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「810P」開発者インタビュー
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新しいスライド機構で使いやすさを追求
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ソフトバンクモバイルから発売されたパナソニック モバイル製の3G端末「810P」は、新しいスライド機構を採用した薄型の端末だ。新しい機構を採用するにあたっての苦労や新たな取り組みなどについて、担当者に話を聞いた。
インタビューには、パナソニック モバイルコミュニケーションズ 商品企画グループ 商品企画第二チーム 主事の山本 英治氏、同社 第二SBU プロジェクトマネジメントグループ プロジェクトマネージャーの松本 諭氏、同社 技術部門 商品開発センター 商品機構設計チーム 設計第六チーム 主任技師の齋藤 英治氏、松下電器産業 パナソニックデザイン社 AVCネットワーク分野 AVCNモバイルグループ コミュニケーションチームの北出 克宏氏の4名に参加していただいた。
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商品企画担当の山本 英治氏
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――まず、「810P」の概要やコンセプトを教えて下さい。
山本 英治氏(商品企画グループ 商品企画第二チーム 主事)
810Pは、パナソニック モバイル製端末として新しいコンセプトのスライド型端末です。海外向けに開発したことはありましたが、本格的にスライド型モデルを展開するのは初めてです。
たくさん出ているスライドモデルの中で、どう差別化していくかという点ですが、まずは“使いやすさ”を追求しよう、と考えました。開いた時の段差を低くし、ストレート型端末にように使える、という部分に注力して開発しました。この段差は約2.6mmを実現しています。
本体の薄さについても、約12.9mmとスライド型端末の中でもかなり薄型です。段差を低くし、本体も薄く、使いやすく、という点が特徴です。
――スライドの仕組みですが、少し変わった構造を採用していますね。
山本氏
先ほどのポイントを実現するために、特徴的な構造として「U字型フレーム」を採用しました。従来のスライド型端末は、単純に2枚のボディを重ね合わせてスライドさせているだけですが、「810P」の「U字型フレーム」は下側ボディが上側ボディを包み込む形状になっており、手でホールドする部分が十分に確保されることでスライド操作が行ないやすくなっています。
当初からスライド型に決めていたわけではなく、色々な形状に挑戦していこうという取り組みの中で、スライド型を選びました。
――今後も、スライド型以外の形状に引き続き取り組んでいくのでしょうか?
山本氏
そうですね。新しい形状にも取り組んでいくことになると思います。
――逆に、スライド型を継続していくという可能性は?
山本氏
今回と全く同じ形状になるかどうかは分かりませんが、さまざまな選択肢を検討した上で、スライドというカテゴリを選択することはあると思います。
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デザイン担当の北出 克宏氏(左)と機構担当の齋藤 英治氏
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――そのスライドは独特の形状ですが、苦労した点も多いのではないでしょうか。
北出 克宏氏(パナソニックデザイン社 AVCネットワーク分野 AVCNモバイルグループ コミュニケーションチーム)
薄型の端末として「705P」を出していましたし、今回のスライド型にしても、薄型化という流れの一環、という風に捉えていました。薄さを追求する中でスライドという選択肢もあった、というものです。複雑な構造ですし、デザイン面では、極力すっきり見せるようなデザインを心がけました。
齋藤 英治氏(商品機構設計チーム 設計第六チーム 主任技師)
薄さを追求し、スペースの効率化を追求していった結果、二つの独立したユニットが動くのではなく、ひとつの空間の中で上下のユニットが動く、というところに行き着きました。「ひとつの空間」と「スライドアクション」が同居しているという考えですね。
3Dのパズルのようなもので、組み合わせながら薄さを追求していった結果、従来なら二段に重ねている部分も取っ払ってしまった、という感覚です。
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齋藤氏(左)とプロジェクトマネージャーの松本 諭氏(右)
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松本 諭氏(プロジェクトマネジメントグループ プロジェクトマネージャー)
少しでも形状を変えると、中の配置を最初からやり直す必要があり、開発当初はかなり大変でした。
齋藤氏
当初からの前提条件は、段差を少なくするということと、開け閉めがし易く、ホールド感がある、というものです。これを前提に構造・デザインを詰めていきました。
U字フレームのメリットは、ホールドのしやすさです。この薄さのボディでは側面のホールドできる部分が少なく、従来のスライド型では上下どちらのユニットも掴んでしまい、下側を持ちながら上側をスライドさせる、という動作が行ないにくくなってしまいます。開け閉めのし易さというコンセプトからも、下側を持ちやすいU字フレームの構造を採用しました。
強度の面でも、この薄さ、スライド型で剛性を確保するのは大変でした。スライドすると中空の部分ができますので、その状態でキー操作が問題なくでき、ボディが歪んだりしないよう、苦労を重ねました。上側ボディのキー面には厚めの板金を入れて強度を確保していますね。
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U字型フレームで下側からボディを持ちやすい
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――スライド動作は、ワンプッシュボタンではなく、手動の開閉をアシストするタイプですね。
山本氏
パナソニックの端末として、ワンプッシュオープンボタンは付けるべきではないか、という意見もあり、議論した部分です。ボタン式では、開閉する際に押すべき場所が限られますが、左右どちらの手で持っても開けやすく、片手で閉めやすく、折りたたみ端末のように開けたり閉めたりといった癖のような動作がしやすいようにという観点から、手動の開閉機構を採用しました。
齋藤氏
スライドの操作感というのは、ある意味で官能的な側面もありますから、アシスト機構の具合をどういう設定にするかは苦労しました。
――下側ボディにはカメラのレンズを塞がないように窓が設けられています。カメラの配置は苦労したのでしょうか?
北出氏
配置や処理はいろいろなパターンを考えましたし、もしかしたら不自然に見えるのかな? と心配した部分もありましたが、最終的には一番シンプルな形になるようにデザインしました。
――マクロ切り替えスイッチはボディを開けた状態でしか操作できませんが、オートフォーカスはやはり薄さを優先して非対応になったのでしょうか?
山本氏
カメラユニットは、薄さを優先しました。ちなみに、カメラの起動中、ボディを開閉してもカメラモードが変わることはありませんよ。
――テンキーは大型のドーム形状で、「705P」のシートキーとは違いますね。
松本氏
キーの押しやすさは重要視されますし、キーの間隔、大きさにはこだわりました。開発当初はずっと試行錯誤を繰り返していましたね。
――ソフトウェア面では、前モデルの「705P」から強化されたポイントが多いようです。
松本氏
大きなところでは、PCサイトブラウザに対応しました。RSSリーダーやアレンジメールなどのメール系、S!タウンなどのサービスにも対応しました。「705P」ではサポートできていなかった細かな部分も多く対応しています。
――「705P」は3G端末の7シリーズというグレードでしたが、今回は8シリーズとして、少し上のグレードを目指したということでしょうか?
山本氏
当初は「705P」と同じゾーンに属するモデルとして開発していましたが、7シリーズは8シリーズに統一される格好になったようです。スペック面では「705P」から見直しを図り、液晶サイズの拡大など、機能や性能を向上させている部分は多いですね。
オリジナルメニューも作りまして、メニュー画面はパナソニックのオリジナルメニューとして動きのあるものを2種類搭載しました。
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7色のバリエーション
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――カラーバリエーションは7色と、幅広くなっていますね。
山本氏
ホワイト、ピンクは主に女性をターゲットにしており、ブロンズは大人の女性にも似合う色をイメージしました。ターコイズは、夏をイメージした内容ですね。
キーバックライトは事前の販売店向け説明会でも好評な部分で、ボディカラーごとに光り方や色も変えています。特に女性からは「カワイイ」と評判ですね。
――ユーザーに向けたメッセージなどあれば、お願いします。
山本氏
すでにスライド型の端末は他社から出ていますが、ストレート型端末のように使えることを目指しましたし、「スライドだから使いづらいとは言わせない」という気持ちで取り組みました。
北出氏
使い勝手の部分が大きなポイントですね。スライド型のネガティブな部分を無くしましたし、ぜひ手にとってみて、実際にキーを押してもらって使いやすさを実感して欲しいですね。特にスライド型を使っている人には良い点が分かってもらえると思います。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(ソフトバンク)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/810p/
製品情報(パナソニック モバイル)
http://panasonic.jp/mobile/810p/
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(太田 亮三)
2007/06/28 11:46
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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