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「W52SA」開発者インタビュー
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“薄い”ワンセグケータイへのこだわり
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auの夏モデルとして登場するワンセグ対応7機種のうち、“スリムワンセグ”の1つが薄さ18.7mmに仕上げられた「W52SA」だ。外観は、男性ユーザーを意識したもので、199万画素AF付きカメラではパノラマ撮影機能などが用意されている。
「W52SA」の商品企画を担当した山崎 裕史氏と湯山 誉氏、横田 希氏、デザイン担当の北村和生氏、ユーザーインターフェイス担当の嶋津朋弘氏に話を聞いた。
■ “インゴット”デザイン
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左からフィールブラック、クラスターシルバー、ライトブルー
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左から嶋津氏、北村氏、山崎氏、湯山氏、横田氏
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――「W52SA」では男性ユーザーを意識したモデルということですが。
湯山氏(商品企画担当)
夏モデルとして同時に「W53SA」と「A5527SA」も発表されていますが、KDDIさんとも話し合いを行ない、当社内で検討を重ねた結果、「W52SA」は男性ユーザー向けということになりました。ユーザーイメージは、20~30代の男性ですね。
横田氏(商品企画担当)
当社は、au初・国内初のワンセグ対応ケータイを提供したこともあり、KDDIさんには今回、薄くコンパクトなワンセグ端末を出したいと提案しました。これはKDDIさんとの方針とも一致したところです。開発時には、ビジネスとプライベートを切り替えられる人をイメージしました。仕事だけではなく、日常でも使えるケータイとして開発したことになります。
山崎氏(商品企画担当)
企画やデザインなどは、並行して進めていく形になります。W52SAのデザインとコンセプトはどちらが先ということではなかったですね。
北村氏(デザイン担当)
私自身は、回転2軸ヒンジの「W21SA」(2004年8月発売)やワンセグ初号機の「W33SA」(2005年12月発売)のデザインを手掛けてきましたが、W52SAのデザインを考える前に、W33SAとW43SA(2006年10月発売、折りたたみ型ワンセグ機)の存在がありました。普及モデルと廉価モデルという2種類のワンセグ端末が発売された後、W33SAの進化版、後継機が必要ではないかと考えました。もともと回転2軸という機構は、ワンセグを携帯電話で視るというシーンを提案するため、ディスプレイが裏返るという仕組みを見た目でもわかりやすくしたものでした。
その回転2軸を今回もベースとしつつ、デザインのトレンドでもあるシャープさ、洗練さを追求しました。
――W52SAのデザインは、「インゴット」というキーワードを掲げていますね。
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インゴットの由来を説明していた北村氏
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山崎氏
先述したように、薄いケータイという考えがありましたので、回転2軸というデザインと薄さという点を調整していきました。ただ、薄型化を追求していくと、現在の携帯電話関連技術からすれば、おのずと限界点は決まったところになり、他社の携帯電話と最終的に似てきているところがあります。そこで、どう差別化するか、という点を重視しました。
北村氏
今回は、金塊に代表される“インゴット”をイメージしました。携帯電話は薄く軽くという点を求めますが、中身の密度の濃さ、先行感や重厚感というものも先端機器には必要ではないでしょうか。それは、やはり機能美やメカらしさというものを排した形であり、表現として“インゴット”という題材を掲げることになったのです。
■ “見せない”赤外線ポート
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ディスプレイ側の先端部に赤外線ポートが配されているが……
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――先端部はキラキラと反射して、インゴットというキーワードが一番ピンとくる部分ですね。
北村氏
実は、そこに赤外線ポートを配しています。赤外線ポートは通常、黒いパーツが用いられていますが、今回は筐体に合わせたカラーにしていて、一見すると赤外線ポートがわかりません。そのままでは赤外線通信を使う際に戸惑うでしょうから、赤外線送受信機能をメニュー画面で呼び出すと、画面上で携帯電話をどこに向けるか案内しています。
――赤外線ポートを覆うように塗装しているのでしょうか?
北村氏
これは多層蒸着と呼ばれる処理で、金属の材質を揮発させて貼り付けていくという工程を経ています。よく、眼鏡などで用いられる処理でして、たとえばスキーのゴーグルでは紫外線をカットする場合に使われています。以前、外部メーカーから「紫外線カットではなく、赤外線を透過させる」という形で提案してもらい、携帯電話の外観に採用できないか、ということから検討しはじめました。
もっとも、本技術を使うとボディカラーをある程度制限しなければなりません。つまり、「ボディカラーが赤で、多層蒸着による処理部分も赤」ということでは、赤外線を透過させるのは非常に難しいのです。今回のボディカラーは、赤外線を透過できるという点も考慮したものになっています。
――従来よりコスト高になりそうですが……。
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マットで独特の手触り感を実現したフィールブラック
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湯山氏
確かにその通りですが、これまで三洋電機の携帯電話にはないデザインということで採用しましたね。
また、デザイン上では、カラーによって手触り感、質感が異なることも特徴です。特にフィールブラックの見た目は艶を消し、触ってみると少しざらつきのある形になっています。
北村氏
フィールブラックで用いられている処理は、携帯電話にはあまり向いていません。というのも、汚れた場合に拭いても落ちにくいのです。今回は、塗料の改善が進んできたこともありますが、黒という汚れが目立ちにくいカラーということもあって、独特の手触り感を採用すべく、この処理を行ないました。このあたりは、自動車をイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。自動車で艶を消した塗装がないのは、汚れと関連する部分があると言えるでしょう。
またボディカラー3色については、光沢感のあるものとマットなものを組み合わせました。いろいろな考え方はあると思いますが、カラーバリエーションやテクスチャーの在り方は、常に検討し続けています。今回は、ターゲット層を踏まえて、ブルーのグロス、光るシルバー、艶を消したブラックというパターンにしました。
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他機種との差別化について触れていた山崎氏
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山崎氏
薄型化や多機能化といった点で、各社の携帯電話が目指すところは、最終的に似てしまうところがあります。そこで、画面や素材感など、情緒的な価値を伸ばしていくことが重要ではないかと考えていますね。
――ヒンジ周辺も蒸着処理されているのでしょうか? またワンセグ用アンテナは、ボディ内部に収納されていて、あまり目立たない形ですね。
北村氏
ヒンジ周辺は、不連続蒸着と呼ばれる処理になります。また、ワンセグ用アンテナについては、今回、初めて金属の素材をアンテナの先端部に用いています。W33SAでは、アンテナはデザイン上、筐体の一体感に欠けたものになっていました。今回は、アンテナを収納した後もボディの一体感を演出すべく、アンテナを細くすることを技術陣に依頼しました。その上で、外に引き出しやすい形状ということで、強度向上を図り、感度向上をもたらす金属をアンテナ先端部に採用しました。
湯山氏
ワンセグ機能を使うことを考えれば、アンテナは外付けではなく、内蔵のほうが使いやすいでしょう。その上で、引き出しやすい形にでき、良いものができたと思いますね。
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金属を用いたアンテナトップ
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不連続蒸着処理が施されたヒンジ部周辺。アンテナ収納時に一体感
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大きめでフレームレスのキー
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――薄さ18.7mmとなっていますが、薄さを求める機種ではシートキーを採用するものもあります。W52SAでは大きめのブロックのようなキーになっていますね。
湯山氏
確かにシートキーは薄くなりますが、あの感触は使いづらいとも思います。できるだけキーは大きくしたほうが良いと言う観点から、テンキー部分の形状を決めました。
北村氏
最初のデザインでは、もう少し小さい形状でしたが、試行錯誤を繰り返して、最終的にこの形になりました。
山崎氏
携帯電話では、キー部分は重要な要素です。車で言えばステアリングに当たる部分であり、クリック感を含めて検討を重ねましたね。
■ ユーザーインターフェイス
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プリセットメニューの「キャッチ&ドロップ」。左にリスト、右には上からアイコンが落ちてくる
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――インゴットデザインというW52SAですが、ユーザーが最も目にする操作画面についてはいかがでしょう?
嶋津氏
基本はプロダクトの世界観を活かし、それをより演出するような形にしています。従来の機種と比べると、大きな特徴は今回初めてワイドQVGAに対応したことになります。それによって、メインメニューを操作する際に選択中のアイコンはどういう機能なのか、その説明文が画面下部に表示されるようにしました。また大きめの文字サイズのメニューも用意しましたが、ワイド画面ですので、1画面内で全て表示できるのも特徴となりますね。
またプリセットで、EZケータイアレンジ用素材を計3種類用意しています。このうち1つはディズニーのデザインです。また、「キャッチ&ドロップ」というプリセットメニューは、左側にテキスト表示のメニューがリスト一覧になっている一方、右には各メニューに合わせたアイコンが上から落ちてくるようなアニメーションになります。これは、ワイドQVGAの縦長という点を高さとしてダイナミックな動きを演出したものです。
――au端末は共通プラットフォームを採用する流れにありますが、ユーザーインターフェイスの独自性はどこまで打ち出せるのでしょうか?
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UI担当の嶋津氏
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横田氏
確かにメニュー周りは共通化する方向ですが、メニューの構成や視認性といった部分は他社と差別化し、競い合える部分がありますので、そのあたりに注力しています。
嶋津氏
グラフィックな部分もありますし、使いやすさに配慮した提案もできます。また、色味なども色覚に影響する部分ですので、検討を重ねるところです。たとえばワイドQVGAに対応したことで、画面下部に説明文を表示できるようになりましたが、これまではアイコンに被さって表示されていましたので、このあたりも独自の改善点と言えると思います。
――ちなみにディズニーのデザインは、どのような流れで決定されるのでしょう?
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ダウンロードするEZケータイアレンジ用素材より、プリセットメニューのほうが変更できる点が多いという
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湯山氏
W52SAについては、あまり可愛らしすぎないようにというコンセプトをディズニーさんに伝え、クラシック風のイメージに仕上がっています。基本的には、ディズニーさんとコンセプトをすり合わせた上で、デザインを提案してもらい、実装して調整するということになりますね。
――以前から三洋製の携帯電話では、ディズニーなどのカスタマイズが楽しめる形でした。今回はEZケータイアレンジ対応ですが、好みのデザインを追加できるという点は、ユーザーインターフェイスのデザインに影響を与えているのでしょうか?
嶋津氏
W52SAでは、コンセプトに合わせて、派手な演出ではなく、ベーシックなデザインに寄せています。異なるコンセプトの機種であれば演出などは異なってくると思います。ただ、やはりプリセットメニューは、より多くの人にとって使いやすいものでなければならないでしょう。メニューそのものは、単なるGUIからコンテンツになってきていると思いますので、何かのキャラクターのファンなど、こだわりがある方はダウンロードして楽しんでもらえれば良いですね。
■ ワンセグでの新機能、パノラマ撮影など
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充電台はワンセグ視聴を意識した形
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――ワンセグ対応となっていますが、機能面での特徴は?
湯山氏
最初にワンセグ対応機をリリースしたこともあり、「どこにも負けない」という考えでやってきましたが、他社のワンセグ端末では、W33SAにない機能がどんどん搭載され、当社も追いかけているうちに結果的に横並びになってきました。
今回は、番組内容にあわせた画質・音質を最適化する「シーンセレクト機能」の機能向上を図っています。また、最大3分間の映像を蓄積する「タイムシフト再生」、予約録画が新しい機能です。
――回転2軸ヒンジですが、ディスプレイを回転させるとワンセグ機能が起動するのでしょうか?
湯山氏
初期設定では起動しませんが、「設定すれば起動する」という形です。カメラを使う場合にディスプレイを露出したまま折りたたむ“フロントスタイル”にする人はそれなりにいるのですが、ワンセグではフロントスタイルで持ち歩く人は少ない。どちらかと言えば、W52SAでは、ワンセグはカメラのような標準機能として搭載しており、ワンセグ機能だけという機種ではありません。コンセプトが異なる機種であれば、初期設定で「フロントスタイルでワンセグ起動」という形もありえるでしょう。
――カメラ機能ではパノラマ撮影が可能になっています。
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商品企画の湯山氏(左)と横田氏
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湯山氏
やはりカメラ機能でも他社との差別化、W52SAの特徴を打ちだすというところで、今回はパノラマ撮影、スキャン機能を採用しました。パノラマ撮影・スキャンともに同じ技術で実現していますが、動画を撮影するように、カメラを向ける方向を動かしていくと、最終的にパノラマ画像、あるいは紙の資料で読み取りたい部分だけ切り抜いた画像が生成できます。
たとえばパノラマ撮影時には、水平に動かしやすいように画面上にはガイドが表示されます。
――パノラマ撮影機能に加えて、スキャン機能を搭載した理由は?
湯山氏
パノラマ撮影は楽しく、操作感は面白いものですが、利用シーンを考えるとインパクトに欠けるかもしれないと考えていました。そういう意味では、たとえばバスの時刻表を撮影する場合も、一歩退いて全体を撮影するという今までの使い方よりも、近づいてなぞるように撮影できたほうが便利です。利便性を考えると……というところですね。
――ICレコーダー機能ではステレオ録音が可能ですね。
湯山氏
ステレオ録音のためにマイクは2カ所設けていますが、これまでも当社の携帯電話ではステレオ録音対応の機種はいくつか存在しています。実は、録音機能の名称は機種によって「ICレコーダー」か「ボイスレコーダー」と異なっています。これは録音データの形式などによって決まっているのですが、「ICレコーダー」と呼ぶ方の性能には自信を持っています。
――最後に、本誌読者に一言お願いします。
横田氏
6月7日から順次発売されていますが、6月15日までに予約された方全てにmicroSDカードをプレゼントします。また、購入した方を対象に、microSDカードなどをプレゼントするキャンペーンも実施します。
湯山氏
カラーによって異なるテイストになっていますから、ぜひ店頭で触わっていただきたいですね。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報(三洋電機)
http://www.sanyo-keitai.com/au/w52sa/
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(関口 聖)
2007/06/07 13:02
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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