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「Walkman Phone, Xmini」開発者インタビュー
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一貫したコンセプトが生み出した“Walkman”の世界観
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インパクト抜群のコンパクトボディに、“Walkman”の音楽再生機能を凝縮した「Walkman Phone, Xmini」が発売された。小型端末の高い完成度や、一貫した世界観に定評のあるソニー・エリクソンが手がけただけに、登場を待ち望んでいたユーザーも多いはずだ。
同端末の開発経緯やこだわりを、ソニー・エリクソン Xminiの商品企画を担当した安達氏、電気設計担当の岡村氏、デザイン担当鈴木氏、ソフトウエア担当田中氏、マーケティング担当勝田氏、機構設計担当金子氏の6名に聞いた。

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カラーは全4色で、左から「ブラック×ブラック」「ホワイト×ターコイズ」「グリーン×ブルー」「パープル×ピンク」
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――まずは、Xminiのコンセプトを教えてください。
安達氏
今回はソニー・エリクソンの“元気のよさ”を日本のユーザーの方々にお届けしたいなという想いがあります。商品コンセプトは非常に明快で、それが一目で伝わるのが特徴だと思っています。とにかく小さい、「世界最小の音楽ケータイを作りたかった」というのが一番のコンセプトですね。それに対して機能の取捨選択や世界観の作り込みなどを行っていきました。
鈴木氏
デザインは、携帯電話ではなく、まず“Walkman”に立ち返ったらどんなデザインになるのかを考えました。まずイメージのモックアップを作ったのですが、その際も「“Walkman”の本質とはどんなものだろう?」という点を意識ました。当然社内で色々と議論はありましたが、完成した端末も、当初のスケッチからほとんど変わっていません。
安達氏
細かい部分の調整はしていますが、本当に驚くほどそのままなんですよ!
鈴木氏
ここまで同じなのは珍しいですね。私があとから描いたようにみえてしまうほどですが、そうではありません(笑)。
――読者の方にスケッチをお見せできないのが残念ですが、完成した端末を絵に描いたぐらいそのままですね。では、「“Walkman”を意識したデザイン」とは、どのようなものでしょうか。
鈴木氏
定義は難しいですが、音楽なので“楽しさ”を表現しようとしました。ラウンドした形になっていますが、これは音符が転がるような、手の中の心地よさ、というイメージです。カラーもアグレッシブにいこうと最初の段階から心がけ、新しさと楽しさを表現していきました。イメージのスケッチはブラックから入りましたが、候補段階では10色以上を検討しました。
安達氏
通常、カラーの選定はビジネス的なところを重視しますが、そればかりだと、いつも白・黒・ピンクの3色のようなバリエーションになってしまいます。そうではなく、今回はコンセプチュアルなところ追求し、この小さな携帯電話でなければできない色を考えました。10色以上検討したと申し上げましたが、その中に「無難な色」はほとんどありませんでした。いろいろなバリエーションはありましたが、チャレンジングな色が多かったですね。そこから、全体のバランスも見つつ色を決めていきましが、実は最後に入れたのが、ブラック×ブラックです。
鈴木氏
黒も「何もないところからパッと光が浮かぶ」というイメージで、トーンの異なる黒のみで構成しているのが特長です。他のカラーバリエーションも、要素はファッションやインテリアから積極的に取り入れ、普通の携帯電話では使いづらい色も入れています。例えば、グリーンも服だとそれほど奇抜な色ではありませんが、通常はプロダクトに落とし込むのはちょっと難しい。しかし今回は、このコンパクトさならこういった色にもトライできると判断し、デザインしました。
安達氏
一番王道のブラック×シルバーが好きな人がたくさんいらっしゃることは分かってるんですけどね(笑)。
鈴木氏
背面の“Walkman”ロゴも、普通、ブラック×ブラックなら、正攻法ではシルバーなのでしょうが、ここもあえて黒で統一してあります。
――WIN端末はアンテナを複数入れなければいけないなどの理由で、小型化が大変だと聞いています。なぜ、このサイズを実現できたのでしょうか。
岡村氏
今回、一番苦労したのはやはりアンテナ担当です。さまざまなサービスに対応したWIN端末なので、アンテナは2カ所必要になります。薄型端末は色々出ていますが、Xminiで難しいのは縦寸の短さです。基板の長さの要素が特性に影響があるからです。また、今回は特殊な加工と構造にして、ギリギリまで基板から遠ざけ、なるべく外側になるようにアンテナを配置しています。
外見は全然違いますが、基板の小型化については「フルチェンケータイ re」でのノウハウも活きています。「re」では、中身を薄くして外側の着せ替えを可能にするということにチャレンジしていましたからね。

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右の端末のように音楽機能に特化したメニューに変更することもできる
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――御社はかつてpreminiなどの小型端末を出していました。海外でもW880iなどの薄型端末が人気と聞いています。そのような、以前からのノウハウも活きていたのでしょうか。
岡村氏
実装技術、基板の使いこなしやレイアウトなど、従来のノウハウを蓄積してきたことで実現できたところはあります。
金子氏
スライド端末だからこその苦労もありました。できるだけアンテナに影響を及ぼさないように、金属を従来よりも少なくした新構造のスライド機構になっています。現在出ているスライド端末は可動部分がユニット化された状態になっていることが多いのですが、今回はそれを用いず、できるだけ小型で作れる機構を作り込みました。
安達氏
小さくするのと同時に、キーの凸量も考慮しています。どの程度凸があればユーザーが使いやすいのかという点は、まさにノウハウの蓄積です。使いやすさの追求には設計陣がかなりがんばってくれたので、ターゲットユーザーの皆さんに使ってもらえる合格点には達していると思います。
金子氏
キーはコンマ数mm違うと、使い勝手が変わってくるので、何種類も作って、押し心地を確かめました。
――センサーキーも想像以上に押しやすいですね。ここには、どのような工夫があるのでしょうか。
岡村氏
クリック感がないことが気がかりだったので、今あるもので何か使えないかと考えました。結果、バイブレーションを採用し、押したことがしっかり分かるようになっています。もちろん、社内には「十字キーのように頻繁に使う部分をセンサーキーにするのは、かなりリスクが高いのでは」という声もありました。
田中氏
それを回避するために、今回は従来の使い方と平行して、なぞって操作する「ジェスチャー操作」機能を入れています。これは通常の上下左右を、面に置き換えてなぞって操作をするものです。例えば、上から下になぞることで「下」方向のボタンを押したことと同じになります。
安達氏
ジェスチャー操作だと、押す場所を意識せずに、スピーディーな操作が可能です。その感触を確かめてもらうために、Flashアニメーションでレクチャーする、練習アプリケーションも搭載しました。
岡村氏
例えば、凸をつけたり、センサーキーの境目がわかるようにしたりといったことも多々議論しましたが、オリジナルのデザインをキープするということを考えると、こういう選択肢を入れたのは正解だと思います。
勝田氏
実際に商品の説明をする際にも、こういう「ノートPCのタッチパッドのような機能がある」と伝えると、実際に触れて、ポジティブに捉えてくれる人が多いですね。
――機能は相当割り切っていますが、どのように搭載機能を決めていったのでしょうか。
安達氏
ワンセグは比較的初期に非搭載を決めました。一方で、FeliCaとカメラは正直悩ましかったですね。ただ、当初のコンセプトとサイズを考え、今回は見送っています。
岡村氏
これが「小さなスライド端末を作ろう」だと、「カメラもFeliCaも」となってしまいますが、コンセプトが“Walkman”にケータイの機能を付けるという考え方からすると、搭載する機能も自然と決まりました。
――では、Xminiの機能で、“Walkman”らしいところを教えてください。
安達氏
DSEE、クリアステレオ、クリアベース。この「クリアオーディオテクノロジー」の3機能を中心に音をよくしていくためチューニングを重ねました。
岡村氏
今回はソニー本社との連携もかなり濃密でした。その音響処理を実装した後の効果確認と、自信のもてる音が出せるよう、一緒に出音の確認も行ってもらいました。
もちろん、ケータイならではの味付けもしています。すべてが“Walkman”と同じ道をいくわけではなく、ベクトルをずらしながら世界観を共有していくという形です。
安達氏
新しい試みとして、「サウンドマトリックス」という機能を入れています。音を49個作って、ドットマトリックスのポジションで音が変わるようにしました。オーディオに親しんできた方なら、どの辺をいじれば音が変わるかが分かると思いますが、若い人は直感的に音を変えたいのでは思い、この機能を搭載しています。音は相当変わりますよ。音楽にピッタリマッチすることもあれば、全然合わないこともあります。
岡村氏
オーディオに詳しい方が聴くと、「ありえない」という組み合わせも入れました。普段自分で設定しないであろう組み合わせなど、ちょっとした発見をしてほしいですね。
――UIも“Walkman”らしい仕上がりですね。
安達氏
例えば、サウンド設定でイコライザを調整できますが、そういう画面1つ1つも全部作り直しました。
田中氏
端末を閉じたときのUIのデザインは、かなり“Walkman”に近づけました。例えば、再生、停止などのアイコンに加えて、ボリューム変更のアイコンも操作をするとポンっと全面に出てきて、かなり本格的です。
安達氏
Xminiはスライド端末ですが、通常のスライドケータイのような動作はしません。ケータイの動作は開いて、閉じたらミュージックに集中というように切り分けており、閉じるとメールなどは一切見られないんです。また、閉じたときは液晶の左右にあるセンサーキーは点灯せず、使用できないようにしています。このようにケータイと音楽の切り分けを明確にしています。
岡村氏
センサーキーの表現には色々な議論がありました。閉じたとき、開いたときで、その時々に光るべきアイコンを変えたいというのはもちろんですが、その他のキーも「アプリ」などの文字ではなく、アイコンだけにしたかった。閉じたときの「着信履歴」などの電話的な記号も、なるべくコンセプトにあわせるため排除するようにしました。
金子氏
閉じたときに液晶横のセンサーキーを見せないようなデザインの実現は難易度が高かったですが、こだわった部分でもあります。この部分は、アイコンで抜いた層や外観色の層など、多層に重ねた印刷層を樹脂に転写させ、点灯時以外は見えないようにしています。
安達氏
デフォルトのメニューは携帯電話であることを意識させるために、オーソドックスな9分割のものを採用しました。ただし、EZケータイアレンジのバリエーションには、音楽特化のメニューも入れています。このメニューは、ケータイの機能をあえて下にしてあり、いきなりアーティスト選択などができるようになっています。

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左から(後列)岡村氏、金子氏、鈴木氏、田中氏、(前列)安達氏、勝田氏
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――端末はもちろんですが、付属品が豪華なことにも驚かされました。
安達氏
付属のイヤホンコードも、通常は1m程度ですが、今回は50cmとより短いものにしています。これは、胸ポケットのあたりなどから使うことを想定しているからです。
岡村氏
クリアステレオのサウンドは、イヤホンの長さやインピーダンスによって効果が結構変わってしまいます。そこで、今回Xminiに同梱されたイヤホンコードの長さをベースに調整してあります。
安達氏
かなりいいものを同梱したので、わざわざ買いなおしていただく必要はないと思います。コードの長さなど含めてカスタマイズをしていますが、ソニーの「MDR-EX-85SL」という商品とほぼ同等で、音質も変わりません。もちろんイヤホンのイヤーピースもS、M、Lと3種類入っています(笑)。
――買ってすぐにいい音で音楽を聞けるというのは“Walkman”らしいですね。では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。
安達氏
Xminiは、本当に作っていて楽しかった商品です。ユーザーの方々の反応を楽しみにしています。まずは店頭でお手にとってもらって、そのサイズ感を実感していただければと思います。また、2009年のソニー・エリクソンのラインアップにもぜひご期待ください。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(ソニー・エリクソン)
http://www.sonyericsson.co.jp/product/au/xmini/
製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/ichiran/cdma1x_win/xmini/
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(編集部, 石野純也)
2008/12/24 12:46
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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