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「921P」開発者インタビュー
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デザインやコンテンツの取り組みを聞く
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921P
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「921P」は、VIERAケータイ第2弾となるパナソニック製の夏モデル。920Pと比べ、細やかな進化が図られるとともに、コンテンツ面でも新たな取り組みが行われている。
プロジェクトマネージャーの加宅田 忠氏、商品企画担当の目黒 幸一氏、デザイン担当の王 律佐子氏、電気設計担当の長瀬 幸一氏、ソフトウェア担当の越智 健敏氏、コンテンツ担当の近藤 桂子氏と、手塚治虫氏のキャラクターとアーティストのコラボコンテンツを手掛けたガスアズインターフェイスの飯野 健一氏と重村 正彌氏に聞いた。
■ 開発コンセプト
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921Pの開発担当陣。前列左からコンテンツ担当の近藤氏、プロジェクトマネージャーの加宅田氏、電気設計担当の長瀬氏
後列左からガスアズインターフェイスの重村氏と飯野氏、ソフトウェア担当の越智氏、デザイン担当の王氏
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――920Pから半年での後継モデルですが、開発コンセプトは?
加宅田氏
今回、ソフトバンク向けVIERAケータイの第2弾ということで、「920Pで打ち出した方向性を進化させる」という考え方でスタートしました。920Pから半年後の登場というところについては、やはり常に新鮮さを打ち出していかねば、ユーザーの心に訴えかけるものにならないためですね。このあたりは当社だけではなく、携帯電話メーカー共通の考え方だと思います。
――では、921Pではどの部分で進化させたのでしょうか?
目黒氏
1つはディスプレイサイズやワンセグアンテナ内蔵などテレビの部分ですが、大きなところでは、外観をすっきりさせることを目指しました。というのも、先代の920Pでは、ヒンジ部側面が出っ張っていたからです。
――同時期にドコモ向け端末としてリリースされたP906iは、921Pに似たモデルという印象を受けますが。
目黒氏
アプリケーションレベルでは、キャリアさんごとのサービスに対応することから、違いはありますが、VIERAケータイでWオープンスタイルという、パナソニックが打ち出した価値観、パナソニックらしい点は、キャリアさんの垣根を超えて提供するという考えはあります。そのあたりは、今回が初めての取り組みではなく、これまでもワンプッシュオープン機構で実現してきた部分です。
加宅田氏
端末メーカーとして、特長を作り上げて、1つのブランドを打ち出していくというのは、メーカーとしてとるべき1つの流れであると思います。海外での動きを見ても、特に新しい動きというわけではありません。
■ デザイン面の狙い
――デザイン面が進化させた部分の1つということですが、もう少し詳しく教えてください。
王氏
920Pではヒンジ部が盛り上がった形状になったことで、ガジェットのような雰囲気が出て、女性ユーザーにとっては手を出しにくい部分が多少ありました。今回は、形状そのものをすっきりさせ、カラーについても2つの色を用いる“バイカラーコンセプト”という考え方を採用して、新しさを訴求することにしました。
――バイカラーコンセプトとは何でしょう?
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背面はミラー調に
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王氏
2色で統一感を持たせたカラーリングと言えば良いでしょうか。端末を開けたときのコントラスト、表面と背面の色合いというところで、単調になりすぎないように、2つの色を使って華美になりすぎず、なおかつ上品さを打ち出すことを目指しています。カラーリングは、ソフトバンクさんからの要望や私たちからの提案もあって、最後までせめぎあって決まっていますね。
――921Pのサブディスプレイ周辺もミラー加工のようですね。
王氏
これは824Pや821Pと同じ、多層膜蒸着という技術を用いて実現しています。ただ、同じ夏モデルの824Pでは立体的なデザインを採用しましたが、921Pはよりフラットなミラー感を追求しました。824Pはパーティのような雰囲気を演出していますが、921Pはビジネスシーンにも合うテイストに仕上げています。
――すっきりした形状にするということは、機構面での工夫が必要ということでしょうか。
長瀬氏
機構面では、ワンセグアンテナを内蔵し、ダイバーシティ方式(2本のアンテナで受信する方式)を採用しています。ワンセグアンテナと言えば、外に引き出して使うホイップ式を想像するかもしれませんが、実際に使う際は面倒なものです。ダイバーシティ方式の出来には自信がありますね。
サイズ面では、物理的なスペースが不足していますので、構造物とアンテナ、設計のバランスが難しいところです。携帯電話、ワンセグ、GPS、FeliCaのアンテナもありますから。
また、ヒンジも小型にしており、すっきりした形状を実現しています。
――ソフトウェア面はいかがでしょうか?
越智氏
これまでユーザーからはメール操作面でのレスポンスに対して、不満の声が寄せられていました。そこで今回は、冗長な処理になっていた部分などをチェックして、パフォーマンスを改善しています。CPUのクロックを向上させる、あるいはメモリ容量を増やすといった手法ではなく、処理の負荷がどこにかかっているか解析して、1つ1つクリアにしていきました。
――他キャリア向けのパナソニック製端末として、921Pと同じ機構を採用したP906iがあります。ソフトウェア上ではどのような違いがあるのでしょう?
越智氏
OSからミドルウェアレベルまでは共通の部分が多いのですが、アプリケーションレベルになると共通するものと異なるものがあります。たとえばAV関連機能は、パナソニックとしての設計思想に基づいて共通化を図っているアプリケーションです。一方、メールやブラウザ、Javaといった部分はキャリアごとに異なる仕様になりますので、そこは異なる部分と言えます。
■ 手塚治虫とアーティストとのコラボコンテンツ
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手塚治虫とアーティストのコラボコンテンツが用意される
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――これまでパナソニック製の携帯電話では、デザイン集団のtomatoやTGB. designなどのコンテンツが用意されてきました。今回、手塚治虫作品とアーティストのコラボコンテンツが搭載されるそうですが……。
飯野氏
ガスアズインターフェイスでは、パナソニックさんと携帯電話向けコンテンツで4年ほど協力してきました。しかし、今回の手塚治虫作品とのプロジェクトは、そういった流れとは別の枠組みでの取り組みとなります。
今年は、手塚治虫生誕80周年にあたり、さまざまなプロジェクトが進行していますが、ガスアズインターフェイスと手塚プロダクションの間でも2月に手塚作品を現代のアーティストが新たに表現するプロジェクト「TEZUKA OSAMU BY GASBOOK」をスタートさせました。今回、921Pのコンテンツ搭載はその一環になります。
――どういったコンテンツが用意されるのでしょう?
飯野氏
パナソニックとガスアズインターフェイスの間で検討を重ね、「TEZUKA OSAMU BY GASBOOK」に参加するアーティストの中から、ten_do_ten(点)というアーティストと、ENLIGHTENMENT(エンライトメント)というアーティストを中心に、それぞれが手掛けたコンテンツをプリセットしています。
近藤氏
パナソニックのYahoo!ケータイサイト「P-egg」でも、それぞれのアーティストがデザインしたコンテンツと、現在「TEZUKA OSAMU BY GASBOOK」に参加している全10組のアーティストの待受画像を用意し、ダウンロードできるようにしています。
――どのようなコンテンツにするか、その方向性はどうやって定められたのでしょう?
飯野氏
端末側のコンセプトが明確に示されていましたので、それにあわせて、アーティスト側にコンセプトやデザインの方向性を伝えた上で、作品を仕上げてもらいました。たとえばten_do_tenのコンテンツは、鉄腕アトムをベースに、ドット絵のようなイラストに仕上げています。これは、もともとのアトムのデザインそのままでは、スタイリッシュやモダンといった端末のコンセプトと異なると判断したためです。幾度もパナソニックと当社、アーティストの間でやり取りをして、ブラッシュアップを重ねました。
――携帯電話向けコンテンツだからこそ、苦労した点、工夫した点は?
重村氏
視認性、使いやすさには細心の注意を払いましたね。たとえば当初は、メニューアイコンの文字が小さく読みづらかったりしたのです。また、描けるスペースが限られる中での難しさもありました。
近藤氏
コンテンツで使用する色数が多すぎると、文字が読みづらくなりますので、そのあたりは統一しましたね。
――通常、メーカー側が用意する携帯向けコンテンツと比べて、今回の取り組みでメーカー側として想定外と言えるようなことはありましたか?
近藤氏
メニューアイコンの場合、データフォルダはフォルダ風のアイコンにしたりするなど、アイコンに適したイラストのイメージは連想しやすいものを選びがちです。しかし今回は固定された概念から距離を置いた発想で、面白く感じた部分ですね。ただ、実際ここまでこぎ着けるには、何度もやり取りを重ねました。こういったコンテンツを用意することで、愛着を持って長く利用していただければ、と思います。
――なるほど、本日はありがとうございました。
■ URL
921P 製品情報
http://panasonic.jp/mobile/softbank/921p/
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(関口 聖)
2008/08/11 11:20
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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