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クアルコムジャパン山田社長に聞く
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3Gケータイを支えるクアルコムが目指すこと
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3G携帯電話の普及が進む中、さらなる高速化を求める声も出てきた。CDMA技術の鍵を握るクアルコムは今、何を考えているのか。クアルコムジャパンの代表取締役社長、山田純氏に聞いた。
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クアルコムジャパン
代表取締役社長
山田純氏
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――KDDIがCDMA2000 1xEV-DO Rev.Aを2006年中にも提供すると発表しています。御社もここに大きく関わっていくことになると思いますが、現時点でどのようなロードマップを描いているのでしょう?
山田氏
Rev.Aの特長は、とにかく「オールIP」ということに尽きます。無線回線を通すデータを音声も含めて全てIP化することが可能になります。特に音声の場合、極めてディレイ(遅延)に敏感ですが、Rev.Aであれば問題ありません。これが全国津々浦々で利用できるようになるというのは、まさに究極の解だと思ってはいるのですが、人間の欲求というものは凄まじいもので、「もっともっと」と言われてしまいます。
そこで、現時点で我々が提供できる解として、「マルチキャリア」という方式を提案して行こうと考えています。元々、CDMA2000 1Xで「1X」と言っていたのは、1Xを1.25MHzの帯域幅を使用するという一つの単位として定義し、これを束ねて利用できるようにしようという発想があったからです。5年ほど前には「3X」ということも言っていました。いよいよ、これを日の当たる場所に持ってくるタイミングになったのではないかと考えています。
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CDMA2000のロードマップ
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現在、「15X」というところまでを視野に入れて技術開発を進めています。15Xとなると20MHz近くの帯域幅を使用することになりますから、もちろん、それだけの帯域幅をどこから持ってくるという話はあるのですが、1XのRev.Aで3Mbps出るとすれば、単純に考えて15Xなら15倍の45Mbpsを実現できることになります。これと「MIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)」のような技術を組み合わせて使うと、俗に光ファイバー並と言われる100Mbps近いスピードが現実のものとなります。
――WiMAXやiBurstなど、新たな通信方式も注目されていますが、これらについてはどう見ていますか?
山田氏
当然、それらの技術についても検討は進めていますが、マクロセルでもない、完全なピコセルでもない、なんとなく数百m~1kmをカバーします、20MHzのバンド幅があれば高速通信できますというようなものを、新規のインフラとして今から敷設して、はたして本当に経済合理性があるのかどうかというと、疑問が残ります。
とりわけ日本のような先進国、シンガポールのような都市国家では、早くからADSLや光ファイバーなどのランドラインが普及しており、無線LANを使ったいわゆるホットスポットが提供可能な状況になっています。結局、これらの地域では3Gケータイと無線LANのインテグレーションがあれば、おおかた期待されているようなサービスは実現できるのではないかと考えています。ですから、クアルコムとしては、802.11系の技術開発に注力し、3Gとの融合を進めて行こうとしています。
――BREWについては、どのような戦略を持っているのでしょうか。
山田氏
現在、2つの取り組みが着実に進んでいます。1つは、完全マルチタスクで、プロセスごとにメモリプロテクションされるという実行環境を実現するというものです。エンドユーザーやコンテンツプロバイダーなどには直接関係のないことですから、今年はあまり大きくプロモーションしていません。ただ、端末メーカーなどにとっては大変重要なことですから、こちらのコミュニティには今後1年ほどかけてお伝えして行こうとしています。LinuxやSymbianといったプラットフォームが日本にも入ってきていますが、我々としては、それらと同等以上の実行環境になるということをアピールしていきたいと考えています。
もう1つは、先頃行なわれたBREW Conferenceでも説明があった「uiOne」です。XMLで携帯電話のユーザーインターフェイス(UI)を作れるようにしようというものです。C/C++にしても、Javaにしても同じことが言えるのですが、UIを持ったアプリの開発には労力がかかります。uiOneが使えるようになると、ここにWebデベロッパーやコンテンツプロバイダーが参加できることになります。
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uiOneのイメージ
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――やはりUIは重要だということでしょうか。
山田氏
欧米であれだけ売れているノキアやモトローラの端末をそのまま日本に持ってきてローカライズして売ってみたがダメだった、というような状況を目の当たりにするにつけ、UIは重要なのだと思い知らされます。何とも表現しづらいのですが、そこにはやはり市場性や国民性といったものが横たわっています。この差をUIで吸収できるのではないかと考えたのです。
日本ではメニューの着せ替え程度、パソコンのソフトで言うスキンのようなものとお考えの方が多いようですが、uiOneではもっと深いレベルまでカスタマイズできるようになっています。
ただ、そのためには、携帯電話の基本機能をXMLからコントロールできるようにする必要があります。メーカーさんには携帯電話の開発の仕方を大きく変えてもらわなければならないかもしれません。メールソフトで言えば、メールを取得するエンジン、メールのデータを保存しておくデータベースなど、現在は全てが一体となっているようなものも、それぞれモジュール化してAPIとして呼び出せるようにしてもらわなければなりません。
――あまり注目されていませんでしたが、5月にNECとW-CDMAのネットワーク上でGPSシステムの運用試験に成功したというリリースを出されていますね。
山田氏
W-CDMA方式を採用されている通信事業者さんも、いよいよKDDIさんのようなGPSサービスを提供できる準備が整ったということです。近い将来、日本国内でもサービスが開始されることでしょう。
――お忙しい中、ありがとうございました。
■ URL
クアルコムジャパン
http://www.qualcomm.co.jp/
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(湯野 康隆)
2005/07/05 11:57
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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