昨年末に発売された京セラ製のWIN端末「W44K」は、目立ったスペックや機能は持たないものの、厚さ約15.3mmと、現在発売されているWIN端末としては最も薄く、販売も好調だという。
一方、今月発売予定の「W51K」は、京セラ初のワンセグケータイだ。しかしワンセグを搭載しつつも、最薄部20mmと、auの折りたたみ型ワンセグケータイとしては最薄、最軽量となっている。
今回はW44KとW51Kについて、同じく薄さを特徴の一つとしながら、どういったターゲットをねらっているかなどを、京セラの通信機器関連事業本部 マーケティング部 商品戦略部 デザイン課 デザイン係 責任者の板野 一郎氏、同 商品戦略部 商品企画1課1係 責任者の田辺 正昭氏、同 商品戦略部 デザイン課 デザイン係の光永 直喜氏にお話を伺った。
■ 薄さと使いやすさを追求したW44K
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京セラ 通信機器関連事業本部の板野 一郎氏
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――W44K、まず目にとまるのは、その薄いデザインです。やはりビジネスマンなどをターゲットとして薄くデザインされたのでしょうか。
板野氏
薄いケータイが男性に対し訴求力があるのは確かですね。個人的にショップの知り合いにリサーチしてみたところ、男性のお客さんは、厚い端末を手に取らないと聞きました。薄いケータイは男性への訴求効果が強いです。しかし、女性にもスマートに持ってもらいたいと考えています。女性は衣類にポケットがないんですよね。そうなると、携帯する場所がない。バッグやポーチを置いたまま席を立つ、といったときに、手帳とケータイを持つとかさばってしまう。そういった場面を意識して、薄いというニーズが、潜在的に男女両方にあると考えました。
――デザイン的に見ると、子どもっぽくない、大人びた印象を受けます。
板野氏
大人を意識しましたね。高校生とかはパワーがあるので、新しい機能や目新しさに興味を示されます。しかしW44Kは、薄さを訴求するために、特別なギミックや出っ張りを作っていません。ターゲットにあわせ、商品を落ち着きあるものにしました。
――薄くなると使い勝手に影響する部分もあると思います。しかしW44Kは、シートタイプではなく、枠のないボタンを採用しています。こうした使いやすさ部分も意識されてデザインしたのでしょうか。
板野氏
薄型、というと「使いにくいのでは」と思われることもあると思います。そのような人が、店頭でモックのボタンを押したとき、驚くようにと作りました。ボタンの面積が広く、段差もあり、押した感触にも気を遣ってデザインし、「フレームレスキー」と呼んでいます。
田辺氏
ボタンの押し心地などを犠牲にすれば、もっと薄くすることもできますが、W44Kではサイズと操作性のバランスをとって、このデザインに落ち着きました。
板野氏
薄さのみを求めれば、「フレームレスキー」にしないという選択肢もあります。ケータイのニーズは、時代とターゲットによって変化するので、このあたりはフレキシブルにやっていくつもりです。
――ボタンにこだわりがあるのですね。
板野氏
フレームレスのボタンについては、W31Kから続けていますが、ちょっとずつ進化もしています。W44Kはキータッチがすごく軽く、なおかつ、触覚的にわかるような段差ももうけています。社内では、押しやすさは歴代最強だと言っています。あとは数字ボタンではないですが、背面のインフォメーションボタンも、押しやすいように、サイドではなくサブディスプレイ側につけています。
■ 材料の変更から機能の絞り込みで実現されたW44Kの薄さ
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京セラ 通信機器関連事業本部の田辺 正昭氏
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――薄型にするに当たって苦労された部分はどういったところでしょうか。
板野氏
実機を手にされるとわかると思いますが、普通の端末と同じ剛性を持っています。ここは材料から吟味しました。メインとサブの両方のディスプレイパネルに強化ガラスを使っていますし、強化樹脂も使っています。いままでもなかったわけではないですが、珍しいと思います。
――薄くする上で削った機能とかがあると思います。たとえばおサイフケータイが搭載されていませんが。
田辺氏
おサイフケータイは議論になったポイントです。確かに、W44Kはビジネスマンをターゲットとしていますので、仕事で使う人が多いビジネスマンのニーズを考え、おサイフケータイも検討しました。しかし薄さとニーズのバランスをとりました。おサイフケータイに対応させると、どうしてもサイズが大きくなりますので、これは次の課題として残しました。
板野氏
おサイフケータイを入れたことで本体が厚くなると、そもそものコンセプトが失われてしまう、と考えました。
――ビジネスユーザーがターゲットだとすると、ドキュメントビューアーなど仕事に使える機能がもっとあっても良いかな、と思うのですが。
田辺氏
搭載する機能に関しては、バランスをとって割り切った部分もあります。
板野氏
当初から、そんなにはビジネス層に限定もしていませんでした。ビジネスに限定すると、売れる数も限定されますから。売るときに、いきなり「ビジネス向け」とセールストークをしてしまうと、人によっては視野から外れてしまいます。だから「ビジネスツール」とは謳っていません。人によってカタログを見たとき、ビジネスツールと受け取ってもらえれば、それが狙い通り、という感じです。
――同時発表だったW43Kが音楽重視でした。同じメーカーでこうまで方向性や機能が違うというのも面白いですね。
板野氏
機能については、割り切りやバランス取りがあると考えています。僕らはケータイ業界にいるので、あの機能もあれば、と思いますが、実際のユーザーが必要としているのかが問題です。たとえばケータイのメニュー画面は変えられるようになっていますが、変えていないお客さんもいらっしゃいます。画面デザインをがんばっているのに、意外と活用されていない、と感じることがあります。こういった作り手の思惑と、ユーザーの実使用があっていないことも多いのですが、その2つをバランスよくあわせたのが、このモデルです。
■ ワンセグを簡単に使ってもらうための薄さ20mmの「W51K」
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京セラ 通信機器関連事業本部の光永 直喜氏
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――続いてW51Kについても伺わせてください。こちらの機種、おサイフケータイにも対応していますが、こうなると、auの標準機能のほとんどに対応、ということになるのでしょうか。
田辺氏
その通りです。
――やはりセールスポイントはワンセグ、ということでしょうか。なぜワンセグを搭載されたのでしょう?
田辺氏
ワンセグは去年春から開始されていますが、全国展開ということを考えると、いまが良いタイミングかな、と思っています。ワンセグ以外にも、音楽も気軽に楽しく使ってもらいたい、ということで、ウーファー付き充電台なども用意しました。ワンセグ向けのデザインということで、2軸回転ヒンジも採用しています。
――なぜ2軸回転ヒンジなのでしょうか。御社の場合、かつて水平回転型の「リボルバースタイル」(A5502Kなど)を出されていましたが。
田辺氏
そこは社内でもスッゴイ議論があったところですが、スタンダードな折りたたみ型に近い2軸回転に落ち着きました。
――2軸回転デザインでも、けっこう大きなサブディスプレイを搭載されるのですね。
田辺氏
実際、多くの人はディスプレイを表にして持ち運ぶことはないと考えています。そういったことを受けてか、2軸回転タイプでもサブディスプレイのニーズは非常に高いです。W51Kは、EZニュースフラッシュ対応ですし、簡単に見られるようにと機能的にも考え、サブディスプレイを備えています。
――充電台はやはり、ワンセグ視聴を意識されたのでしょうか。
田辺氏
はい。前機種のW43Kからの進化点として、ワンセグ対応となっています。メインディスプレイを表にした状態でセットすれば、ワンセグを迫力ある音声で楽しんでいただけます。
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2軸回転ヒンジデザインを採用する
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同梱の充電台
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カラーはすべて、メタリックなイメージ
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――デザインを見ると、ギラギラして派手な印象を受けます。
光永氏
今回は「ポータブルメディアプレーヤー」をとくにイメージしてデザインしています。いままでにない高級感のある質感を追求し、蒸着処理を施しています。
田辺氏
最近はモデル数が多いので、店頭に並んだときに、斬新に見せる効果もねらっています。
板野氏
とりあえずオレンジを見てW51Kに注目してもらって、じっくりと選んでもらいたいと思っています。
光永氏
外側は印象を強くデザインしていますが、開いたところやテレビ操作面は落ち着いた印象にしています。ケータイを使う場面とは、個人のプライベート空間なので、使いやすさを重視して、こだわってデザインしています。
――auの折りたたみ型ワンセグケータイとしては最薄となると思います。しかしワンセグだけでなく、おサイフケータイなどにも対応しています。W44Kとは方向性が異なる、ということでしょうか。
田辺氏
W51Kは、さまざまなサービス・機能をサポートしつつ、その上で20mmと薄く作りました。W44Kで「京セラ=薄型」のイメージがつくでしょうから、そのイメージを意識しています。一方で、これまで同様、使いやすさにもこだわっています。
――ボタンもやはり気を遣われてデザインされているのでしょうか。
田辺氏
もちろんです。フレームレスのボタンも改良していますし、ヒンジ部には「フロントメディアキー」というボタンも搭載しています。これでワンセグや音楽機能を簡単に使ってもらえます。たとえばワンセグの操作系ですが、ほかのワンセグケータイのように、サイドボタンだと音量やチャンネル、その送り方向も間違えやすくなります。それがイヤ、という実感があったので、正面から、画面を見ながら操作できるようにしました。
――なるほど。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
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ヒンジ部に搭載された「フロントメディアキー」
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「フロントメディアキー」の脇のプリントは、メインディスプレイの向きによって変わる
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■ URL
製品情報(京セラ)
http://w51k.jp/
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2007/02/01 11:15
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