|
通信専用端末から単体でも楽しめる端末へ
|
|
~シャープ J-SH09/J-SH52新機能の舞台裏~
|
|
|
機能アップと小型化に挑戦
|
東広島市にあるシャープの事業所
|
法林:まず、今回の新機種のポイントについて簡単に説明をお願いします。
櫻井:J-SH52は、J-フォンに端末を供給するメーカーの中では最初となるパケット対応端末第2弾です。J-SH51では、カメラやミュージックプレーヤーなど、機能面においては女性ユーザーからも大変高い評価をいただきました。その反面、「サブディスプレイが欲しい」、「サイズをもう少し小さくできないか」というお声も頂戴しました。J-SH52では、そうした要望を取り入れて、機能アップするとともに小型化に挑戦しました。
J-SH52の新機能としては、J-SH51で断念したボイスレコーダー機能や、SDカードにムービー写メールよりも長い動画を保存できる「モーションカメラモード」などがあります。
山本:J-SH52に関しては、NTTドコモやauからもカメラ付き端末を発売され、更なる端末の高機能化を進む中で、J-フォンのパケット対応端末の機能をどのくらい強化していけるか、他の端末メーカーが追従できないようなフラッグシップモデルを開発していち早く世に出したい、ということを考えてJ-フォンさんとともに商品開発に取り組みました。
J-SH51からの流れで言うと、「パケット対応端末(J-SH5xシリーズ)だから大きいね」と言い訳しないよう、従来機種(J-SH0xシリーズ)と同等のサイズ感をターゲットに開発した機種です。
ムービー写メール&写メールというコミュニケーションを前面に打ち出してはいますが、携帯電話の次の世界、通信を使わないでも、持ち歩いて楽しめる機能を搭載しています。
フラッグシップモデルながらコンパクトなJ-SH52
|
J-SH52
|
法林:J-SH52ではSDカードスロットやカラー背面液晶など、ディスプレイ側の実装部品が増えていますが、そのあたりの設計は大変なのではないでしょうか?
山本:携帯電話の部品の中では、場所が決まっているディスプレイと十字・テンキーを別にすると、電池と着信メロディ用のスピーカーが大きく、これらと他の部品をどうやってレイアウトするかが問題になります。J-SH51ではSDカードスロットを十字キー側に配置しました。そのノウハウがあったので、J-SH52でもそうした方が楽だったのですが、薄型・軽量化を目指すためにあえてディスプレイ側に移動させました。
法林:J-SH52のSDカードスロットのカバーは、プラスチック製のハードカバーになっています。これは他のラバー製カバーを採用する端末に比べると、抜き差ししやすく、デザイン的にもきれいにまとまっていると思いました。このカバーには、防塵性向上の意味合いがあるのでしょうか?
山本:もちろん防塵性向上ということもありますが、やはりデザイン性の意味が大きいです。ラバー製カバーも可能だったのですが、目に触れやすいディスプレイ側ということで、ラバー製にすることに対してはデザイン部門から激しい抵抗がありました(笑)。そんなわけで、プラスチック製ハードカバーを採用した第一の理由としてはデザイン性が挙げられますね。
CCD搭載で強化されたカメラ機能
|
通信システム事業本部
パーソナル通信第二事業部
第1商品企画部 副参事
山本 信介氏
|
法林:J-SH52とJ-SH09ではCCDセンサーを搭載していますが、CMOSに比べて消費電力の問題などはどうなんでしょうか?
鷲崎:CMOSに比べると若干消費電力が大きくなっていますが、問題になるほどではありません。
山本:CCDの採用に関しては、実は社内で議論がありました(シャープは業界最小のCMOSカメラモジュールを自社開発するなど、CMOSに力を入れている)。ただ、撮影品位を追求していく上で、CCDへの切り替えを決めました。今後は他メーカーさんがCEATECなどのイベントで提案されていましたが、端末の表と裏の両方にカメラを装備する“ツインカメラ”のような考え方もあり、液晶パネル(TFTとGFカラー)と同様に、CMOSとCCDで、ある種、使い分けができると考えています。
法林:CMOSからCCDに変わったことによるメリットはどうなんでしょうか?
鷲崎:CCDはCMOSに比べて暗い場所での撮影時に画質劣化が少ないのがメリットです。また、J-SH51に比べると、J-SH52では撮影画像の追従性がよくなっています。
山本:J-SH52やJ-SH09の場合、フレームレートをあえて抑え目にして、暗い場所では自動的にスローシャッターにして対応しています。
法林:カメラにマクロ機能が搭載されましたが、これはどうやっているのでしょうか?
山本:機構的にスライドスイッチでレンズを物理的に移動させているだけです。将来的には光学ズームなどもありえますが、その前にやるべきこととして、レンズを動かすだけで済むマクロ機能を搭載しました。厚みなどに関してもそれほど問題にはなりませんでした。
法林:そもそも、なぜマクロ機能を搭載したのでしょうか?
山本:デジカメの流れに沿った撮影用途の拡大という面はもちろんですが、実はこれには新たに搭載したQRコード(2次元コード)とJANコード(一般的なバーコード)の読み取り機能が関係しています。ですから、J-SH52とJ-SH09のマクロ機能はQRコードやJANコードを読みやすいようにチューニングされています。
印刷物からデータを読み取るQRコード
|
J-SH09
|
法林:携帯電話のカメラでQRコードなどを読めるというのは、面白い試みだと思います。このQRコードというものは一体どこから来た発想なのですか?
山本:携帯電話事業者の法人担当部門からリクエストをいただいたところから開発が始まりました。JANコードを読めませんか、という話です。商品化がどうこうというよりも、技術的な問い合わせをいただいたところからスタートしたのですが、JANコードは法人レベルのシステムですし、POSターミナルとの競合や精度の問題もあります。そこで、どうせ読み取るならば2次元でもいいのでは、という話になり、JISでオープンな規格になっているQRコードまで読み取れる仕様としました。法人向けというよりコンシューマー向けなので、在庫管理などに使うというよりは、雑誌などにURLを印刷してWebアクセスさせるなどの使い方が狙いになっています。
法林:QRコードと携帯電話の連携については、今後どういった展開を考えているのでしょうか。
山本:現状ではQRコードはJ-SH52とJ-SH09の2機種だけでの展開ですので、なかなかプロモーションしにくいところではあります。それでも、QRコードをプリントし、Webサイトに簡単にアクセスできるようにした冊子も一部の地域では登場しているようです。携帯電話のWebアクセス機能やメール機能との連携により、新たなサービスモデルを構築したりできますし、電話帳などの12キーでの文字入力を素早く行なえる入力ツールとしての応用が可能です。実は当事業所でも名刺にQRコードを印刷するようにしています(笑)。
|
|
QRコード付きの名刺(写真ではシールが貼られているが、実際には印刷される)。名刺に書かれている内容がQRコード化されている
|
事業所内にある携帯電話展示コーナー。ここでもQRコードを体験できる
|
独自開発したワンタッチ変換機能
法林:子音の入力から単語を推測する「ワンタッチ変換機能」など、日本語変換のソフトウェアがだいぶ変わりましたが、これはシャープ独自のものなのですか?
山本:独自に開発したものです。日本語変換ソフトウェアはJ-SH09とJ-SH52で同じものでして、いずれも従来から開発してきたものをバージョンアップしたものです。日本語変換のソフトウェアについては、外部から持ってくることも検討しましたが、やはりメーカーの意向でカスタマイズできることが重要だと考えています。メールの使い勝手ということで、自分たちでこだわっていくべきだと。
進化したSDカード機能
|
通信システム事業本部
販売推進部 係長
櫻井 誠氏
|
法林:SDカード関係では、J-SH51に引き続いてJ-SH52でもミュージックプレーヤー機能が搭載されていますが、新しくなった点はあるのでしょうか?
鷲崎:基本的には同じですが、CDから音楽を取り込むとき、J-SH51では単なる無音検出でしたが、J-SH52ではデジタル処理で曲間を検出できるようにしました。また、音楽録音時にスピーカーからモニターできるようにしています。
加えて、J-SH51でも一部採用していたのですが、再生時のエフェクト機能を強化し、サラウンドバスを採用することにより、よりいっそうの臨場感を得られるようにしています。
法林:SDカードもそうですが、J-SH09では写メールで送受信できないサイズの画像をケーブル転送できるなど、通信を使わない部分の新機能が増えていますが、反響や影響というのはありましたか?
櫻井:J-SH51の頃からそうなんですが、販売サイドからしますと、こうした機能を知っている人と知らない人の差があるというのも事実です。J-SH52で「SDカードだと長時間のムービー記録が可能」と言っても、すぐに理解してもらえない。これは大変だと実感しました。
こだわりとチャレンジ
|
携帯電話展示コーナーは、最新のJ-SH52とJ-SH09の展示に改装中だった
|
法林:最後にケータイ Watch読者のみなさんへのコメントをいただけますか?
山本:J-SH09とJ-SH52は、カメラ付き端末の元祖としてのこだわりと、新しいことにチャレンジするシャープとしての姿勢が表われた端末です。実際にお使いいただいて、その楽しさを味わっていただければと思います。
法林:いろいろな機能が詰め込まれたJ-SH09とJ-SH52ですが、今後もさらに楽しい端末が登場することを期待しています。今日はどうもありがとうございました。
(TEXT:白根雅彦)
・ シャープ
http://www.sharp.co.jp/
・ J-SH52 製品概要(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/jsh52/index.html
・ J-SH09 製品概要(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/jsh09/index.html
・ J-フォン、ムービー写メール対応の新機種「J-SH52」「J-SA51」
・ J-フォン、31万画素CCDカメラ搭載で動画撮影も可能な「J-SH09」
・ J-SH09(メロウシルバー)
(白根 雅彦)
2002/10/24 18:29
|
|
|
|
|