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気になる携帯関連イベント
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ソフトバンクと東京藝大が仕掛けるケータイ映画祭
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東京藝術大学とソフトバンクグループは、12月7日~9日にかけて、携帯電話で撮影した映像素材を使った映画祭「ポケットフィルム・フェスティバル」を開催する。携帯電話を撮影機材として使うという新しい産学協同の取り組みについて、映画祭の実行委員長である、東京藝術大学大学院映像研究科長のメディア・アーティスト・藤幡正樹氏に話を聞いた。
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ポケットフィルム・フェスティバル実行委員長の藤幡氏
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――「ポケットフィルム・フェスティバル」開催に至る経緯を教えてください。
実は、4年前に今回のようなことをやりたいと思っていましたが、なかなかうまくいきませんでした。当時は東京藝大の共同研究という形でスタートして、それからフェスティバルという形にもっていこうと思っていました。作品を作ってもらうために、フランスの友人などにも声をかけていて、その頃は、High Definition Movie(高精細な映像)に対抗して、Low Definition Movieをやろうと思っていました。
そのうち、フランスで携帯電話を使った映画祭が始まり、最初の映画祭ではゴダール(ジャン=リュック・ゴダール)にも声をかけたそうです。結局、ゴダールは携帯電話を持って行ったきり返してくれなかったらしいのですが(笑)。
映画祭では、フランス人の映画監督が80分近い映画を携帯電話で撮影し注目されました。今年の1月にその彼を日本に呼んで、東京藝大の中で講義をやりました。6月、パリで行なわれた3回目の映画祭には東京藝大として初めて参加しました。そうした取り組みの中、パリのフォーラムと東京藝大、ソフトバンクさんといっしょになって日本でも行なうことになりました。
12月に日本の映画祭、6月にパリの映画祭という形で、とりあえず3年間やってみようということになりました。産学協同というと、一般的に工学部の知的財産を企業といっしょになって進めていこうというものですが、文化系の産学協同はなかなか見えてきません。そういう意味で、大学としてのシステム、企業にとってのシステムとしても今までにない、新しい産学連携の形になるのではないでしょうか。大学でも企業でもない第3社的な映画祭として、一般の人たちと新しいメディアについて考えていきたいですね。
――構想した4年前と今の状況では、携帯電話のカメラの性能がかなり変わってきていますね。
そうですね、たしかに解像度は上がりましたが、上がったからといって変わっていない部分もあります。たとえば、今回の取材のように、大きなカメラがあれば緊張しますよね。でもケータイで撮られると緊張はしません。それだけで表情はすごく変わってくるわけです。
また、高機能になっても、ケータイでムービーを撮って作品として発表するということが、4年たってもほとんど発生していないことは問題ではないかと思います。
――パリの映画祭ではどういった作品が生まれたのでしょう?
毎年変わっているようです。初年度はプロフェッショナルですぐに作品作ってくれる人たちに声をかけたため、わりと長くて、時間をかけて説得していくようなものが多かったようです。2年目はもう少し短めで、3年目にはもっと短くなり、1~5分ぐらいの作品がものすごく多かったです。どうして短くなっていくのか、理由についてはよくわからないですね。
――映画というと、どうしてもしっかりしたものを作らなければならないような気がします。短くても良いならやってみようかなという人が増えそうですね。
1分の中でもうまくまとまっていると面白いですよね。これはフランスのフォーラムの人が言っていましたが、どうしてもドキュメンタリー的な作品、つまりたまたま撮れた映像をつなげたような作品が多いそうです。逆にフィクションの作品は少ないみたいですね。
――身近なツールであるケータイと、作り込むフィクションという部分に関係がありそうですね。
そうですね。いわゆる、ドキュメンタリーとドラマとなんだかよくわからない変なものが出てくるかもしれないので、楽しみです。たとえばブログがそうで、他人の日記読んで面白いわけがないとと思っていたら、ところがこれが面白いんですよね。
――映画祭に集まった作品は全部上映するのですか?
それは現実的ではないので、まず内部で一次審査を行ない、一次審査を通過したものを上映していきます。通過した作品の中から大賞を選んでいく形です。
また作品を集める工夫として、小学生に対して、授業の中で映像作品を作ってもらうワークショップをやります。映像の最初と最後、編集が必要な部分は東京藝大が作業し、メインの部分を小学生に作ってもらうというような取り組みです。実行委員会として、数カ月おきにこうした取り組みを行なっていきたいと思っています。
――フランスの映画祭ではスクリーン上映のみで、日本版では携帯電話のディスプレイでの表示を前提とした部門が新設されています。
携帯電話は持ち運べるので、指定された場所で映像を見るということにも可能性があると思っています。携帯の画面用に作られた作品というのも、とても面白いと思います。
――どんな作品が集まると思いますか?
すごく幅広いでしょうね。アニメの作品がどういう風に食い込んでくるのか興味があります。僕の希望としては、あ、こんな撮り方もあったんだ!! というものが見たいですね。
――今回、ケータイのカメラという部分にフォーカスされていますが、ケータイには通信機能があり、こうした機能を利用することで、ケータイがメディアとなるような作品の可能性にも期待できるのではないでしょうか。
ものすごくいろいろな可能性があると思います。学生たちと議論をしていると、こんなことができたら、こんな作品ができるという話になります。そういった議論は、技術とコンテンツのかみ合わせの話になってきて、正直、きりがなくなってきてしまいます。せっかく、数年かけてソフトバンクといっしょに取り組むので、いろいろな可能性を見つけていきたいですね。
アイデアは無限にあるので、何がものすごく根本的で、革新的に面白いものになるのか、めちゃくちゃ楽しみです。ケータイには、これまで全く意味が違っていた写真機とビデオ、電話、メモ帳、カレンダー、時計が全部一緒になっているわけで、一方で、それぞれの機能が融合して何ができているかというと何もできていないと思います。1つの機械の中に違ったものが入っているだけなのです。ただ、何か起こる可能性はあると思います。
こうした考えはフェスティバルにはなりにくいので、今ある共通のフォーマットでベーシックなところで競争しないとコンテストになりません。むしろレトロスペクティブだけど映画というフォーマットは逆に面白いんじゃないでしょうか。映画のフォーマットを守っているけど、新しい機材で何ができるかというのは、映画祭のスタートとしては良いんじゃないかと思います。
――携帯を使った映画祭によって何が起こると考えていますか?
やはり集まった作品をアーカイブの技術が必要になりますよね。フェスティバルに集まってきたフィルムそのものをリソースにして、何か研究の素材になるのではないかと思っています。今後、パリとの連携というのもありますね。
また、物作りのサポートのシステムそのものを変えていかないといけないと思っています。今のところは作家の持っている独自の能力に頼って、作品が集まるという状況ですが、それを下支えするような、編集をサポートするようなコンテンツというものもアリだと思っています。
俳句が優れているのは、五・七・五の形式があり、そこに言葉をはめ込むだけで俳句ができる点です。そういうテンプレートがあるだけで、映像作りが変わるんじゃないかと思っています。
――携帯電話が今後、作品を作る上で、絵画でいう筆のようなものになると思いますか? それとも、たとえば廃材を使ったアート作品のように、携帯電話を使ったことに意味が出てくると思いますか。
大きなくくりで言えば、小さいカメラをいつも持っていることがポイントです。常に携帯しているカメラというものが、何に向いているのか、どういうメッセージを捉えやすいか、我々はまだわかっていません。デジタルメディアはまだまだわからないことが多くて、そういうことを解いていくことが先でしょうね。携帯電話にはすごいたくさんの可能性があって、たぶんどこかで爆発する時がきて、一気に作品ツールとして広がるんではないでしょうか。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
■ URL
ニュースリリース(ソフトバンク)
http://www.softbank.co.jp/news/release/2007/070914_0001.html
ポケットフィルム・フェスティバル
http://www.pocketfilms.jp/
■ 関連記事
・ 東京藝大とソフトバンク、携帯を使った映画祭を開催
(津田 啓夢)
2007/09/14 20:49
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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