|
SO703i(Romantic Gold)
|
ソニー・エリクソンといえば、これまでも「premini」や「RADIDEN」など斬新なコンセプトの携帯電話を世に送り出し、熱烈な男性ファンが多いことでも知られる存在だ。その“ソニエリ”がNTTドコモの「SO703i」で打ち出してきたのは、なんと女性をターゲットとした着せ替え可能なアロマ携帯だった。
アロマ携帯は、その名の通り、香りが楽しめる携帯電話である。個性的な端末が多い70Xiシリーズの中でも異色の存在だが、では、なぜ携帯電話に「香り」なのか。今回、そのあたりの開発経緯をソニー・エリクソン プロジェクトマネージャー 新田氏、商品企画担当 上田氏、ソフトウエア担当 西村氏、メカ設計担当 坂牧氏、デザイン担当 村井氏らに伺った。
|
|
Aqua White
|
Misty Black
|
■ 「ビューティ・ルネッサンス」で女性の利用を意識
|
「SO703i」を手がけたソニー・エリクソンのスタッフ陣
|
|
キーワードは“ビューティ・ルネッサンス”
|
――まずはSO703iのデザインコンセプトについて教えてください。
上田氏
昨年着せ替えでご好評いただいたSO702iの次機種ということで、どうやって商品をブラッシュアップさせていくかを検討のテーマとしました。SO702iはカジュアルなイメージでしたが、SO703iでは高級感を持たせ、より幅広いユーザーに使っていただけるような端末に作り上げていくことに注力しました。
――具体的な特徴を教えてください。
上田氏
画面の広さやキーの使いやすさをさらに進化させ、20代、30代の女性をメインターゲットにしたものがSO703iです。液晶画面を2.2インチから2.7インチのワイドQVGAに拡大し、表示できる情報量を増やしました。さらに今回は面積の広いキーと、エリアをしっかり分けたキー配置というところで、押しやすさの面もかなり向上しています。液晶は大きくなったけれども手にフィットしやすいサイズ、しかも女性が手に持っていてもメカメカしくなく、高級感のある美しさというのも追求しています。そして今回一番の魅力、それは、デザインとアロマという1つの世界観ですね、そこが一番の特長だと考えています。
――確かにキーが非常に大きくなった印象がありますね。
上田氏
20代、30代の女性はメールの使用頻度が非常に高いので、メールの打ちやすさという点をよりよくする形で考えていきました。
――女性は爪を伸ばしているケースも多いですが、やはりその点も配慮していますか?
村井氏
爪の長い方は指の腹でキーを押すので、面積が大きいSO703iのボタンはとても押しやすいと思います。これまでキーの面積が取れないときはクリック感でカバーしていました。今回はワイドディスプレイ搭載モデルということでキー側の面積もとれますので、その利点をしっかり活かし、安心してご利用いただけるデザインにしました。
坂牧氏
何回も試作してクリック感やキーのバックライトを工夫したので苦労しました。キー部分がフラットなため、今までのゴムキーを使ってしまうと、ズレてしまったり外れてしまったりといった問題が起こる可能性があります。今回はそれを解決するために、強度を確保しつつ、厚みを薄くする、そこに焦点を絞って開発しました。部品メーカーさん側にも、何度も試作を繰り返してもらい、ここまでの完成度に仕上げることができました。
■ 着せかえ可能な「香る」アロマ携帯の実現
――携帯電話から香りがするというのは初めてですね。香りとパネルのデザインがセットということですか?
上田氏
今回香りとパネルがセット販売になっています。セットでご購入いただけるので、お好みに合わせてデザインも香りも着せかえて、世界観を広げていくスタイルになっています。
香りはパネルのデザインにあわせてそれぞれ違ったテイストをご用意しまして、全部で9種類あります。本体は3つのカラーバリエーションがありますので、組み合わせは全部で27パターンですね。パネルをスライドオープンさせると、アロマシートが貼れる仕組みになっております。ここから香りが漂ってきます。香りが弱くなってきたら、シートをこすっていただくと、また香りが復活します。
――香りはずっと出てくるものなんですか? 持続性が気になりますが。
新田氏
目安としては、持続期間は約2~3カ月です。マイクロカプセルに香料を閉じ込めてあり、シートをこすることで香りが揮発してくる仕組みになっています。ユーザーさんの使い方によって持続期間は変わってきます。そこで、今回はあくまでも目安ということで、2~3カ月ということで謳わせていただいております。
――香りのデザインというのはどのように?
村井氏
まずデザイナーがパネルのデザインをしました。そのパネルが持つ世界観やコンセプトにあわせた香りを、実際に香料メーカーに担当者が出向いて立ち会い、プロの調香師の方に9種類提案していただきました。それに対して、もっと甘い感じ、もっとさわやかな感じ、という要望を伝えながら決めていきました。こちらは香りに関しては素人なので、そこはコンセプトに対するコメント出しをして香りのイメージを調整したという感じですが、当初のコンセプトが明確でしたので、大きな迷いや混乱はありませんでした。
――置いておくだけで香ってくるわけではなく、あえて鼻に近づけて楽しむというスタイルですね?
上田氏
そうですね。“能動的に香る”という形にしました。携帯電話というのは基本的にパーソナルなものだと思っています。公共の場など、混雑した場所で使うことも想定されますので、周りに香りが漂う強さにはしないことを考え、ほのかに香りを楽しむ程度にとどめています。誰かに見せて自慢するようなものではなく、自分の好きなものを自分で使う、コンセプト的には自分で楽しむ、ですね。
――男性の利用についてはいかがでしょうか。
村井氏
男性でも違和感なくご利用いただけるラインナップになっております。例えばMisty Blackは男性の方を意識しておりますので、男性でも使いやすいような香り……カフェモカのような香りをセットにしています。逆にパネルのデザインから見て、女性しか使わないと思われるものは、かなり女性寄りのテイストになっています。
――なるほど。携帯の取材で香りというのは珍しい経験です(笑)。
新田氏
我々も初めてなんですよ(笑)。開発側も本当に大変でした。社内に香りの専門家は誰もいませんので、手探りの中で立ち上げた感じですね。
■ とことん消しこんだ、幻想的なサブディスプレイ
|
試行錯誤を繰り返したというハーフミラーパネル+サブディスプレイ
|
――着せかえという点で、他に意識されたものはありますか?
上田氏
実はパネルや香りの着せかえ以外にも力を入れた箇所があります。本体を充電台にセットすると、サブディスプレイにキラキラっとアニメーションが浮かび上がってきます。着せかえメニュー毎に異なる表示をプリセットしています。さらに、プリセットのもののほかに、ダウンロードしてパネルにあわせてさらに変えることが可能です。SO702iと同様、今回も中も外も着せかえというコンセプトを継承しております。バリエーションにはロコロコのかわいいアニメーションもありますよ。
――1.1インチのサブディスプレイ搭載とのことですが、一見分かりませんね。ふわっと浮かび上がるアニメーションを拝見したときは新鮮な驚きがありました。
上田氏
サブディスプレイが見えることで、どうしても同じ顔のデザインになりがちですので、今回はサブディスプレイの枠を消しこもうと最初から意識していました。そこでハーフミラーのパネルを採用し、外から枠が見えないよう試行錯誤を繰り返しました。
――光の文字の部分だけ見せたいと。
村井氏
そうですね。パネルの色使いや質感を活かしつつ、文字だけ浮かび上がって見えるようにサブディスプレイの枠は消しこむようにしたのですが、9種類のパネルデザインはそれぞれ条件が違ったのでかなりの時間をかけて調整しました。薄いパネルなのに高輝度の有機ELが光ることで、パネルの柄に不思議な奥行き感が出ることがポイントですね。たとえば「Ocean」などは、本当に海の底みたいな感じで、ふわーっと奥に抜けていくんですよ。
新田氏
天気のよい日に外へ持っていくと、すべてのパネルが反射して綺麗な色が出るのがよくわかると思います。光があたるとすごくキラキラ光ります。嫌味がなく落ち着いた光り方ですので、男性でも安心して持てる美しさだと思います。
――他にどんなものが表示できますか?
上田氏
音楽の再生状態が分かりますし、iチャネルも表示できます。音楽再生時はサイドのボタンを押すと時計がでてくるようになっています。サブディスプレイは時計の利用ケースが多いので、必ず時計は表示できるようになっています。
|
|
サブディスプレイの縁が見えないように工夫
|
サブディスレイにはiチャネルなども表示できる
|
■ 使いやすさを追求した「クイックデコレーション」
――内部的なことで、何か新しい試みはありますか。
西村氏
メール機能の拡張として、メールを簡単にデコレーションできる「クイックデコレーション」機能を搭載しました。既存の機種では「クロスデコパレット」というユーザーインターフェイス(UI)を使用し、メール本文に対し簡単にいろいろな属性(文字色や背景色、等)を設定するということが可能となっておりますが、そのUIを拡張し利便性を向上したものです。
――どのようなメリットがあるのでしょうか。
西村氏
通常のデコメール設定では、背景色、文字色、ライン画像がよく利用されると思いますが、「クイックデコレーション」ではこれらをまとめて3ステップにて設定が可能になっています。中でも文字色は多くの選択肢から選ぶわずらわしさに着目し、背景色に対応して厳選された4つの選択肢から選んでいただくスタイルとなります。
例えば、赤い背景なのに赤の文字というのは、文字が見えませんから事実上使われませんよね。今回は、赤い背景を選択したら、それに色に合う文字色を4つに絞って表示します。その中から選択することで誰でも簡単に見やすく、見栄えのするデザインを選択できるようになっております。
――なるほど。背景と文字の組み合わせサンプルを見ながら選択できるのですね。
西村氏
そうです。抽出される4つの色はそれぞれ異なった方向性を持っており、例えばポップな色の組み合わせ、しっとりした色の組み合わせを、大人っぽい組み合わせと言うように並んでおり、これらをサンプルで確認しながら選択が可能です。さらにヘッダやフッタに相当するライン画像も続けて選択できるUIとなっており、背景と文字色の組み合わせを選択したら、その流れですぐにライン画像も選んでいただけます。
――ライン画像はかなり豊富みたいですね。選ぶのが大変ではないですか?
西村氏
ライン画像は全部で68種類もあるので、かなり選択の幅が広いかと思いますが、4つずつのカテゴリに分けて、トグルのような形で、クルクルとページをめくっていく感覚で探していけるような仕組みになっています。
私も家族にメールを出す際など結構活用しています。デコレーションはしたいけど、かといってあまり時間かけたくはない人には便利だと思います。実はSO903iでもトライアル的に入っています。ぜひお試しいただきたい機能です。
|
|
|
メール本文作成中に起動できる「クイックデコレーション」。3つのステップで簡単にメールをデコレーションできる
|
クイックデコレーションで、白い背景に黒い文字が選択された状態。左右キーで移動できるバーは背景色を表す。選択した背景に合った文字色が表示され、上下キーでスクロールさせることで実際にプレビュー可能
|
背景にピンクを選んだ例。白のときとは違った文字色がピックアップされているのがわかる
|
|
|
ライン画像の例。上下左右キーでスクロールさせながら選択する
|
クイックデコレーションで作成したデコメールの例。気に入らないときは何度でもやり直せる
|
■ 女性にもぜひソニー・エリクソンの携帯電話を
|
2月20日には、「SO703i」のファッションショーが開催された。当日はメインキャラクターの押切もえも登場した
|
――ソニー・エリクソンといえば熱烈な男性ファンの存在が特徴でもありますが、前回のSO702iに引き続き、SO703iでも女性支持の高いモデルの押切もえさんをメインキャラクターに選んでいますね。
上田氏
やはり「ソニー・エリクソン」というと“男性より”というイメージがありますので、あえて女性に向けて強いメッセージを発信することで、女性のお客様にも積極的に使っていただきたいと考えております。もちろん男性のお客様にも使いやすいデザインの携帯電話に仕上がっております。今回の端末はデザイン性やファッション性を重視し、癒しというテーマも取り入れておりますから、女性のお客様には見た目の満足感、使った満足感、さらに香りでも満足感を感じていただけると思います。いつでも手に持っていて欲しいですね。
――ちなみに今後のStyle-Upパネルの販売はどうなっていくのでしょうか。
上田氏
すでにいくつかのブランドとのコラボレーションが決まっておりますので、随時ご紹介していく予定です。ぜひご期待ください!
――ありがとうございました。
■ URL
ソニー・エリクソン
http://www.sonyericsson.co.jp/
SO703i製品情報(ソニー・エリクソン)
http://www.sonyericsson.co.jp/product/docomo/so703i/
SO703i製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/703i/so703i/
SO703iスペシャルサイト
http://www.sonyericsson.co.jp/product/docomo/so703i/beautyrenaissance/pop.html
■ 関連記事
・ 香る着せ替えパネルを採用した「SO703i」
・ 「SO703i」のファッションショー開催、押切もえも登場
・ ドコモ、“香る着せ替え”「SO703i」を23日発売
・ ドコモの703iシリーズ、対応機能一覧表
・ 2007年春商戦へ向けたNTTドコモ FOMA 703iシリーズ
・ 第311回:マイクロカプセル とは
(すずまり)
2007/03/02 16:23
|