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気になる携帯関連技術
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「手描きチャット」はメールを超える新しいコミュニケーション
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シャープが、電話やメールの“次”を目指した新サービスを始めた。それがタッチ操作対応のリアルタイムチャット「手描きチャット」だ。1つのキャンバスを2人で共有し、そこに落書きを加えていくというイメージのサービスで、ウィルコムのWILLCOM 03やAdvanced/W-ZERO3[es]で利用できる。このサービスの狙いはどこにあるのか。あえて“チャット”に目をつけた理由から将来の展望までを、シャープ 移動体事業推進本部 移動体事業推進センターの丸山晋由氏に聞いた。
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やり取りはリアルタイム
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――まずは手描きチャットのコンセプトや、誕生までの経緯を教えてください。
いきなり大げさかもしれませんが、我々がユーザーの動向を調査したところ、大変なことを発見してしまいました(笑)。若者はメールをガンガン使っていて、我々オジサンは勝手に満足していると思っていたのですが、必ずしもそうではないようなんです。これは面倒だと、困っている人もいます。ケータイメールだと、送られたら必ず返事をしないといけないという強迫観念みたいなものもありますし、語尾をちょっと間違えただけで冷たく感じてしまうこともありますからね。そこを、なんとか解決したいなと考えたのが、手描きチャットを開発したきっかけです。
ですから、今回のサービスの中身はものすごくシンプルで、書いたものがリアルタイムにそのまま相手に伝わるというだけ。機能の説明は、ここまでで、98%ぐらい終わりました(笑)。これだけですが、これこそが若者の“伝わらない気持ち”を解決する答えになるのではないかと考えました。実際、ユーザーにプロトタイプを触ってもらったら、「これは楽しい」「これだったら気持ちが伝わる」という反応で、なかなか端末を返してくれませんでした。
――若年層のニーズに合わせるために、どのような工夫をされたのでしょうか。
フレームをつけるだけでこんなに面白くなるというのも、彼・彼女らから教えられました。彼・彼女らにとっては、ハートマークの描き方や大きさのようなところが重要なんですね。その結果、スタンプに収録したハートマークがやたら多いんですよ(笑)。実はこれでもまだ、十分ではありません。自分が使うハートマークはせいぜい1個か2個ですが、使いたいハートが入っていないとダメ、となってしまいます。使っていくうちに頻繁に利用するハートは固定されてきますから、使い勝手を考え、最近使ったものが上にくるような仕組みを採用しました。
また、当初は「消しゴム」や「戻る」というボタンも付けたかったのですが、コミュニケーションは後戻りするより先に進みたいという気持ちが強いようです。だったら全部消すだけにしてしまえということで、「全消去」を付けました。
ボタンはできるだけ数を減らするように心がけました。作った画像を保存する方法も、シンプルです。レイヤー(手描きチャットは、「写真」「フレーム」「手描き、スタンプ」いう3層構造に分かれている)を残すことも考えましたが、結果的にそれもやめています。過程より結果が大事ですし、選択肢を増やしすぎると使い勝手が悪くなってしまいますからね。ファイル名も、あえて付けることができないようにしました。
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写真の上にフレームを乗せ、さらにスタンプや手描きを加えている
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――技術的には、どのような仕組みになっているのでしょうか。
いわゆる「P2P」(サーバーを介さない1対1の通信)を使っています。コミュニケーションでP2Pを使うのは、一番自然と考えています。電話もある意味P2Pですしね。相手を特定するところまでは、サーバーがお手伝いして、つながったら“後は若いもの同士で”というように端末同士がやり取りをしています。サーバーを介さないので、仕組み的には、ものすごく莫大な人数が参加することもできます。
使い方も簡単で、まず電話帳を呼び出して、メールアドレスを選択します。特殊なメールを受け取ったら、プログラムがそれを横取りして、手描きチャットがスタートする仕組みです。リアルタイムのチャットを始める前に、どう相手を呼び出すかが課題でしたが、一番近いものがキャリアのプッシュメールだったので、それを間借りする方法を採用しました。
――なぜスマートフォンで始められたのでしょうか? まだまだスマートフォンの敷居は高いですし、ソフトのインストールはライトユーザーには厳しいような気もします。
このサービスにピッタリはまるのが、大きな画面でタッチパネルを搭載しているスマートフォンだったからです。確かに、我々もスマートフォンを買って、さらにこのソフトをインストールしてくれというのは、かなり敷居の高い要求だと認識しています。ですから、WILLCOM 03のブラックトーンからはプリインストールもしています。今後はプリインストール端末を、さらに増やしていく予定です。
一方で、スマートフォンもWILLCOM 03が登場したことで、ユーザー層が女性や若者に広がりました。もちろん、限られたマーケットに固執するつもりはありませんが、こうやって新しい使い方を提案していけば、スマートフォンのユーザーもさらに広がるのだと思います。
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チャットルームを作れるPiclee
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――まだまだサービスを始められたばかりですが、コミュニケーションは相手がいないと成り立ちません。何か対応策があれば、教えてください。
実は12月8日から「Piclee(ピクリー)」という画像共有サイトで、手描きチャット対応が開始されました。ここで「手描きチャットコミュニティ」というサービスが始まっていて、アプリをダウンロードするとメニューが追加され、Picleeのコミュニティページに飛べるようになります。
使い方は2つあります。パスワード付きのルームを作って、知り合いなどとチャットするのが1つ。もう1つは、勝手にルームに入れるようにして、参加した人同士が自由に話すというものです。こちらなら、相手のメールアドレスが分からなくてもチャットすることができます。
――Picleeとは、どのようなサイトですか?
吉田鎌ヶ迫さんが運営しているサイトで、ここは、元々、P2Pのテクノロジーを培ってきた会社です。基本は画像共有サイトですが、手描きチャットもメインのコンテンツの1つという位置づけです。
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シャープ
丸山晋由氏
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――今後、一般のケータイへ対応する予定はありますか?
この年末からやっと普通のケータイにタッチパネルを搭載する動きが広がってきたので、これからがチャンスだと考えています。将来的にはほかのキャリアや、メーカーにも提供できたらいいですね。ソフトウェア的な対応は、おそらく可能です。ただ、呼び出し方法をどうするのかなどは、キャリアと相談しながら決めていかなければいけないので、なかなかすぐにというわけにはいきません。
また、海外展開も目指していきたいと考えています。多国籍でコミュニケーションが難しいということが背景にあるのか、このサービスは、むしろ欧米人からの反響が大きいんです。「CEATEC JAPAN 2008」の「USテックパートパネルアワード」(米国のIT・家電ライターがCEATECに出展された製品やサービスに与える賞)も受賞しましたが、これには本当に驚きました。このサービスをやるために、海外向け端末はすべてタッチ対応にしたいぐらいです(笑)。
――若年層に訴求する場合、月額315円という料金は障壁になりませんか?
サービスを運営するためにはいくらかお金がかかっているので、月額315円をいただく形にしました。ですが、3月まで無料キャンペーンをやっていて、今のところ利用料は無料になります。
――最後に、手描きチャットが目指す方向性を教えてください。
機能的な拡張も検討していますが、一番の“キラーアプリ”は、やはり友達なんです。今はまだ、既存のWILLCOM 03ユーザーの中でも知らない人が多い状況です。いかに体験していただくチャンスを増やしていくかが課題ですね。その一環としてウィルコムさんには、店頭でデモを触れるようにしていただきました。先ほど述べたPicleeでコミュニティを始めたのも、そのためです。
もちろん、「絵が上手くかけない」という人のためにスタンプを充実させたり、ペンのスタイルを増やしたりもやっていくつもりです。写真でのコミュニケーションを広めた時のように、手描きチャットが新しいコミュニケーションツールにできれば、これ以上うれしいことはありません。
――本日は、どうもありがとうございました。
■ URL
サービス概要
http://tegakichat.jp/
Piclee
http://pic-l.com/
■ 関連記事
・ P2Pでリアルタイムにやり取りする「手描きチャット」
(石野純也)
2008/12/19 11:55
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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