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「N705i」「N705iμ」開発者インタビュー
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デザイン性と薄さを追求した2つの705i
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NECが開発した「N705i」と「N705iμ」の2つの705i。amadanaケータイと呼ばれるN705iと、薄さ9.8mmを実現したN705iμ。NECのモバイルターミナル事業部 商品企画部の有田行男氏と寺西俊裕氏に、2モデルの性格付けについて聞いた。
■ N705i
――amadanaケータイの「N705i」ですが、デザイン面については以前、リアル・フリートさんに伺っていますので、今回は機能面を中心に教えていただけますか。
有田氏
N705iは705iシリーズの中でも、一番多彩な機能を搭載している機種と言えます。ワンセグもGSM対応も珍しい機能ではありませんが、その両方を兼ね備える、いわば全部入りの705iはN705iだけでしょう。筐体ダイポールアンテナという技術を弊社としては初めて採用し、ワンセグのアンテナを本体に収納することで、デザイン性との両立というのも1つのポイントです。その分苦労は多かったですが。
――ちょうど同時期に他社さんからもアンテナレスという端末は出ていますね。
有田氏
偶然といいますか、携帯端末のデザインが今はそういった流れに動き始めているのでしょう。
――実際にワンセグのアンテナはどのあたりに収納されているんでしょう?
寺西氏
筐体ダイポールというのは簡単に説明しますと、携帯内部の金属をアンテナとして使う仕組みです。液晶周りには補強目的で金属を使っていますので、そこにアンテナのリード線を這わせて、全体で受信する形になります。
――なるほど。しかし、感度的には問題ないのでしょうか?
有田氏
まったく問題ありません。この技術を携帯電話に使うというアイディアは以前からありましたが、感度の点でなかなか踏み切れなかったんですよ。それをワンセグ用アンテナとして採用したというのは、一歩踏み込んだ大きな進歩、チャレンジと言えるでしょう。
――どういった点が具体的に難しいのでしょうか。
寺西氏
シミュレーションを早い段階で高い完成度に導かねばならないことでしょう。携帯電話の開発はご存知の通り、かなり短い期間で行なわれます。最終的なサンプルが出てくる頃に調整していたのでは、とても間に合いません。前倒しで擬似環境を作り出し、サンプルが出た時には確実に受信可能と言い切れるものを出さねばなりません。
――動くと思って動作させたら動かなかった、では洒落になりませんからね……。
有田氏
しかもこのamadanaケータイについて言えば、通常1年前ぐらいからスタートする企画が、非常に異例ですけれど、2年も前からコラボレーションの話が動いていた製品なんです。海外でも広く通用するamadanaのイメージから、GSMを1つの機能の柱とすることは決まっていましたが、その頃はまだワンセグはまったく主流ではなかったわけです。
2年の間に起きた世の中のワンセグ需要の変化に対して、どうしたものかと悩みました。ワンセグ機能を搭載することは簡単ですが、既に完成しているデザインが外付けアンテナによって崩れてしまう。そこで筐体ダイポールという技術に苦心の末たどり着きました。なんとかワンセグチューナーも押し込めましたし。
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モバイルターミナル事業部 商品企画部の有田行男氏(左)と寺西俊裕氏
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――なんとかなるもんなんですね(笑)。本体サイズは最初からこの大きさを予定されていました?
有田氏
ええ、もう外観は完成してましたから。その中にモジュールとアンテナを押し込みました。
――ワンセグのモジュールは、どちら側に収納されてるんでしょう。
有田氏
メイン基板は全てキーボード側になります。集積技術は1年前に発売した「N703iμ」という機種である程度できあがっていますので、それをさらに磨き上げました。
――その他、開発当初にはなかったのに搭載された機能はありますか?
有田氏
企画当初2.8インチだった液晶ディスプレイは、3インチまで大きくしました。ワンセグも搭載して“ハイスペックモデル”を謳うのに、2.8インチというのは他社製品と横並びで見た時、少々見劣りがしますから。
――さすがにVGAは難しいですか。
有田氏
そこはコスト的な理由で残念ながらできませんでした。7シリーズのユーザーさんは、VGA液晶よりも実用的な機能を好むだろうという考えもありました。
――話は変わりますが、御社の製品はここ最近、電池のもちが良いと評判です。今回の2製品も長時間使えるのでしょうか? どういった工夫をされてるのか、ぜひ伺いたいのですが。
有田氏
やはり集積回路の省電力化技術でしょう。N703iμではNECエレクトロニクスが開発したチップセット「M1」を採用しましたがN705iμでは第2世代となり、さらに省エネの技術を詰め込んでいます。内部的にはかなり進化しているのですが、当時と比べてスペック数値があまり変わっていないのは、その分ワンセグやらGSMなど、いろんな機能が搭載されているからです。ちなみに、スペック測定時というのは、バックライトが消えた状態ですので、使用感はスペックと少し異なります。今後の課題は液晶がついた状態でいかに低消費電力にするかですね。
――インカメラを廃止するという流れも最近は起こりつつありますが、あえてカメラを残した理由はなんでしょう。
有田氏
amadandaさんとのコラボケータイだからといって、特異なものを作りたいわけではなく、やはりスタンダードな携帯として美しいものが欲しい、というのが理由ですね。一通りの機能はきちんと搭載したかったんです。デザイン端末だから、というのを言い訳にしたくありませんでしたから。
――デザインというところで、メニュー周りなど細かいところまで統一感を出すべく工夫されていますが、そもそも、なぜamadanaだったんでしょう?
有田氏
ちょうどその頃、デザインコラボが流行していたというのもありますが、たまたまドコモさん、リアル・フリートさんと弊社で顔合わせの機会があり、そこで次の価値とは何か? という話が出ました。デザイン性、機能、プロモーションを含めたブランド力のある物づくりがしたいという話から、コラボレーションが決まりました。
――amadanaというブランドが付いた分、NECの製品という部分はやや隠れてしまっている気もしますが。
有田氏
NECらしいというか、NECのあるべき端末というのは別に出していくつもりです。
――Bluetoothへの対応はいかがでしょう? せっかくデザイン性を前面に出した端末で、端子のキャップがあったり、出っ張っていたりするのも微妙な気がします。
寺西氏
薄型端末やビジネス向けモデルは、これからBluetooth対応を進めていきたいとは考えています。ただ、Bluetooth対応機器は格好悪いものが多いので……そこも含めて開発して行けたらいいですね。
――サブディスプレイがやたらと大きいのには、デザイン面での理由があるんでしょうか。
有田氏
ドコモ、リアル・フリート、NECの3社で話し合った際に、サブディスプレイ部というのはケータイの顔だという意見になりました。机に置くときも、卓上ホルダに立てかける時でも、一番よく見える場所ですから、そこにどんな表情を持たせるかが肝だと。大きいけれど今までと違うサブディスプレイを目指しました。腕時計に使われるセグメント方式を採用し、時計の文字1つをとっても美しく、グラフィカルに見えるような工夫がなされています。
――ちなみに、限定カラーの「brownish wood」はあっという間に売れてしまったようですが、追加生産はしないのですか?
寺西氏
我々も驚く勢いで完売してしまいましたが、追加の予定はありません。各種媒体で紹介していただいたのに、雑誌は店頭に並んでいるけれど製品は既に入手できないという状況を招いてしまったのは、大変申し訳なく思っています。地域限定発売の「sakura」は3つの地域のみの販売で、これ以上拡大する予定はありませんが、こちらは該当地域に行っていただければ、普通に購入できます。
――並べて見ると、sakuraはちょっとamadanaらしくないというか、少し違和感がありますね。
有田氏
完成された4色のamadanaデザインに対して、敢えてまったく違うものを持ってくることで、新しいものが生まれるという意図なので、その違和感は狙い通りでなんです。
――N705iに関しては、卓上ホルダもデザインの一部ですから、ユーザーなら購入したいですね。
有田氏
普通の卓上ホルダと違って、端末の本体に使うような金型を使っていますので、なかなかコストがかかった上に技術者泣かせのホルダーでした(笑)。
■ N705iμ
――では次にN705iμについて教えてください。
有田氏
N704iμの後継機種で、ワンセグとGSM機能は搭載していないけれど、他の機能は全てもち合わせているのがN705iμになります。
――薄型というのを前面に出したモデルと考えてよいのでしょうか。
有田氏
N703iμに続く第2世代にあたる後継モデルをと考えて、薄さ9.8mmというボディにしました。9.9mmというのはどこか同じことを考えてくるメーカーさんがいると予想してましたので。
――N705iは企画から製品化まで2年ほどの期間をかけた、というお話でしたが、N705iμはどれぐらいでしたか。
有田氏
まず薄型化技術というのが先行して開発され、それに目途がつくと商用化部門が合流してどういった商品に仕上げるかを考えます。技術部門は商用化部門に薄型化端末というものを渡した時点で、もうさらに次のことを考え始めなければいけません。ですからコラボケータイと違っていつから、どれぐらい、というのは一概に言えません。
寺西氏
おそらく、これだけ薄いと強度と剛性はどうなんだ、と思われるでしょう。N705i同様に樹脂とステンレスを重ね合わせて貼り付けた、ハイブリッド筐体を採用しています。
有田氏
薄い物を張り合わせて熱を加えると、どうしても曲がったりしてしまうんですが、そこは日本メーカーが持つノウハウ、技術力です。また、試作機を作る際には、実機と完全に同じ素材、同じ方法を用いたため、カラーの試し塗りをするのに、2週間かかるという時間的なハードルもありました。
――LEDを使ったサブディスプレイがここ最近流行っています。N705iμでも使われているこのLEDですが、どういった意図があるのでしょう。
有田氏
内側に使われる液晶ディスプレイは、どんどん高精細かつ大画面なものに進化しています。一方でサブディスプレイにはもっとプリミティヴというか、LEDという素材を使ってこんな遊び心が出せる、そのギャップ感を演出したかったんです。
――アニメーションがプリセットのものしか設定できない他社の端末と比較すると、オリジナルのシグナルパターンを自分で自由に作成できるのは、N705iμの魅力の1つです。ただ、編集作業がパソコン上でしかできないのが少し残念かもしれません。
有田氏
携帯の画面上でも技術的にできないことはありません。しかし、この小さな画面で、細かい作業をユーザーにやらせることに意味があるのかは疑問です。
――それにしてもLEDの数が多すぎませんか?(笑)
寺西氏
119個ものLEDを搭載してますので、下手に安い液晶を使うよりコストは高くつきました。社内でも「こんなに使って、一体何をする気なんだ?」と聞かれましたよ(笑)。常時点灯もできますので、枕元の時計代わりとしてちゃんと機能します。
――N705iμを開発するにあたって難しかったのはどんなところでしょう。
有田氏
薄さ9.8mmを切った上で、そこにデザイン性を与え、商品としてきちんとパッケージングできるかどうか、という所ですね。ここまでボディが薄くなると、線と面だけの構造体だけしか残らないようなもので、その線と面をいかに美しくつなげ、こだわりを見せるか、練りこまないと製品としてはうまくいきません。技術的に薄くするだけではダメなんです。
寺西氏
普段はあまりないことですが、技術部隊が先行して薄型化の試作機を開発している時点で、デザイナーが乗り込んで、ああだこうだとやりあいましたから。
コンテンツ面でも、N702iDから搭載されているメニュー画面や着信音をカスタマイズ可能な、「きせかえツール」がだいぶ進化しています。待受画面にはカレンダーとリンクして秋にはお月見が、クリスマスにはリースが表示されるなど、季節感を得られる工夫をしています。
有田氏
だいぶ昔の話になりますが、Macを使っているとお正月だけ起動時のメッセージが「あけましておめでとうございます」と出たりしましたよね。小さなことなのに、長くMacを使っているユーザーにとっては、なんとなく嬉しいというか楽しいことでした。これからも携帯電話というのは、新たな販売スタイルから考えても1つの端末と長く付き合うのが主流になると予想して、こういったコンテンツを搭載しました。
寺西氏
中には日本人の血液型比率を円グラフにしたものが表示されたり、視力検査ができたりとパターンも豊富です。中身も結構凝っているんですよ。円グラフの意味まで解説したりはしていませんので、どんな意味合いを持っているのかユーザーさんが想像してみてください。
幸い前モデルは好調な売れ行きでして、その分ユーザーさんからのフィードバックもたくさんいただきました。自分たちではよくできたと思っていた部分も、「もう少し押しやすければよかったのに」「ここがあと一歩足りない」という率直な意見をいただきまして、今回のN705iμではキーの表面積を20%を広くし、押し感も硬すぎず、やわらかすぎずバランスを調整するなど、ユーザーの声を反映した改善を行なっています。
有田氏
今までは「薄いからいいや」というある種の割り切りで、評価の低いシートキーでも受け入れられてきましたが、キー周りの技術も進化が早いので、端末の薄さを維持しながら押しやすく、かつ従来とは表情の違う製品がこれから出てきますよ。
――ここから先の0.1mmをめぐる戦いは、各社どうなるんでしょうね。
有田氏
うーん、たとえ8mmに迫る端末が出てきたとしても、それが本当に携帯電話として良いかと言われると……どうでしょう? むしろ約10mmという厚みの中で価値をあげていくべきだと思います。ユーザビリティの問題は無視できませんから。
――本日は長時間、ありがとうございました。
■ URL
製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/
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(麻生 ちはや)
2008/02/12 15:19
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