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米アドビ ハク氏に聞く
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901iSシリーズPDFビューワー搭載の意義とは
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901iSに搭載されるAdobe Reader LE
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NTTドコモのFOMA 901iSシリーズでは、全機種で「Adobe Reader LE」が用意されている。ACCESSのブラウザ「NetFront」のプラグインとして搭載され、官公庁や企業などで利用されることが多いPDFファイルを携帯電話でも閲覧できるようになっている。
携帯電話でPDFを閲覧できるようになったことは、どのような利便性があるのか。「Adobe Reader LE」を供給する米アドビ システムズのシニアプロダクト マネージャー モバイル担当であるリドワン ハク氏に話を聞いた。
■ PDFの普及を促進したい
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米アドビ システムズのシニアプロダクト マネージャー モバイル担当であるリドワン ハク氏
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――アドビにとって、携帯電話向けのPDFビューワーとはどのような意義があるものなのでしょうか。
ハク氏
これまで当社ではPDFというプラットフォームを推進してきました。その仕様を固めていく上で、リーダーと言える地位を築いてきたわけです。PDFは、テキストや画像をデザイン通りのレイアウトで表示可能なことに加えて、安全性が高く、信頼性の高いフォーマットです。そういった点で多くの方々から支持されていると捉えています。
PDFが多くのユーザー、企業に利用されるようになり、ビューワーとして当社のAdobe Readerもさらに普及している状況です。情報をやり取りする上で、利便性が認められたPDFですが、我々はこれまでの活動を通して、「ユーザーは情報にアクセスしたいと考えているが、その取得方法はパソコンに限定しているわけではない」ということに気づきました。近年の携帯電話の性能は飛躍的に向上し、パソコンのデスクトップ上で可能だった作業が携帯でも可能になってきています。
今回、901iSシリーズに「Adobe Reader LE」が搭載されることになりましたが、我々としては、“情報の交換手段”としてPDFの普及を更に進めていきたいと考えており、その点に大きな意義があると考えています。
■ 幅広いコンテンツに対応できる
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901iSシリーズ発表会ではPDFコンテンツも紹介された
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――iモード向けのPDFコンテンツとしては、現在、地図や電子書籍などのコンテンツなどが登場していますが、今後はPDFの使い方として、どういったコンテンツがあり得るでしょうか。
ハク氏
まだ登場から間もないですから、PDFを活用したコンテンツはこれから増加していくのではないでしょうか。仕組みとしては、幅広いコンテンツに対応可能です。
901iSシリーズでは、表示中のPDFの内容をキャプチャーして、PDFとは別の画像データとして切り出せるようになっています。この機能を活かして、待受画像やポスター画像を1つのファイルにラッピングするなどエンターテイメント関連のコンテンツとして提供できます。
PDFは安全性・信頼性が高いという点から、金融機関でのコンテンツ提供にも利用されていますので、今後の展開としては銀行の利用明細書や業務での契約書に応用できますし、官公庁などに提出する申請書を携帯電話上でダウンロードし、入力して送信するという形も可能ではないでしょうか。
申請書を作成するという点では、将来的にユーザーから「携帯でPDFを編集したい」「携帯でPDFを生成して入力したデータを保存したい」というニーズがあるかもしれません。そういった声には応えていきたいですね。ただし、パソコン向けのPDFオーサリングツールである「Acrobat」のような豊富な機能をサポートするのではなく、シンプルな機能を備えたものになるのではないでしょうか。実装にあたってどのような仕組みになるかはわかりませんが、いずれにせよ、「ユーザー、あるいは当社の顧客からの要望があれば」ということになります。
PDFの利用スタイルとしては、ユーザーが撮影した画像をスライドショーのようなPDFに加工して携帯で楽しむという、パーソナライズされたサービスもあり得るでしょう。そのようなサービスが登場し、携帯電話側でもPDF作成機能がサポートされるとすれば、単なる静止画という形ではなく、音や注釈を追加してストーリーを楽しめるコンテンツにすることもPDFの仕様としては可能です。
■ アドビが目指す「どこでも同じ体験を」
――携帯電話でPDFを見る機能は、既に他社製品のビューワーで実現している機能でもあります。他社と比べて、アドビのアドバンテージとは何でしょうか?
ハク氏
そもそもアドビは、PDFの仕様作りに最初から関わっています。PDF自体はオープンな仕様ですが、初期から関わってきたことで蓄積されたノウハウ、深い知識を保有しています。これは他社にない優位性と自負しています。
「競合」と呼ばれる他社は存在するでしょうが、我々の視点からすれば「競合」ではありません。そういった企業が登場してくれることは、PDFの普及に繋がるからです。ただし、そういった製品はPDFの仕様をきちっと満たしたモノでなければならないと思います。
我々は「Adobe Reader」の開発において、携帯電話でもパソコンでもデバイスを問わずに、同じ表示ができるようにしています。これは「Adobe Reader」だからこその“クオリティ”と言えるもので、常にベストなクオリティのレンダリングを実現していると考えています。
――レンダリングに注力するというのは重要な点ですが、弊誌には、901iSシリーズの「Adobe Reader LE」の動作速度に関して、ユーザーからは「満足できない」という声も寄せられています。
ハク氏
我々もそういう観点からもアプローチしているところです。動作速度を追求して、描画に時間のかかる部分をスキップするという手法も考えられますが、我々はあくまでもきっちりとレンダリングしていきたいのです。将来的には、ベストクオリティなレンダリングを実現しながら、パフォーマンスでもユーザーを満足させられるよう開発を続けていきたいですね。
ちなみに、901iSシリーズにおける「Adobe Reader LE」は、ACCESSさんの「NetFront」向けプラグインとして動作しています。プラグインであることによって、何か問題が出たときに他の部分に対する影響を抑えて、全体の開発がストップすることがないという端末メーカーにとってのメリットがあります。
また、ユーザーにとってのメリットは、ブラウジングしながらPDFを閲覧できるので、シームレスな操作性を実現していることでしょうか。
――レンダリング能力で最善を尽くしているとのことですが、ドコモのiモード向けPDF作成ガイドラインでは、PDFのファイルサイズを軽減したり、動作を軽快にしたりするヒント集が含まれています。携帯向けコンテンツとしては重要なポイントですが、ユーザーが利用するコンテンツそのものがパソコン向けよりも低品質になる恐れはありませんか?
ハク氏
そこは「携帯電話で何ができるのか」「ユーザーが何をしたいのか」という2点のバランスをとる必要があるでしょう。現時点で、ユーザーのニーズはほとんどが表示させて読むことになるでしょう。しかし、将来的には印刷や保存といった機能を求める声が出てくるかもしれません。そうなると、表示よりも印刷などに適したクオリティの重要性が増してきますね。
Adobe PDFは、バージョン1.6が最新バージョンですが、901iSシリーズ向けPDFのバージョンは1.2です。我々としては、現在のAcrobat、あるいは将来登場するAcrobatの新バージョンで作成したPDFを同じ「Adobe Reader」で閲覧できるようにしていきたい、つまり将来との互換性をキープしていくことも目指しています。
最新版ではないPDF 1.2が採用されたのは、PDFコンテンツの制作側にとって、より多くの種類のデバイスで利用できるバージョンであるから、と言うこともできます。さまざまなPDFコンテンツが存在する中で、同じ体験を得られるようにしていきたいのです。
我々の最終目標は、ビジネス層や一般ユーザーを問わず、「情報をやり取りする際に同じ表示で同じ体験ができること」です。携帯電話市場はビジネスとして大きなもので、「Adobe Reader」が搭載されると常にユーザーの身近な存在になれるという点が大きなポイントではありますが、最終目標へ到達するには自然な流れの1つでもあります。
――ドコモ以外のユーザーもPDFが利用できる環境になるのでしょうか。
ハク氏
もちろん他のキャリアや端末メーカーに対する関心はあります。最終的には、ベストクオリティを提供するのが目標ですから、なるべく多くの人に、さまざまなデバイスを通して、いろんなシーンでPDFが利用されるようになって欲しい。そこで当社の製品が活用されるのであれば、こんなに嬉しいことはないですね。
――ありがとうございました。
■ URL
アドビ システムズ
http://www.adobe.co.jp/
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(関口 聖)
2005/06/27 15:14
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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