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メロディコール開発者インタビュー
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「メロディコールで生のコミュニケーションが活発になる」
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NTTドコモが9月より提供しているサービス「メロディコール」を利用しているユーザー数が50万人を突破した。開始からわずか2カ月間で50万人という結果は、近年提供されているサービスの中では、抜きん出たものだという。
日本では初めてのジャンルとなるこのサービスは、どのようにスタートを切ったのか。「メロディコール」に携わった同社 クロスメディアビジネス部 サービス推進担当部長の黒田 偉之氏と、営業本部 営業部 営業促進担当部長の市川 正明氏に話を聞いた。
■ 韓国でのサービスインがきっかけに
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左:営業本部 営業部 営業促進担当部長の市川 正明氏
右:クロスメディアビジネス部 サービス推進担当部長の黒田 偉之氏
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-まずメロディコールとは、どういうサービスなのか教えてください
黒田氏
基本的には、いわゆるリングバックトーン(プルルルという呼出音)を音楽やボイスに変更して、電話をかけてきた相手に聞かせるというサービスです。現在はドコモユーザー間に限られており、聞かせられる相手も30人までとなっています。
コンテンツのラインナップは、10~20代のユーザーに受け入れられそうなJ-POPなどのほかにも、幅広いユーザーに対応するためにクラシックやナツメロなどを用意してます。また、たとえば「北斗の拳」のケンシロウというキャラクターが「お前は既に電話をかけている……」というようなボイスや効果音を用意してます。
-メロディコール導入は、どういった動機だったんでしょう?
黒田氏
やっぱり最初は、「韓国でこういうサービスがあるらしい」という話からですね。確か、ワールドカップが開催されたあたりで同様のサービスが開始されて「面白そうだな」と。
企画が立ち上がったのは去年の11月。ですから、約10カ月で開始にこぎつけたことになりますが、ドコモとしては極めてスピーディに動いたものと言えます。しかしスムーズに社内で受け入れられたかというと、そうではありません。最大の問題は、ネットワークの交換機を改造しなきゃいけないということです。音声通話の部分、つまりドコモの根本的なサービス、ネットワークに手を入れるということで抵抗がありました。
また、具体的なサービスインを考える前に特許関連について1カ月程度調べました。もし特許が成立していれば、どの程度のロイヤリティが必要になるのか。細かい技術的な要素という点では、特許があるのかもしれませんが、メロディコールのサービスモデルということでは、実はFOMAを開発する際に同様の特許を出願していたんですよ。これは結局、特許としては成立しなかったんですが、特許は先願主義ですから「ドコモが先に出願している」と主張できることがわかったので、ビジネスモデルとしてはクリアできました。
■ 15秒間の再生は、テレビCMがヒントだった
-ネットワークの根幹を一部変更するということで、反対意見があったとのことですが、どのように説得されたんでしょう?
黒田氏
やっぱり一番大きかったのは、韓国での成功事例。それからドコモユーザーに対してアンケートを実施しました。その結果、ユーザーにはメロディコールを受け入れられる土壌があると判断したんです。しかし、メロディコールのビジネスモデル自体は、電話をかけて通話が始まる前の段階に対するものです。リングバックトーンには課金できないので、ドコモとしては回線は使われるけれども儲からない上にネットワークには負荷がかかる。そこで、何秒間音を流すかということに悩みました。
-メロディコールで選んだ楽曲は、15秒間ですね。何らかのリサーチ結果に基づいて定まったんですか?
黒田氏
ドコモとしては短ければ短いほど良いんですが(笑)、それではユーザーにとって何なのか全く伝わりません。またコンテンツプロバイダからは、30秒や40秒にして欲しいという要望があったんです。(15秒にしたのは)テレビCMですよ。ちょうど15秒ですよね。テレビCMでは、音楽のサビの部分が使われていて、そこからヒット曲が生み出されることもある。音楽を聞く上で、認知されるのに適した時間じゃないかと。意外とわかりやすい例えだったようで、落ち着くべくして落ち着いたと思ってます。
次に、メロディコールを開始する上で大きな問題だったのは、メロディコールのサービス内容が知られていなければ、間違い電話と勘違いされる可能性があったことですね。知らないまま電話して、突然音楽が流れてきたり、ケンシロウの声がしたらビックリして電話を切っちゃうだろうと。対策の1つとして「呼び出しています」といったメッセージを付け加えてみましたが、世間への告知も大切でした。混乱がおきないように、いろんな媒体で告知活動をしたんです。その1つとしてテレビCMを実施したんです。サービスを使ってくださいという意味合いも当然ありますが、こんなサービスが登場したよ、びっくりしないでねということを伝えたかったんです。
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サービス開始直前から放映されたテレビCM。かなり好評だったという
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■ 着メロとは異なるビジネス構造
-携帯電話と音楽ということでは、まず着信メロディが浮かぶんですが、そのビジネスモデルとメロディコールのビジネスモデルとは、異なる点があるんでしょうか?
黒田氏
まったく違いますね。基本的にiモードで着信メロディを配信するというものは、ドコモは場所を提供するだけなんです。コンテンツプロバイダが主体となってサービスを行なっている。でもメロディコールは、音声ネットワークのサービスですから、ドコモが主体にならざるを得ない。コンテンツプロバイダに「コンテンツをください」と協力をお願いする形ですから、ビジネスの進め方としては大きく異なります。
コンテンツを提供しているのはレコード会社が多いですね。また著作権関連では、JASRACをはじめとする関連団体と仮契約してます。前例のないサービスですから、かなり慎重に検討されているようですね。
■ ボイスや効果音が予想以上に受け入れられた
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黒田氏は、メロディコールのサービス内容を担当。コンテンツプロバイダとの交渉も行なったという
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-メロディコールは9月1日より開始されたわけですが、ユーザーの反応はいかがでしたか?
黒田氏
9月1日の午前0時からスタートしたんですが、私はショップが開店する午前10時頃からユーザーが来ると考えていました。しかし10時までに数千人規模まで達しました。そして初日で3万人、次の日は15,000人となって予想以上の伸び方で驚きました。正直言って、設備が間に合うか不安になりましたが、今は目処がたっています。
-メロディコールには「ベーシックコース」と「エンジョイコース」がありますが、どちらの利用者が多いんでしょう?
市川氏
圧倒的にエンジョイコースが多いです。というのも10月31日までキャンペーンとしてエンジョイコースの利用料がベーシックコースと同じだったからです。11月からどうなるかが気になりますね。また、利用されているデータに関しては音楽がほとんどだろうと予測していましたがボイスや効果音もかなり使われてます。面白いコンテンツが多いんですね。
-音楽の場合は、ヒットチャートなどわかり易い基準、指標があります。しかし面白いボイス、効果音というのは、どのような基準で紹介されてるんですか?
コンテンツそのものは、コンテンツプロバイダの方々から提案されます。我々も聞いて「面白いね」と思うんですが、それがユーザーに受け入れられるかどうかわからない。ですから、まずはメロディコールのサイトで紹介して、好評であれば続けるという形にしています。
-そういえば「六甲おろし」も提供されてましたね。
黒田氏
そうですね……ただあんまり売れてないんですよね。全国の阪神ファンはどこ行っちゃったんだって思うくらい。
市川氏
ちょっと関西エリアではユーザー数自体が出遅れているんですね。ドコモは全国9社で展開してますから、各エリアによってどのサービスに力を入れるか異なってきます。そういった要因があって、関西ではちょっと出足が鈍かった。
■ ユーザーの要望に細かく対応
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市川氏は、営業促進担当ということで、ユーザーへの告知に対しても注力。新規契約のユーザー獲得が課題という
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-サービス開始から2カ月が経って、ユーザーからはどんな要望が届いているんでしょう?
市川氏
本当にさまざまな反響をいただきました。おおむね好評だったようですが、ヒットチャート上位の曲が欲しいとか、サービスを利用する際の手続きが面倒といった声をいただいてます。それからauの着うたと比較されているようで、クオリティが低いというものも多いですね。
黒田氏
クオリティに対する要望は本当に多いんですよ。その原因の1つは、実は我々のミスによるもので、サービスインする前、いろいろな検証を行なっていたんですが、使用していた携帯電話はデフォルトの設定だったんです。通話時のスピーカーのボリュームは、初期設定が中間程度のレベルなんですが、現実には多くのユーザーが最大限まで上げてる。だからユーザーからは「音が割れている」という苦情がきました。サービスインから1週間後には直しましたので、今はだいぶ少なくなりましたね。
また、クオリティの問題は、通話時とほぼ同じ音質になってしまうので仕方がない面もあります。しかし音源を帯域にあわせるようなチューニングを施すといった対策を行なってますので、より音質の良いデータを提供できるようにしています。
市川氏
利用時の手続きが面倒という点は、サイト内の案内でユーザーに混乱を招いていた部分もあったと思います。たとえば、メロディコールに利用する楽曲を選択する際に「設定」というボタンを押すと「確認」しかできないということがあったんです。
黒田氏
言葉を直さなきゃまずいね、ということになって、細かい点でユーザーインターフェイスが向上するようにしています。用意されている楽曲もパソコン向けのWebサイトで一覧を案内していたんですが、iモード端末の画面でも閲覧できるように改善しました。またメロディコールとして使用できる曲数は毎月3曲までなんですが、この制限を受けない「エンジョイフリー」というコーナーも用意します。これは11月1日から正式提供となりますが、洋楽を中心に最新の楽曲を提供していきます。
■ メロディコールは当たり前のサービスになっていく
-現在、日本国内ではドコモだけのサービスですが、他社の動きに対してはどのように考えておられますか?
市川氏
他社もいずれ実施するでしょう。固定網も含めて当たり前のサービスになると思うし、なって欲しいとも思います。そうなれば、差別化の要因にはならなくなっていくんでしょうね。
黒田氏
他社にやって欲しいかどうか、という点では、ドコモも同じですがトラフィックが発生する割に収入がないサービスなので「やってください」とは言いにくい。ユーザーからの要望で、どの電話からでもメロディコールのようなサービスが体験できるようになればと願ってます。
-メロディコールがユーザーに与えた効果、貢献したことは?
黒田氏
話のきっかけ、タネになるんじゃないでしょうか。メールでのやり取りは頻繁にしていても、会話が少なくなってきている。そこでメロディコールを聞いてみてよ、ということで通話の機会が生まれて、生のコミュニケーションになるんです。
市川氏
ユーザーからの要望では、「この曲を多くの人に聞かせたい」というニーズもあるんですが、その一方で「あの曲はこの人だけに聞かせたい」という声も結構あるんですよ。自分の気持ちを伝えるという点で、新しいコミュニケーションの方法になるんじゃないかな。
-ありがとうございました。
■ URL
メロディコール サービス概要
http://melodycall.com/
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(関口 聖)
2003/10/31 18:47
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