少しここが良くなれば、という話が出てくれば次の企画を立てることになります。2画面のインターフェイス、という観点でみると、将来的には90Xシリーズに入っていてもいい機能なわけです。独立したシリーズなのか、90Xや70Xに取り込むのか、模索しながらまずは市場に出して世に問うてみる、という段階です。
吉井氏
下画面が自由に変更できるという点は大きな特徴ですし、ユーザーから新しい使い方のアイデアが出てくるかもしれませんね。
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2画面を搭載するが、通常の折りたたみ型携帯電話と変わらない外観。背面パネルにはイルミネーションLEDを搭載している
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――2画面で下画面にはタッチパネルを搭載していますが、ハードウェア面で苦労された点はありますか?
木口 栄氏(三菱電機 商品開発部 機種第九課長)
まずは、タッチパネルを携帯電話で採用すると何処が大変なんだろう、という点から始まりました。通常のキーであれば10万回の入力に耐える耐久度ですが、タッチパネルが同様の耐久度を持っているのかどうかも分からなかったので、タッチ入力やこすったりすることへの耐久性の試験から始めました。
タッチパネル自体が1mmぐらいの厚さがあるので、液晶の厚みを考えた上でボディを常識的なサイズの厚さに抑えるのに苦労しました。
――液晶画面は上下で表示色数などが異なるようですが?
木口氏
下画面は16bitで処理していますので、若干表現力に差があります。また、上画面は全透過型液晶ですが、下画面はキー表示に使うので屋外でも見やすい半透過型液晶を使っており、この違いも表現力に影響を与えていますが、可能な限り差が無いように設定しています。
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右の端末に付いているのはパッケージ付属のスタイラスペンとストラップ
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――タッチパネルを採用した製品にはスタイラスペンが付属したりしますが、パッケージに同梱されたりするのでしょうか?
木口氏
当初は付かない予定でしたが、試供品という形でストラップとして携帯できるスタイラスペンを同梱します。
――タッチパネルでイラストを描くペイントモードでは便利そうですね。
吉井氏
スタイラスペンが無くても普通に描けますが、スタイラスペンがあると描ける絵のバリエーションが広がると思いますよ。
吉田氏
最近は携帯電話からブログを更新する、というユーザーも多いと思いますが、手書き入力で写真にイラストを描いたりできるので、是非活用してほしい機能ですね。
――2画面を活用したアプリやゲームは今後も登場するのでしょうか?
吉田氏
iアプリに関しては一般に公開されているDoja 4.1LEに準拠していますし、それを2画面用に工夫して使ってもらえればD800iDSの2画面を利用したiアプリが開発できると思います。
浅野氏
発売発表時で5社以上のコンテンツプロバイダーからゲームなどが提供される予定になっていますね。
吉井氏
三菱電機のメーカーサイトでも無料のiアプリを用意します。「人生ゲーム」の2画面iアプリ版も用意していますが、ゲーム中に使うルーレットはタッチパネルでクルッと回せるようになっていたり、またリバーシではコマをそのままタッチパネルで選択できたりと、タッチパネルを活かしたゲームを提供します。
――オプションとして、外部スイッチに対応しています。
吉田氏
イヤホンマイク端子を使って市販品の外部スイッチを接続できます。3キーモードでしか利用できないのですが、下画面の3つのボタンをカーソルが自動的に移動していくモードがあるので、そこで選びたい機能にカーソルが合ったときに下画面のタッチパネルや外部スイッチを押すと機能が選択できるというものです。
吉井氏
外部のスイッチを2つ使用して、ひとつをカーソル移動に、ひとつを決定キーとして使うこともできます。
――視覚障害のユーザーは、手で触りながらキーを操作したり、音声読み上げ機能を合わせて使うこともあると思うのですが、キー側がタッチパネルのこのモデルでは、視覚障害者への対応は難しいのでしょうか?
吉田氏
開発段階から、視覚障害者にとってタッチパネルは扱いにくいものである、ということは認識していました。音声読み上げ機能については、開発は行なっていましたが、機能やコストのバランスなどから今後の課題とし、今回は残念ながら搭載を見送りました。
木口氏
大きな文字で表示できるモードがありますので、弱視のユーザーなら通常の端末よりも見やすいのではないかと思います。
――最後に、ユーザーにオススメのポイントなどがあればどうぞ。
吉井氏
今回、タッチパネルの特性を活かした機能をいろいろ搭載しています。10キーモードで表示される方向キーでは、上下左右のそれぞれの間にある右上などの中間の場所を押すと、押している間は方向キーの表示が変わり、そのまま指で円を描くようになぞるとジョグ操作のように上画面のカーソルを連続して移動させることができます。iモードサイトの閲覧でもページのスクロール操作に使えますし、便利な機能ではないでしょうか。
吉田氏
「着ガイド」という機能がありまして、メールなどの不在着信があったことを待受画面に表示する機能に合わせて、不在着信があった時だけ下画面が不在着信に適した操作のボタン表示に置き換わります。メールを受信していれば、着ガイドとして下画面に表示されたボタンから素早く返信画面に移動できます。
木口氏
手書きの文字入力をなんとか間に合わせて搭載しました。「らくらくホン シンプル」も同じような面子のチームで開発したのですが、「らくらくホン シンプル」のユーザーに調査を行なっていると、メールを作りたい、けれど無理かな、という声が多く聞かれました。そういった声に対する答えの一つとして、通常の5タッチ入力以外に、2タッチ入力という文字の入力方式も採用しました。また、さらに簡単にということで手書き入力を搭載しました。ひらがなの入力に対応していて、99%ぐらいの認識率だと思います。
浅野氏
テーマカスタマイズとして6種類のデザインを用意しました。「D800iDS」は2画面ということで、上画面と同じように下画面も作り込んでいます。フォントやアイコンのデザインもそれぞれ変わっていますし、是非全部見てもらいたいですね。見やすさとデザイン性の両方を検討してデザインしてもらっています。
吉井氏
見やすさを考慮した2パターン、インパクトのあるデザインとして2パターン、可愛らしさのあるデザインの2パターンと、大きく3種類に分かれていますね。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/concept_model/d800ids/
製品情報(三菱電機)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/mobile/foma/d800ids/
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(太田 亮三)
2007/02/14 19:32
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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