9月12日、携帯電話市場に「大人」向けの新たな折りたたみ型のCDMA 1X WIN端末が投入された。auから発売された「URBANO」(アルバーノ)だ。auでは通常「W」で始まる型番で呼ばれるが、本端末は「URBANO」が製品名となっており、「大人」市場における意気込みがうかがえる。
今回は、その開発経緯やこだわり、ユニークな機能などを、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画部 主事の小林繁氏に伺った。
■ 開発の経緯
――まず開発コンセプトを教えてください。
従来の携帯電話は、携帯の関心度が高い若い人向けのものが中心で、あとは高齢者向け端末のどちらかに選択肢が偏っていました。つまり、携帯への関心度は高くて、なおかつ「大人」といわれる年齢の方にとって、今まで満足できる携帯電話となると選択肢が限られていました。すでにあるものを、ある程度妥協しながら使うことを普通だと思っておられる方もいらっしゃったんではないでしょうか。
実は今の40~50代の方々というのは、10年前、Windows 95が出た頃に30~40代で、その時働き盛りなんですね。多くの方々は当時からパソコンを使われていて、本当に高いリテラシーを持たれている方が多いのです。早い方ですと、携帯電話もおそらくその頃から持たれていて、別に今初めて携帯を買うではないんです。ただ、やはり視力の問題などを意識されておられる方はいらっしゃるかもしれません。
そこで今回の「URBANO」は、そういう高いリテラシーをお持ちの「大人」の方々を中心に、「見やすさ」「聞きやすさ」「ユーザビリティ」の3つを兼ねそろえた端末として企画しました。ただし、年齢でユーザーを絞り込むのではなく若者もあこがれるような「洗練された大人」をターゲットユーザーとしています。
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シャープの小林繁氏
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――「URBANO」という名称の由来は?
「アルバーノ」という読み方は当て字で、もとはイタリア語の“都会的で洗練された”を意味する「ウルバノ」から来ています。決してイタリアにこだわったわけではないですが、コンセプトを考える上で、ファッション性、クラシック性というとヨーロッパ系になり、最終的にマッチしたのが「URBANO」でした。
――9月12日にリリースされましたが、敬老の日を意識されたんですか?
弊社としては特に意識していません。従来のシニア向け端末はプレゼントとして買われる方も多いと聞いています。しかし「URBANO」は自分で買う端末だと考えています。自分のこだわりで、自分のセンスで選んでいただくので、時期には縛られないと思っています。
――2年前にドコモさん向けに出された「DOLCE」などは、わりとコンセプト的には近いのかなという気がしましたが、それとは全くターゲットイメージは違うんですか?
「DOLCE」も「大人ケータイ」と称していましたから、元々発想しているところは近いと思います。今回も「大人向け」ですが、「本物を愛する大人」という意味を込めています。
よくよく考えると、デザインがよくて、機能がよくて、使い勝手がいい端末は、どの世代でもうれしいはずです。そこであえて年齢を絞るのはよくないのではないか、と考えました。本当に実年齢上大人の方もいれば、ちょっと大人びたクラシカルなものに憧れる、本物志向の若い方もいらっしゃる。そういった方々に幅広くご利用いただけるようデザインしています。
■ 見せびらかすのではなく、自分が使って長く満足できるものを
――デザインで特に意識されたことは?
使えば使うほど愛着が沸くスタンダードなもの、自分が使って満足できるものを重視しました。携帯電話のデザインはどうしても若者向け中心で、そのときの流行や旬が反映されがちです。しかし、旬なものは時間が経てば古くなってしまいます。本当にいいものというのは長く使えるものであり、人に見せびらかすものではなく、さりげなく自分が使って、長く満足できるものだと考えています。
――「長く」という発想の原点としては、最近の2年縛りで売るパターンも影響していますか?
買い換えの販売方式が変わった端境期で多少意識はしましたが、基本的にはターゲットのお客様のニーズや考え方をイメージして企画、開発しました。
今回のデザインを検討するに当たり、従来とは違うアプローチをしました。通常、携帯電話は外側から順番にデザインしていくんですが、今回は「内から外へ」デザインした点が大きな特徴ですね。
内側の例でいえば、キーをご覧ください。金属調のキーで、シートキーを使わず、さらに数字キーはそれぞれ分離させて押しやすくしています。2、5、8、0が若干下に移動しているのは、押し間違いを防ぎながら、なおかつキーを大きくできるというメリットがあるからです。加えて、金属調のかっちりしたシルバーフレームをボディの周囲に施すことで、高級感と確かな安心感を表現しました。
黒には塗装部分に柔らかい、手になじみやすい、しっとりとした塗装を施しています。白と赤は色味の表現や汚れの関係であえてやっていないのですが。
――背面パネルもユニークですね。
後からデザインした外側、つまり背面液晶にはアナログ時計を表示させることを始めから決めてデザインしていますので、時計の文字盤のようなデザインになっています。液晶でもアナログ時計をイメージしている以上、時間が経つと消えるのはおかしいので、常時表示させています。
――サイドキーは「マナーボタン」しかありませんが、なぜですか?
これはシンプルな使い勝手のよさと、デザイン性を考慮しました。その結果、押しやすい大きなものになっており、サブ液晶の表示も切り替えられるようになっています。
■ 妥協せず、機能はフルサポート。「内蔵型アンテナ」で見た目にも配慮
――機能はフルにサポートしている感じですね。
そうですね。想定している方々は高いリテラシーをお持ちの方なので、ワンセグ、カメラ、FeliCaも含め、あえて機能的な妥協はしていません。
大きなモバイルASV液晶を使っていますので、ワンセグも快適にご覧いただけます。加速度センサーを搭載しているので、端末を縦から横に倒すだけで画面も横向きに切り替わります。auさん向けでは初めての搭載です。自動回転設定をOFFにすれば従来通りの仕様にもなります。
――ワンセグのアンテナは内蔵ですか?
内蔵というよりは、ボディ全体がアンテナとなる「内蔵型アンテナ」いう仕様です。開いた状態でアンテナとして機能します。マインドエイジの高い方がポイップアンテナを伸ばしてワンセグを見ていたら、いかにも“ワンセグ見てます!”という感じであまりスマートではありません。操作もガチャガチャしていたらやはりスマートには見えません(笑)。そこで、倒せば自動的に画面も回転し、アンテナも見えないようにしたというわけです。技術陣ががんばってくれたおかげで、従来の端末と同等の感度が確保できたので自信になっています。
――最近は通話音質にこだわる端末も増えていますが、この端末ではいかがですか。
従来機種より大きなレシーバーを搭載するなど、レシーバーの聞きやすさに配慮しました。通話中に音を通常のレベルより大きく設定できる「でか受話音」にも対応しています。ノイズキャンセルや声をゆっくり聞こえるようにするといった機能は搭載していませんが、人の声がよく聞こえるように周波数調整するなどの工夫をしています。薄型化等、デザインと受話音質はトレードオフの関係にありますが、「URBANO」は基本性能にこだわっているので、妥協せずに標準通り作って聞きやすさを維持しています。
■ 「でか文字」と専用ポータルで見やすさに配慮
――文字サイズへの配慮はいかがでしょうか。
文字は大きくしてほしいけど、機能は削りたくないという希望があって、メニューは一切項目を減らさずに文字だけ大きくできるようにしています。メインメニューだけでなく、ほぼすべての階層における基本的な操作が「でか文字」に対応しています。
さりげない工夫なんですが、購入後最初にセンターキーを押したとき、メインメニューを表示する前に文字サイズの設定画面がでるんですよ。「でか文字」を一斉にセットできるので、ニュースフラッシュのテロップなどもすべて大きくなります。
――au one トップはいかがですか? 一般的にコンテンツのメニューの文字はかなり小さいので、読みにくいのではと思うのですが。
残念ながら設定で大きくすることはできません。その代わり、今回「URBANO」発売にあたり、auさんが専用のポータルサイトを用意してくださいました。メインメニューの「インターネットへ接続」からアクセスできるサイトがそうなんですが、実質au oneと同じような機能が読みやすい形で利用できます。文字サイズも比較的大きく読みやすいですし、コンテンツもターゲットを意識してまとめられているのでオススメです。
■ 大人が持って楽しめる「歩数計」と「ゴルフスコープ」
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歩数計(左)にはカロリーや脂肪燃焼量が。ゴルフスコープ(右)はピンまでの距離が測れる
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――背面の液晶や待受画面に「歩数」が出ていますね。
「歩数計」を搭載しています。3軸センサーなので鞄のポケットに入っているようであれば、どの角度になっても計れます。待受画面で確認できるだけでなく、待受画面からパッと起動できて、消費カロリーや脂肪燃焼量も確認もできるので結構ウケがいいです。
企画に当たっては“常に持ってる携帯電話だからこそできる歩数計”というところにこだわりました。画面が大きいので、通常の歩数計ではできないであろう時間別グラフや、日別、週別の履歴表示、1週間で5万歩歩きたいといった目標も立てられるなど、携帯電話ならではの賢さを生かしています。1週間前からの記録を元にレベル表示もしてくれます。
――「ゴルフスコープ」というのもユニークなアプリすね。どのような機能ですか?
ゴルフ場でピンの写真を撮り、下端と上端を指定すると、そこまでの距離が測れるんです。
――ゴルフ好きな大人にはうれしい機能ですね。ピンを自動認識するのは難しいんですか?
ゴルフ場によってピンの色が違うので難しいですね。また季節によって風景(背景)の色が全然変わってしまうので判別が難しくなります。これはユーザーさんが目で指定するしかないかな、ということで今回のような仕様になっています。
どちらかというとおもしろ機能寄りなんですが、200ヤードくらいだと意外と誤差は10%もないんです。ただ、実際の機能としての誤差よりも、ユーザーさんによる指定の誤差のほうが大きいかもしれません。下端や上端の指定が1ドットずれると誤差が出ますので。あとはピンが斜めに写ってる状態など、正確に指定できないことによる誤差のほうが大きいかもしれません。
――ゴルフ場ではピンまでの距離もはかれるし、歩くし、持ってれば歩数も分かってかなり便利ですね。「大人」の趣味と運動を兼ねてる(笑)。
まさにその通りです(笑)。
――このシリーズへの今後の意気込みをお聞かせください。
メーカーとしては、URBANOを脈々と続くブランドに育てられたらいいなと思っています。
――どうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/urbano/
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/ichiran/cdma1x_win/urbano/
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(すずまり, 編集部)
2008/10/01 15:10
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