|
P903iTV開発者インタビュー
|
![]() |
パナソニックが求めたワンセグケータイの進化
|
![](
/cda/static/image/spacerh5.gif) |
![](
/cda/static/image/spacerh5.gif) |
NTTドコモ初のワンセグケータイ「P901iTV」から約1年を経て、パナソニック モバイルコミュニケーションズがリリースしたのが「P903iTV」だ。同社にとって、2代目となるワンセグケータイは「高画質」「高感度」「長時間」という3つのポイントがあるという。
商品企画を担当した井端勇介氏とプロジェクトマネージャーの山口徹也氏に話を聞いた。
■ テレビと携帯の画質の違い
![プロジェクトマネージャーの山口氏(左)と、商品企画担当の井端氏(右)](/cda/static/image/2007/04/09/p00.jpg)
|
プロジェクトマネージャーの山口氏(左)と、商品企画担当の井端氏(右)
|
――P903iTVの形状は、先代モデルである「P901iTV」と同じ回転2軸ヒンジですね。
井端氏
いくつか候補はありましたが、基本的に継承する方向で考えていました。というのも、片手で持ちながら横画面で楽しめるというスタイルが必要、と思っていましたから。特に「テレビを楽しむ」という行為は、ダイレクトにチャンネルを切り替えられるようにする必要があります。P903iTVの形状は、それを実現できるということです。
――昨年「P901iTV」を発売して、ユーザーからはどのような反応が?
井端氏
アルファベットの「L」のような形状にできるというのは評価されたポイントだと思っています。ただ、それは男性からの評価が多かったですね。女性にとっては、L字型というスタイルはごつごつした印象があるのか、抵抗感があるようです。手にとっている際の姿が他人からどう見えるか、その辺りを気にしているのでしょうか。
そういう意味でも、P901iTVとP903iTVは回転2軸ヒンジですから、キー部分を隠して、ディスプレイだけ露出できるという自由度があります。
――最大7時間という長時間視聴が可能、そして高画質化が図られているとのことですが、これらはモバイルPEAKSプロセッサーやUniPhier(ユニフィエ)といったチップセットで実現できたのでしょうか?
山口氏
UniPhierは、正しくはチップセットの総称です。パナソニックとしては、家電などでも採用しており、そのモバイル版になるわけです。その中の画像エンジン、一部で外付けのモジュールも利用していますが、UniPhierの中で画質を向上させるモジュール部分を「モバイルPEAKSプロセッサー」と名付けたことになります。
井端氏
初号機である「P901iTV」が発売された時点では、まずワンセグ映像が携帯電話で視聴できる、ということが最も価値あることでした。それから1年を経て、他社からもワンセグケータイが数多く登場してくる中で、画質や感度を進化させねばならないと考え、実装したのです。
――「高画質」が特徴の1つとされていますが、もう少し詳しく教えて下さい。
井端氏
モバイルPEAKSプロセッサーによって、色が鮮やかに、深みがあるように見えるように調整しています。また、自宅にあるテレビと違って、携帯電話ですから常に変化する視聴環境に対応できるように、光センサーで輝度などを調整するほか、P901iTVと比べ、輝度と“画の色作り”という2点を変えています。また画面サイズが大きくなったのも画質向上に一役買っています。
山口氏
画質を向上させるための要素は、UniPhierの中にあらかじめ組み込まれていました。そういったパラメーターを調整した上で商品化したことになるのですが、もちろん我々にはテレビ視聴に適した画質パラメーターのノウハウはありませんでした。そこで今回は、パナソニックの液晶テレビを担当する画質評価部隊に、P903iTVの監修をお願いして開発を進めました。途中、かなりたたき直されながらチューニングを重ねた結果、「このクオリティであれば、VIERAと同じチップであるPEAKSの名前を使っても良い」ということになったわけです。
――携帯電話とテレビでは、“良い画質”の基準が異なるのでしょうか?
井端氏
ええ、そこは異なる部分です。たとえば、色温度ですが、携帯電話はちょっと黄色っぽい方向に寄った白、いわば落ち着いた優しい白を目指します。
山口氏
一方、テレビは“青白い白”が綺麗とされています。これは、特に東洋人に強い傾向だそうですが、それを実現するため、液晶ディスプレイのカラーフィルターを変更してみたりするなど、さまざまな調整を行なったのです。ところが、初期の調整では人の顔が血色悪く見えてしまう。画質評価部隊に見せると、いろいろとアドバイスをもらいました。その後は、白は青白く、人肌は……という形で、色ごとに異なる発色になるようにチューニングを重ねました。かなりの期間をかけてチューニングを行い、昨年末にようやく完成しました。
――テレビに適したチューニングを施したのであれば、携帯電話としての画質は?
井端氏
P903iTVではテレビ視聴時に画質機能を切り替えるようにしています。ワンセグの画質をとことん追求する一方、携帯電話としての画質も求めました。
――そこまで画質向上に注力した理由は?
井端氏
この1年で、各メーカーからさまざまなワンセグケータイが登場しました。P901iTVを初号機としてリリースし、今回、満を持してP903iTVを出す形になります。先に登場していた他社のワンセグケータイの中には、美しい画質を実現した、と思ったものもあります。だからこそ、負けたくないという一心で取り組んできたのです。
■ 高感度を実現する技術とは
![取材時には、P903iTV(左)では受信できたが、P901iTV(右)では受信できず、感度の差が示された](/cda/static/image/2007/04/09/p03s.jpg)
|
取材時には、P903iTV(左)では受信できたが、P901iTV(右)では受信できず、感度の差が示された
|
――いくら高画質でも、受信できなければ体験できないわけですが、「高感度」も特徴の1つとされています。
井端氏
内蔵アンテナとホイップアンテナという2本のアンテナで、合成ダイバーシティを実現しています。受信感度は、P901iTVよりも格段に向上しています。静止時はもちろん、移動時にも効果を発揮し、新幹線でのワンセグ視聴時でも途切れることはありません。また、想定外の効果なのですが、ホイップアンテナを伸ばさなくても、ある程度視聴できます。電車内でワンセグを見る場合、「アンテナを伸ばすのが格好悪い」と感じる方が最近増えてきているようで、結果的にはそういった点もメリットになると思っています。他社を含め、現行のワンセグケータイでは受信感度ナンバーワンでしょう。
山口氏
開発時には「本当にダイバーシティの効果があるのか」「開発にかかるコストは?」「大きさはどうなるのだ?」などの意見がありました。しかし、試作機でその効能がはっきりすると、そういった声は止みましたね。
――そもそもワンセグ用にダイバーシティアンテナを搭載しようと考えた理由は?
井端氏
ダイバーシティといえば携帯電話用アンテナを思い浮かべるかもしれませんが、実は車載用テレビでダイバーシティアンテナを用いているのです。グループ企業で車載製品を担当している部署もありますし、徹底的にやろう! ということで開発に取り組んだことになります。もちろん車載用テレビと携帯電話では、筐体サイズが異なりますので、実装するには、携帯電話開発のノウハウが活きています。いろんな部門の力を借りながら、期待以上の感度に仕上がりました。
――チューナーもダイバーシティアンテナに対応する必要があるのでしょうか?
山口氏
2系統の放送波を受け取ることになりますので、P903iTVに搭載するチューナーはカスタマイズ品です。通常のチューナーは安くなってきましたが、コスト面でも高い部品になります。それでも搭載したのは、やはりダイバーシティの効果が明確だからです。
井端氏
何も考慮せずに、ただワンセグ用アンテナとチューナーを携帯電話に搭載すると、携帯電話用アンテナなどと干渉が発生してしまいます。P903iTVには、携帯としてのアンテナ、ワンセグ用アンテナ、FeliCa用アンテナ、Bluetooth用アンテナが内蔵されていますが、このあたりの実装ノウハウは、今後活きてくる部分だと思います。
――さきほど、思わぬ効果として、アンテナを伸ばさなくても視聴できるという話がありましたが、内蔵アンテナだけで受信していることになるのでしょうか?
山口氏
ダイバーシティ機能がオフになるわけではありませんので、正確に言えば内蔵とホイップの両方で受信していることになります。ただし、ホイップアンテナでの受信感度が非常に低くなって、その性能が充分に発揮できていないという形ですね。
井端氏
アンテナを縮めた状態であれば、ワンセグを視聴できる機種はほとんどありませんが、P903iTVでは、それなりに視聴できます。この部分は、今後他社との競争が激しくなる点かもしれません。
■ 長時間
![最長7時間という視聴時間の意義を語る山口氏と井端氏](/cda/static/image/2007/04/09/p02.jpg)
|
最長7時間という視聴時間の意義を語る山口氏と井端氏
|
――最長7時間という視聴時間を実現したECOモードは、P901iTVと同等の画質と考えて良いのでしょうか? なぜECOモードを用意したのでしょう?
井端氏
実際のところは、輝度などがP901iTVよりも向上していますので、ECOモードでもP903iTVのほうが画質は上です。開発時には、具体的な数値目標を掲げる前に「まず基礎体力を向上させよう」と話していました。利用シーンを考えると、綺麗に見たいという人と、長く見たいという人がいるでしょう。どちらかに絞るのではなく、どちらでも使える自由度を持たせたかったのです。ECOモードに設定すると、高音質処理などクオリティを上げる部分を省エネ運転していることになります。
山口氏
最初から7時間という視聴時間に達していたわけではありません。どこまでできるか、わからない中で、他社との競争も考えていたのですが、5時間以上であれば競争力が持てると考えました。昨年10月の発表時には、5~6時間程度という形で案内していましたが、万全を期してECOモードでは7時間視聴を実現させました。
井端氏
初代のP901iTVの時は、約3時間という視聴時間でした。開発側としては、当時は頑張った結果の数値ですが、通勤・通学に1時間かかるという人にとって、ワンセグを視聴すると往復で2時間かかり、バッテリーの7~8割を費やすことになります。これは電話としてはマイナスポイントです。
今回、P903iTVでは、通常で約5時間20分、ECOモードで約7時間という視聴時間が実現できていますが、実際に7時間もテレビを見ることを想定しているのではなく、1日2時間ワンセグを楽しんでも、なおバッテリーに余力があるという点に意味があると思います。これは音楽再生機能でも同じことで、P903iTVでは実は約75時間もの音楽再生(SD-Audio)が可能ですが、いくら聴いてもバッテリーへの影響が薄いという意味合いになると思います。
■ ワンセグはリアルタイム? 録画?
![井端氏は多機能化する携帯電話の利便性についても語っていた](/cda/static/image/2007/04/09/p01.jpg)
|
井端氏は多機能化する携帯電話の利便性についても語っていた
|
――録画予約、microSDカードへの録画、早見再生といった機能がサポートされていますが、録画視聴は、どういったニーズがあると思いますか?
山口氏
最寄りのショッピングセンターを訪れた時に、ある時間帯になったらワンセグを見ている男性を多く見かけたのです。なぜだろう、と思って、その直後に家電売り場のテレビを見たら、「有馬記念」をやっていたのですね。やはりスポーツはリアルタイムに見たいコンテンツなのでしょう。ニュースや天気もそういう部類になると思います。
井端氏
録画という点からすると、新たに「SD-MobileImpact」というソフトウェアを同梱しています。市販されておらず、今のところ、P903iTVユーザーだけ利用できるソフトウェアですが、パソコン側に録画データをムーブできるという機能を用意しています。外部メモリカードへの録画を考えると、最大容量まで録画しきってしまった後にパソコンでバックアップできれば便利な機能です。録画予約の新しいソリューションを検討していく中で提供することになりましたね。
――Bluetooth経由でワンセグの音声を聴ける、というのも特徴の1つですね。
井端氏
ワンセグの音声はA2DP経由で伝送しています。P902iから採用した仕組みを拡張して実装しました。ワイヤレスでワンセグを楽しむというのは、一度使い始めると止められません。Bluetoothではなく、FMトランスミッターで実現するケースもあるかと思いますが、Bluetoothの利点は双方向であること。リモコンでボリュームやチャンネル操作ができることでしょう。Bluetoothについては、海外ではもはや標準機能であり、日本でも普及するかもしれませんが、当社が干渉をクリアするノウハウを持っていることは強みになると思います。
――Bluetoothのヘッドセットを使えば、ワンセグや音楽、通話待受まで利用できますね。
井端氏
音楽再生機能でよく言われたことが「iPodがあるから(携帯に音楽再生機能は)必要ないじゃないか」ということでした。確かに、音楽だけならそれで正しいのかもしれませんが、音楽やワンセグ、電話という複数の機能を使うならば、1つの端末でなければならないと思います。音楽プレーヤーを使っているときに電話がかかってきたら、ヘッドホンを外して、手に持つ端末を取り替えて……と慌ただしいですよね。音楽だけならば、専用プレーヤーに勝てないかもしれませんが、何でも使う人にとっては、1台にまとまっているほうが便利でしょう。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://panasonic.jp/mobile/p903itv/
■ 関連記事
・ P903iTV(レッド)
・ ドコモ、ワンセグ対応「P903iTV」を23日発売
(関口 聖)
2007/04/09 13:27
|
ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|
|
|
|
![](/cda/static/image/spacer.gif)
|
![](/cda/static/image/spacer.gif) |