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「A5406CA」開発者インタビュー
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3.2メガのカメラをまとったこだわりの“プレミアム”ケータイ
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2004年6月に発売されたカシオ計算機製端末「A5406CA」は、320万画素のオートフォーカス付きカメラを搭載し、充実した画像編集機能などで完成度の高い端末だ。一方で、キートップのフォントを本体カラーごとに変更したり、画面デザインにいたるまでデザインコンセプトを浸透させるなど、端末を持つ人との調和を考慮したこだわりのデザインものぞかせる。
A5406CAの開発に携わった、カシオ計算機 通信統轄部 商品企画室 室長の石田 伸二郎氏、同商品企画室の本間 敦氏、開発本部 デザインセンター 第四デザイン室 室長の井戸 透記氏、同第四デザイン室の奈良 勝弘氏、カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ソフト設計グループの富田 晋也氏の5名にお話を伺った。
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ノーチラスホワイト
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テーラードブラック
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クラウディパープル
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■ 3.2メガピクセルの高解像度で撮影して、後から楽しむことに重点
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左:石田 伸二郎氏、右:本間 敦氏
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―まず、A5406CAの開発コンセプト、概要を教えて頂けますか?
石田氏
「『一度使うと手放せない自慢したくなるケータイ』というところを目指しました。それを実現するために、デザイン、トレンド機能、新機能に対して徹底的に『こだわり』ました。よってA5406CAは、数多い携帯電話の中でもかなり高品質なバランスの良いモデルに仕上がっていると思います。
この背景をお話しすると、弊社はメガピクセルケータイシリーズとして、1メガ、2メガ、3メガと半年ごとに画素数を上げてきたわけですが、昨年の5月に出たメガピクセル携帯を購入したユーザーが、そろそろ買い換えのタイミングを迎える時期に、次にどんな端末を選ぶのか。ここが今回の端末のテーマになっています」
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左:A5403CA、右:A5406CA
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―前モデルとなるA5403CAから大きく変わった点というと?
本間氏
「まず、携帯電話では世界初の320万画素CCD、オートフォーカス付きカメラを搭載しています。もう一つは、ステレオスピーカーと新しい音源チップを搭載し、ステレオ着うたに対応しています。また、携帯電話の正統進化としてメイン液晶を2.3インチのQVGA液晶と一回りサイズを大きくし、ユビキタスへの対応ということでQRコードの読み取りにも対応しています」
―今回、3メガピクセルのカメラを搭載していますが、一方で、2メガピクセルで光学ズーム対応のカメラを搭載するメーカーも出てきました。3メガピクセルカメラを搭載した御社の立場から、この流れをどう見ていますか?
本間氏
「デジタルカメラでは4メガ、4メガや3メガクラスのモデルが主流です。カメラ付きケータイに3.2メガのカメラを搭載すれば、普段の何気ないシーンでも、綺麗に思い出として残しておけるということで、今回3.2メガの高精細なCCDを採用しました。これにより、携帯電話でいつでも高解像度で高精細な画像を得ることが可能となります。
また、あくまで携帯電話に搭載されたカメラ機能ということを前提としていますので、ただ単純に広角と望遠の2焦点を切り替えるズーム機能よりも、高解像度で撮って、後から好きな構図で切り取ったり、新機能の写真からムービーを作成できる機能などで、綺麗な画像で撮って楽しめるということに重点をおいています。」
―今後は画素数を増やす方向にいくのでしょうか? それとも光学ズームを搭載する方向でしょうか?
石田氏
「光学ズームは形状に与える制約が大きすぎるのでは?と思っています。カメラとデザインとの関わりが密接な部分ですので、どういうデザインにまとめるのかというところは検討していかなければいけません」
―今回の端末の高画素化は、前モデルのユーザーなどからの要望でしょうか? それとも御社の方針でしょうか?
本間氏
「ユーザー調査を同時には行ない、方針を決めて商品作りをします。今回の3.2メガピクセルのカメラは、画像をプリントした場合でも、2Lサイズで約300dpi、A4サイズに引き伸ばしても目視でも綺麗に見える210dpi程度を可能にしていますので、そういった意味で3.2メガピクセルのカメラを一つのゴールと位置付けていたという経緯はあります」
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カメラ部は1/1.8インチCCDにレンズ4枚構成と強化された
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―メガピクセル端末を投入した時に、3メガピクセルの携帯まで開発の念頭にあったのでしょうか?
石田氏
「当時3.2メガは普及版のデジタルカメラの画素で、ユーザーが満足できる画質と捉え、ニーズはあるが価格、サイズのハードルが高かったので五分五分ぐらいに考えていました」
本間氏
「A5403CAでは、3枚のレンズ構成で1/2.7インチサイズのCCDを使用していました。今回のA5406CAのカメラに関してはレンズを4枚に、CCDを1/1.8インチと一回り大きいものを採用し、本格的に再設計を行なっています」
―カメラ部の開発で苦労した点はどこでしょうか?
石田氏
「CCDとレンズの相性を合わせるのに何度か試作を繰り返すのですが、端末開発期間の都合で、これまで相性を合わせるのに苦労してきました。A5406CAでは、時間をかけて試作を繰り返しました」
―カメラ周りについてですが、動作の遅さ、データの書き込みの遅さなどはユーザーが不満を感じやすい部分です。A5406CAで注力されたのはどのあたりでしょうか?
本間氏
「今回、CCDとレンズが新規になって、感度の良いCCDと明るいレンズの組み合わせによりキレイな写真が撮れるようになっていますが、オートフォーカスのステッピングモーターもA5403CAより小型化・高速化を図っています。また、A5403CAのオートフォーカス技術の経験を生かして測距にかかるステップ数も見直し、最適化することでオートフォーカス動作の若干の高速化も実現しています。
また、撮影時のユーザーインターフェイスについても、オートフォーカス動作中はアイコン表示でわかるように機能の改善を図っております」
―最大解像度での撮影画像などはプリントアウトを想定されているのでしょうか?
石田氏
「1メガピクセルの携帯を発売したとき、これが初めてのデジタルカメラです、というユーザーが意外に多くいらっしゃいました。店頭でのデモなどの影響もあり、メガピクセルカメラが付いてるから写真プリントが可能、という風に思われるわけですが、オートフォーカスが搭載されていなかったり、時にはモード選択がうまく設定できなかったりと、いろいろな要因が重なって、結果的に画質に不満を持つユーザーも多くいらっしゃいました。最も携帯電話のカメラを利用するユーザー層の期待というのは、普通に使って“キレイな写真”が撮れるということなのです。
ケータイを買いに来るお客様は、お店にデジタルカメラではなくケータイを買いに来ています。写真も撮れるケータイの中でどれがいいのかな、という時に、普通の方が使って“写真”が撮れるためには3.2メガであったりオートフォーカスが必要だろう、ということで開発を行なってきました」
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富田 晋也氏。奥は本間氏
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―綺麗にプリントできること以外に、御社の端末では画像の編集機能などが充実しています。そのままプリント、画像を加工して楽しむ、編集してメールなどで送る、といった用途のどれに重きを置いているのでしょうか?
富田氏
「すべてが重要な要素だと思っています。メガピクセルカメラを搭載した頃から画像の編集に関してはいろいろな機能を実装していますが、A5403CAよりマルチメディア系の機能にはショートカットキーを設定しています。また、マニュアルを見なくても分かるようにショートカットキーのガイド『0キーガイド』を用意して、充実した機能をわかりやすく知ってもらえるよう努力してきました」
―再生ズームなど、画像編集機能は充実して使いやすいのですが、他社では意外にサポートされていないケースもある部分です。技術的に難しい部分なのでしょうか?
石田氏
「画像の編集には、専用のLSIを開発して実装しています。ソフト処理では時間がかかり過ぎてしまう部分ですので、A5401CA以降専用のハードを搭載しています。画像の編集機能は、実際に使ったユーザーからの評価は非常に高い部分ですね」
■ 高音質を望むならステレオ
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サラウンドツインスピーカー
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―ステレオスピーカーが搭載されました。これは御社からの提案でしょうか? それともauの意向でしょうか?
石田氏
「人気のコンテンツである『着うたを高音質化していく』という流れの中で、音声コーデックを高音質なものに変えるという変化がこの春から始まりました。これは、携帯電話の基本機能である『音』の進化として自然の流れと捉え、我々は『高音質を望むなら絶対ステレオ』という結論に達し提案しました。
ただ、スピーカーを2つ搭載しただけのステレオ対応ではなく、置いた状態でも綺麗に聞こえるよう近接するスピーカーの放音孔形状に工夫を凝らしています。また、音の広がりを持たせるためにDiMAGIC社のDVX(DiMAGIC Vertualizer X)技術を採用し、臨場感あふれるステレオサラウンドを実現しました」
―A5403CAと同様、USBクレードルを兼ねた充電台が付属しますが、USBクレードル機能をユーザーが利用している割合はどれくらいでしょうか?
石田氏
「現在は、5~7%ぐらいと予想していますが、写真画質の実現とパソコンの普及によって急速に増えていくと思っています」
■ キーワードは“プレミアム”
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井戸 透記氏
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奈良 勝弘氏
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―A5406CAの端末デザインについてコンセプトなどを教えて頂けますか?
井戸氏
「A5403CAの2メガピクセルカメラを究極の携帯カメラと思っていたので、さらにその上の3メガピクセルの携帯を購入するユーザーはどういう人たちなのか、そこをイメージできなければデザインはしづらいのです。2メガより3メガを選ぶユーザーは、少しでも人とは違うモノを選ぶ人、よりこだわりのある人と位置付け、そこで我々が想定したキーワードが“プレミアム”です。
従来からのこだわりである端末の質感を高めることに加え、本体のカラーリングもただバリエーションを用意するのではなく、使う人のライフスタイルに合うような色を選びました。端末の画面デザイン、カタログ、販促物についても、ターゲットを明確にしてトータルでアピールできるようこだわっています」
奈良氏
「本体のカラーリングでは趣味思考を考え、セレクトショップのレーベルのような展開をしています。当初は7種類ほどを挙げていましたが、シックなものを中心に3種類が選ばれています。選ばれた3種類のテーマですが、黒の『テーラードブラック』がテーラードレーベル。大人が安心して使い続けられるような定番の黒い皮小物製品をイメージしています。白の『ノーチラスホワイト』はネオトラッドレーベル。白のジャケットに黒のシャツ、赤いネクタイをするようなお洒落なイタリアン的ムードをイメージしています。『クラウディパープル』はスイートシックレーベル。どんなシーンにも溶け込む女性的な可愛らしさと上品さをイメージしています。
最近は金属感の高いカラーリングの端末が主流になってきているように思いますが、A5406CAでは品のある優しさ、質感は高いけれど温もりも感じる色をイメージし、あえてメタリック感のないソリッド色を選んでいます。ただ、そのままのソリッド色では質感がもちませんので、非常に細かいパールを混ぜてハイライトとシェードのコントラストを出し、質感を向上させています」
井戸氏
「今回選ばれた3色は、シルバー、ダーク、インパクトといったいわゆる定番のラインナップとは少し違いますが、3メガのプレミアムケータイということで、誰にでも好かれる色というよりは、どうしてもこの色が欲しい、と思われるような色にこだわりました。ファッションレーベルをテーマにした色ですから、携帯だけが目立つような色ではなく、持った時に似合うような色を選んでいます。メガネを買う時には、メガネをかけて鏡を見て購入を決めると思いますが、これと同じ感覚で、携帯を持った自分を鏡で見て携帯の色を選んでもいいのではないかという提案も含んでいます。結果的に控えめな色になっていますが、ぴったりのファッションの方が持てばとてもかっこいいカラーリングになっていると思います」
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派手さを抑え、センスと遊び心のあるグラフィックが用意されている
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―御社の端末は追加色が発売されたりしていますが、今回はどうなんでしょうか?
井戸氏
「今の3色でこだわりを持つ人すべてをカバーできるとは思っていませんし、出したい色もあるので継続して検討はしています」
―プロモーションなどで、デザインやコンセプトを特にアピールしているように見えます。
井戸氏
「300万画素のカメラはトレンドとはいいにくい現状ですし、カメラ部分が世界初といってもそれだけではアピールしにくいと考えました。そこで、デザインなども同列に扱って、プロモーションを行なうことにしました。A5406CAは、きれいな画像、きれいな音、そしてきれいなデザインという3つがバランスよくできている端末だと思います」
―ボタン周りのデザインなどはある意味完成された感もあります。ユーザーは違ったものも見たくなると思うのですが、次の端末では大幅にデザインを変えたりしないのでしょうか?
井戸氏
「デザインを継承するタイミング、変えるタイミングというのも見計らっています。あまり節操なく半年ごとにデザインを変えたのではカシオのデザインってどんなの?というようにイメージも定着しませんし、2回同じデザインで続けるのはいいとしても、3回同じだと飽きられてしまいます。ですから、次の端末はデザインを変えるタイミングになるのではないでしょうか」
―本日はお忙しい中、ありがとうございました。
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・ 3メガピクセルカメラ搭載の「A5406CA」
■ URL
ニュースリリース(KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2004/0517/
ニュースリリース(カシオ計算機)
http://www.casio.co.jp/release/2004/a5406ca_a5407ca.html
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/a5406ca/
製品情報(カシオ計算機)
http://www.casio.co.jp/k-tai/a5406ca/
(太田 亮三)
2004/07/20 12:39
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