19日に発売される「P903iX HIGH-SPPED(以下、P903iX)」は、パナソニック初のHSDPA対応端末だ。Windows Media形式のコンテンツが楽しめるなど、商品企画を担当した井端勇介氏とプロジェクトマネージャーの常廣直司氏は、高速通信を活かしたAV機能が特徴だと説明する。発表から6カ月余りを経て登場する「P903iX」の詳細を聞いた。
■ Windows
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プロジェクトマネージャーの常廣氏(左)と、商品企画担当の井端氏(右)
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――NTTドコモのHSDPA端末としては3機種目となる「P903iX」ですが、どういった点を特徴としているのでしょうか?
井端氏
最も特徴的な機能はWindows Media形式の動画に対応していることです。また大きく分けると「ムービー」「ミュージック」「メガiアプリ」という3点がアピールポイントになります。
――HSDPA対応ですが、映像・音楽という方向を選択したのはなぜでしょう?
井端氏
確かに高速通信は、一度使い始めるともう手放せません。しかし、それはアピールポイントとしては伝わりにくいところです。一方、パナソニックとしては、「AV」という点でブランドイメージが確立されていると思います。そのコンセプトは開発初期に確立し、悩むことはありませんでした。
――なぜWindows Mediaをサポートすることに?
井端氏
これまで、国内の携帯電話は、基本的に携帯専用コンテンツを楽しむ形でした。Windows Mediaに対応するということは、パソコン向けに提供されているコンテンツを携帯電話から覗き見するような格好です。「P903iX」では、パソコン向けと同じWindows Media形式のファイルが利用できますが、仮に(Windows Mediaの)携帯向けサブセットがあったとしても、それを利用するならば既に携帯向けデータ形式があるわけですから、Windows Mediaである必要性がありません。
携帯向けコンテンツというものは、元々のデータを新たに加工して生み出す必要があります。「P903iX」でWindows Mediaをサポートしたのは、携帯専用ではない、パソコン向けコンテンツも利用できるというメリットがあるからです。オープンなインターネット上のマルチメディアコンテンツが利用できるわけで、今後、Windows Media対応の携帯電話が増えれば、コンテンツプロバイダにとっても配信するデータ形式が1種類で済むという利便性があるのではないでしょうか。
――ということは、必ずしもWindows Mediaだけではなく、他の動画形式をサポートする可能性もありえたわけですね。
井端氏
インターネットの現状を見て、今回はWindows Mediaに対応しましたが、時代が異なれば他の形式に対応していたかもしれませんね。
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ストリーミングでWMV形式のデータを再生
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常廣氏はWindows Media形式をサポートする苦労を語っていた
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――PシリーズのFOMA端末はLinuxプラットフォームを採用していますが、その上でWindows Mediaのデコーダーが動作しているのでしょうか?
井端氏
そうですね、Linux対応のWindows Mediaデコーダーは、今回イチから開発しました。AV機能というコンセプトの確立で悩むことはありませんでしたが、携帯上でWindows Mediaが本当に見られるのか、という点で不安はありました。開発を進めていく中で、端末能力などで調整が必要なことがわかりました。
さらにわかった点としては、Windows Media対応コンテンツを配信するサイト側が携帯電話からのアクセスを制限しているケースがあることです。広告モデルで運用するサイト側からすれば携帯電話からのアクセスは想定外なのかもしれません。これは、今後Windows Media対応端末が増えてくれば解決すると期待していますが、まずはパナソニックとして、ユーザーさん向けに「P-Theater(ピーシアター)」というサイトを用意しました。こちらでは、「P903iX」で楽しめるWindows Media対応Webサイトを紹介しています。フルブラウザでWindows Mediaコンテンツにアクセスできるとは言え、何回もクリックしなければアクセスできないケースもありますから、より利便性を高めるためのサイトという位置付けもしています。
常廣氏
技術的観点からすると、開発当初は映像だけ出力するのが精一杯でした。音を出すと止まったりしたわけです。パラメータや処理方法を変えていって、冗長する面を改善していきましたが、最終的にBluetoothで音声を飛ばすという処理を行なうところまでこぎつけました。当初から見ると、Windows Mediaのデコードにかかる処理能力が抑えられましたので、駆動時間を伸ばすという効果も生まれました。このあたりの実装技術は、他社さんはなかなか追いつけない部分だと自負しています。
――たとえばiアプリ上でWindows Mediaを再生できるのでしょうか? また、ストリーミングを利用すると回線を占有することはないのでしょうか?
井端氏
APIがありませんので、「iアプリからWindows Media」というのはできません。また音楽配信サービスの「ナップスター」のサービスは利用できません。再生できるWindows Mediaコンテンツは、QVGAサイズでビットレート512kbps、フレームレート30fpsというものですが、パケット通信ですので回線を占有するということはありません。
――携帯電話での動画利用は、まだ広まっていないように感じます。
井端氏
そうですね、しかしワンセグがスタートし、動画を見るというスタイルは普及すると思っています。これは、携帯にカメラが搭載されることが当たり前になったのと同じことと言えるのではないでしょうか。また、ネットの動向を見ると、YouTubeのような動画投稿サイトが登場し、先端層だけではなく、より幅広い層がインターネットを通じて動画を見るという文化が広まってきていると思います。「パケ・ホーダイフル」も登場したことですし、裾野は広がっていくでしょう。
■ 着うたフル70時間、SD-Audio75時間の長時間再生
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音楽再生機能についても機能強化を図ったと語る井端氏
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――音楽再生では、70時間という再生時間、そして着うたフルとSD-Audioを一緒に再生できるプレーヤーという点が特徴的ですね。
井端氏
これは楽曲再生時のデコードで用いるアルゴリズム、仕組みを以前の技術から変更したということです。P903iでハードウェアとソフトウェアを変更し、SD-Audioの再生時間が大幅に伸びました。今回、その仕組みを着うたフルの再生にも適用したことで、再生時間が伸びたのです。
――なるほど。
井端氏
音楽に関連した点としては、Bluetoothの使い勝手も向上させています。これまでは、Bluetoothヘッドホンを利用するたびに携帯電話側での接続操作が必要でしたが、「P903iX」では、音楽再生時にBluetoothを使用していると、次の機会でのBluetoothヘッドホンでの音楽再生ではレジューム機能が働きます。音楽プレーヤー機能が起動するとBluetoothヘッドホンを自動的に探して、音声出力を開始するので、よりスムーズな操作になっています。また、閉じた状態で側面のプッシュトーク用ボタンを長押しすると、音楽プレーヤー機能が起動するという機能も搭載しています。
■ 外観と優先課題
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フルブラウザも高速に利用できる
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――GPS非対応であること、そして液晶ディスプレイの画面サイズが気になる点ですが……。
井端氏
GPSについては、開発時期も関連しますが、それだけではなく、キャリアさんとの話し合いの中で、最終的に決まった結果と言えます。つまり機種ごとに何を優先すべきか決めていった結果と言うことで、たとえば、P903iTVはワンセグ機能を優先し、P903iXはWindows Mediaに対応することを優先したのです。
画面サイズについては、P903iTVはワンセグ端末ですので2.8インチ、280×400ドットというディスプレイを採用しました。一方、P903iXは2.4インチのQVGA液晶ですが、このディスプレイになった理由の1つは、Windows Mediaの映像コンテンツのアスペクト比はほとんど4:3という比率になっているためで、フル画面表示のほうが楽しめるだろうと判断した結果です。
――アシンメトリーな外観を採用していますが、デザイン面での特徴は?
井端氏
赤と黒を組み合わせた「クリムゾン」、白とシルバーの「プラチナ」の2色を用意しますが、クリムゾンの黒色はカーボン調に仕上げ、男性に好まれるような仕上がりです。一方、プラチナはエレガントな雰囲気で、事前の当社調査では女性から高く評価されています。両カラーともに、数字キーやサブ液晶に表示する時計のフォントが異なりますし、デフォルト設定の待受画像も違います。
また外観の特徴は、サブ液晶近くのLEDです。2つのLEDでさまざまな光り方を楽しめるのですが、LEDそのものは、背面のメタルパネルの下に設けた空間の壁にあたる部分に配されています。手に持ったり、机の上に置いたりすると、自分自身にはLEDの光がはっきりと見えるのですが、側面など、異なる角度から見ると、ぼんやりと見えます。つまり見る角度によって、異なる光り方を楽しめるのです。
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自分から見えるLEDの光り方
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違う角度から見ると、光り方は異なる
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P903i(左)とP903iX(右)は、各種パーツの配置がほぼ同じ
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――そういった空間が設計できたということは、ディスプレイ側ボディの厚みはデザインした結果でしょうか?
井端氏
まずP903iXのデザインの背景には、P903iとの差別化として、カスタムジャケットをあえて採用しなかったことが挙げられます。その上で近未来感を出して、デザイン面での新しさを出すことを考えました。そして、曲線をアピールするフォルムを採用し、この筐体になったということになります。LEDの光り方はそのボディサイズを活かしたものですし、空間ができたおかげで、スピーカーから出る音のクオリティも音質、音圧などの面で大きく向上しています。外観の仕上がりは、ドコモのHSDPA端末の中では、先端層だけではなく、もう少し幅広い層に受け入れてもらえると思います。
常廣氏
実際に、P903iとP903iXを並べて比べてみると、カメラやサイドキー、microSDカードスロットの位置が同じだということがよくわかると思います。
――ありがとうございました。
■ URL
P903iX HIGH-SPPED 製品情報
http://panasonic.jp/mobile/p903ix/
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2007/04/12 15:45
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