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シャープ 技術本部NEXT推進室とソリューションを提供するシャープシステムプロダクトの方々
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シャープは、ビジネス文書をサーバーで携帯電話向けに変換し、表示させるシステム「電子ドキュメント表示システム」を開発した。WordやExcel、PowerPoint、PDFといったビジネスなどで頻繁に使われるファイルが携帯電話で表示可能になるもので、現状ではボーダフォンから発売されている同社の「V601SH」に再生機能が搭載されている。
今回このシステムについて、シャープ 技術本部 NEXT推進室の矢田氏、小野氏、柴尾氏、そしてシャープシステムプロダクトの代表取専務締役 下村氏、同社ソリューション事業推進センターの宮田氏、川楠氏にお話を伺う機会を得たのでレポートしよう。
■ ベクター方式のLCフォントやグラフを携帯で表示
「電子ドキュメント表示システム」は、ビジネス文書を変換サーバー側で点や線などで構成されるベクター形式のデータに変換し、再生機能を搭載した携帯電話やパソコンで表示できるものだ。変換されたファイルは、国際標準化団体のW3C(World Wide Web Consortium)で標準化されたSVG1.1の携帯向けプロファイル「SVG-Tiny」となる。
シャープでは11月にベクター形式の新フォント技術「LCフォント生成技術」を発表している。今回のシステムではこの技術が採用されており、ビジネス文書内の文字はベクター形式のLCフォントに置き換えられる。ベクター形式となるため、拡大や縮小を行なってもギザギザ感の少ないきれいな文字が表示可能となっている。
文書内の写真やイラストなどはビットマップ形式のままとなるが、図やグラフ、表といったデータであればベクター形式でかなり小さく圧縮できるという。データの内容により圧縮率は異なるが、1/100~1/10程度のファイルサイズになるとのこと。V601SHでは、ボーダフォンのメール添付制限となる最大30KB以下にデータ圧縮される。SVG形式のファイルはメール添付で携帯電話に送信可能で、レイアウトやファイルの質を損なうことなく携帯電話とパソコンで相互にデータをやりとりできる。
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PDF形式の時刻表を表示。この段階では文字は確認できない
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数字キーの「3」で拡大表示
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さらに拡大表示拡大しても文字や表が乱れることはない。方向キーで画面を移動させることもできる
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Excelファイルのグラフを表示
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拡大表示
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■ まず法人ソリューションで提供
シャープではまず、今回のシステムを使った法人向けソリューションを展開する考えだ。サーバー用のソフトウェアをライセンス提供するほか、中小規模の事業者向けに今後、ASPによるサービス提供も予定しているという。
しかしながら、パソコンやPDAと比較すると、携帯電話を業務端末として使うにはキー入力が煩雑な点や画面表示サイズに制限がある点がネックとなる。同社では、こうした見劣りする要因を他の機能などで補うことで業務用途でも携帯電話が十分に使えるようになるとしている。
たとえば、端末に搭載されているバーコードリーダーで商品タグを読み込み、キー入力の手間を緩和するなどの方法が考えられ、出力側の機能では「電子ドキュメント表示システム」の拡大・縮小表示や、V601SHに搭載されたビデオ出力機能を利用することで画面サイズの制限を補完するという。ただし、V601SHのビデオ出力機能は電子ドキュメントの表示機能をサポートしておらず、シャープではこの点について今後の課題としている。
想定される利用方法は、Webサイトやアプリなどのひな形から、各事項を選択して報告書や見積もり書を作成して上司にメール送信、上司はメールに添付されたWordなどの文書を承認し、見積書を承認印とともに返信するといった使い方のほか、グループウェアなどのネットワーク上に保存されたSVGファイルをダウンロードして利用することも可能となっている。ノーツなどのグループウェアとの連携も可能だという。
なお、同社が想定する今回のシステムの利用業態は多岐に渡っている。具体的には保険外交員や外回りの営業マンなど外出の多い仕事となるが、「メールを使う企業は全て対象となるのではないか」とコメント。現在、多くの企業でメールやWord、Excelといったものを利用するため、用途を絞って考えていないようだ。
■ キャリアや端末ベンダーに広く普及を目指す
電子ドキュメント表示システムでは、3GPP標準のSVG-Tinyを採用している。シャープではオープンな環境を選択することで同技術を「SH」端末独自の機能ではなく、広く普及させていきたいとしている。現在端末ベンダーや他キャリアへも紹介しており、海外での展開も十分に考えられるようだ。
デモンストレーションを体験した印象では、これまで閲覧性の面でパソコンやPDAにアドバンテージを与えていた感のある携帯電話だが、手軽に拡大・縮小できるため閲覧性は非常に良いと感じた。同社では、この技術がキャリアなどに標準機能として装備されれば、ベクター形式の地図表示など一般ユーザーにとっても有用になるとアピールしている。対応端末が増えることで、同システムの利便性は増していくのかもしれない。
なお、先日発表されたSH900iで搭載されていた電子ドキュメント表示機能「ドキュメントビューア」は、今回の仕組みとは若干異なり、SH900iではminiSDカードに保存したWordやExcel、PowerPoint、PDFのデータをプレビュー表示できるものとなる。
■ URL
V601SH製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/v601sh/
SVG-T表示機能の概要
http://www.sharp.co.jp/products/v601sh/svgt/
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(津田 啓夢)
2003/12/19 20:23
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