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「SH705iII」担当者インタビュー
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クリアな通話品質にこだわるシャープの新端末
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NTTドコモから発売された「SH705iII」は、クリアな通話品質にこだわったシャープ製のFOMA端末。「SH705i」の機能を踏襲しながら、通話品質の追求というこれまでとは違ったアプローチがとられている。
「SH705iII」を担当した、シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部の吉田 智美氏に話を聞いた。
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シャープの吉田氏
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――ほかの705iシリーズとは少し違う印象の「SH705iII」ですが、基本的なコンセプトを教えて下さい。
これまで携帯電話は、一般的に20~30代がニーズを牽引していた面がありますし、常に新しい機能、新しい驚きでもって市場を拡大してきました。しかしそういった流れも最近は飽和状態になりつつあり、基本的な利便性を高め、その価値を真剣に問い直そうという、着眼点を変えるところからスタートしました。
例えば、通話の音質をどこまで聞き取りやすくできるか? 騒音などいろんな環境に耐えられるか? といったように、電話の基本的なヒューマンインターフェイスの部分について、使いやすさや見やすさをどこまで追求できるのかというテーマで開発しました。
――この端末のコンセプトは、シャープ独自の企画ということでしょうか?
そうですね。社内でプロジェクトを立ち上げたもので、操作性や音質など基本的な部分について、地道に取り組んでいこうというものです。
家族を対象にした通話定額プランなども出てきていますし、電話をする機会が増えると予想しています。そうした中、どういう環境でユーザーが困るのか、と考えたとき、例えば夕方のデパートの地下の食品売り場や、駅のホーム、繁華街の待ち合わせスポットなどの騒音が、通話の妨げになると考えられます。そういった騒がしい環境にあってもクリアな音質で通話ができないか、というのが「SH705iII」のテーマです。
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ノイズリダクションは相手に聞こえやすいように
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周囲の音を拾うマイクを装備
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エンハンス機能で相手の声を聞きやすく
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――「トリプルくっきりトーク」とは、具体的にどういう内容なのでしょうか。
「トリプルくっきりトーク」という名称ですが、これは2種類のハードを搭載し、3つの効果が得られるという内容です。具体的には、専用のLSIと2つのマイクを装備し、ノイズ低減機能、エンハンス機能、エコーキャンセル機能の3つの機能を実現しています。これらを総称したのが「トリプルくっきりトーク」です。
ノイズリダクション機能は、必要な音を聞き分けられるヒトの耳の聞こえ方を応用したもので、周囲の音を拾う2つ目のマイクを装備し、専用LSIで音声を抽出して雑音をカット、送話者の声を聞き取りやすい声にして相手に送るというものです。
エンハンス機能は、相手からの音声について、高音域やヒトの声を強調するもので、相手の端末の種類に関係なく機能します。
エコーキャンセル機能は従来機種でも搭載されていますが、25dB以上でないと十分に機能しない場合が多く、「SH705iII」ではさらに性能を上げて効果を強めています。
技術面での仕様だけでなく、開発にあたっては実際にテストも行なっています。交通騒音、生活騒音、事務騒音の大きく3種類に分類し、日常的な環境にも注目しながらテストを実施しました。「トリプルくっきりトーク」の効果が最も得られたのは、オフィス内と高架下でした。
ノイズリダクション機能については、効果を強めれば強めるほど周囲の騒音は減りますが、声の品質を保ったまま効果を高めるのが難しい部分でした。
こういった機能は、どちらかというと年輩の方をターゲットにした端末に搭載されることが多いのですが、私たちは、通話品質は性別・年齢を問わず求められるものだとだと考えています。今後は、ほかの機種への標準搭載も検討していきたいと思います。
――先ほどデモを体験させて頂きましたが、相手が騒々しい環境の中でのノイズリダクション効果は、明確に感じられました。
この分野は、意図的に良い技術を導入しないと歴然とした差が感じてもらえない、という伝わりにくい面もありますが、もっと音の分野に注目していく必要があるという考えが根底にあります。これからは、こういった基本技術の深堀りがさらに重要になってくるのではないでしょうか。
いわゆるAV機能の「V」(ビジュアル)はこれまでも注力してきましたが、「A」(オーディオ)については、これからさらに力を入れていきたいと思っています。音質向上に向けては、既にSH905iとSH905iTVでドルビーモバイルを搭載していますが、今回は通話の音質向上にも取り組んだ、ということです。
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SH705iII(左)は、従来機種よりもキートップのかな印字も見やすくなっている
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垂直な突起を明確にしたテンキー
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――通話機能以外にも注力された部分はあるのでしょうか?
これまで画面デザインなどは、液晶パネルの性能をアピールする意味でも鮮やかな色を使い“目を楽しませる”ことをテーマにしたモデルが多かったのですが、今回は“目を安心させる”ことをテーマにしました。落ち着いた配色を採用し、文字サイズの初期設定を24ドットで極太フォントにしました。これまでは、20ドットと30ドットの切り替えができましたが、30ドットではシニア向けというイメージが強すぎるのに加え、30ドットのサイズが本当に見やすいのか? という疑問も出てきました。24ドットであれば文字列の最後が「…」と省略されるケースが少なくなり、メニューの一覧性が向上しています。社内の調査でもほとんどの人が30ドットよりも見やすいと回答しました。
また、キートップの文字フォントについても、従来は小さくなりがちだったひらがななどを大きく印字して、みやすい大きさにこだわりました。キー自体の突起を明確にすることで操作性にも配慮しています。ボディの幅は48mmで誰もが持ちやすいサイズにこだわっています。
シニア向けの携帯電話以外で、大きな文字が表示できる機種のはないの? といった声も聞かれるのですが、最近の多くのモデルでは大きな文字サイズも表示できますよね。そういった時に、設定方法を説明し操作を案内する、といった行程を踏んでいては、なかなか広がらないですし、使われることも少ないと思います。最初から大きい文字表示の設定で、なおかつデザイン性の高い“普通の携帯電話”にも、そういった機能を提供することに意味があると考えています。
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大きめのアイコンメニューを採用
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24ドット(左)と30ドット(右)の比較
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――905iシリーズと同時に店頭に並んだ705iシリーズは、割賦販売の影響もあってか、905iシリーズにユーザーが集中している印象です。「SH705iII」は既存の705iシリーズとは切り口が大きく異なる端末に見受けられます。
シャープの705iシリーズは、これまでの70Xiシリーズとは違った、別の方向にシフトする必要があると感じています。当社のオリジナリティが際立つような製品にしていくことが大事だと思います。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/705i/sh705i2/
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sh705i2/
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(太田 亮三)
2008/04/09 12:51
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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