今春のソフトバンク向けシャープ端末は、多彩なデザイン・方向性の端末がラインナップされている。スライドを閉じると前面が液晶になる「FULLFACE 2 921SH」やフルキーボード端末「インターネットマシン 922SH」、牛革などのパネルが特徴の「THE PREMIUM TEXTURE 823SH」など、いずれもほかの端末とは異なる特徴を持っている。
今回はこれら3機種について、シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 部長の吉高 泰浩氏、同企画部 主事の後藤 慎一氏、同企画部 主事の西村 俊司氏に聞いた。
■ 進化した「FULLFACE」、921SH
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シャープの吉高氏、後藤氏、西村氏
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――今春、ソフトバンク向けに3機種が発表されていますが、それぞれどういった端末になるのでしょうか。
吉高氏
まず「FULLFACE 2 921SH」は、913SHの後継機種という位置付けです。913SHのユーザーさんの声も反映させ、913SHにはなかった機能・要素も盛り込んで完成度を高めました。
次に「インターネットマシン」こと「922SH」ですが、こちらはシャープとしても新しいカテゴリに取り組もう、ということで作りました。フルキーボード端末の企画という点では、昔からメール専用端末の企画などはありましたが、今の時代に相応しい新しい商品を作りたいということで、ワンセグ、フルブラウザを含め、ケータイとしての機能を搭載した商品に仕上げました。
「THE PREMIUM TEXTURE」の「823SH」は、昨年秋冬モデルの820SH/821SHに続く「THE PREMIUM」のシリーズで、セレクトパネルをコンセプトにしています。この商品は着せ替えモデルではないというところがポイントになります。アクリルの“ブラッククリスタル”が1枚同梱されていますが、もう1枚、好みのパネルを選んでいただき、愛着を持って大事に使っていただきたい、というコンセプトです。
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921SH。スライドを閉じるとカーソルキーが露出しない「FULLFACE」デザイン
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ディスプレイの下、格子状のイルミネーションが光っているあたりにタッチセンサーが内蔵されている
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――それではまず、FULLFACE 2 921SHからお聞かせください。
後藤氏
ラインナップとしては、昨年夏モデルの「FULLFACE 913SH」の後継機種ということで、FULLFACE 2と名付けられました。
まず前面を見比べて見ると、液晶が点灯していない状態では、液晶部分がボディと見分けが付かないほど真っ黒となりました。ちなみに液晶解像度はワイドQVGAからフルワイドVGAになっています。
幅は50mmで913SHと同じですが、厚みは0.9mm薄くなりました。長さは112mmと少し長くなりましたが、液晶のサイズ・ワイド比が大きくなったことで、前面に占める液晶面積の割合が増えています。より液晶を強調する、「FULLFACE」らしいデザインになりました。
――スライドを閉じるとキーがありませんが、代わりにタッチスイッチがついていますね。
後藤氏
今回は2つのセンサーを搭載しています。その1つが静電容量式センサーの「タッチレガート」センサーです。タッチと「なぞる」という操作で、スライドを閉じていても文字入力以外のほとんどの操作ができます。タッチレガートには、四隅と中央にソフトキーやクリアキー、センターキーに相当するタッチ部分があり、スクロールやカーソル移動は「なぞる」操作で行ないます。
ブラウザでは、タッチレガートを使って新しい試みもしています。従来のような十字キーによるポインタ操作は残していますが、それとは別に開いた状態でタッチレガートによる画面をつかんで動かすようなスクロール操作ができます。十字キーとタッチレガートの両方を併用する新しい使い方を提案しています。
いま、ケータイ分野ではタッチパネルが注目をされてきていますが、921SHでは、すべてをタッチパネルだけで操作するのではなく、いままで積み上げてきたケータイのUIを踏襲していこう、と考えました。タッチ操作があっても、片手で使えるというのが921SHの大きな特徴になっています。
もう1つのセンサーは、「モーションコントロールセンサー」です。これは加速度センサーで、端末の傾きや振る動作を認識し、いろいろなことができるようになっています。
以前、V603SHという機種にも同様の機能を入れていましたが、今回はもっと実用的・積極的に使ってもらおう、ということで、デフォルト設定でモーションコントロールセンサーは有効になっています。
手にとっていただければすぐにわかりますが、閉じた状態ではまず端末の天地方向を認識し、画面を回転させることができます。このほかにも、「振る」動作で、待受画面からクイックショートカットを起動させられます。
イメージとしては、スライドを閉じたまま、振ってメール機能などを立ち上げ、タッチレガートで受信メールを見ていただく、といった感じで使っていただけます。
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5種類のカラーバリエーションが用意される
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テンキーはフレームレスの立体形状デザイン
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閉じた状態で横にするとメニューも横表示に切り替わる
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――メニュー回りのエフェクトアニメーションもよく動くようになっていますね。
後藤氏
メニューに3Dグラフィックと画面エフェクトを取り入れています。メニューでアイコンを選択すると、飛び出してその機能の世界観にはいっていくイメージになっています。通常の画面遷移や画面の回転も、エフェクトが入るようになっています。「操作しているときのイメージ」にマッチしたエフェクトを盛り込むことで、心地よく使っていただこうと考えています。
エフェクトは2パターン用意し、標準では派手めな演出の方のものを設定しています。レスポンス重視の方にはオフにして使っていただくこともできます。このあたりは922SHと共通の機能です。
――ほかに機能面ではどういった新しいポイントがありますか?
後藤氏
ワンセグ関連では、本体内に最長約30分、録画できるようになりました。SDカードがいっぱいになると、自動で本体内録画に移行することもできます。922SHも本体録画に対応しています。また、ヤマハさんの最新のオーディオチップを搭載しており、イヤホンをつないだときに、臨場感ある広がりのある音をお楽しみいただけます。
さらに、921SH、922SHは、「PCメール」に対応しました。パソコン用のアドレスを設定することで送受信できます。フォルダ分類も行なわれます。アカウントは3つまで登録できますが、Yahoo!メールはアカウント名とパスワードだけで設定できるようになっています。
■ フルキーボード搭載の「インターネットマシン 922SH」
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922SH。フルキーボード・横開きがこれまでのケータイとは大きく異なる
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――続いて922SHについて、まずコンセプトからお聞かせください。
西村氏
最近はご存じの通り、SNSやブログでのコミュニケーションが一般化しています。パソコンからも利用されていますが、ケータイで出先からチェックするというのも一般的です。
一方で、ケータイのキーはテンキーがスタンダードになっています。これはパソコンに慣れた人にとっては、文字入力でストレスがたまります。ブログへの入力は自宅のパソコンで、という人も多いと思います。
こうした背景を元に、ケータイにフルキーボードを、ということで企画したのが「インターネットマシン」こと922SHになります。
これまでもWindows Mobile搭載のスマートフォンでフルキーボード搭載端末というのはありました。しかし922SHの場合、あくまで「ケータイ」としてデザインしています。フルキーボードはあるけれど、これまでのケータイのUIがそのまま使える「ケータイ」として提案しています。
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キーボード配列。文字のキーだけでなく、メールキーなどケータイならではのキーが残されている
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――パソコンのようなキーボードが特徴的ですね。
西村氏
横開きの折りたたみデザインで、パソコンと同じいわゆるQWERTY配列のキーボードが搭載されています。ただ、基本は「ケータイ」なので、右上部分がケータイと同じになっていて、十字キーにY!キー、メールキー、クリアキーがあります。メインメニューを開いて基本的な操作をするだけならば、片手で行なえるようになっています。
このほかにもページ送りの専用キーが追加されました。辞書やメモなどの起動キーも追加されています。これらのキーは文字入力中には文字種切替キーや絵文字キーなどとしても機能します。
キーボードは打ちやすさにこだわりました。ケータイなので、薄く・小さくということが重要になりますが、フルキーボードでは、本体を小さくするとキーが小さくなり、打ちやすさに影響してしまいます。キーの形状や配置はたくさんの試作機を作っていろいろと試しました。キーの形状に関しては、この少しへこんだ形が指にフィットするようになっています。十字キーの位置や形状も、いろいろ試してこの形状に落ち着きました。
キーボードによるショートカットキー操作も行なえます。パソコンと同じように、範囲選択してコピー&ペーストもできます。こうしたショートカットは、機能ごとのヘルプで参照できます。
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閉じている状態でもタッチセンサにより片手で通話などの操作が可能
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基本はケータイなので、フルキーボードだけでなく、閉じたままでも操作できるようになっています。背面に有機ELのサブディスプレイと発信・終話キー、そしてセンサーキーが搭載され、一通りの操作が可能になっています。ちなみにサブディスプレイで表示できる機能ならば、メインディスプレイで作業中に画面を閉じても、サブディスプレイで表示が継続されます。
また、ケータイとして使いやすくしたい、ということで、922SHでは頻度順の発信履歴を新機能として追加しました。これもサブディスプレイで利用できる機能で、ユーザーがかけた電話の回数を自動でカウントし、トップ10をリストアップします。これ以外にも、電話メニューからメインディスプレイと同じタブ構成の電話帳が利用できます。
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4色のカラーバリエーションが用意される
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――個々の機能ではどういったポイントがありますか?
西村氏
フルブラウザに関しては、新機能としてAjaxに対応しました。Yahoo!地図情報の地図なども利用できます。さらにページの読み込み容量も拡大しているので、見られるページが増えました。
専用キーがある機能としては、辞書機能があります。学習研究社さんの「辞スパ」から国語・英和・和英を収録しています。辞書機能はほかの機能とマルチ起動し、コピー&ペーストなど連携ができるようになっています。
あと特徴としては、メモ機能“ちょこっとメモ”があります。専用キーのワンタッチで新規メモが入力可能な状態になります。完了キーを押すと、メモとしてそのまま保存するだけでなく、カレンダーへのスケジュール登録、アドレス帳登録など、「どこに貼り付けるか」をあとから指定できます。メモ帳に名前と電話番号を改行を入れてメモすると、自動的に判別してアドレス帳に登録してくれます。登録されたメモを検索することも可能です。
■ 多彩なパネルから選べる「THE PREMIUM TEXTURE 823SH」
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823SH。多彩なテイストのテクスチャパネルが用意される
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――次に823SHですが、こちらは交換できるパネルがポイントですね。
吉高氏
パネルのはめ替えができますが、普通の着せ替えパネルのように、気分に応じて替える、という使い方を想定はしていません。自分の気に入ったテクスチャパネルを選んでもらい、愛着を持って大事に使ってもらう、ということを考えています。
パネルの脱着機構は表から見えないように、とにかくキレイに見せるようにデザインしています。液晶左下に小さな穴があり、そこから同梱のツールで突き上げて外して、はめかえるようになっています。
――パネルはいろいろな材質のものが揃っていますね。
吉高氏
パネルは10種類あります。木やカーボン、牛革など本物の材質を使っています。今まで携帯電話の素材としてはほとんど例が無い素材ということもあり、開発には非常に苦労しました。
たとえば革の場合、端面の処理にこだわりました。微妙に圧力をかけ、浮きあがらないようにしています。本革は湿度などで伸縮するので、こういったパネルでは難しい素材です。カバンなどの革製品ではあまり問題にならないところで、今回のパネルでは苦労しました。
木も同じく、乾燥すると縮んだりするので、それを防ぐために、木の導管に樹脂を流し込んだりしています。見た目には、木の素材をそのまま使っているだけに見えると思いますが、これもなかなか大変でした。
また、パネルについてはシャープが用意しているもの以外にも、ソフトバンクさんからも京漆器の象彦や京友禅の木村染匠、ティファニーなどが提供されることになっています。こうしたパネル素材でのコラボレーションは新しい取り組みではないでしょうか。
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本当に木材を使っている木目パネル。特殊加工が施されているとはいえ、木材の質感がしっかりとある
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キー面のデザインなどは820SH/821SHとほぼ同じ。ヘアライン調のキー面など、「PREMIUM」シリーズならではの高級感がある
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――機能面では820SH/821SHと同等で、そのバリエーションの1つという位置付けでよろしいでしょうか?
吉高氏
はい。ハードウェア的なスペックは同じになります。この商品については、ロングラン商品になるといいなと思っています。ロングランになれば、更にこのパネルを活用したいろいろな新しい展開も考えられるのではないでしょうか。
――本日はありがとうございました。
■ URL
製品情報(シャープ)
http://k-tai.sharp.co.jp/lineup/s/
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(白根 雅彦)
2008/03/11 11:23
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