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「N-01A」開発者インタビュー
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新生NECへの脱皮を目指した新しいスタイル
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N-01A
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NECといえば折りたたみケータイの老舗である。そんなNECがNTTドコモの秋冬モデルに投入したのは、折りたたみとは全くタイプが異なるタッチパネルの「N-01A」。液晶が回転し、3つのスタイルで利用できるというユニークな端末だ。
なぜ折りたたみではないのか。どのようにしてこの機構が生み出されたのか、NECが目指すものは一体何かなどについて、モバイルターミナル商品戦略本部 クリエイティブスタジオ 主任の島村孝博氏、モバイルターミナル事業部 商品企画部 主任の岩城善広氏、モバイルターミナル事業部 商品企画部 主任の田丸伸一氏、モバイルターミナル事業部 商品企画部の石塚由香利氏らにお話を伺った。
■ 開発経緯
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岩城氏
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――今回NECとしては非常にユニークな機構を採用されました。その機構を搭載するに至った経緯を教えてください。
岩城氏
まず発想の背景からご説明しましょう。みなさんもすでにご存じの通り、サイクロイドやヨコモーションなどが当時出始めており、ケータイを横画面で使うというのが徐々に主流になりつつあったというのがあります。
NECは折りたたみの老舗だったもので、なかなかそこから脱しきれなかった、新しいものが出せなかったんですね。しかしNECも変わらなければいけない。NECとしての新しいアイデンティティが必要だという話が1年半くらい前にでてまして、そこで何か新しいものをやろうという話が持ち上がりました。
また、横画面と同時に、画面の大型化やiPhoneの登場、その他さまざま情報により「タッチパネルの時代が来るよね」という話もありました。その結果、横画面とタッチパネル、かつレガシーの縦画面とキー入力、これら3つのスタイルを実現する形状が求められたわけです。それで「どんな形があるんだ?」と模索を開始しました。
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N-01Aの機構の変遷が分かるサンプル3点と、「Touch Style」のN-01A(段ボールだけ裏側)
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――なるほど。模型を見せられると「なるほどこうなっているのか」と思うんですが、これはいつどういう形で思いついたんですか?
岩城氏
いろいろ模索してたんですが、なかなか新しい形は出てきませんでした。最初はスライドしたほうがいいのかとか試行錯誤してたんですが、最終的にはもうちょっと自然な流れの中で動作しないかなと考えるようになりました。だったらクルックルッと回転するほうがいんじゃないかと思いつきました。そこで「こんな形どうでしょうか」とデザイナーに相談したところ、「まぁ、できるんじゃない?」という軽いノリだったんです。デザイナーがそう言うならできるのかな、と思って夜なべをして作ったのがこの「段ボール版」なんです。
――これはすごいですね。この2軸方式も試作段階で思いついたんですか?
岩城氏
そうですね、「やるには2つの軸が必要だな」というのは「工作」の過程で思いつきました。
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「Share Style」(段ボールだけ裏側)
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Communication Style(段ボールだけ裏側)
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――かなり時間がかかったんじゃないですか。失敗した段ボールが山のようにあるとか?
岩城氏
実は意外と早くて、回転のアイデアを午後3時に思いついたとしたら、段ボールの試作ができあがったのがその日の夜の12時というスピードなんですよ。その間デザイナーと交わした会話は「できるんじゃない?」のひとことだけでした。
生じた段ボールの切れ端も3つくらいです(笑)。実際に作りはじめてみたら、意外と早くこの形にたどり着いたという感じだったと記憶しています。ただ、製品化するには非常に苦労をしています。
――今回、時計周りに開きますが、左右どちらの手で持つかによって開けやすい向きも変わって来そうですね。
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段ボールで作成したサンプルに、さらに段ボールで作成した画面を重ね、イメージを説明する
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段ボールの裏側をみると、2軸になっている
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田丸氏
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田丸氏
その点は正直、社内でももめました。どちらで持つかというのは年齢層によって分かれるところでもあります。黒電話時代は左手に受話器を持ち、右手でペンを持ってメモを書くというスタイルが多かったようですが、ウェブの閲覧やメールが主流の現代では、右手使いが非常に多くなっています。
実際調査したところ、7割くらいの方が右手で使われるという結果になりました。一番多かったのは右手で開けて、メールなどは右手で使うというタイプ。そこで、一般ユーザーのことも含めて考えて、右手で時計周りが採用されました。
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島村氏
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説明用に試作されたプラスチック版サンプル
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――VGAでタッチパネルということは、通常よりも配線が多いわけですよね。
島村氏
そうですね。たくさんの線を通さなくてはいけないため、この機構に配線をどうあわせるのかという課題がありました。フレキ配線にしてみたり、同軸配線にしてみたりなどいろいろ検討しましたね。長さが変わるので、縮んだときの余長をどこで吸収するのかは装置ボリュームにも影響がでてきます。そこのあたりで何度も試作しています。
――この動き方に名前はつけられているんですか?
田丸氏
今後シェアスタイルがメインになっていくだろうという想いを込めて、形状的には「T-Style」という名前をつけました。
他メーカー様だと、“サイクロイドのAQUOSケータイ”ですとか、“WオープンのVIERAケータイ”という呼び方もあるので、NECとしてもそれに通じるものを考えていく必要はあると思います。今後のブランディングとして、NECとして何かユーザーさんの間で定着するような名称を考えていかないといけないと思っておりまして、現在模索中です。
――今後もしばらくは改良しながらこのスタイルを継承していくと考えてよろしいですか?
田丸氏
そうですね。基本的に今回の形状というのは、もともとタッチパネルと横画面ありきといいながらも、実はユーザーさんの今後の使い方を想定した上ででてきた形状です。1年や2年でそれが変わるとは思っていませんので、基本的には3つのスタイルを継承しながら、ニーズにあわせてよりよい形に進化させていくことになると思います。
■ タッチパネルについて
――初めてタッチパネルも採用されています。採用された理由を教えてください。
田丸氏
「N-01A」はキーが見えなくて液晶だけというスタイルがまず初めにきます。この閉じた状態で何もできないというのはやはりまずい。かといって、操作性が悪いようでは使ってもらえません。閉じた状態でも基本的な操作はなんでもできるようにしたい、という考えから進んでゆきました。
くしくも検討しだした前後でiPhoneなどがでてきて、タッチパネルの市場が格段に広がっていったので、それも刺激になり、よりよいUIを考えていくという形になりました。
――他社と違う点はどこでしょうか。
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石塚氏
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石塚氏
「N-01A」としてはタッチメニューが縦向きに作られている点ですね。横画面メニューだと端末を両手で持たなけばならないですが、縦画面のメニューであれば片手でタッチパネルを利用できます。
もちろんカメラやワンセグなど、アプリケーションによっては横画面が適したものもありますが、基本的な入り口であるメニューにまずは簡単に入ってもらう、というのを今回他社と違う大きなポイントにしています。
――なるほど。メニューの特徴についてはいかがでしょうか。
石塚氏
「N-01A」の考えとしては、直感的な操作や即時性を大事にし、自分のやりたいことをすぐにさせてあげるという点をコンセプトにしています。
そこで、タッチパネルで最低限どんな操作ができれば満足してもらえるのかというのを考えながら、カメラやワンセグなどタッチパネルの操作で適しているもの、ミュージックプレーヤーやiモードなどタッチパネルで操作したほうが、よりよい使い勝手になるだろうというものを選んで、なるべくシンプルでわかりやすい、直感的に操作がしやすいメニューを作っています。
――テンキーもしっかり残されていますね。流れとしては取り去ってしまう方法もあったかと思いますが。
島村氏
今の時点では、携帯電話の主要な要素はキー入力になってしまうので、いきなりそこをないがしろにするのはまずいだろうと考えました。当然議論の中では「いらないんじゃないか」という意見は出ましたが、最終的には、まだキーはあったほうがいいだろうと結論になりました。
――ニンテンドーDSのようにスタイラスを使って手書きで文字入力という方法もありますが。
島村氏
今のケータイを使っている人はスタイラスを使っていないので、結局使わないのではないかと考えました。入力に関しては、わざわざスタイラスを用意して入力させるよりも、今の延長線上でテンキーを使って入力していただいたほうが、ユーザー様にすんなり操作していただける、という考えです。
「テンキーで何をさせるの?」「今テンキーで何が必要なの?」というところを考えたときに、今のメール文化の中ではテンキーが普通のハードキーとして必要だろうという結論に達しています。
田丸氏
メールなどの普段使いの際はテンキーで打った方が早いですし、それが今の日本の文化として定着していると思います。
逆に、手書きが楽しい利用シーンは何かといえば、二人で写真を撮ってイニシャルを書く、デコレーションする、という場面ではないでしょうか。そういった使い方であれば、「フォト文字 Touch」のようなiアプリで実現させています。
――「フォト文字 Touch」とはどのようなアプリですか?
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「フォト文字 Touch」を実演する石塚氏
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石塚氏
一言でいえば、写真を楽しく加工できるアプリです。撮った写真の一部を指でなぞるだけでモザイクをかけたり、目線(目を黒く塗りつぶして隠す)を入れたり、文字入力などが可能ですし、かわいいアイコンをスタンプしたり、フレームをつけたりもできます。もちろん写真の回転やリサイズ、トリミングも可能です。
撮影した写真をブログやSNSの日記に公開したいとき、知らない人の顔が写っていたりしますよね。そんなとき簡単に加工できるわけです。ブログの簡単アップロード機能とあわせて利用すれば、かなり便利に使えますし、プライバシーも守れます。
アプリの見た目がピンクだったりなど、どちらかと言えば女性向けの機能なんですが、モザイクや目線などは結構誰でも使っていただけるものなので、多くの方に利用していただきたいですね。
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島村氏を撮影し、顔にモザイクを施してみた
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目をなぞる
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目線が追加された
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タッチパネルで文字入力も可能
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――今回この形だからできた機能というのはありますか?
田丸氏
このデバイスが乗ったから、という意味では、液晶の美しさと、操作性の2点でしょうか。
今回静電容量方式のタッチパネルを採用させていただいていますが、静電容量方式のメリットとしては透過率が高くて、液晶自体が綺麗という点があげられます。また、2本指での拡大縮小が可能な点も大きな特徴です。画像だけでなくて、メールやフルブラウザにも対応しています。スタイラスの場合、2本使うことはまずないと思うので(笑)、手の操作だからこそ直感的にできるというところもメリットですね。
操作性というところではタッチパネルでいろいろ操作をし、メール返信など必要に応じてスタイルチェンジすることで画面が切替り、横画面×キー入力を使いこなすことが出来るというのがこの形だからこそ出来た機能です。
――今回の機構では、かなり勢いよく回転させるケースも見られると思います。また液晶が全面に出るため、強度などはユーザーとしても気になるのかなと思うのですが、耐久性についてはいかがでしょうか。
田丸氏
今回の端末は特にNECとしては初めての試みになりますので、そのあたりは評価を含めて問題ないよう十分な検証をしています。プロトタイプから制作に移るまでに、かなりいじわるな試験をしているんです。テスト機も新たに製造し、機械と人の両方で入念なテストを繰り返しています。例えば液晶を回転させた状態で落下する場合もあるんですよね。そういったところも踏まえた上で、いろんな補強材を入れて、変形を抑える仕組みを設けています。
液晶についても配慮してますが、どうしても気になる方もいらっしゃると思いますので、保護シートを同梱させていただきました。静電容量方式のため、あまり分厚い保護シートでは人によっては反応しにくいケースもあります。そこで操作に問題ないようなものをつけさせていただいております。
島村氏
我々はヒンジを長年やってきた上での経験がありますので、ノウハウを含めすべて今回にフィードバックし、活かせていると思いますよ。
――全体的にも大きく機能アップしてますね。
田丸氏
そうですね。ユーザー様が携帯電話に求める機能はしっかりとこだわっています。ワンセグは綺麗に滑らかに見えるように、カメラは簡単に綺麗に撮れるように、など着実な進歩をさせています。UIもそうですが、長期間使っていただくことを考えると、カメラもワンセグも、そのとき一番いい物を入れておきたいと思っています。
音にもかなりこだわりまして、今回は「SRS TruMedia」搭載により、イヤホンをご利用いただくと、音楽や動画は「バーチャル5.1chサラウンド」のダイナミックな音質をお楽しみいただけます。またBluetoothにも対応しました。
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バーチャル5.1chサラウンド
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プレイヤーも液晶をタッチして操作する
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――最後に一言お願いします。
田丸氏
タッチパネルや横画面、その他の機能も含めて、お使いいただく方が使いたいところってなんだろう? という部分を深掘りしたうえで、このスタイルが実現しました。2年間楽しく便利に使っていただける端末に仕上がったと思います。ぜひ手にとって確かめてみてください。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
N-01A 製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/n-01a/
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(湯野 康隆, すずまり)
2008/11/21 12:18
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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