HTCが世界市場で発売した「Touch Diamond」「Touch Pro」は大きなヒットとなり、国内でもNTTドコモ、ソフトバンクモバイルへの投入がアナウンスされた。各キャリアがスマートフォンのラインナップを拡大させる中、国内の4キャリアに端末の供給体制を整えたHTCの存在感が増している。
HTCの日本法人であるHTC Nipponの代表取締役社長 David Kou氏に、国内戦略を中心に話を伺った。
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HTC Nippon 代表取締役社長のDavid Kou氏。手にしている端末は、写真左がNTTドコモ向け「Touch Pro」、右が海外版「Touch Diamond」
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――HTCとして日本市場での戦略や、世界戦略との違いを教えて下さい。
基本的に世界戦略と大きな違いはなく、世界で人気のある端末、スマートフォンを日本のユーザーにも楽しんでもらうというものです。
世界で「スマートフォン」と呼ばれている端末は、音声通話だけではなく、インターネットやそれ以上のことが出来るスマートな端末、という位置付けです。しかし日本のケータイは既に“スマート”なので、日本では、インターネットやコミュニケーションツールとしてさまざまなことができる端末の総称としてスマートフォンを位置付けたほうが分かりやすいと思います。
――日本のキャリアが提供するサービスに対し、本格的に取り組まれるのでしょうか?
世界市場で展開している製品を投入する場合と、キャリアの声を聞き、より反映させた製品を投入する場合の、2つの道があると思います。HTCは、技術は人の生活をより便利に、楽しくするためにあると信じていますし、最先端の技術を導入し、使いやすく、革新的な端末を市場に提供していきます。
――iモードなどキャリアサービスへの対応は、ユーザーから望まれるところだと思います。
キャリアと協力して、市場に沿った商品を発表していきます。我々は多くを学んでいますし、その結果を共有できたら、と考えていますよ。
――日本のキャリアに対応するにあたり、難しい点、興味深かった点などはありますか?
難しい点というわけではありませんが、国やキャリアが違えば要求される内容も違ってきます。HTCは各国のユーザーにふさわしい内容で提供していきたいと考えており、3つの点を重視しています。一つ目は、それぞれの市場を理解すること。二つ目は、どこよりも一歩先に製品を提供すること。三つ目は、ユーザーと最新技術を共有することです。
――日本市場は最先端の技術やサービスを習得できる市場でしょうか?
いくつかの最先端の技術もありますし、ほかとは違う市場、という意味でも習得できることはあります。
■ スマートフォンは簡単で、使いやすいものであるべき
――携帯電話はハードウェアとして世界展開できる一方、実際の使われ方やサービスは各地域のコミュニケーション、文化に依存している面があると思います。こういった点について、世界展開する上で注力している点はどこでしょうか?
注目しているのはライフスタイルですね。技術は、ライフスタイルをより便利に、楽しむためにあると考えています。国が違えばライフスタイルも違いますが、すべてに共通して言えるのは、スマートフォンは簡単で、使いやすいものであるべき、ということです。
世界戦略製品ではアラビア語や韓国語、日本語などさまざまに対応させていますし、日本でも「1台目の携帯電話」として使ってもらえるようになればうれしいですね。
――日本市場では2台目需要も無いわけではありませんが、1台目の携帯を目指す意図は何でしょうか?
2台持つユーザーもいるでしょうが、例えばインターネットや音楽など、1台で多くのことをできたほうが便利です。「1台目の携帯」と言ったのは、1台だけ持って欲しい、ということではなく、ユーザーが日常で最も使う携帯電話であってほしいという意味です。
――日本市場では、数字の上ではスマートフォンの存在はまだ大きくはありません。今後ブレイクするための秘訣はどこにあると考えますか?
市場の要求をよく理解することです。また、世界的に成功している機能を、日本市場でも共有していくことが大切だと思います。
――日本市場で今後もTouch Diamondのような世界戦略製品が投入されるのでしょうか? また、SIMロックフリーのメーカーブランドのラインナップは拡充されるのでしょうか?
現在も実験的な意味合いではありませんし、今後も最先端の技術を用いた製品を日本市場に投入していきます。メーカーブランドでの展開については、現在は市場動向を探っている段階で、今後改めて方針を決定したいと思います。
■ Windows Mobile端末での成功とAndroid
――HTCはタッチパネル搭載端末が成功しています。
タッチパネルは、簡単にさまざまな機能にアクセスできるのがポイントです。また、タッチパネルを搭載することの強みは、キーを無くし、端末をより小さく、軽くできることです。しかし、タッチパネルはひとつの機能で、操作性を高めるひとつの要素です。タッチパネル以外の機能も、もっと簡単に操作できるようになるでしょう。
――TouchFLOはWindows Mobileを使いやすくしたインターフェースですが、今後もさまざまな端末に搭載されていくのでしょうか?
もちろん、継続的に取り組んでいきます。最先端技術を取り込み、使いやすくし、ハード面の進化でより速く、快適に動作するように進化していくでしょう。
――OSについて伺います。先日、T-MobileからHTC製のAndroid対応端末「G1」が発表されました。今後、Windows Mobile以外のOSを搭載した端末についても積極的に展開していくのでしょうか?
HTCの過去10年を振り返っても、Windows Mobileに注力したことで成功を収めてきました。これは、ほかの企業にはないニッチな技術をいち早く製品に反映させてきたことも要因だと思います。
一方で、Android端末も加わったことでラインナップが広がり、より幅広いユーザーに製品を届けられます。それ以外のOSに対してもオープンなスタンスですし、最先端の技術と合わせて検討していきます。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
HTC Nippon
http://www.htc.com/jp/
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(太田 亮三)
2008/10/15 11:13
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